報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「深夜の卯酉東海道」

2023-03-01 15:41:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月21日22時40分 天候:雨 東京都千代田区丸の内 JR(東海)東京駅→東海道新幹線815A列車16号車内]

 降りしきる雨の中、私と高橋を乗せた覆面パトカーは、赤色灯にサイレンを鳴らしながら東京駅に向かった。
 おかげで赤信号を突破していたこともあり、新幹線の最終列車には間に合いそうだった。
 車が日本橋口に到着する。
 ここは作者の勤務地に程近い東京駅の最北にある出入口で、JRバスなどの高速バスの到着場となっている。
 ピーク時には引っ切り無しに各地から到着してくる高速バスでごった返すロータリーだが、深夜の今は到着便も少ない為か、バスの姿は少なく、代わりに空車表示のタクシーが何台か停車していた。

 善場の部下「到着しました!」
 愛原「ありがとうございます!」

 よくよく考えてみれば、デイライトの職員は国家機関からの出向者ばかりであり、何らかの権限で緊急車両を使用することができるのだろう。
 この職員も、出向元は警察とかなのかもしれない。

 愛原「高橋、行くぞ!」
 高橋「はい!」

 私と高橋は車を飛び降り、駅構内へと飛び込んだ。
 団体客の待ち合わせ場所に使われるアトリウムを抜け、JR東海が運営するキップ売り場へと飛び込む。

 愛原「新幹線は三島までだが、そこから在来線で富士駅までは行けるんだ。だから、キップもそこまで買う」
 高橋「さすがですね」

 キップを買うと、すぐに改札口に飛び込んだ。

〔「本日の最終、“こだま”815号、三島行きは、14番線から、まもなくの発車となります。ご乗車のお客様は、14番線へお急ぎください」〕

 それから階段を駆け上り、14番線ホームに到着する。
 ホームにはN700Aが発車を待っていた。
 日本橋口改札からホームへ行こうとすると、北端部分に出る。
 なので、もっとも近い車両は最後尾の16号車となる。

〔「レピーター点灯です」〕

 どうやら信号が開通したらしい。
 私達が16号車に飛び乗る頃、ホームから発車メロディが鳴り響いてきた。

〔14番線、“こだま”815号、三島行きが、発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕

 普通、発車メロディは1コーラスだけなのだが、終電ということもあり、2コーラス流すこともあるし、3コーラス流すこともあるという。
 その為、発車が遅れることもあるようだが、終電なので仕方が無い。
 私と高橋は、空いている2人席に腰かけた。
 金曜日の夜なのに比較的空いているのは、まだコロナ禍の影響が出ているということだろう。
 ようやく車両のドアが閉まり、列車がスーッと走り出した。

〔♪♪(車内チャイム。“AMBITIOUS JAPAN”)♪♪。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、三島行きです。終点、三島までの各駅に止まります。次は、品川です〕

 窓には水滴が付いている。
 だが、天気予報では静岡は晴れているようなので、神奈川県辺りで雨は止むのかもしれない。

 愛原「とんでもないことになったな……」
 高橋「本当に大丈夫なんスかね?」
 愛原「分からん」

[同日23時39分 天候:晴 静岡県三島市一番町 JR三島駅→東海道本線273M列車先頭車内]

 列車は品川、新横浜と乗客を乗せて行き、小田原、熱海と降ろしていく。
 その間、高橋は喫煙ルームにタバコを吸いに行ったり、私もトイレに行ったりした。
 途中で飲み物が買えなかったのは痛かった。
 “こだま”には車内販売は無いし、自販機も無い。
 また、終電ということもあり、後続の“ひかり”や“のぞみ”の通過待ちも無いので、途中駅もすぐに発車してしまう。
 その為か、三島まで1番早く到着できる“こだま”かもしれない。

〔♪♪(車内チャイム。“AMBITIOUS JAPAN”)♪♪。まもなく終点、三島です。東海道線、伊豆箱根鉄道線はお乗り換えです。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 列車が速度を落として行く。
 この頃になると、窓に付いていた水滴は乾いているし、富士山の上に月が見える。
 リサのことさえなければ、月見酒を嗜みたいところだ。

〔「……乗り換えのご案内です。東海道本線下り、快速の静岡行きは、4番線から23時47分の発車です。この列車は沼津行きですが、本日は快速の静岡行きとなります。尚、上りは本日の運転を終了致しております。……」〕

 そう。
 沼津行きの最終電車は、金曜日と土曜日だけ、静岡まで延長運転が行われる。
 それも、快速なる。
 もっとも、富士駅までは各駅停車だが。
 他にも伊豆箱根鉄道がこの新幹線に接続しており、乗り換え客が殺到するものと思われる。

〔みしま、三島です。みしま、三島です。ご乗車、ありがとうございました〕

 最終列車が三島駅に到着する。

 愛原「乗り遅れるなよ!」
 高橋「はい!」

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、三島、終点、三島です。車内にお忘れ物の無いよう、お気をつけください。東海道線下り列車、伊豆箱根鉄道線におきまして、最終列車の接続を行っております。東海道線下り、快速の静岡行きは4番線。伊豆箱根鉄道駿豆線、各駅停車の大場行きは7番線です。……」〕

 新幹線乗換口を通過し、地上にある4番線ホームに行くと、5両編成の電車が停車していた。

〔「4番線に停車中の電車は、23時47分発、快速の静岡行きです。本日は沼津より先、快速運転となり、静岡まで参ります。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 中央本線で乗ったことのある211系電車を先頭に、新型の313系を連結した新旧混合編成である。
 私達は先頭車に乗り込んだ。
 尚、いずれも座席はロングシートのみである。
 少し詰めてもらって、ピンク色の座席に腰かけた。
 JR東日本のエメラルドグリーンの座席と比べると、こちらの方が軟らかい。

〔「ご案内致します。この電車は東海道本線下り、23時47分に発車致します、快速の静岡行きです。富士までの各駅と清水、終点静岡の順に停車致します。……」〕

 この分だと、伯父さんの民宿に到着するのは、夜中の1時ぐらいになりそうだ。

 愛原「高橋、寝過ごさないように気をつけろ」
 高橋「大丈夫っス。走り屋は、夜中が勝負なんス」
 愛原「自分で運転してたらの話だろう?」
 高橋「仲間の運転でも、寝ちゃダメなんですよ」
 愛原「あー、そうかい」
 高橋「先生は寝てていいっスよ。着いたら、起こします」
 愛原「リサのことが心配で、とても寝付けないよ」

 もしもリサが手遅れになろうものなら、善場主任からすぐに連絡が来るようになっている。
 しかし、スマホを確認したが、今のところそんな連絡はまだ無かった。
 そして発車の時間が迫る。
 これもまた終電ということもあり、駆け込み客を待ったりしたもので、発車が遅れてしまったが、途中駅で回復できるようになっているのだろう。
 その為の快速運転と思われる。
 もっとも、下車駅の富士駅までは各駅停車だが。
 JR東日本の車両と違い、京王電車と同じ音色のドアチャイムが後付けされた、その音色を響かせて、ドアが閉まる。
 あとは、寝過ごさないようにするだけだ。

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