[12月30日00:47.天候:曇 東京中央学園上野高校・旧校舎(教育資料館)]
魔界の穴を塞ぎにやってきた稲生とマリア。
A級以上の妖怪や悪魔は慎重派が多いから、まだ侵入してきてはいないだろうとタカを括っていたマリアだったが、とんでもなかった。
S級妖怪がいて、稲生達に襲い掛かって来たのだ。
そして2人は追い詰められた。
S級妖怪:「こっちを向け」
稲生達が恐怖のあまりに固まっている。
S級妖怪:「向けっつってんだっ、ゴルァッ!!」
恐らく人間時代はそうして性的暴行を受けた経験があるのだろう。
マリアは全く動けない。
稲生だけが恐る恐る後ろを振り向いた。
その時、ふと気づいたのだが……。
稲生:(あれ?声の感じ、誰かに似てるぞ……?)
昇降口のドアには窓ガラスがあり、外灯の明かりが差し込んでいる。
稲生が振り向いて、その僅かな灯かりに照らされているS級妖怪の姿を確認した。
そこにいたはのは……。
稲生:「キノ!?キノじゃないか!」
地獄界の1つ、叫喚地獄の獄長家の長男にして、幹部獄卒をしている鬼族の蓬莱山鬼之助だった。
愛称はキノ。
赤銅色の肌をした赤鬼である。
身長は180cmを超える長身であり、小柄な稲生やマリアからすれば見上げて話をする相手である。
キノ:「何かおかしいと思ったら、ユタじゃねーか。あと……えー……誰だっけ?」
マリア:「マリアンナだ!」
キノ:「あー、そうそう」
魔王城大決戦の際は共闘したし、その前の藤野の合宿所でも一緒に過ごした仲である。
今はその決戦の時の活躍ぶりを認められ、閻魔庁の本庁勤務のエリートとなったと聞いている。
キノ:「何しに来たんだ?あ?まさか、オメェらがオレを呼び出したんじゃねーだろ?」
稲生:「当たり前だよ!キミこそ誰に呼び出されたんだ!?」
キノ:「……江蓮をパクりやがったヤツだ」
稲生:「栗原さん、さらわれたの!?」
栗原江蓮はキノが一途に愛する人間の女性である。
すぐにでも嫁にしたかったのだが、せめて高校卒業まではと待っていた。
それがようやく高校卒業をしたので、キノの実家に連れて行って、一緒に暮らしていたはずなのだが……。
栗原も稲生ほどではないが、霊力の強い女性であった。
もしも彼女が稲生ともっと近い年齢で、尚且つこの学園の生徒であったなら、かなりの戦力になるくらい。
それが為、稲生と同じく他の妖怪に狙われたりもしたのだが、稲生には威吹が睨みを利かせていたのと同様、栗原に近づく妖怪達にはキノが睨みを利かせて追い払っていた。
キノ:「だから人間界には戻るなと行ったんだ……」
どうやら別に、栗原はキノのことが嫌いになったわけではない。
地獄界の生活が退屈になったので、また学校に通いたいと言い出したらしい。
キノの強いアプローチが無ければ、むしろ大学まで行きたかったくらいだったという。
さすがにそれは諦めて、せめて専門学校には通おうと思ったらしい。
その為の資料集めや入学願書を取り寄せる為に、一時期帰省していたとのことだ。
それから連絡が取れなくなり、キノの実家の所に脅迫文が届いたという。
キノ:「魔界の穴を開けるバカな人間がいて、それはそこの住民が殺るから、オマエ……まあ、俺のことだな。魔界の穴を塞ぎに来るヤツを殺せというんだ。でなかったら、江蓮は食い殺すと……」
稲生:「これは明らかに、僕達をキノに殺させる為の罠だよ」
マリア:「確かに、今の私達にはS級妖怪の対応は難しい」
だからこそ稲生は現役時代、威吹にも協力を仰いだのである。
威吹もS級だからだ。
稲生の為ならと、威吹は快諾した。
威吹の敵対に、跋扈していた妖怪達は面食らったことだろう。
稲生:「魔界の穴を塞ぎに来たのは僕達だ。でもキミが僕達を殺したとしても、栗原さんが無事に返ってくるとは思えない」
キノ:「そうだな。あまりにも、話が出来過ぎてるぜ。だが、このままにしても、江蓮が返ってはこねぇだろ」
マリア:「魔界の穴を塞ぐ前に、そこから入ってきた魔族達を倒しておこう」
稲生:「優先して倒すのは、2人の後輩を殺した妖怪だな」
キノ:「もしかしてそれ、さっきのクソガキじゃねーのか?」
稲生:「えっ!?」
キノ:「『人間のお兄ちゃん2人の血をもらったけど、それでもお腹いっぱいにならないの。だから、お兄ちゃんのも吸わせて!』なんて言ってきたからよ、オレの実家まで送ってやったぜ」
稲生:「さっきのコだったの!?」
マリア:「人間と鬼族の区別も付かないとは……」
キノ:「ま、ガキの幽霊なんてそんなもんさ。オレが昔バイトしてた賽の河原送りになるのがオチなんじゃねーか?」
賽の河原の話は有名であるが、実はこの地獄、どこの宗教でも語られてはいない。
仏教で語られる八大地獄のどこにも所属していないし、キリスト教における地獄でもない。
しかし、存在はしている。
閻魔庁が管轄しており、獄卒としての内規に違反したキノが謹慎処分を受けたものの、例外として賽の河原における獄卒の補助要員として送られたことがあった。
そこでは栗原江蓮の本当の魂と出会い(今現在、栗原江蓮の体を使用しているのは、川井ひとみという別の少女)、その魂を救ったことで謹慎処分を解かれている(建前)。
稲生:「じゃあ、僕達はもう魔界の穴を塞ぐだけでいいんだね」
マリア:「その前に、ここに侵入してきた妖怪達を何とかしないとな」
マリアは魔法の杖を出した。
キノ:「しゃあねぇ、乗り掛かったバスだ。オレもボランティアで手伝ってやるぜ」
稲生:「乗り掛かった舟だろ?」
階段を上がって3階から対処していく。
キノが妖刀を振るうと、それだけで妖怪は消され、或いは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
そこで、1つの事実が明らかになる。
旧校舎は3階建てで、3階の妖怪を片付けた時だった。
そのフロアの中ボスだか分からないが、とにかくその地位を張っているらしき者をキノが倒した時だった。
中ボス:「お、鬼の分際で……!に、人間の女なんぞに……!堕ちたものだな……!へへ……!」
キノは中ボスの胸倉を掴む。
キノ:「その鬼にブッ殺される寸前のヤツはどこのどいつだ、あぁっ!?……てか、テメェ!江蓮のこと知ってんのか!?」
中ボス:「2階のヤツに聞きな……!ごぶっ……!」
中ボスは血反吐を吐いて絶命した。
キノ:「ちっ、この程度の情報かよ。使えねーな!」
キノは中ボスの死体を蹴飛ばすと、血糊のついた妖刀を手拭いで拭いた。
幹部獄卒ともなると、妖刀も上等なものが支給されるらしい。
地獄の獄卒というと、一張羅に金棒というイメージだが、それは下級の獄卒。
キノのように幹部ともなると、今着ているような袴をはいて、金棒ではなく刀を持つようになる。
その腕前は剣豪とも言えるほどで、同じく妖狐の剣豪である威吹とは互角である。
キノの場合は指導者としての素質もあるようで、江蓮に剣を教えてあげたら、女子剣道部員として埼玉県大会で優勝し、全国大会でも上位に食い込むほどにまでなったという。
稲生:「2階へ行こう。キノの活躍のおかげで、弱い妖怪達は魔界に逃げ帰っているみたいだ」
マリア:「それは好都合だ」
キノ:「……お前ら、江蓮の救出には力を貸せよな?」
稲生:「僕達にできることはするよ」
キノ:「それならいいが……」
3人は3階の教室をあとにし、2階へと向かった。
魔界の穴を塞ぎにやってきた稲生とマリア。
A級以上の妖怪や悪魔は慎重派が多いから、まだ侵入してきてはいないだろうとタカを括っていたマリアだったが、とんでもなかった。
S級妖怪がいて、稲生達に襲い掛かって来たのだ。
そして2人は追い詰められた。
S級妖怪:「こっちを向け」
稲生達が恐怖のあまりに固まっている。
S級妖怪:「向けっつってんだっ、ゴルァッ!!」
恐らく人間時代はそうして性的暴行を受けた経験があるのだろう。
マリアは全く動けない。
稲生だけが恐る恐る後ろを振り向いた。
その時、ふと気づいたのだが……。
稲生:(あれ?声の感じ、誰かに似てるぞ……?)
昇降口のドアには窓ガラスがあり、外灯の明かりが差し込んでいる。
稲生が振り向いて、その僅かな灯かりに照らされているS級妖怪の姿を確認した。
そこにいたはのは……。
稲生:「キノ!?キノじゃないか!」
地獄界の1つ、叫喚地獄の獄長家の長男にして、幹部獄卒をしている鬼族の蓬莱山鬼之助だった。
愛称はキノ。
赤銅色の肌をした赤鬼である。
身長は180cmを超える長身であり、小柄な稲生やマリアからすれば見上げて話をする相手である。
キノ:「何かおかしいと思ったら、ユタじゃねーか。あと……えー……誰だっけ?」
マリア:「マリアンナだ!」
キノ:「あー、そうそう」
魔王城大決戦の際は共闘したし、その前の藤野の合宿所でも一緒に過ごした仲である。
今はその決戦の時の活躍ぶりを認められ、閻魔庁の本庁勤務のエリートとなったと聞いている。
キノ:「何しに来たんだ?あ?まさか、オメェらがオレを呼び出したんじゃねーだろ?」
稲生:「当たり前だよ!キミこそ誰に呼び出されたんだ!?」
キノ:「……江蓮をパクりやがったヤツだ」
稲生:「栗原さん、さらわれたの!?」
栗原江蓮はキノが一途に愛する人間の女性である。
すぐにでも嫁にしたかったのだが、せめて高校卒業まではと待っていた。
それがようやく高校卒業をしたので、キノの実家に連れて行って、一緒に暮らしていたはずなのだが……。
栗原も稲生ほどではないが、霊力の強い女性であった。
もしも彼女が稲生ともっと近い年齢で、尚且つこの学園の生徒であったなら、かなりの戦力になるくらい。
それが為、稲生と同じく他の妖怪に狙われたりもしたのだが、稲生には威吹が睨みを利かせていたのと同様、栗原に近づく妖怪達にはキノが睨みを利かせて追い払っていた。
キノ:「だから人間界には戻るなと行ったんだ……」
どうやら別に、栗原はキノのことが嫌いになったわけではない。
地獄界の生活が退屈になったので、また学校に通いたいと言い出したらしい。
キノの強いアプローチが無ければ、むしろ大学まで行きたかったくらいだったという。
さすがにそれは諦めて、せめて専門学校には通おうと思ったらしい。
その為の資料集めや入学願書を取り寄せる為に、一時期帰省していたとのことだ。
それから連絡が取れなくなり、キノの実家の所に脅迫文が届いたという。
キノ:「魔界の穴を開けるバカな人間がいて、それはそこの住民が殺るから、オマエ……まあ、俺のことだな。魔界の穴を塞ぎに来るヤツを殺せというんだ。でなかったら、江蓮は食い殺すと……」
稲生:「これは明らかに、僕達をキノに殺させる為の罠だよ」
マリア:「確かに、今の私達にはS級妖怪の対応は難しい」
だからこそ稲生は現役時代、威吹にも協力を仰いだのである。
威吹もS級だからだ。
稲生の為ならと、威吹は快諾した。
威吹の敵対に、跋扈していた妖怪達は面食らったことだろう。
稲生:「魔界の穴を塞ぎに来たのは僕達だ。でもキミが僕達を殺したとしても、栗原さんが無事に返ってくるとは思えない」
キノ:「そうだな。あまりにも、話が出来過ぎてるぜ。だが、このままにしても、江蓮が返ってはこねぇだろ」
マリア:「魔界の穴を塞ぐ前に、そこから入ってきた魔族達を倒しておこう」
稲生:「優先して倒すのは、2人の後輩を殺した妖怪だな」
キノ:「もしかしてそれ、さっきのクソガキじゃねーのか?」
稲生:「えっ!?」
キノ:「『人間のお兄ちゃん2人の血をもらったけど、それでもお腹いっぱいにならないの。だから、お兄ちゃんのも吸わせて!』なんて言ってきたからよ、オレの実家まで送ってやったぜ」
稲生:「さっきのコだったの!?」
マリア:「人間と鬼族の区別も付かないとは……」
キノ:「ま、ガキの幽霊なんてそんなもんさ。オレが昔バイトしてた賽の河原送りになるのがオチなんじゃねーか?」
賽の河原の話は有名であるが、実はこの地獄、どこの宗教でも語られてはいない。
仏教で語られる八大地獄のどこにも所属していないし、キリスト教における地獄でもない。
しかし、存在はしている。
閻魔庁が管轄しており、獄卒としての内規に違反したキノが謹慎処分を受けたものの、例外として賽の河原における獄卒の補助要員として送られたことがあった。
そこでは栗原江蓮の本当の魂と出会い(今現在、栗原江蓮の体を使用しているのは、川井ひとみという別の少女)、その魂を救ったことで謹慎処分を解かれている(建前)。
稲生:「じゃあ、僕達はもう魔界の穴を塞ぐだけでいいんだね」
マリア:「その前に、ここに侵入してきた妖怪達を何とかしないとな」
マリアは魔法の杖を出した。
キノ:「しゃあねぇ、乗り掛かったバスだ。オレもボランティアで手伝ってやるぜ」
稲生:「乗り掛かった舟だろ?」
階段を上がって3階から対処していく。
キノが妖刀を振るうと、それだけで妖怪は消され、或いは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
そこで、1つの事実が明らかになる。
旧校舎は3階建てで、3階の妖怪を片付けた時だった。
そのフロアの中ボスだか分からないが、とにかくその地位を張っているらしき者をキノが倒した時だった。
中ボス:「お、鬼の分際で……!に、人間の女なんぞに……!堕ちたものだな……!へへ……!」
キノは中ボスの胸倉を掴む。
キノ:「その鬼にブッ殺される寸前のヤツはどこのどいつだ、あぁっ!?……てか、テメェ!江蓮のこと知ってんのか!?」
中ボス:「2階のヤツに聞きな……!ごぶっ……!」
中ボスは血反吐を吐いて絶命した。
キノ:「ちっ、この程度の情報かよ。使えねーな!」
キノは中ボスの死体を蹴飛ばすと、血糊のついた妖刀を手拭いで拭いた。
幹部獄卒ともなると、妖刀も上等なものが支給されるらしい。
地獄の獄卒というと、一張羅に金棒というイメージだが、それは下級の獄卒。
キノのように幹部ともなると、今着ているような袴をはいて、金棒ではなく刀を持つようになる。
その腕前は剣豪とも言えるほどで、同じく妖狐の剣豪である威吹とは互角である。
キノの場合は指導者としての素質もあるようで、江蓮に剣を教えてあげたら、女子剣道部員として埼玉県大会で優勝し、全国大会でも上位に食い込むほどにまでなったという。
稲生:「2階へ行こう。キノの活躍のおかげで、弱い妖怪達は魔界に逃げ帰っているみたいだ」
マリア:「それは好都合だ」
キノ:「……お前ら、江蓮の救出には力を貸せよな?」
稲生:「僕達にできることはするよ」
キノ:「それならいいが……」
3人は3階の教室をあとにし、2階へと向かった。
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