報恩坊の怪しい偽作家!

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“新アンドロイドマスター” 「引退しても……」

2015-11-07 10:30:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月26日15:30.大石寺裏門前売店(仲見世)前の歩道 敷島孝夫、平賀太一、1号機のエミリー、3号機のシンディ、鷲田警視、村中課長]

「ドクター平賀と・敷島社長は・大事な・お話し中です。しばらく・お待ち・ください」
「バカ者!こっちも大事な話だ!」
「そこをどいてもらわないと、公務執行妨害で現行犯逮捕することになる」
「機械を逮捕できるものなら、やってみなさい!!」
「もちろん逮捕するのは、その所有者だ」
 ガラガラとアルミサッシのガラス戸を開けた敷島は、外に出てみた。
「あれ?鷲田警視達、何してんスか、ここで?」
「のんきに参拝に来たとでも思ってるのか!?」
「いや、思ってないっスよ。入信の儀式なら、向こうでやってるってよ」
 敷島は裏門の向こうを指さした。
 正確には各宿坊で執り行っており、特に報恩坊がお勧めである。……ん?
「入信なんかするか!」
「ていうか、新幹線まだ復旧していないのに、どうやってここまで来たの?」
「警察ナメんなよ!」
「汚いな。また警視庁のヘリを無断拝借したの?職権乱用だよ?」
「人聞きの悪いこと言うな!」
「新幹線はダメでも、在来線は動いていたからね。普通に電車を乗り継いで来たよ」
 村中が肩を竦めて答えた。
「警察の方が何か御用ですか?」
 店の中から吉塚が出て来た。
「事情を伺いたいので、ちょっとよろしいでしょうか?」
「構いませんよ」
「というわけだ。キミ達は参拝が終わったら、あとは帰った方がいい」
「新幹線が止まってたんじゃ、帰れませんよ」
 敷島はブーイングを出した。

[同日16:30.静岡県富士宮市・富士急富士宮ホテル 敷島、平賀、エミリー、シンディ]

 今日は市内で一泊することにした。
「僅かだが、吉塚氏に関するメモリーがあるな……」
 平賀はエミリーのメモリーを全部調べていた。
 平賀がまだ子供の頃に初めて会った頃から全部調べていたが、KR団という単語があるのは最近になってから。
 メモリーといっても、せいぜいエミリーが吉塚からの電話を取り次いだというものしかない。
 南里自身は、エミリーと常に行動を一緒にしていたわけではないということだ。
「ケイン・ローズウェル財団という単語も無い」
「それがようやくここまで来れたのだから、いいじゃありませんか。ウィリーとは繋がりが無かったんですかね?南里所長、十条兄弟は繋がりがあったんだから、ウィリーもありそうなものなのに」
「シンディのメモリーも調べてみましょう」
「調べるも何も、ウィリアム博士は『そういう団体があることを知っている』程度だから」
「知っていたのかよ!」
「どうして言わなかったんだ?」
「だって、ケイン・ローズウェル財団とKR団がイコールだなんて普通思わないわよ……」
「参ったなぁ……」
「どうでしょう、平賀先生?明日、また吉塚さん宅を訪問して、お話を伺うというのは?」
「自分もそれを考えていました。まさか、逮捕なんてことはないでしょう。引退して何十年も経つようだし……」
「そうですねぇ……」
「あと、それと……」
「えっ?」

[9月27日02:00.富士宮市下条・吉塚家 ???]

 吉塚家の前に現れる何か。
 時刻がちょうど午前2時になると、それは門扉を突き破って中に入ろうとした。
「そこまでだ!」
 侵入者に眩しいライトが当たる。
 それはバージョン4.0。
 待ち構えていたのは敷島達。
「誰の命令で動いているのか、聞かせてもらおう!」
「無駄な抵抗はするんじゃないよ!」
 エミリーとシンディが個体の両脇を掴んだ。
「よく分かりましたね、敷島さん?」
 一緒にいた平賀が目を丸くした。
「簡単な推理ですよ。もうKR団は崩壊したのに、未だに稼働していたロボット犬。そして、タイムリーに警察の……鷲田警視達の動きを妨害してきたバージョン4.0。そしてこうして、ついに吉塚さんを襲おうとしたバージョン4.0。吉塚さんが未だに誰かに命を狙われているのは明らかです。その理由は、吉塚さんが何か重要な情報を握っているから。それをバラされると困る連中でしょう」
「社長!こいつの遠隔操作元が分かったわ!」
「座標を鷲田警視達に送信してやれ。恐らく、東京のどこからかだ」
「了解!」
「……後でロボット犬を壊したお詫びに、もっと役に立つセキュリティロボットでも作って配置しておこう」
 と、平賀は思った。

[同日10:00.富士宮市下条・吉塚家 敷島、平賀、エミリー、シンディ、吉塚広美]

「昨夜は、どうもありがとうございました」
「KR団は色々な悪の組織と繋がっているので、そいつらがやっているということは想像できました。ロボット犬を未だに稼働させているのも、その為だったんですね」
「ええ。引退して25年の経つのにね」
「引退しても、ああいう組織の幹部だったりすると、情報は入って来るものでしょう?」
「ええ」
「昨日の話の続きですが、御本尊についてです」
「あの話ね。十条兄弟は私が折伏して御受誡したんだけど、罪障が強かったのか、伝助さんの方が創価学会に行ったりして大変だったのよ」
「その辺の話は、私らには分からないことですが……」
「レイチェル戦で燃えてしまって、現物が無くなったものだから、尚更でしてね」
「燃えたのはどっち!?」
「分かりません」
「確か、達夫博士が持っている方でしたよ?」
「でしたっけ?」
「何てこと……。達夫さんの持っている方が、御宗門の御本尊なのに……」
「ということは、伝助爺さんの方が偽物?あれ?」
「乱戦状態でしたからねぇ……」
「藤野の家は崩壊しちゃったし……」
「顕正会本部の地下施設も爆発しましたからぁ……」
「あれ?じゃ、両方燃えたんじゃなかったですか?」
「最悪のパターンだったのか」
「偽本尊の裏に、十条兄弟の開発した最強……いや、最凶最悪のロボットの隠し場所が書いてあるって聞いたことがあるわね」
「それってもしかして……バージョン1000とやらでは?」
「どこまで本当だかは分からないわよ。特に伝助さんの場合、『これから作る』ことを、あたかも『今作った』みたいなことを言う人だったから」
「いるんだよなぁ……。そういう爺さん」
「振り出しに戻るって感じですか。でもまあ、自分にとっては姉の死の真相が知れて良かったですがね」
「もし良かったら、塔婆供養させて頂ける?」
「是非、姉に詫びを入れてください」

[同日13:30.静岡県富士宮市内 富士急静岡バス“やきそばエクスプレス”14号車内 敷島、平賀、エミリー、シンディ]

 帰京の足は高速バスを使うことにした。
 新幹線は復旧していたが、別のルートを使いたかったからである。
「これでKR団の脅威は全て無くなったと言えるのでしょうか?」
「恐らくは……。ただ、それと繋がりのあった別の組織は未だに存在しますからね。まだまだですよ」
「バージョン・シリーズの4.0までは作り方が流出していることもあってか、こっちで集計した数と実際の個体数が合わないという点も発生してますからね」
「ええ。自分はやはり、財団をもう1度立ち上げて、テロ組織に立ち向かうことも必要だと思います」
「同感です。差し当たり、あの妖精型ロイドは取り戻したいですね」
「いや、それは別に……」
「帰ったら早いとこ、通常業務に戻りたいですよ。私の本来の仕事は、ボーカロイドのアイドル活動をプロデュースすることなんですから」
「今日もイベントが?」
「昨日からですよ。また井辺君に仕事を押し付けてしまった。早いとこ、引き継いであげないと」

 脅威的なロイドはもういなくなったと思われるが、結局のところ、バージョン1000とやらがどういう存在なのかまでは分からずじまいだった。
 平賀の過去の謎については解けたが、時間的な都合もあって、中途半端な中、帰京せざるを得ない敷島達であった。

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