報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「菊川に帰宅」

2023-10-16 14:01:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月20日16時19分 天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→愛原家]

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 リサは自宅の最寄り駅に到着した。
 ここで電車を降り、改札口へ向かう。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 電車は短い発車メロディの後で、すぐにドアを閉め、発車していった。
 エスカレーターに向かうが、電車が巻き起こす強風によって、肩まで伸ばしているリサの髪が靡く。

 リサ「!」

 エスカレーターに乗ろうとしたら、階段を下りて来る他校の生徒とすれ違った。
 それはリサと同じ女子であったが、リサと同様、肩まで伸ばした髪の毛先の色が水色に染まっていた。
 リサの場合は、毛先がオレンジ色に染まっている。
 これはわざと染めているのではなく、変化の証として、髪の色がそうなってしまっているだけ。
 黒く染めても、またすぐに戻ってしまう。
 それはリサの爪や牙と同じ。
 なので、これも体質の都合ということで、学校側に許可を取っている。
 とはいえ、似たような髪色の者が近くにいると、少し気になる。
 もちろん、その女子高生からは人間の匂いしかしなかった為、BOWの類ではないだろう。
 1人でも食人すれば、その体臭は誤魔化せない。

 リサ(ヒヤッとするなぁ……)

 毛先の色は体質によって変わるようで、さっきの女子のように水色だったこともあるし、赤だったこともある。
 今はオレンジ。
 駅の外に出ると、寒風がリサを出迎える。
 ほとんどの人々はコートやジャンパーなどの防寒着を着ているが、リサだけは着ていない。
 もっとも、ブレザーの下には学校指定のニットのベストを着けて、首にはネックウォーマーを着けているのだが。
 BOWは体温が高いので、東京の冬の寒さくらいでは、特にこれ以上、着込む必要は無い。
 正直、ブレザーを脱いでもいいのだが、学校の制服なので仕方なく着ている感じ。

 リサ「ただいま」

 自宅兼事務所に辿り着く。
 その前に、道路を挟んで向かい側にあるマンションの敷地内にある自販機でジュースを買った。
 恐らくマンションの住民向けだろうが、特に通りとは隔たれていないし、値段も安いので、リサはここでジュースを買っていた。
 家に入る前に、インターホンを押す。
 すると、パールが応答した。
 どうやら今は来客がいるので、事務所には入らず、そのまま家に向かえということらしい。
 リサは中に入ると、ガレージを通ってエレベーターに向かった。
 やや古いエレベーターのインジゲーター。
 それでも、それはデジタル表示になっている。
 それによると、エレベーターは2階に止まっているようだ。
 来客がエレベーターで2階に向かったのだろうか。
 リサはそれを1階まで呼んだ。
 普段は3階と4階には止まらない設定にされているエレベーターだが、今は行けるようにされている。
 リサは4階のボタンを押すと、ドアを閉めた。

 リサ(宿題、先に片付けるか……)

 当然の事ながら、エレベーターは途中どこにも止まることはなく、4階へ直行した。
 4人乗りの小型エレベーターで、動きは遅い。
 前のマンションや事務所と違い、エレベーター機械室が無いので、油圧式と呼ばれる、ロープや滑車の要らないタイプなのだろう。
 かつて埼玉の我那覇(旧姓、斉藤)絵恋が住んでいた家にあったホームエレベーターも同じ機構だと思われるが、家庭用の場合、まるで便器の無いトイレの空間が上下移動しているような感覚だが、ここのエレベーターは違う。
 業務用のそれと全く同じ。
 業務用(乗用)としては最も小さいサイズの4人乗りだが、家庭的な雰囲気は全く無く、それこそ前のマンションや事務所のエレベーターに乗っているような感覚である。
 それが居住区たる3階や4階の、生活空間が目の前に広がるような場所でドアが開くと、物凄くギャップを感じる。

 リサ(ここはわたしの家。侵入者は排除。ですよね?オリジナル大先輩)

 リサは誰もいない空間に向かって、アメリカのリサ・トレヴァーに心の中で言った。
 Gウィルスの素を創り出したBOWとして、日本のリサ・トレヴァー達にも特別視されていた。
 今や、オリジナルとは全く違う存在となっているわけだが。

 リサ(眠い……。さっさと宿題終わらせて、一眠りするか……)

 リサは部屋に着いたら、さっさと制服から体操服ブルマに着替えるのだが、今日はそのまま机に向かった。
 場合によっては真面目に勉強するコだと思われるが、当のリサにとっては、ただ単に与えられた課題を片付けているだけに過ぎず、むしろ他の人間のコと同じ過ごし方をすることで、自分も人間に戻る努力をしているつもりなのである。
 もっとも現実は厳しく、今の科学力では、完全に人間に戻すことはできないと言われてしまった。
 だとしたら、自分をここまで化け物にした科学力は何なのかということになるのだが。
 少なくとも今の技術でできるのは、これ以上化け物にはしないことくらいであるそうだ。
 第2形態以降の変化ができないことを意味するのか、あるいは第1形態のことを言ってるのか……。

 リサ(終わった……)

 即行で宿題を終わらせたリサは、制服がシワにならないよう、ブレザーやベスト、スカートを脱ぐと、そのままベッドの上に倒れ込んだ。

 リサ(夕ご飯まで一眠り……)

[同日18時10分 天候:曇 愛原家4階⇔3階]

 プーッ!という甲高いブザーがリサの部屋内に響き渡る。

 リサ「!!!」

 リサはそれで飛び起きた。
 時計を見ると、18時をとっくに過ぎていた。
 寝坊したようだ。
 スマホを見ると、愛原からの着信がいくつかある。
 電車に乗る時のマナーモードの状態のままにしてしまったようだ。

 リサ「ヤバい!ヤバい!」

 リサは急いで部屋を出ると、エレベーターに飛び乗った。

 リサ「そ、そうだ。ブラウスは洗濯するんだった!」

 エレベーターに乗りながら、リサは寝ていてシワになったブラウスを脱いだ。
 そして3階に着き、ダイニングに行く前に、バスルームにある洗濯カゴにそれを放り込む。

 リサ「ゴメナサーイ!寝坊しちゃった!」
 愛原「上を着てこい!」

 ブラウスを脱いだことで、リサの恰好は下は体育用の緑のブルマ、上は黒いスポブラといった状態だった。

 リサ「はーい!」

 愛原に怒られ、再びエレベーターに飛び乗ったのだった。

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