[5月7日16:30.天候:晴 アルカディアシティ1番街 1番街駅]
アルカディアシティでも1番賑わう駅構内をイリーナ組は歩いている。
その前を先導するは、着物に袴を穿いた少年が2人。
人間ではない。
1人は銀色の長い髪を沖田総司のように後ろに束ねており、もう1人は茶髪を短く切っている。
そして、耳。
人間のように短く丸くなく、長くて先端が尖っている。
俗に言う、『エルフ耳』である。
しかし、彼らはエルフではない。
妖狐の第一形態である。
更に妖力を解放し、変化をするとエルフ耳が消え、代わりに頭に狐耳が生える。
そこでようやく妖狐だと分かるのだ。
つまり、彼らは妖力を抑えて、一応あれでも正体を隠しているということだ。
これは人間界にいた威吹もそうであった。
稲生達を先導する妖狐2人は、1番街駅東口商店街で偶然会った。
銀髪の方が稲生を知っており、声を掛けて来たのが始まりである。
あいにくと稲生は知らなかったが。
威吹は今や家族持ち、弟子持ちである。
住み込みの弟子が1人いるが、どうやら彼らもその後に弟子入りしたらしく、つまり、弟子の数が増えているということだ。
彼らの話では、結構な大所帯になったということだが、威吹は威吹で新たな流派を立ち上げたのだろうか。
〔「4番線、環状線外回り、各駅停車の到着です」〕
威吹の住む町はサウスエンド、日本語で南端村という所である。
文字通り、アルカディアシティの南端に位置する場所だ。
もっとも、狭義におけるアルカディアシティが城壁の内側を指すのに対し、サウスエンドは外にある為、厳密にはアルカディアシティではない。
やってきたのはスカイブルーの103系。
時折、急行運転も行う高架鉄道だが、発車標を見るに、しばらく各駅停車しか無いようだ。
銀髪:「どうぞ、この電車で行けますから」
稲生:「ありがとう」
マリア:「というか、知ってる」
先頭車に乗り込むと、車内は人間の方が多かった。
アルカディアメトロの高架鉄道は明るい場所を走るからか、魔族よりも人間の乗員・乗客が多い。
また、地下鉄と違って1番後ろに車掌が乗務するツーマン運転である。
同じ鉄道会社なのに、運行形態がとても違う。
銀髪:「おい、威吹先生に連絡したか?」
茶髪:「もちろん!」
稲生:「まさか、ここに来て威吹に会えるなんてねぇ……」
銀髪:「威吹先生も稲生殿との再会を楽しみにしておられます」
茶髪:「さすが、あの南光坊天海僧正の生まれ変わりとされるだけあって、凄い霊力ですね!」
稲生:「やめてくれよ。僕は日蓮正宗の信徒だよ。天台宗の僧侶じゃない」
茶髪:「も、申し訳ありません!」
3人の魔道士達は連結器横の3人席に座ったが、妖狐の少年2人はその横と前に立って、がっちりガードしている。
まるで、サウスエンド駅に着くまで逃がさないといった感じに。
〔「お待たせ致しました。環状線普通電車外回り、まもなく発車致します」〕
地下鉄は昔の営団地下鉄のようなブザーがホームに鳴り響いていたが、こちらは電子電鈴と呼ばれるベルである。
微かに最後尾にいる車掌が笛を吹く音が聞こえる。
そして、ドアが閉まるとすぐに発車した。
どうやらJR東日本のように、車掌からの発車合図のブザーは省略されているらしい(新幹線はともかく、何故か気動車も除く)。
〔「環状線外回り、サウスエンド方面行きの普通電車です。次は1番街南、1番街南、お出口は右側です。運転士は山田、車掌は安倍です。サウスエンドまでご案内致します。次は、1番街南です」〕
ノリはどちらかというと東京の山手線というより、大阪環状線に近い。
何しろ、頑なに各駅停車しか走らせない山手線と違い、大阪環状線はそれだけでなく、快速から特急まで走っている。
稲生:「窓が開いて扇風機回ってるけど、別に新型コロナウィルス関係無いよね?」
銀髪:「……と、思いますが」
103系みたいな旧型電車の特徴は、天井に設置された扇風機。
現在ならエアコンの送風か、或いは空気清浄機であろう。
しかし、常春の国アルカディアにはそれは無く、扇風機が回っている。
真ん中に座るマリアの金髪や、妖狐の銀髪少年の髪が扇風機の風が当たる度に揺れる。
イリーナ:「私の占い、当たったわね」
イリーナは妖狐達には内緒話なのか、自動通訳魔法具をOFFにして英語で話しかけた。
マリア:「あのバザールを歩いていれば、新たな展開が訪れるってヤツですか?」
イリーナ:「サウスエンド。どうやら、新しいクエストができそうじゃないの。宿泊先もそこにすれば安心ね」
マリア:「はあ……。ぶっちゃけ、シルバーフォックス達に囲まれた所で寝泊まりするのはどうかと……」
イリーナ:「勇太君がいるから、邪険にはされないわよ、きっと」
稲生:「大丈夫だと思います」
ところが意外にも、銀髪の少年が英語を話して来た。
銀髪:「威吹先生からは、皆さんを丁重にお連れするように言われております。だから、どうか御心配無く」
稲生:「! 英語上手いね!?」
銀髪:「この国の第2公用語ですから」
茶髪:「いやいや、上手く話せるのオマエくらいだから」
稲生:「何だ、そうか」
茶髪:「逆に英語しか通じない者もいるので、街で買い物する時とかの通訳用です」
銀髪:「オマエも勉強しろよ!」
この国には日本の妖怪も在住しているが、やはり日本語しか話せない者が大多数だそうだ。
そのような者達が人魔一体となって形成しているのが、南端村ことサウスエンド地区なのである。
日本人街であり、安倍春明率いる魔界共和党がバァル大帝に対して蜂起した場所でもある。
稲生:「はは、仲いいね」
銀髪:「稲生殿と先生との間柄には負けます」
アルカディアシティでも1番賑わう駅構内をイリーナ組は歩いている。
その前を先導するは、着物に袴を穿いた少年が2人。
人間ではない。
1人は銀色の長い髪を沖田総司のように後ろに束ねており、もう1人は茶髪を短く切っている。
そして、耳。
人間のように短く丸くなく、長くて先端が尖っている。
俗に言う、『エルフ耳』である。
しかし、彼らはエルフではない。
妖狐の第一形態である。
更に妖力を解放し、変化をするとエルフ耳が消え、代わりに頭に狐耳が生える。
そこでようやく妖狐だと分かるのだ。
つまり、彼らは妖力を抑えて、一応あれでも正体を隠しているということだ。
これは人間界にいた威吹もそうであった。
稲生達を先導する妖狐2人は、1番街駅東口商店街で偶然会った。
銀髪の方が稲生を知っており、声を掛けて来たのが始まりである。
あいにくと稲生は知らなかったが。
威吹は今や家族持ち、弟子持ちである。
住み込みの弟子が1人いるが、どうやら彼らもその後に弟子入りしたらしく、つまり、弟子の数が増えているということだ。
彼らの話では、結構な大所帯になったということだが、威吹は威吹で新たな流派を立ち上げたのだろうか。
〔「4番線、環状線外回り、各駅停車の到着です」〕
威吹の住む町はサウスエンド、日本語で南端村という所である。
文字通り、アルカディアシティの南端に位置する場所だ。
もっとも、狭義におけるアルカディアシティが城壁の内側を指すのに対し、サウスエンドは外にある為、厳密にはアルカディアシティではない。
やってきたのはスカイブルーの103系。
時折、急行運転も行う高架鉄道だが、発車標を見るに、しばらく各駅停車しか無いようだ。
銀髪:「どうぞ、この電車で行けますから」
稲生:「ありがとう」
マリア:「というか、知ってる」
先頭車に乗り込むと、車内は人間の方が多かった。
アルカディアメトロの高架鉄道は明るい場所を走るからか、魔族よりも人間の乗員・乗客が多い。
また、地下鉄と違って1番後ろに車掌が乗務するツーマン運転である。
同じ鉄道会社なのに、運行形態がとても違う。
銀髪:「おい、威吹先生に連絡したか?」
茶髪:「もちろん!」
稲生:「まさか、ここに来て威吹に会えるなんてねぇ……」
銀髪:「威吹先生も稲生殿との再会を楽しみにしておられます」
茶髪:「さすが、あの南光坊天海僧正の生まれ変わりとされるだけあって、凄い霊力ですね!」
稲生:「やめてくれよ。僕は日蓮正宗の信徒だよ。天台宗の僧侶じゃない」
茶髪:「も、申し訳ありません!」
3人の魔道士達は連結器横の3人席に座ったが、妖狐の少年2人はその横と前に立って、がっちりガードしている。
まるで、サウスエンド駅に着くまで逃がさないといった感じに。
〔「お待たせ致しました。環状線普通電車外回り、まもなく発車致します」〕
地下鉄は昔の営団地下鉄のようなブザーがホームに鳴り響いていたが、こちらは電子電鈴と呼ばれるベルである。
微かに最後尾にいる車掌が笛を吹く音が聞こえる。
そして、ドアが閉まるとすぐに発車した。
どうやらJR東日本のように、車掌からの発車合図のブザーは省略されているらしい(新幹線はともかく、何故か気動車も除く)。
〔「環状線外回り、サウスエンド方面行きの普通電車です。次は1番街南、1番街南、お出口は右側です。運転士は山田、車掌は安倍です。サウスエンドまでご案内致します。次は、1番街南です」〕
ノリはどちらかというと東京の山手線というより、大阪環状線に近い。
何しろ、頑なに各駅停車しか走らせない山手線と違い、大阪環状線はそれだけでなく、快速から特急まで走っている。
稲生:「窓が開いて扇風機回ってるけど、別に新型コロナウィルス関係無いよね?」
銀髪:「……と、思いますが」
103系みたいな旧型電車の特徴は、天井に設置された扇風機。
現在ならエアコンの送風か、或いは空気清浄機であろう。
しかし、常春の国アルカディアにはそれは無く、扇風機が回っている。
真ん中に座るマリアの金髪や、妖狐の銀髪少年の髪が扇風機の風が当たる度に揺れる。
イリーナ:「私の占い、当たったわね」
イリーナは妖狐達には内緒話なのか、自動通訳魔法具をOFFにして英語で話しかけた。
マリア:「あのバザールを歩いていれば、新たな展開が訪れるってヤツですか?」
イリーナ:「サウスエンド。どうやら、新しいクエストができそうじゃないの。宿泊先もそこにすれば安心ね」
マリア:「はあ……。ぶっちゃけ、シルバーフォックス達に囲まれた所で寝泊まりするのはどうかと……」
イリーナ:「勇太君がいるから、邪険にはされないわよ、きっと」
稲生:「大丈夫だと思います」
ところが意外にも、銀髪の少年が英語を話して来た。
銀髪:「威吹先生からは、皆さんを丁重にお連れするように言われております。だから、どうか御心配無く」
稲生:「! 英語上手いね!?」
銀髪:「この国の第2公用語ですから」
茶髪:「いやいや、上手く話せるのオマエくらいだから」
稲生:「何だ、そうか」
茶髪:「逆に英語しか通じない者もいるので、街で買い物する時とかの通訳用です」
銀髪:「オマエも勉強しろよ!」
この国には日本の妖怪も在住しているが、やはり日本語しか話せない者が大多数だそうだ。
そのような者達が人魔一体となって形成しているのが、南端村ことサウスエンド地区なのである。
日本人街であり、安倍春明率いる魔界共和党がバァル大帝に対して蜂起した場所でもある。
稲生:「はは、仲いいね」
銀髪:「稲生殿と先生との間柄には負けます」
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