[8月13日17:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館]
久しぶりに記念館で臨時の『マルチタイプの演奏会』が行われた。
元々エミリーはここに“常設展示”されていて、毎日17時にはホールにあるグランドピアノで何曲かを弾いていた。
前期型のエミリーが代わりに常設展示され(但し、一部の部品が後期型、つまり現行機に流用されている為、電源が入らないようになっている)、現行機のエミリーが敷島のオーナー(仮)になっている。
17時にピアノを弾くのは、南里研究所時代からの名残りだ。
今では敷島エージェンシーの中にある電子ピアノを弾いている。
仙台市科学館のイベントのようにシンディはフルートを弾いたのだが、ここでサプライズ。
ロイがバイオリンを引っ張り出してきて、それを奏でた。
シンディ:「あんた、それ……!?」
ロイ:「流用データの中に入っていたんです」
エミリー:「キールみたい……」
ロイ:「なるほど。先輩執事のデータだったのですね。光栄です」
敷島:「いいんですか、村上教授?」
村上:「バイオリン演奏のデータなら良いじゃろう?」
敷島:「まあ、それはそうですが……」
途中からは着替えの終わったボーカロイドも混ざる。
思いの外、『マルチタイプの演奏会 with 敷島エージェンシー オールスターズ』となった。
ロイ:「エミリー様、シンディ様、協奏させて頂き、ありがとうございました」
ロイが恭しく右手を差した。
エミリー:「なかなか良い演奏だった。まるで、キールみたい……」
シンディ:「ちょっと!馴れ馴れしく姉さんに触らないでっ!!」
シンディはエミリーと握手をしようとしたロイの手を叩く代わりに、自分が握手した。
ロイ:「あなたのようなお美しい人と握手できるとは、大変光栄です」
シンディ:「ふ、フン!……って、いつまで握ってんの!?これ以上は金取るよっ!」
敷島:「オマエはアリスか!」
村上:「うーむ……。ロボットは持ち主に似るとは言うが、マルチタイプもそこは変わらんかったか」
[同日18:19.天候:晴 JR仙台駅・新幹線ホーム]
〔13番線に18時21分発、“はやぶさ”108号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は途中、大宮、上野に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車です。この電車は全車指定席です。自由席はありません。まもなく13番線に、“はやぶさ”108号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕
鏡音リン:「社長は一緒に帰らないの?」
敷島:「ああ。俺達人間は、これから打ち上げだ。終電で帰るよ」
リン:「打ち上げ!?花火やるの!?」
シンディ:「バカねぇ。イベントが無事終了できたってことで、宴会やるって話よ」
リン:「何だ、そうか」
KAITO:「人間は色々と大変だからね。特に社長は」
〔「13番線、ご注意ください。18時21分発、“はやて”108号、東京行きが参ります。……」〕
HIDの青白いランプを光らせて、E5系車両が入線してきた。
カラーリングが初音ミクそっくりということもあって、公募では“はつね”という名前が2位に食い込んだという。
結局、“はやぶさ”になったが。
後ろに連結しているのは秋田新幹線のE6系。
真っ赤なカラーリングがMEIKOそっくりだ。
敷島:「それじゃ井辺君、皆をよろしく頼むよ」
井辺:「はい、お任せください」
MEIKO:「別にプロデューサーが一緒じゃなくても、私達で帰れるのに……」
敷島:「いや、お前達は大事な会社の商品だ。やはり管理者が付いているべきだろう」
井辺達が並んでいる所は9号車である。
そこに乗降ドアがピッタリ止まった。
〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台です。お忘れ物の無いよう、お降りください。13番線の電車は……」〕
売れっ子アイドルとなった敷島エージェンシーのボーカロイド達は、9号車のグリーン車に乗り込んだ。
〔「……自由席はございません。自由席特急券ではご乗車になれませんので、ご注意ください。次の停車駅は大宮、大宮です」〕
初音ミク:「あの、社長」
敷島:「ん?」
ミク:「今回も大きなステージで歌わせてくれて、ありがとうございました」
敷島:「何言ってるんだ。お前とはもう10年くらいの付き合いだろう。俺の力だけじゃなく、お前の性能の良さもあるんだぞ」
停車時間は僅か2分。
あっという間に発車の時間が迫り、ホームに壮大な発車メロディが鳴り響いた。
“青葉城恋唄”をアレンジしたものである。
因みに、本当にブラスバンド演奏したものを録音したという。
尚、在来線ホームは“すずめ踊り”で、確かにこちらも仙台ならではなのだが……評判は【お察しください】。
まだ旋律のはっきりした“山形花笠音頭”の方が上出来と言えよう。
〔「13番線、ドアが閉まります。無理なご乗車はおやめください。発車致します」〕
甲高い客終合図のブザーが鳴り響くと、ドアが閉まった。
大きなエアー音がした直後に、VVVFインバータの音を響かせて“はつね”……もとい、“はやぶさ”は発車していった。
尚、このインバータに旋律を付けて歌わせた京急電車がいるが、特に電気信号を発していないせいか、ボカロなどが反応することはない。
敷島:「よしっ、見送り完了。平賀先生達に合流するぞ!」
エミリー:「無理言って国分町にしてもらったんですって」
シンディ:「ほお……?ただの宴会ならいいですけど、いかがわしいお店に足を向けた時点で、マスターに即刻通報するシステムは構築されてますからね」
敷島:「わ、分かってるよ。それより早く行かないと、新幹線の終電に間に合わなくなる。タクシー乗り場に向かうぞ」
エミリー:「こちらです」
シンディ:「げ……!」
その時、シンディが何か通信を受け取って嫌そうな顔をした。
エミリー:「シンディ、どうした?」
シンディ:「飛び込みで、村上博士も打ち上げに参加するって」(・д・)
エミリー:「それがどうした?」
シンディ:「ロイのバカもいるってことじゃない!」
エミリー:「別にいいだろう」
シンディ:「姉さん!キールで懲りてないのね!」
エミリー:「キールはともかく、ロイに下心は無いだろう」
シンディ:「甘い!姉さんは甘い!今のうち、鞭で引っ叩いてやって……!」
エミリー:「シンディ……」
敷島:「何やってんだ、お前ら!早く来い!」
シンディ:「はいはい!」
エミリー:「ただいま!」
〔「本日もJR仙台駅をご利用くださいまして、ありがとうございます。当駅では……」〕
久しぶりに記念館で臨時の『マルチタイプの演奏会』が行われた。
元々エミリーはここに“常設展示”されていて、毎日17時にはホールにあるグランドピアノで何曲かを弾いていた。
前期型のエミリーが代わりに常設展示され(但し、一部の部品が後期型、つまり現行機に流用されている為、電源が入らないようになっている)、現行機のエミリーが敷島のオーナー(仮)になっている。
17時にピアノを弾くのは、南里研究所時代からの名残りだ。
今では敷島エージェンシーの中にある電子ピアノを弾いている。
仙台市科学館のイベントのようにシンディはフルートを弾いたのだが、ここでサプライズ。
ロイがバイオリンを引っ張り出してきて、それを奏でた。
シンディ:「あんた、それ……!?」
ロイ:「流用データの中に入っていたんです」
エミリー:「キールみたい……」
ロイ:「なるほど。先輩執事のデータだったのですね。光栄です」
敷島:「いいんですか、村上教授?」
村上:「バイオリン演奏のデータなら良いじゃろう?」
敷島:「まあ、それはそうですが……」
途中からは着替えの終わったボーカロイドも混ざる。
思いの外、『マルチタイプの演奏会 with 敷島エージェンシー オールスターズ』となった。
ロイ:「エミリー様、シンディ様、協奏させて頂き、ありがとうございました」
ロイが恭しく右手を差した。
エミリー:「なかなか良い演奏だった。まるで、キールみたい……」
シンディ:「ちょっと!馴れ馴れしく姉さんに触らないでっ!!」
シンディはエミリーと握手をしようとしたロイの手を叩く代わりに、自分が握手した。
ロイ:「あなたのようなお美しい人と握手できるとは、大変光栄です」
シンディ:「ふ、フン!……って、いつまで握ってんの!?これ以上は金取るよっ!」
敷島:「オマエはアリスか!」
村上:「うーむ……。ロボットは持ち主に似るとは言うが、マルチタイプもそこは変わらんかったか」
[同日18:19.天候:晴 JR仙台駅・新幹線ホーム]
〔13番線に18時21分発、“はやぶさ”108号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は途中、大宮、上野に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車です。この電車は全車指定席です。自由席はありません。まもなく13番線に、“はやぶさ”108号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕
鏡音リン:「社長は一緒に帰らないの?」
敷島:「ああ。俺達人間は、これから打ち上げだ。終電で帰るよ」
リン:「打ち上げ!?花火やるの!?」
シンディ:「バカねぇ。イベントが無事終了できたってことで、宴会やるって話よ」
リン:「何だ、そうか」
KAITO:「人間は色々と大変だからね。特に社長は」
〔「13番線、ご注意ください。18時21分発、“はやて”108号、東京行きが参ります。……」〕
HIDの青白いランプを光らせて、E5系車両が入線してきた。
カラーリングが初音ミクそっくりということもあって、公募では“はつね”という名前が2位に食い込んだという。
結局、“はやぶさ”になったが。
後ろに連結しているのは秋田新幹線のE6系。
真っ赤なカラーリングがMEIKOそっくりだ。
敷島:「それじゃ井辺君、皆をよろしく頼むよ」
井辺:「はい、お任せください」
MEIKO:「別にプロデューサーが一緒じゃなくても、私達で帰れるのに……」
敷島:「いや、お前達は大事な会社の商品だ。やはり管理者が付いているべきだろう」
井辺達が並んでいる所は9号車である。
そこに乗降ドアがピッタリ止まった。
〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台です。お忘れ物の無いよう、お降りください。13番線の電車は……」〕
売れっ子アイドルとなった敷島エージェンシーのボーカロイド達は、9号車のグリーン車に乗り込んだ。
〔「……自由席はございません。自由席特急券ではご乗車になれませんので、ご注意ください。次の停車駅は大宮、大宮です」〕
初音ミク:「あの、社長」
敷島:「ん?」
ミク:「今回も大きなステージで歌わせてくれて、ありがとうございました」
敷島:「何言ってるんだ。お前とはもう10年くらいの付き合いだろう。俺の力だけじゃなく、お前の性能の良さもあるんだぞ」
停車時間は僅か2分。
あっという間に発車の時間が迫り、ホームに壮大な発車メロディが鳴り響いた。
“青葉城恋唄”をアレンジしたものである。
因みに、本当にブラスバンド演奏したものを録音したという。
尚、在来線ホームは“すずめ踊り”で、確かにこちらも仙台ならではなのだが……評判は【お察しください】。
まだ旋律のはっきりした“山形花笠音頭”の方が上出来と言えよう。
〔「13番線、ドアが閉まります。無理なご乗車はおやめください。発車致します」〕
甲高い客終合図のブザーが鳴り響くと、ドアが閉まった。
大きなエアー音がした直後に、VVVFインバータの音を響かせて“はつね”……もとい、“はやぶさ”は発車していった。
尚、このインバータに旋律を付けて歌わせた京急電車がいるが、特に電気信号を発していないせいか、ボカロなどが反応することはない。
敷島:「よしっ、見送り完了。平賀先生達に合流するぞ!」
エミリー:「無理言って国分町にしてもらったんですって」
シンディ:「ほお……?ただの宴会ならいいですけど、いかがわしいお店に足を向けた時点で、マスターに即刻通報するシステムは構築されてますからね」
敷島:「わ、分かってるよ。それより早く行かないと、新幹線の終電に間に合わなくなる。タクシー乗り場に向かうぞ」
エミリー:「こちらです」
シンディ:「げ……!」
その時、シンディが何か通信を受け取って嫌そうな顔をした。
エミリー:「シンディ、どうした?」
シンディ:「飛び込みで、村上博士も打ち上げに参加するって」(・д・)
エミリー:「それがどうした?」
シンディ:「ロイのバカもいるってことじゃない!」
エミリー:「別にいいだろう」
シンディ:「姉さん!キールで懲りてないのね!」
エミリー:「キールはともかく、ロイに下心は無いだろう」
シンディ:「甘い!姉さんは甘い!今のうち、鞭で引っ叩いてやって……!」
エミリー:「シンディ……」
敷島:「何やってんだ、お前ら!早く来い!」
シンディ:「はいはい!」
エミリー:「ただいま!」
〔「本日もJR仙台駅をご利用くださいまして、ありがとうございます。当駅では……」〕
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