報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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“新アンドロイドマスター” 「KR団の正体」

2015-11-06 20:23:18 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月26日14:30.天候:晴 日蓮正宗大石寺売店(仲見世商店街)“藤のや” 敷島孝夫、平賀太一、1号機のエミりー、3号機のシンディ、吉塚広美]

 御開扉の終わった吉塚と合流する敷島達。
「あのコ達も入ればいいのに……」
「水しか飲めませんから、あいつら」
 吉塚と敷島は、店舗と駐車場の間の歩道で待つエミリー達を見た。
 昼食を取っていた時より、2人の姉妹は少し警戒感を出していた。
 ややもすると、吉塚がKR団かもしれないということで、だ。
「ラジエーターの水が足りなくなった時ね」
「それで吉塚さん、単刀直入に聞きます。あなたはKR団の関係者ですか?」
 敷島が聞いた。
「ええ、そうよ」
 吉塚はズズズとお茶を啜りながら答えた。
「といっても、もうとっくに引退してるけど……。歳も歳だしね」
「十条博士兄弟や南里所長、ドクター・ウィリーは80代になっても現役でしたが?」
「私も似たようなものよ。今のKR団は、私の知ってる団体ではなくなったみたいね」
「と、言いますと?」
「私がいた頃は、KR団はちゃんとした正式名称を名乗っていたから」
「正式名称?」
「正式名称は『ケイン・ローズウェル財団』。それの略称がKR団なのね」
「財団!?何か、数年前まで存在していた日本アンドロイド研究開発財団を思い出しますなぁ……」
「恐らくその実質的代表者だった十条伝助さんは、ケイン財団を参考にしたと思うわ」
「ということは、十条博士も……」
「家に来てもらえれば分かるけど、その時、私と写っている写真があるわよ。それも兄弟そろって」
「マジですか……」
「私の引退後で、原型が無くなるほどに組織が変わったとはいえ、私の古巣がとんだご迷惑をお掛けしたわね。申し訳無い」
「……被害者のうちの社員の話では、創業者が生きていたらしいです。もっとも、後継者に銃殺されたようですが」
「ケイン代表が?」
「ええ。何か、後継者とは組織の在り方を巡って対立していたようですが……」
「ケイン財団はね……。本当に、ただ純粋に『人類の為のロイドを開発・研究する者達の集まり』という名目で集まっただけのグループから始まったのにね。それがいつしか、フリーメーソンみたいな団体になったと思ったら、今ではもうただのテロ集団よ。嘆かわしいことだわ」
「それでは警察によって潰されても、特に未練はありませんね?」
「ええ」
「日本の警察が、あなたからお話しを伺いたいそうです。今、新幹線の事故でかなり遅れていますが、こちらに向かっています」
「そう……」
「この写真、あなたですね?」
 敷島は白黒写真を見せた。
「懐かしい!これは私が32歳の頃の写真ね。今から、45年も前のことよ」
「45年も前に、もうこんな精巧な妖精型ロイドがいたんですか……」
「ああ、これはプロットよ」
「プロット?」
「そう。今は設計図を作るけど、まずは立体模型を作ることから始めるのがケイン財団のやり方なの。当時、“ピーターパン”を見ていてね、ティンカー・ベルみたいな妖精を作ったら面白いと思ったの」
「平賀先生?」
「……自分の腕ではまだ作れません。一体、どういう構造になっているか興味があります」
「引退後に、その権利は全て財団に奪われてしまったの。何機か作ったんだけど、全部悪い事に使われて……」
 スパイ用途にされたり、自爆テロ用途に使われたりしたらしい。
「それってもしかして……!」
 敷島、何か思い出す。
「だいぶ前、ブラジルのサンパウロに行った時、向こうの極左ゲリラのテロに巻き込まれましてね。向こうの治安当局が突入する前に、既に現場のビルでは爆発が起きていたんです。最初、うちのシンディが突入してきたのかと思ったんですが、今になって考えてみても、タイミングが合わない。テロリストの1人がトチ狂って、『ひゃっはー!黒い妖精だぁ!!』なんて言いながらマシンガン乱射していたんですがね。もしかして……マジな話でした?」
「そう。ブラジルにまで連れて行かれたのね。多分、ケイン財団の誰かがやったのだと思うわ」
「妖精なら小さいし、税関でも『子供用のおもちゃだ』ということにすれば、すんなり通れるでしょう」
 と、平賀。
「何機か量産されていたのか……。そのうちの1機がうちの社員と一緒に脱出して、今、警察にいますよ」
「えっ、そうなの!?」
「是非ともうちの事務所で預かりたいところですが、ケーサツが押収品だと言って聞かないんですよ」
「あなたの無実が晴らせればいいんですが、自分からもお聞きしたいことがあります」
「あなたのお姉さんのことでしょう?」
「姉は自分を庇って代わりに車に跳ねられ、死にました。自分が小学5年生、姉が中学2年生の頃です。自分が成長するにつれて、姉の死の意味を理解しようとしたのですが、当時の参列者名簿を見ると、あなただけ関係が無いんですよ。……本当はあったんですね?」
「ええ。それが、私が財団を引退しようと決めた理由。あなたのお姉さんを轢いた車の運転手はまだ見つかってないわね?」
「……KR団が匿っている?」
「いいえ。『犯人』というは存在しないからよ」
「ん?犯人が存在しない?……なるほど、トカゲの尻尾切りで、組織から消されたんだ」
 敷島がポンと手を叩いた。
「テロ組織のやりそうなことだ」
「違うわよ。言ってしまえば、犯人は車そのもの」
「……は?いや、だって、自動運転の車はまだ研究段階で、そろそろ実現かどうかって騒いでる最中で……」
 敷島は店内のテレビを指さしながら言った。
「財団はね、25年以上も前に既に実験に成功していたの。でもそれを世の中に売り出そうとはせず、ケインは将来有望なはずの子供を殺そうとした」
「自分はまだ小学生で、ロボットの腕は確かに作ったけど、姉ちゃんと両親にしか言ってない……。何でKR団がその時から知っていたんだ?」
「本当に?本当に、ご家族以外の誰にも言わなかった?」
「えっ……と……」

[1988年3月11日 宮城県仙台市若林区木ノ下・木ノ下公園 平賀太一&南里志郎]

 公園内を全速力で走る平賀。
 ある物を追い掛けている。
 それは1枚の紙。
 大きさはA1ほどもある。
 折しも、春一番の強風に煽られ、飛ばされてしまったのだ。
 その紙は電話ボックスに引っ掛かって、ようやく止まった。
 電話ボックスの中では、誰かが電話している。
「……そういうことだ。私は今、公園で待っているから、早いとこ迎えに来てくれ、エミリー」
 電話を切って電話ボックスから出て来た高身長の初老の男。
 白髪の短髪がよく目立つ。
 茶色のスーツに黒いベスト、黒い革靴を履いていた。
「ん、何だこれは……?……むっ!?」
「お、おじさーん!!」
 平賀が息せき切ってやってくる。
「そ、それ……ぼ、僕の……!か……返して!」
「うむ……。キミのお父さん、ロボットの研究でもしているのかい?」
「ち、違うよ!ボクが書いたんだ!」
「はははははっ!ウソを言っちゃイカン!これは精密なロボットの設計図だぞ?見たところ、キミはまだ小学生のようだが、小学生にとても書けるシロモノでは……」
「ホントだよ!もう右腕も作ったんだ!!」
 平賀少年はランドセルの中から、ロボットの右腕を出した。
「こ、これはっ……!?……ダメだよ、お父さんの研究しているモノを持ち出しては……」
「いや、だから、ボクが……!」
「ドクター南里」
「おおっ、エミリー。すぐ近くにおったのか!?」
「公園の・裏手に・いました・が?」
「なにっ!?……土地勘が無いと、すぐこれだからな。なるべく、私から目を放さんようにしてくれ」
「イエス。ドクター南里」
 尚、その時の南里は公衆トイレに行っていた為、エミリーから離れていたそうである。
 で、迷子になったと。
「まあ、とにかく、少年。ロボットに興味を持つのは素晴らしい。もし大きくなっても、まだ興味が強いようなら、私の所まで来なさい。……来れるものならな。はっはっはっ!」
 南里は高らかに笑いながら、公園をあとにした。
 その間、エミリーはずっと強張った表情で平賀を見据えていたという。
 当時のエミリーは無表情というより、そういう緊張した顔でいることが多かったらしい。
 その時から既に南里自身が命を狙われている身であったからだろう。
 例え子供でも、油断できないと判断していたと思われる。
 今では微笑とはいえ、だいぶ柔和な顔付きになったというのに……。

[2015年9月26日15:00.大石寺売店“藤のや” 平賀太一、敷島孝夫、吉塚広美]

「南里先生が……?」
「口では信じていなかったけど、心の中では『まさか、もしや』と思ったのね。私の所に連絡してきたわ。私も俄かには信じられなかったから、ケインに相談してみたの。どうせ相談したところで、季節外れのジョークだと鼻にも掛けないと思ってた。だけど意外にも、信用したのよ」
「えっ?」
「意外と真顔で、『末恐ろしい子供が日本にいるとは……』なんてね。どうして南里さんも私も信じなかったのに、ケインが信じてしまったのかは分からない。その半年後でしょ?あの事件が起きたのは……」
 夏休みに起きた事件であった。
 半年間、恐らくKR団は平賀のことについて裏を取ろうとしていたのだろう。
 そして裏が取れたので、平賀がKR団に敵対しないうちに、子供のうちに殺そうとしたのだろうと吉塚は言った。
「そ、そんな……。自分のせいで……」
「あなたのせいじゃないわ。悪いのはケインであり、組織であり、そして私。私がケインに言わなければ、あんなことには……」
「平賀先生。あと、もう1つ聞きたいことがあります。御本尊についてです」
「御本尊様がどうかしたの?」
「実は十条兄弟が血みどろの兄弟ゲンカをした理由に、御本尊があるみたいなんです。それについて、同じ信者のあなたに聞きたいと……」
 と、その時、何やら外が騒がしくなった。
「何だ?」
 窓の外を見ると、エミリーとシンディが揉めていた。
 いや、姉妹ゲンカではなくて、ある人物達と口論になっていたのだった。

 その人物達とは……。

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