[8月16日15:00.天候:曇 東京都千代田区大手町 大手町中央ビルB1F防災センター]
熊谷:「2度とこんなことしないように。分かった?」
愛原:「はい、すいませんでした」
熊谷さんに鍵を返した私は、多少の説教を食らうこととなった。
顔は真顔で怒っているつもりだが、私が持参した菓子折りの菓子をモグモグやりながらの説教なので、殆ど説得力は無い。
熊谷:「他にも持ち出してる物は無いだろうね?」
愛原:「と、とんでもない!拝借したのはエレベーターの鍵だけですよ!」
熊谷:「本当かい?それならいいけど……」
愛原:「あ、そうだ、熊谷さん。拝借ついでに1つだけお願いが……」
熊谷:「何だい?またロクでもないことか」
愛原:「い、いえ、森脇さんがどこにいらっしゃるか教えて頂きたいんですよ」
熊谷:「森脇さん?」
愛原:「熊谷さんと同世代の方ですが、まだ辞めてないですよね?」
熊谷:「あの人は70歳まで働くとか言ってたな。どうしてだ?」
愛原:「森脇さんは東京中央学園の御出身だそうですね?」
熊谷:「あの人は生まれも育ちも台東区だからね」
愛原:「実は私、里親をやっていまして、里子が東京中央学園に通っているんですよ」
熊谷:「里親ってキミ、まだ結婚していないだろう?」
愛原:「もちろん、ただの里親制度ではありません。ある事情がありまして、特別里親制度の元、私がそれに抜擢されまして……」
熊谷:「ふーん……。まあ、違法なことじゃなければいいや。もちろん、里子は男の子なんだろ?」
愛原:「は、はい、そうです」
いいえ、バリバリのJKですw
熊谷:「だよな。まだ結婚もしていないキミが、女の子を里子にしたら、もう犯罪同然だもんな」
愛原:「お、仰る通りです」
むしろリサの方から、その性犯罪を持ち掛けて来るほどです。
愛原:「それでその、里子が東京中央学園に通うもので、確か森脇さんがそこの出身だと聞いたので、ちょっと御挨拶をと……」
熊谷:「出身と言ったって、あの人が東京中央学園を卒業したのは、今から半世紀くらい前だろ?そんな先輩過ぎる人に挨拶しても、どうかと思うけど……」
愛原:「と言いつつ、実は凄いコネとか持ってるかもしれませんよ」
熊谷:「凄いコネね……。そんなのがあったら、うちの警備会社で警備員やってるとは思えないけど……。まあ、いいや。俺がちょいと調べてやるよ」
愛原:「ありがとうございます」
熊谷さんはどこかに電話した。
そして……。
熊谷:「分かったぞ。森脇さんは今、豊島学園大の警備隊にいるとのことだ」
愛原:「豊島学園大。池袋にある私大ですね。分かりました」
熊谷:「ただ、今日は休みらしいぞ」
愛原:「あらま!」
熊谷:「明日は24(時間勤務)、明後日は明け、明々後日は日勤だそうだ」
愛原:「そ、そうですか……。ありがとうございます」
森脇氏は私が現役の警備員だった頃、懇意にしてくれた人の1人だ。
酒豪で、一緒の現場になった時とか、社員旅行が行われた時とかは、よく酒を奢ってくれた記憶がある。
私がふと気づいたのは、あの人が東京中央学園の出身者だったことだ。
実は東京中央学園の野球部は、昔は強豪で、よく甲子園に顔を出すほどだった。
私が現役の警備員だった頃の事だ。
その時、森脇さんがその中継を食い入るように観ていた記憶がある。
私がどうしてそんなに関心があるのかと聞いた所、森脇さんは、『俺はこの学園の出身なんだ』と答えた。
昔の話だからすっかり忘れていたが、ふと思い出すことがあるもんだ。
私が昔、袖を通していた警備会社の制服を見ていたことも理由も1つだ。
で、それがどうしたのかというと……。
愛原:「もしもし。善場主任ですか?」
私は防災センターをあとにすると、1階のエントランスホールにあるベンチに座り、そこで善場主任に電話を掛けた。
愛原:「私の古巣の警備会社に、白井伝三郎と同窓生と思しき人がいるんですよ。幸いその人、私と懇意にしていたこともありまして、当時の頃を聞いてみようかと思います」
善場:「そうですか。その人、白井のことを知っていそうですか?」
愛原:「分かりません。そこは聞いてみませんと……」
善場:「そうですか」
愛原:「もしかしたら、“トイレの花子さん”が首つり自殺したことくらいは知っているかもしれません。そこから掘り下げて行ければいいなと思っています」
善場:「分かりました。期待しております」
愛原:「善場さんの所では、白井の情報は?」
善場:「これといってサッパリです。しかし、私は今でも生きていて、リサ・トレヴァー以上の生物兵器を造る研究を続けているものと信じています」
愛原:「失礼ですが、その自信はどこから?」
善場:「愛原所長は、今でも子供が行方不明になっている事件が発生しているのを御存知ですか?」
愛原:「キャンプ場で起きた事件とか、自宅の近所で行方不明になった事件とか、いくつかありますね?」
善場:「私は白井が関わっているのではないかと思っているのですよ。実はBOWなら、“神隠し”を起こすことは可能なので」
愛原:「あっ……!」
私がリサが披露した血鬼術……もとい、催眠術を思い出した。
善場:「リサ・トレヴァーの亜種なら、まだ何人かいて、それが白井の指示に従っているのだとしたら……」
愛原:「あ、あの、主任。その事なんですけど……」
私がリサが話してくれた、栗原蓮華さんのことを話した。
善場:「そうですか。分かりました。それでは栗原さんの方は、私共が対応します。森脇氏の方は、愛原所長にお任せします」
愛原:「わ、分かりました」
確実な方を善場主任は選んだか。
と言っても、森脇さんは善場さん達の事なんか知らないだろうから、善場さん達がいきなり行っても驚くだけだろう。
それなら、顔見知りの私が行った方がまだ良いというわけだ。
私は電話を切って、ようやく雨の上がった外へと出た。
愛原:「タクシー」
そして、永代通りを流して走る空車のタクシーを拾い、それに乗って事務所へと戻ることにした。
熊谷:「2度とこんなことしないように。分かった?」
愛原:「はい、すいませんでした」
熊谷さんに鍵を返した私は、多少の説教を食らうこととなった。
顔は真顔で怒っているつもりだが、私が持参した菓子折りの菓子をモグモグやりながらの説教なので、殆ど説得力は無い。
熊谷:「他にも持ち出してる物は無いだろうね?」
愛原:「と、とんでもない!拝借したのはエレベーターの鍵だけですよ!」
熊谷:「本当かい?それならいいけど……」
愛原:「あ、そうだ、熊谷さん。拝借ついでに1つだけお願いが……」
熊谷:「何だい?またロクでもないことか」
愛原:「い、いえ、森脇さんがどこにいらっしゃるか教えて頂きたいんですよ」
熊谷:「森脇さん?」
愛原:「熊谷さんと同世代の方ですが、まだ辞めてないですよね?」
熊谷:「あの人は70歳まで働くとか言ってたな。どうしてだ?」
愛原:「森脇さんは東京中央学園の御出身だそうですね?」
熊谷:「あの人は生まれも育ちも台東区だからね」
愛原:「実は私、里親をやっていまして、里子が東京中央学園に通っているんですよ」
熊谷:「里親ってキミ、まだ結婚していないだろう?」
愛原:「もちろん、ただの里親制度ではありません。ある事情がありまして、特別里親制度の元、私がそれに抜擢されまして……」
熊谷:「ふーん……。まあ、違法なことじゃなければいいや。もちろん、里子は男の子なんだろ?」
愛原:「は、はい、そうです」
いいえ、バリバリのJKですw
熊谷:「だよな。まだ結婚もしていないキミが、女の子を里子にしたら、もう犯罪同然だもんな」
愛原:「お、仰る通りです」
むしろリサの方から、その性犯罪を持ち掛けて来るほどです。
愛原:「それでその、里子が東京中央学園に通うもので、確か森脇さんがそこの出身だと聞いたので、ちょっと御挨拶をと……」
熊谷:「出身と言ったって、あの人が東京中央学園を卒業したのは、今から半世紀くらい前だろ?そんな先輩過ぎる人に挨拶しても、どうかと思うけど……」
愛原:「と言いつつ、実は凄いコネとか持ってるかもしれませんよ」
熊谷:「凄いコネね……。そんなのがあったら、うちの警備会社で警備員やってるとは思えないけど……。まあ、いいや。俺がちょいと調べてやるよ」
愛原:「ありがとうございます」
熊谷さんはどこかに電話した。
そして……。
熊谷:「分かったぞ。森脇さんは今、豊島学園大の警備隊にいるとのことだ」
愛原:「豊島学園大。池袋にある私大ですね。分かりました」
熊谷:「ただ、今日は休みらしいぞ」
愛原:「あらま!」
熊谷:「明日は24(時間勤務)、明後日は明け、明々後日は日勤だそうだ」
愛原:「そ、そうですか……。ありがとうございます」
森脇氏は私が現役の警備員だった頃、懇意にしてくれた人の1人だ。
酒豪で、一緒の現場になった時とか、社員旅行が行われた時とかは、よく酒を奢ってくれた記憶がある。
私がふと気づいたのは、あの人が東京中央学園の出身者だったことだ。
実は東京中央学園の野球部は、昔は強豪で、よく甲子園に顔を出すほどだった。
私が現役の警備員だった頃の事だ。
その時、森脇さんがその中継を食い入るように観ていた記憶がある。
私がどうしてそんなに関心があるのかと聞いた所、森脇さんは、『俺はこの学園の出身なんだ』と答えた。
昔の話だからすっかり忘れていたが、ふと思い出すことがあるもんだ。
私が昔、袖を通していた警備会社の制服を見ていたことも理由も1つだ。
で、それがどうしたのかというと……。
愛原:「もしもし。善場主任ですか?」
私は防災センターをあとにすると、1階のエントランスホールにあるベンチに座り、そこで善場主任に電話を掛けた。
愛原:「私の古巣の警備会社に、白井伝三郎と同窓生と思しき人がいるんですよ。幸いその人、私と懇意にしていたこともありまして、当時の頃を聞いてみようかと思います」
善場:「そうですか。その人、白井のことを知っていそうですか?」
愛原:「分かりません。そこは聞いてみませんと……」
善場:「そうですか」
愛原:「もしかしたら、“トイレの花子さん”が首つり自殺したことくらいは知っているかもしれません。そこから掘り下げて行ければいいなと思っています」
善場:「分かりました。期待しております」
愛原:「善場さんの所では、白井の情報は?」
善場:「これといってサッパリです。しかし、私は今でも生きていて、リサ・トレヴァー以上の生物兵器を造る研究を続けているものと信じています」
愛原:「失礼ですが、その自信はどこから?」
善場:「愛原所長は、今でも子供が行方不明になっている事件が発生しているのを御存知ですか?」
愛原:「キャンプ場で起きた事件とか、自宅の近所で行方不明になった事件とか、いくつかありますね?」
善場:「私は白井が関わっているのではないかと思っているのですよ。実はBOWなら、“神隠し”を起こすことは可能なので」
愛原:「あっ……!」
私がリサが披露した血鬼術……もとい、催眠術を思い出した。
善場:「リサ・トレヴァーの亜種なら、まだ何人かいて、それが白井の指示に従っているのだとしたら……」
愛原:「あ、あの、主任。その事なんですけど……」
私がリサが話してくれた、栗原蓮華さんのことを話した。
善場:「そうですか。分かりました。それでは栗原さんの方は、私共が対応します。森脇氏の方は、愛原所長にお任せします」
愛原:「わ、分かりました」
確実な方を善場主任は選んだか。
と言っても、森脇さんは善場さん達の事なんか知らないだろうから、善場さん達がいきなり行っても驚くだけだろう。
それなら、顔見知りの私が行った方がまだ良いというわけだ。
私は電話を切って、ようやく雨の上がった外へと出た。
愛原:「タクシー」
そして、永代通りを流して走る空車のタクシーを拾い、それに乗って事務所へと戻ることにした。
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