報恩坊の怪しい偽作家!

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“アンドロイドマスター” 「平賀太一の華麗なる研究」

2014-10-26 15:35:40 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月27日08:00.宮城県仙台市太白区 平賀家 平賀太一、平賀奈津子、七海]

「ええっ?敷島さん達、温泉旅行だって!?」
 朝起きてきた平賀太一は、奈津子から昨夜のアリス研究所のことについて聞かされ、驚いた。
「そうなのよ。KAITOが1発で当てたんですって」
「不正したんじゃないだろうなぁ……」
 平賀は呆れた様子で、椅子に座った。
「それにしても、お気楽なもんだ。こっちはロボット・テロ対策で忙しいというのに……」
「まあ、敷島さんは営業系だし、アリスは正直、あなたからマークされる側だからね」
「まあな。今後もアリス研究所は、監視対象にするさ。温泉旅行だって、何かしらの陰謀が……」
「敷島さんが一緒なら、考え過ぎだと思うけど……」
「太一様、奥様。まもなく保育園バスが来ますので、お嬢様方をお送りして参ります」
 七海がやってきた。
「ああ、私も行くわ。ちょっと行ってくる」
「ああ」
 1人残された太一。
 娘と息子の姉弟を送り出す光景を見ながら、太一は思った。
(敷島さんの不妊治療は進んでいるんだろうか……)

[同日09:00.仙台市泉区のぞみヶ丘 アリス研究所 敷島孝夫、アリス・シキシマ、MEIKO、KAITO]

「よし。仕事に行くぞ」
「はーい」
 大抵はセットで行動するMEIKOとKAITO。
 一部ファンからは、
「夫婦のようだ」
 とも言われる。
 が、今回は別行動だった。何故なら……。
「どこをどうすれば、こんな取り付け方できるの!」
 研究室からアリスの怒号が聞こえる。
 勝手にシンディのカスタムパーツを取り付けたKAITOから、それを取り外そうと悪戦苦闘しているようだ。
「いいの、プロデューサー?奥さん放っといて」
「俺に何ができる。俺はただ粛々と、お前達を売り込むのが仕事だ」
「カッコいい!」
 車に乗り込む。
「じゃあ、今日は先にグラビアの撮影からな」
「了解」
 敷島はそそくさと逃げるように、アリス研究所から出て行った。

[同日10:00.仙台市青葉区 東北大学工学部 平賀太一]

「……ロボットは使う人間次第です。人間がどのように使うかで、ロボット工学三原則を全く無視した殺人兵器まで作り上げることができます。しかしそれは、世界の人々が望むところではありません」
 平賀は学生の前で講義を行っていた。
「皆さんの中でも、特に研究棟において、あちこちの壁に補修した跡があるのに気づいた人もいるでしょう。正に、試行錯誤の連続でした。どの分野においてもそうですが、そういった思考錯誤の元に今のロボット工学があるわけです」
(あれ、ほとんど平賀先生んとこの七海さんが開けた穴じゃね?)
(教授室にも穴開けたらしいぞ?)
(先輩から聞いた話、昔なんて、先生が『ヨーカン(羊羹)切って』と命令したら、チェーンソー持って、『洋館切り』に行ったらしいからな)
 学生達はヒソヒソと噂話をしたという。

[同日11:00.仙台市宮城野区 写真スタジオ 敷島&MEIKO]

「はい、OKです!」
「ありがとうございました」
 もうそろそろ外も寒くなってきた頃であるにも関わらず、グラビアの撮影は水着である。
 特に今回はそれで外のプールに飛び込むシーンもあった。
 人間ならそろそろ寒中水泳の時期だが、ボーカロイドのMEIKOに取っては、何でも無いことだ。
 むしろ熱は大敵のロイドにとって、体の冷却は大事である。
 で、最後は公式通りの赤を基調とした衣装でもって撮影は終わる。
「MEIKO、ご苦労さん」
「いいえ。お役に立てて何より、ね」
「おっ?お前もそのセリフが言えるようになったか」
「ミクやエミリーが言っていたセリフをコピーしただけよ。でも、財団所属の皆、このセリフが登録されてるね。『人間に感謝されたら、このセリフを言うように』ってなってる」
「ネタバレしたら、ありがたみが無くなるぞ」
「そうね」
 控え室で次の現場に行く準備をする。
「今度は昼からのラジオ番組だ。急ごう」
「ええ」
 再び車に乗って、今度はラジオ局へ。
「ん?待てよ。財団所属ってことは……。シンディも言えるってことか。あのセリフ」
「まあ、そういうことになるね」
「エミリーは想像つくけど、あいつが『お役に立てて何よりです』っていうセリフ、何か想像つかないなぁ……」
「あら?付くわよ」
「そうか?」
「周りに硝煙立ち込める中、人間の死体の山が積み重なっていて、煙の出たマシンガンの銃口を傾けたシンディがそう言うところ……」
「そっちか!」
「だから平賀博士は、シンディの稼働に反対してるんでしょ?」
「アリスは絶対そんなことさせないって説明してるんだけど、暖簾に腕押しってヤツでなぁ……」
「まあ、アリス博士自体が、そもそもプロデューサーを襲ってきたわけだからね」
「まあな」
「そのアリス博士とプロデューサーが結婚するなんて、全然想像付かなかったわよ」
「そりゃそうだ。当の本人達だって、想定外だったんだから」
「え?」
「一時の勢いでヤっちまったのが、運の尽きだった……。【ぴー】なのに【ぴー】したから、諦めて責任取ったんだけど、まさか俺の種が【ぴー】だったとはな……」
「ちょっと、人間のことはよく分からないんだけど……」

[同日13:00.アリスの研究所 敷島、アリス、KAITO、シンディ]

「KAITO、迎えに来たぞ。午後からMEIKOと組んで、新曲発表と握手会だ」
 MEIKOがラジオのパーソナリティをやっている間、敷島が研究所に取って返して、KAITOを迎えに来た。
「はい、ただいま」
「修理終わったのか?」
 敷島はコーヒーを啜るアリスに言った。
「元に戻すの大変だったんだから。でもスケジュールに間に合ったわけでしょ?アタシって天才!」
「はいはい、どうも。じゃあ、早速連れて行くぞ」
「じゃあ、行ってきまーす」
 敷島とKAITOは慌ただしく出て行った。
「あの、ドクター。早く私に取り付けてください」
 研究室の中から、シンディが声を掛けて来る。
「スナイプの性能高めたら、却って理事会に疑われるわ。むしろ、スキャンの方を高めるパーツにするから」
「えーっ!」

[同日15:00.東北大学工学部電子工学科 平賀太一]

(学生達へのゼミ資料として、マリオかルイージを借りるっていう手もあるな)
 平賀はゼミ生達を前にそう思った。
 もっとも、バージョン・シリーズの構造については、全てが明らかになったわけではない。
 あれは完全にドクター・ウィリーのオリジナルで、技術力としては同レベルの十条でも、何となく分かる程度だという。
 そういった意味では、最新型のアレンジ版を作れたアリスに、自分は劣っていることを痛感させられる。
「先生、七海さんは来られないんですか?」
「今、七海は家で子守りをしてるよ。奥さんも大学講師だし、ずっと保育園に置いておくわけにはいかないから」
「バージョンアップしたんですね。昔は、よく先生の命令の意味を間違えて、壁に穴開けたりしてましたが……」
「確かにあの頃の七海に、うちのチビ達の世話は任せられなかったなぁ……。今は大丈夫」
 代わりにゼミ生への資料に使っているのは、財団仙台支部所属のメイドロボットで、ナンバリングが最後の番号であるジル。
「まあ、つまりその……。メイドロボットだからといって、やはり使い方は要注意ということだ。それも使い方を間違えると、思わぬトラブルが発生することがある。慣れないうちは、難しい命令をするのは控えた方がいいな。私も七海への実験中、彼女に殴り飛ばされたことがあった」
「マジですか!?」
「ハハハ……院生時代の話だよ」

 読み切り版(データ紛失)、“メイドロボット七海”でそのシーンを書いた記憶が……。

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