報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「節分の大事件」

2023-11-22 16:19:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月2日15時00分 天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 私と高橋は、善場主任との打ち合わせに来ていた。

 善場「リサの血液検査については、それまで行われてきた検査の中で、最も素晴らしい結果が出ています」
 愛原「それは喜ばしいことなんですが、あくまでも、リサの『BOWとしての使い道』が素晴らしいというだけであって、『人間に戻れるわけではない』というのが残念ですね」
 善場「ええ。この場に本人がいないので言ってしまいますと、それはかなり長期計画になるかもしれません。何しろ、Gウィルスと特異菌という厄介なウィルスとカビ兵器ですからね。Gウィルスだけだった私でさえ、完全に除去することができず、遺伝子の一部に変化して、一生私の中に居続けることでしょう。そしてそれは、アメリカ政府のエージェント、シェリー・バーキン氏もです」
 愛原「Gウィルスだけでそれなのに、ましてや特異菌もなると……なるほど」
 善場「特異菌に関してはウィンターズ夫妻のこともありますから、そうおいそれとは手出しできないのが実情です」

 特異菌を除去する特効薬を投与されたミア・ウィンターズ氏とゾイ・ベイカー氏は、表向きには人間に戻ったことになっている。
 しかしこれもまた、『表向き』というだけであって、裏の実情としては人外的な力が残ってしまっているようである。
 内容については、国家機密レベルとなっている。
 愛原「リサは『Gウィルスを持っていようが、特異菌を持っていようが子供は生める』なんて言ってますよ」
 高橋「どんな化け物生む気だよ……」
 善場「そうですね。恐らく、化け物が生まれると思います」
 高橋「やっぱり!」
 善場「ただ……」
 愛原「ただ?」
 善場「ウィンターズ夫妻から生まれた娘、ローズマリー・ウィンターズは特異菌をやはり受け継いでいますが、今のところは人間と変わらぬ姿で生活しているそうです。ただ、検査の内容的にはBOWそのものだそうで……。いつ変化して暴走するか分からないので、唯一の特級BOWに指定されています」

 BSAA本部が直接監視に置くというクラスである。
 エブリンも特級に指定されたが、こちらは暴走が発覚した為、殺処分されている。
 とはいえ、リサがリサ・トレヴァーのGウィルスを受け継いだのと同様、エブリンの特異菌もまたリサは受け継いでいる。
 しばらくエブリンの幻覚に悩んだものの、モノにしてからはそのような幻覚を見ることもなくなった。
 そして今や、体内に取り入れた寄生虫をわざと感染させて、日本式プラーガを生成し、独自のBOWとしての生き方を模索している……って!

 愛原「実質的に、今のリサも特級扱いでしょうな」
 善場「本来ならそうして然るべきです。ただ、そうなると、リサは本部に渡欧することになりますけどね」
 愛原「思いっきり嫌がるでしょうなぁ……」

 そして暴走。
 それで殺処分という流れにしたかったのだろな、BSAAは。
 しかし、そこでどういった政治的なやり取りが行われたのかは分からない。
 非核三原則のせいで核武装ができない日本は、代わりにリサのような特級BOWを配備しようとしているのではと思ったりする。
 とにかく、今のリサはワンランクダウンの上級。
 支部単位で監視・対処の対象となるランク。
 更にはその下の地区本部にて監視・対象委託をし、そこから更にデイライトが監視しているという複雑な構造だ。
 日本のお役所が大好きな構造である。

 愛原「それでその……このまま良好な結果が続いた場合はどうなるのですか?」
 善場「それこそ、藤野の研究施設の出番です。リサの血液が難病や致命傷の特効薬、治療薬となるならば、これは一大事ですよ」
 愛原「兵器としての利用ではないのだから、他国も文句は言いそうにないですね」
 善場「そういうことです。難病の治療薬、致命傷の治療薬に使えるのならば、むしろ歓迎されるべきです」
 愛原「ますます人間には、戻れそうにないですね」
 善場「だからこそ、監視業務の委託は、引き続きお願いしたいところであります」
 愛原「それは是非お任せください」

 と、その時だった。

 愛原「ん!?」

 私のスマホがけたたましいアラームを鳴らした。
 それは私だけではない。
 高橋や善場主任のスマホもそうだった。
 それはJアラートや緊急地震速報ではない。
 BSAAが開発したアプリからのアラームだった。
 『上級BOW暴走警報』であった。
 この近辺にいる上級BOWといえば、リサしかいない。
 他にも指定されているのはタイラントやネメシスなどがいるが、彼らはそんな急に現れるものではない。

 愛原「リサが暴走した!?」
 高橋「おいおいおい!ついに先生を裏切ったかぁーっ!?ヒャッハー!!」

 高橋はジャンパーの中から、44口径の大型マグナムを取り出した。

 善場「何てこと……!今日は節分なのに!」
 愛原「それですよ!リサも今日は、『学校で節分の豆まき大会があるから、今日は1日鬼になり切る』とか言ってました!」
 善場「だからといってやり過ぎです!」

 善場主任はアラームを切ると、すぐにどこかへ電話した。
 もちろん、BSAAの日本地区本部にでも連絡しているのだろう。
 私もアラームを切った時にふと思った。

 愛原「この時間って、もう学校が終わってる時間帯じゃないか。そろそろ帰ろうって時だろ?もう豆まき大会は終わってるはずだが……」
 高橋「まいた豆食い過ぎて暴走とか?」
 愛原「アホか」

 私はリサと連絡を取ろうと思った。
 まずはLINEを送信してみるが、既読が付かない。
 そこで今度は通話を試みたが、繋がらなかった。
 『お掛けになった番号は、現在、電波の届かない所にあるか、電源が入っていない為、掛かりません』というアナウンスが流れるだけである。

 善場「今、BSAAに緊急連絡しました。もちろんBSAAでもアラームは受信していまして、出動態勢に入っているそうです」
 愛原「一体今、リサはどこにいるのでしょう?LINEも通話も繋がらないんです」

 私はもう1度、LINEの画面を確認したが、既読すら付いていなかった。

 善場「それは、コールしているのに出ないという意味ですか?」
 愛原「いえ、そもそも繋がらないということです」

 私は先ほどのアナウンスが流れて来る状態だと主任に伝えた。

 善場「ちょっと居場所を確認します」

 主任はスマホではなく、会議室のテーブルの上に置いたノートPCを操作した。
 リサにはGPSを持たせており、スマホが故障したり、紛失したりしても、別のGPSで追うことができるようになっている。

 善場「GPSが作動していません!恐らく、それで『暴走した』と判断されたのでしょうね」
 愛原「では、暴走したわけではない、と……」
 善場「可能性はあります。ただ、スマホもダメで、専用GPSもダメとなった原因は……」
 高橋「事故じゃねーのか?大型トラックにぶつけられたら、スマホやGPSは壊れるだろ」
 善場「なるほど……」

 生身の人間なら深刻だが、リサならトラックに跳ねられたくらいでは死なない。
 まあ、確かに持ち物は壊れるだろうがな。

 善場「ちょっとBSAAの報告を待ちましょう。恐れ入りますが、所長方はもう少しこのまま待機して頂いても宜しいでしょうか?」
 愛原「それは構いませんよ」
 高橋「パールに連絡しておきます。ひょっこり事務所に帰って来る可能性もあるんで」
 愛原「ああ、頼む」

 高橋は自分のスマホを取り出すと、それで事務所で留守番しているパールにLINEを送った。
 それにしてもリサのヤツ、何があったんだろう?

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