[9月4日12:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
宮城での調査を終え、私達はまたちょこちょこ小さな仕事を受けている。
それも全て終えてしまい、今日はヒマだ。
愛原:「お昼の時間だな。じゃあ、昼休みにしよう」
私が事務所内にいる高橋と高野君に言った時だった。
高野君の机の上の電話が鳴った。
高野芽衣子:「お電話ありがとうございます。愛原学探偵事務所でございます」
ボス:「ああ、私だ」
高野:「ボス。いつもお世話になっております。今日はどんな仕事の斡旋ですか?」
ボス:「あいにくと仕事の斡旋ではない。キミ達の仕事が実を結んだという所を是非とも見てもらいたい」
高野:「と、言いますと?」
ボス:「テレビを点けてみてほしい」
高野:「テレビですか?」
ボス:「ああ。今、民放ではワイドショーをやっている時間だな」
愛原:「テレビか?まあ、『ひるおび』でも観るか」
私はテレビのリモコンを取って、テレビを点けてみた。
〔「……えー、今、警察関係者が続々と入って行くところです」〕
愛原:「これは?」
ボス:「キミ達が突き止めた旧・日本アンブレラの元代表取締役社長、五十嵐皓貴氏の実家の薬店だ。本人達はまだ仙台の病院に入院中だが、彼らにも家族はいる。警察が令状を取れば、捜査は可能だ」
愛原:「そりゃ、国家権力の発動ですからね」
〔「今やバイオハザードの代名詞となり、今だにその脅威が世界中に蔓延る中、日本拠点の最高責任者だった五十嵐容疑者の自宅に家宅捜索が入りました」〕
ボス:「愛原君達の活躍が、ついに逃げおおせていた元最高責任者の尻に火を点けることができたのだよ」
〔「……尚、五十嵐容疑者は宮城県仙台市内におきまして、地下鉄の事故に巻き込まれ、現在も尚、市内の病院に入院中です。警察では容疑者の回復を待って、逮捕に踏み切る方針です」〕
ボス:「今回令状が発行されたのは、法人としての旧・日本アンブレラの罪状を追及したものらしい。五十嵐元社長個人の罪状については、更にそこから突き詰められることになるだろう」
愛原:「もうその法人は消滅しているんですが、消滅してハイ終了というわけではないんですね」
ボス:「それを言うなら、詐欺罪を隠蔽する為に会社を計画倒産させれば罪が追及されないということになってしまう。そんなバカな話があるまい。もちろん、旧・日本アンブレラは計画倒産したものではなく、親会社のアンブレラ・コーポレーション・インターナショナルの崩壊の煽りを受けたものではあるが、五十嵐元社長からすれば、自分に捜査の手が来る前に会社を解散させたという見方もある。キミはそれでいいと思うかい?」
愛原:「いや、思いませんよ」
ボス:「そうだろうそうだろう。近々、キミ達に支払われる報酬は大きいものだろう。誇りに思うがいい」
愛原:「ボス」
ボス:「何かね?礼なら、更に仕事で返してくれれば良い」
愛原:「それもあるんですけど、もしかして、世界探偵協会って、世界バイオテロ対策委員会に加盟していたりします?」
ボス:「おお、さすがに気づいたか」
愛原:「そしてあなたは、生粋の協会関係者ではなく、むしろそっちの委員会関係者なのでは?」
ボス:「その答えについては、『どうだろう』とさせて頂く」
愛原:「否定も肯定もしないというわけですか」
ボス:「もしこの物語が真のエンディングを迎える頃、私は直接キミの前に現れるだろう」
愛原:「またメタな発言を……」
ボス:「黒幕とはそういう存在だ」
愛原:「ラスボスとして現れてくれないことを祈りますよ。というか、現れた時に読者の皆さんに『ボスって誰?』『サントリーの缶コーヒーだろ』的なことになりませんように」
ボス:「大きなお世話だ!」
愛原:「それで……話は変わりますけど、ボス的には、今後どのような展開が予想されますか?」
ボス:「そうだな……。もちろん五十嵐親子が逮捕されることはキミも予想済みだろうが、私的には、意外な関係者に捜査の手が及ぶのではないかと思われる」
あ、因みに今更ながら、テレビを点けたタイミングでボスの電話は私が替わっているので、念の為。
愛原:「意外な関係者ですか」
ボス:「それはキミ達の知っている人間かもしれないし、或いは全く別の人間かもしれない。私は後者の確率が若干高いように思える」
愛原:「どうしてですか?」
ボス:「話の壮大さに対して、登場人物が少な過ぎるからだ。恐らく、キミの周りにいる確率は低いと思われる。もしそうだったら、とっくに警察が逮捕しているだろう」
愛原:「なるほど。……ボスがうちの事務所の経営者になった方がいいかもしれませんね?」
ボス:「キミね、一応私はキミに仕事を回してやる側だからな?」
愛原:「そうでした。リサの出生の秘密が分かるといいですね」
ボス:「恐らく近いうち、『デイライト』の者がキミに話を持ってくるだろう。いや、また捜査の段階だから無理か?」
愛原:「はあ……」
ボスとの話はその辺りで終わった。
[9月9日12:00.天候:曇 愛原学探偵事務所]
話はまた急展開を迎えた。
〔「こちら埼玉県○○市にあります児童養護施設“加護の園”です。御覧ください。今、続々と警察関係者が中に入って行きます」〕
私は事務所のテレビで、その捜査の様子を見ていた。
〔「こちらの児童養護施設“加護の園”は、宗教法人“天長会”が運営する施設で、かつてアンブレラ・コーポレーション・ジャパン、通称『日本アンブレラ』から多額の寄付を受けていた施設でした」〕
それまでの捜査結果から、どうやらこの孤児院が旧・日本アンブレラに、入所していた子供達を『売っていた』というのである。
旧・日本アンブレラからは名目上『運営資金の寄付』ということにし、子供達に対しては、『会社の偉い人から養子にもらわれる』ということで通していたらしい。
善場:「確たる証拠はこれから判明するでしょうが、高い確率で、愛原リサがここに入所していた可能性が高くなりました。押収できればの話ですが、当時の資料が見つかれば、愛原リサの本名なども判明すると思います」
私は電話で善場主任から話を聞いていた。
愛原:「まさか、本当にこんなことが……」
善場:「アメリカでは実際にあった話です。ラクーン市にあった児童養護施設から、アメリカのアンブレラが子供達を『実験体』として引き取っていたことが判明しています。日本アンブレラが在りし頃から、『社会貢献』と称して児童養護施設や老人福祉施設などに寄付をしていたことは知られていましたが、やはり悪用していたようです」
今回それが判明したのは、そのうちの1つだったというわけだ。
宗教法人が運営している所であれば、多少変な所があっても、『宗教だから』という理屈を世間には通せるということだ。
ましてや、新興宗教ならカネが欲しいだろうからな。
愛原:「すると、リサの秘密が分かったら……」
善場:「ええ。いの1番にお教えしましょう。『リサを人間に戻す』プラン、大きく前進しましたね」
具体的な方法はまだ決まっていないものの、まずは『人間だった頃のリサってどんな子だった?』というのが分からなければ、戻すも何も無いということだな。
愛原:「ありがとうございます!」
私はまるで自分のことのように嬉しかった。
これから祝杯を挙げたいところだ。
その気持ちを善場主任は察したのか、こんなことを言って来た。
善場:「御礼を申し上げるのはこちらです。愛原所長の協力が無ければ、ここまで来れなかったと思います。祝杯は、もう少し先延ばしにするといいでしょう。リサの秘密が分かってからでいいと思います」
愛原:「それもそうですね」
この頃には五十嵐親子には逮捕状が出され、先に息子の方が逮捕された。
罪状はBOW(ハンターやタイラントなど)をアメリカから密輸入した容疑である。
肝心の元社長はケガの回復が遅い為、後回しにされることとなった。
しかし、逮捕状は既に出ているとのこと。
あとはリサのことだな。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
宮城での調査を終え、私達はまたちょこちょこ小さな仕事を受けている。
それも全て終えてしまい、今日はヒマだ。
愛原:「お昼の時間だな。じゃあ、昼休みにしよう」
私が事務所内にいる高橋と高野君に言った時だった。
高野君の机の上の電話が鳴った。
高野芽衣子:「お電話ありがとうございます。愛原学探偵事務所でございます」
ボス:「ああ、私だ」
高野:「ボス。いつもお世話になっております。今日はどんな仕事の斡旋ですか?」
ボス:「あいにくと仕事の斡旋ではない。キミ達の仕事が実を結んだという所を是非とも見てもらいたい」
高野:「と、言いますと?」
ボス:「テレビを点けてみてほしい」
高野:「テレビですか?」
ボス:「ああ。今、民放ではワイドショーをやっている時間だな」
愛原:「テレビか?まあ、『ひるおび』でも観るか」
私はテレビのリモコンを取って、テレビを点けてみた。
〔「……えー、今、警察関係者が続々と入って行くところです」〕
愛原:「これは?」
ボス:「キミ達が突き止めた旧・日本アンブレラの元代表取締役社長、五十嵐皓貴氏の実家の薬店だ。本人達はまだ仙台の病院に入院中だが、彼らにも家族はいる。警察が令状を取れば、捜査は可能だ」
愛原:「そりゃ、国家権力の発動ですからね」
〔「今やバイオハザードの代名詞となり、今だにその脅威が世界中に蔓延る中、日本拠点の最高責任者だった五十嵐容疑者の自宅に家宅捜索が入りました」〕
ボス:「愛原君達の活躍が、ついに逃げおおせていた元最高責任者の尻に火を点けることができたのだよ」
〔「……尚、五十嵐容疑者は宮城県仙台市内におきまして、地下鉄の事故に巻き込まれ、現在も尚、市内の病院に入院中です。警察では容疑者の回復を待って、逮捕に踏み切る方針です」〕
ボス:「今回令状が発行されたのは、法人としての旧・日本アンブレラの罪状を追及したものらしい。五十嵐元社長個人の罪状については、更にそこから突き詰められることになるだろう」
愛原:「もうその法人は消滅しているんですが、消滅してハイ終了というわけではないんですね」
ボス:「それを言うなら、詐欺罪を隠蔽する為に会社を計画倒産させれば罪が追及されないということになってしまう。そんなバカな話があるまい。もちろん、旧・日本アンブレラは計画倒産したものではなく、親会社のアンブレラ・コーポレーション・インターナショナルの崩壊の煽りを受けたものではあるが、五十嵐元社長からすれば、自分に捜査の手が来る前に会社を解散させたという見方もある。キミはそれでいいと思うかい?」
愛原:「いや、思いませんよ」
ボス:「そうだろうそうだろう。近々、キミ達に支払われる報酬は大きいものだろう。誇りに思うがいい」
愛原:「ボス」
ボス:「何かね?礼なら、更に仕事で返してくれれば良い」
愛原:「それもあるんですけど、もしかして、世界探偵協会って、世界バイオテロ対策委員会に加盟していたりします?」
ボス:「おお、さすがに気づいたか」
愛原:「そしてあなたは、生粋の協会関係者ではなく、むしろそっちの委員会関係者なのでは?」
ボス:「その答えについては、『どうだろう』とさせて頂く」
愛原:「否定も肯定もしないというわけですか」
ボス:「もしこの物語が真のエンディングを迎える頃、私は直接キミの前に現れるだろう」
愛原:「またメタな発言を……」
ボス:「黒幕とはそういう存在だ」
愛原:「ラスボスとして現れてくれないことを祈りますよ。というか、現れた時に読者の皆さんに『ボスって誰?』『サントリーの缶コーヒーだろ』的なことになりませんように」
ボス:「大きなお世話だ!」
愛原:「それで……話は変わりますけど、ボス的には、今後どのような展開が予想されますか?」
ボス:「そうだな……。もちろん五十嵐親子が逮捕されることはキミも予想済みだろうが、私的には、意外な関係者に捜査の手が及ぶのではないかと思われる」
あ、因みに今更ながら、テレビを点けたタイミングでボスの電話は私が替わっているので、念の為。
愛原:「意外な関係者ですか」
ボス:「それはキミ達の知っている人間かもしれないし、或いは全く別の人間かもしれない。私は後者の確率が若干高いように思える」
愛原:「どうしてですか?」
ボス:「話の壮大さに対して、登場人物が少な過ぎるからだ。恐らく、キミの周りにいる確率は低いと思われる。もしそうだったら、とっくに警察が逮捕しているだろう」
愛原:「なるほど。……ボスがうちの事務所の経営者になった方がいいかもしれませんね?」
ボス:「キミね、一応私はキミに仕事を回してやる側だからな?」
愛原:「そうでした。リサの出生の秘密が分かるといいですね」
ボス:「恐らく近いうち、『デイライト』の者がキミに話を持ってくるだろう。いや、また捜査の段階だから無理か?」
愛原:「はあ……」
ボスとの話はその辺りで終わった。
[9月9日12:00.天候:曇 愛原学探偵事務所]
話はまた急展開を迎えた。
〔「こちら埼玉県○○市にあります児童養護施設“加護の園”です。御覧ください。今、続々と警察関係者が中に入って行きます」〕
私は事務所のテレビで、その捜査の様子を見ていた。
〔「こちらの児童養護施設“加護の園”は、宗教法人“天長会”が運営する施設で、かつてアンブレラ・コーポレーション・ジャパン、通称『日本アンブレラ』から多額の寄付を受けていた施設でした」〕
それまでの捜査結果から、どうやらこの孤児院が旧・日本アンブレラに、入所していた子供達を『売っていた』というのである。
旧・日本アンブレラからは名目上『運営資金の寄付』ということにし、子供達に対しては、『会社の偉い人から養子にもらわれる』ということで通していたらしい。
善場:「確たる証拠はこれから判明するでしょうが、高い確率で、愛原リサがここに入所していた可能性が高くなりました。押収できればの話ですが、当時の資料が見つかれば、愛原リサの本名なども判明すると思います」
私は電話で善場主任から話を聞いていた。
愛原:「まさか、本当にこんなことが……」
善場:「アメリカでは実際にあった話です。ラクーン市にあった児童養護施設から、アメリカのアンブレラが子供達を『実験体』として引き取っていたことが判明しています。日本アンブレラが在りし頃から、『社会貢献』と称して児童養護施設や老人福祉施設などに寄付をしていたことは知られていましたが、やはり悪用していたようです」
今回それが判明したのは、そのうちの1つだったというわけだ。
宗教法人が運営している所であれば、多少変な所があっても、『宗教だから』という理屈を世間には通せるということだ。
ましてや、新興宗教ならカネが欲しいだろうからな。
愛原:「すると、リサの秘密が分かったら……」
善場:「ええ。いの1番にお教えしましょう。『リサを人間に戻す』プラン、大きく前進しましたね」
具体的な方法はまだ決まっていないものの、まずは『人間だった頃のリサってどんな子だった?』というのが分からなければ、戻すも何も無いということだな。
愛原:「ありがとうございます!」
私はまるで自分のことのように嬉しかった。
これから祝杯を挙げたいところだ。
その気持ちを善場主任は察したのか、こんなことを言って来た。
善場:「御礼を申し上げるのはこちらです。愛原所長の協力が無ければ、ここまで来れなかったと思います。祝杯は、もう少し先延ばしにするといいでしょう。リサの秘密が分かってからでいいと思います」
愛原:「それもそうですね」
この頃には五十嵐親子には逮捕状が出され、先に息子の方が逮捕された。
罪状はBOW(ハンターやタイラントなど)をアメリカから密輸入した容疑である。
肝心の元社長はケガの回復が遅い為、後回しにされることとなった。
しかし、逮捕状は既に出ているとのこと。
あとはリサのことだな。
ハッピーエンドで終わった後は、一転して少し暗めの話になります。
それまでは愛原学を主人公とした探偵物語でしたが、今度はリサを主人公にした学園物語をやろうかと思います。
ホラーやグロ展開を考えていますので、『学校であった怖い話』や『グロい話』が苦手な方は御注意の程を……。
リサにあっては人間に戻す計画が発動されたものの、現況はやはり『人間のフリをしている化け物』なのだという話です。