報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 栗原・栗駒→仙台・泉

2021-07-14 19:55:30 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月29日15:00.天候:晴 宮城県栗原市某所 稲生家]

 救出した『青い目の人形』の名前は、奇しくもマリアンナと言った。
 人形そのものが今頃見つかること自体も珍しいのだが、附属していたパスポートまで現存しているのは非常に稀有なことだった。
 だがおかげで、この人形の出自が証明されたのである。
 マリアは何十年もの間、暗い蔵の中の金庫に閉じ込められていた人形を洗うと、ボロボロになった服も着替えさせてあげた。
 代わりの服は用意していなかったので、代用としてミク人形の着替え用のメイド服を着せておいた。
 幸いにもミク人形やハク人形とサイズが同じであったので、代わりの服も何とか着ることができた。

 稲生俊彦:「本当にいいのかい?もっとゆっぐりしでっでいいんだよ?」
 稲生勇太:「こちらこそ、蔵の整理を手伝わなくてもいいんですか?」
 稲生政代:「いいよいいよ。蔵の中がきれいになっただけでも凄いことだし」

 用が済んだ勇太とマリアは、この家に長居は無用となった。

 稲生祐介:「姉ちゃんも泊まって行ったらいいのに……」
 稲生理恵:「明日は私も仕事だから帰るわ。この人達、ついでに仙台まで乗せて帰る」
 勇太:「本当にすいません」
 理恵:「いいよいいよ。1人でボーッと帰るよりは」

 勇太とマリアは理恵のワゴンRのリアシートに乗った。

 勇太:「理恵さんは仙台市のどこに住んでるの?」
 理恵:「泉区。だから、泉中央駅でいい?」
 勇太:「全然OKです。ありがとうございます」

 勇太は窓を開けて、見送る稲生家の面々に手を振った。

 理恵:「それじゃ、行きますか。しゅっぱーつ!」

 車が走り出した。
 まずは県道4号線を東進する。

 理恵:「今日は仙台に泊まるの?」
 勇太:「そのつもりです。もうホテルは取ってあるんで……」
 理恵:「ふーん……。一緒の部屋?」
 勇太:「い、いや、シングル別々で……」
 理恵:「なーんだ。結構仲良さそうだから、もうそういう関係なんだと思った」
 マリア:「そういう関係ですよ」
 理恵:「おっとォ!?」
 マリア:「でも今回は『仕事』で来たので、部屋は別です」
 理恵:「フム。仕事とプライベートは完全に分けて考えるか。さすがはイギリス人。ていうか……、『青い目の人形』ってアメリカ製でしょ?イギリス人が何か関係あるの?」
 マリア:「私は人形遣いです。人形の言葉や気持ちが分かります。人形が自分が今置かれている立場から助けて欲しいというメッセージを受け取ったので、助けに来ただけです」
 理恵:「フーム……趣深い。でも今、長野県に住んでるんでしょ?よくこんな遠い宮城まで、人形のSOSが聞こえたね?」
 マリア:「東京で発見したこのコの仲間から聞いたんです」
 理恵:「ああ。東京中央学園の。あれはヤバいよねー」
 マリア:「ヤバい、とは?」
 理恵:「いや、私は信じてなかったんだけど、あの人形、色々と変な噂があったからねー」
 勇太:「理恵さんも東京中央学園のOGなんだ」
 マリア:「そうなの!」
 勇太:「それで僕が東京の高校に進学しようとした時、東京中央学園を勧めてくれたんだ。大学まで東京だったのに、卒業してから戻って来るなんて……」
 理恵:「東京は都会過ぎるし、実家は田舎過ぎる。ちょうどいいのが仙台だと思って」
 勇太:「だったら、さいたま市でも良かったじゃん」
 理恵:「先に就職先の内定くれたのが、仙台の会社だったの」
 勇太:「ホントかなぁ……。父さんが、『さいたま市の会社も受ければ良かったのに』って言ってたよ?」
 理恵:「っ……!叔父さん、余計なこと言って……!」

[同日15:30.天候:晴 宮城県栗原市志波姫堀口 志波姫PA]

 県道4号線を東進し、一旦は国道4号線に合流して北上する。
 県道4号線との重複区間である。
 県道もそうだが、この国道も田園地帯の中を走行する。
 車線も県道よりは1車線分の幅は広いものの2車線であり、とてもこれだけ見ると、この国道が東京まで繋がっているようには見えない。
 しばらくこの区間を北上すると、再び県道4号線が東方向に別れる。
 その道を再び東進すると、東北自動車道の若柳金成インターと交差する。
 そこから東北道に入った。

 理恵:「ハーイ、ここでトイレ&煙草休憩~」

 車は高速に入って最初のパーキングに入った。

 勇太:「ん?タバコ?」
 理恵:「あら?アンタ達は吸わないの?」
 勇太:「僕は吸わないよ」
 マリア:「Me too.」
 理恵:「おー、健康的。じゃ、私だけ一服するねー」

 理恵はアイコスを手にした。

 マリア:(何気にエレーナも電子タバコは吸うんだよな……)

 もっとも、あまり人前では吸わない。

 勇太:「静かだな……」

 志波姫PAは小規模なもので、設備もトイレや自動販売機くらいしか無い場所であった。
 その為、利用者は少ない。
 それでもトイレはリニューアルされており、小さいながらもきれいなものだった。

 勇太:「何か飲む?」
 マリア:「それじゃ……これ」

 トイレを済ませた後で、今度は自動販売機まで行く。
 マリアは紅茶を指さした。

 勇太:「はい」

 勇太は自分の分も一緒に買った。

 勇太:「理恵さんも何か飲みます?」
 理恵:「気が利くね。でも、私はいいや。もう自分で買ったから」

 理恵は缶コーヒーを見せた。

 理恵:「静かな所だからね。ただ単に休憩するだけなら、こういう所の方がいいんだ。だけど、飲み物は買えても、食べ物は手に入らないからね。お腹が空いたら、もっと先のサービスエリアに行かないとね」
 勇太:「別に、お腹は空いてないからいいや」

[同日16:35.天候:晴 宮城県仙台市泉区泉中央地区内 ガソリンスタンド]

 車は東北自動車道を泉ICで降りた。
 それから国道4号線を南下する。
 仙台市内に入ると、国道も片側2車線となっている。
 もっと南下すれば片側3車線になるのだが、そうなる前に車は県道22号線への立体交差部へと入る。
 これは国道4号線と県道22号線との交差点を右折せずに、そのまま立体交差で県道に合流できるというもの。
 県道22号線に合流すると、半地下構造の将監トンネルを走行する。
 トンネルと言っても、半地下ということもあって天井の一部が開いており、昼間はそこから明かりが入って来る為、照明の必要性はあまり無い。
 その将監トンネルを潜り抜けると、泉区の中心部に出る。

 理恵:「駅に行く前に、ガソリンスタンド寄っていい?」
 勇太:「もちろん、大丈夫です。乗せてくれたお礼に、ガソリン代出しますよ」
 マリア:「カードならあります」
 理恵:「プラチナカードって……何でそんなもの持ってるの?」
 マリア:「私の師匠から借りたものです」
 勇太:「僕達の先生、世界的に有名な占い師なんだよ」

 魔道師なのだが、表の顔は占い師である。

 理恵:「へえ、そうなんだ。今度は私も占ってもらいたいもんだね。あ、でも、見料高いかな?」
 勇太:「あー、それはそうかも……」
 マリア:「値段は相手を見て決める。理恵さんは……いくらになるんだろう」
 理恵:「さすがハードル高そうだね。勇太に見てもらおう」
 勇太:「いや、僕はまだ修行中なもんで……」
 理恵:「はは、冗談冗談」

 車は泉中央駅近くのガソリンスタンドに入った。

 理恵:「レギュラー満タンで」
 店員:「はい、ありがとうございます!」
 マリア:「ちょっとトイレ行ってくる」
 勇太:「行ってらっしゃい。理恵さん、でも、アレだよ?別に、プラチナカード使えるんだったら使って」
 理恵:「軽で来て、プラチナカードは思いっ切り怪しくない?レクサス乗り回してる人でも、プラチナカード持ってるかどうか……」
 勇太:「大丈夫。これまでだって、このカードで東横インとか泊まったから」
 理恵:「マジで?」

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