報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「東急エクセルホテル羽田」

2018-01-25 15:03:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月3日15:15.天候:晴 国際興業バス大宮羽田線車内→羽田空港第2ターミナル]

 首都高速には防音壁が多く、普通乗用車では周辺の景色が見えないことが多々ある。
 だが、トラックやバスなどの車高の高い車で、防音壁より高い位置に座席がある場合は、東京の景色が一望できる箇所もそれなりにある。
 稲生とマリアが乗ったバスは首都高さいたま新都心線から埼玉大宮線に入り、そこから5号線を南下する。

 稲生:「あれが東京ドームです」
 マリア:「狭い意味だと白いドームのみを指して、広い意味だとその周辺の施設も入ってるんだろ?」
 稲生:「よく知ってますね」
 マリア:「エレーナなんか、よく上空飛んでるってさ」
 稲生:「よく見つからずに飛べるなぁ……」

 後楽園を過ぎると、次のランドマークは東京タワーか。

 稲生:「あれが東京タワーです」
 マリア:「ルゥ・ラの練習で、あの展望台の屋根の上に着いたヤツがいた」
 稲生:「誰ですか、それ!w」

 コースによってはレインボーブリッジを通ることもある。

 稲生:「レインボーブリッジを通るみたいです」
 マリア:「エレーナが、『いずれはこの下を潜ってみたい』とか言ってたな」
 稲生:「『大騒ぎになるからやめろ』と言った方がいいですね」

 レインボーブリッジ、正式名称は東京港連絡橋と言う。
 そこを渡って大井の方に行くと、今度は東海道新幹線大井車両基地の横を通る。

 稲生:「ここからだと、ドクターイエローが見えないなぁ……。あの手前に止まっているのがN700系で、その隣がN700Aですね。あれがJR東海の車両で、その向こうにいるのがJR西日本の車両……」
 マリア:(どれも同じに見えるんだが……)

 マリアにとっては魔道書の解読よりも難しい稲生の鉄道講釈を聞くハメになった。
 その大井を過ぎると、羽田空港はもうすぐである。

〔♪♪♪♪。まもなく、羽田空港第2ターミナルに到着致します。……〕

 
(羽田空港に到着した国際興業バス大宮羽田線。ウィキペディア日本語版より転載)

 稲生:「見えてきましたよ。あのホテルですね」

 バスが最初の停車地に接近すると、ターミナルビルに直結する形でホテルが見えてきた。

 稲生:「あのホテルに先生方が宿泊されておられると」
 マリア:「で、私達も一泊付き合うってわけだ」

 バスはスーッとホテルの前を通り過ぎ、100メートルくらい走って停留所に止まった。
 まあ、当然だろう。
 あくまでこのバスは空港連絡バスであり、ホテルの送迎バスではない。

 運転手:「はい、ご乗車ありがとうございました。第2ターミナルです」

 稲生達は荷物を手に、乗降扉に向かった。
 羽田空港ではどのターミナルにも係員がいて、バスのトランクルームに積んだ乗客の荷物を降ろすのを手伝っている。

 稲生:「寒いから、ターミナルの中を通って行きましょう」
 マリア:「そうだな。今日はいつもより寒い」

 バスを降りると、稲生達はターミナルの中に入った。
 マリアはローブを着込み、稲生もいつもは着ないローブを羽織った。

 稲生:「寒波が近づいてきているらしいです。明日は関東でも雪ですよ。飛行機飛ぶといいけどなぁ……」
 マリア:「大師匠様の乗られる飛行機は午前中離陸だろ?大丈夫なんじゃないか?それに、もしダメならとっくに代替案出してるよ」
 稲生:「それもそうですね」

 暖房の効いたターミナルの中を、バスが来た方向とは逆方向に歩いて行くと、ホテルの入口が見えて来た。
 やはり、ターミナルの中からもアクセスできるようになっていた。
 そして、ロビーに入ると……。

 イリーナ:「やあやあ、よく来たねぇ」

 イリーナが目を細めて出迎えた。

 ダンテ:「せっかくの帰省旅行なのに、付き合わせて悪いねぇ」
 稲生:「いえ、そんな……。もう今日で帰る所ですから」

 稲生とマリアの緊張している理由はそれぞれ違った。
 稲生はただ単にVIPと会っているからという緊張感、マリアの場合は……。

 マリア:(どのタイミングで怒られるだろうか……?)
 ダンテ:「マリアンナ君」
 マリア:「は、はい!」
 ダンテ:「キミの年末年始の過ごし方についてだが……」
 マリア:(うあ……!これは大師匠様からやんわり注意され、その後師匠から張っ倒されるパティーン……)

 マリアがイリーナからの叱責を覚悟した時だった。

 ダンテ:「多くの人助けをしたようじゃないか。『復讐の魔女』から『正義の魔道師』へと変貌を遂げている最中ということだね。その調子で頑張りなさい」
 マリア:「は、はい!……は?」
 稲生:「ああ。あのマンション火災の時ですね。マリアさん、凄かったんですよー!ピンポイントでテレポートできるようになりましてね」
 ダンテ:「うむ。ルゥ・ラは本来、中・長距離を移動する為の魔法。それに応用を効かせて短距離の移動、それもピンポイントに狙った箇所に到達するにはレベル上げが不可欠。それが1度でもできたことは、称賛に値する。これからも精進を続けなさい」
 マリア:「あ、ありがとうございます!」
 ダンテ:「それ以外にも、色々と魔法を駆使した人助けを行ったようだ。褒美として『お年玉』を授けよう」
 稲生:「凄いですね!何をしたんですか!?」
 マリア:「えーと……。(私、何かした???)」

 したのである。
 ただ、本人に自覚が無いだけだ。

 イリーナ:「大丈夫よ。私もダンテ先生も、ちゃんと見ていたからね」
 マリア:「???」
 ダンテ:「さて、かわいい孫弟子達も到着したことだし、ディナーまで部屋で休むことにしよう。キミ達もチェック・インして、部屋で休みなさい」
 稲生:「は、はい。ありがとうございます」
 マリア:(酔っ払って覚えてない時に、何かしたのかな???)

 天網恢恢疎にして漏らさず、という。
 悪行はいずれバレるのと同様、善行も後で評価されるということだ。

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