[2月26日18時~19時 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家]
リサ「おおー!血の滴るレアステーキ!」
夕食は公一伯父さんが送って寄こしたステーキ肉と、母親が生協で買ってきた牛タン焼きをおかずにした。
もちろんそれ以外にも、漬物やサラダの野菜の他、厚揚げなどのお惣菜も出て来た。
デザートは、生協で買ってきたというリンゴやミカンなどの果物。
愛原母「それにしても、公一伯父さんには困ったものねぇ……」
愛原父「いくら知り合いから融通されたものだとはいえ、ブランド牛の厚いステーキをいきなり送って寄こすんだもんな」
愛原学「まあ、甥っ子の俺の為だってさ。あとは、『若者達に精力を付けてやるのも、年寄の役目』とかって手紙に書いてた」
母「あなた、昼間そんなこと言ってたわよね?」
父「たはは……。兄貴も同じことを考えていたとは……」
学「血の争えない兄弟だ」
パール「兄弟か……いいな……」
リサ「兄弟か……いいな……」
学「パールは分からんが、リサには『1番』とか上野利恵という血の繋がった親族がいたじゃないか」
リサ「ヤッダ!」
リサは嫌悪感を露わにして言った。
どちらも私を奪おうとした女達だからだろう。
夕食が終わった後は、帰京の準備。
母「あなた達、最後までゆっくりしていいのよ?」
高橋「いいえ。お世話になりましたんで、片付けだけでもさせてください」
パール「同じく!」
高橋とパールは、キッチンに立って、母親の代わりに洗い物をしていた。
あいにくとまだ、実家には食洗機は導入されていない。
普段は夫婦2人だけの家だし、そんなに洗い物も出ないから、必要性が薄いのかもしれない。
リサは洗面所に行って歯を磨いた後は、学校の制服に着替えた。
学「あれ?どうして着替えるんだ?」
リサ「元々この恰好でこの家に来たし、それに、ステーキの肉の匂いが服に染み付いたから」
学「気になるのか?」
焼肉した時ほどそんなに匂いが付いた感じはしないが、鬼は嗅覚も優れているので、リサにとっては気になるのだろう。
母「あらあら、制服姿かわいいじゃない?」
リサ「ありがとうございます!」
学「ここに来る時も見せたと思うけど?」
母「写真撮っていいかしら?」
リサ「どうぞどうぞ!」
学「SNSにアップしないでくれよ?」
母「分かってるって」
両親はリサの写真を撮りながら……。
母「女の子はいいわねぇ、張り合いがあって」
父「うちも女の子が欲しかったなぁ……」
学「何を今さら。従姉で我慢しなよ」
母「姉さんとこは女の子が生まれて羨ましかったわぁ……」
リサ「利恵んとこは、『女の子しか生まれなくてつまんない』とか言ってたよね?」
学「俺を襲った時の話だろう?」
父「おいおい、襲われたってどういうことだよ?」
学「栃木の山奥にも鬼が棲んでるんだよ」
リサ「そうそう」
父「お前の仕事、探偵だったよな?探偵は鬼退治もするんかい?」
学「何か、成り行きで」
いつの頃から鬼退治をするようになったのか……。
やはり、上野利恵と会ってからか?
忘れたな……。
[同日19時30分~37分 天候:晴 同区白萩町 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線180電車最後尾車内]
私達は両親に別れを告げ、夜道を地下鉄の駅に向かって歩いた。
夜道と言っても住宅街の中で、街灯はそこそこあるし、人通りも車通りもまだそこそこある時間帯だから、そんなにうら寂しいわけでもない。
新しい地下鉄なので、地上から地下階まで乗り継ぎにながらも、エスカレーターで行くことができる。
エレベーターに乗れたら、それで改札階まで直行できるほど。
リサ「あっ、セブンティーンアイスがある」
愛原学「聖和学園前だからな。そこの高校生向けに設置しているんだろう」
実際、セブンティーンアイスのネーミングも、『17種類のアイス』の他、『17歳の女子高生向け』という意味らしい。
正に今のリサの歳だ。
リサ「菊川駅にも欲しいなぁ……」
愛原「菊川駅には、近くに高校が無いからな」
そこで私はふと思い出す。
愛原「てか、東京中央学園にあるじゃないか!」
リサ「ま、まあ、学校は学校。あとは家の近くにもあるといいなぁって……」
そして、リサは咳払いをした。
リサ「逆に駅の中にあるってことは、学校の中には無いってことだね。聖和学園の人達」
愛原「まあ、そういうことだろうな」
尚、東京中央学園の他にも、学内にセブンティーンアイスを設置している高校もあるという。
愛原「市街地だと地下鉄の駅と、ゲーセンの中とかにあるみたいだな」
リサ「だろうねぇ……」
リサが17歳のうちに、買って食べている所を見てみたいものだ。
愛原「まあ、都内かどこか、リサが17歳のうちに買って食べているところを見てみたいところだな」
リサ「PTA会長として、学校に来てみたら?わたし、学食で食べてあげるよ」
愛原「ハハハ……。まあ、機会があればな」
改札口を通過して、ホームに向かう。
私達は最後尾の車両が来る辺りで、電車を待った。
仙台駅東西線のホームはJR仙台駅の西側にあり、本当にJR仙台駅に行きたいのなら、後ろの車両に乗った方が良い。
普段なら1番線、2番線同時到着からの同時発車というダイヤだが、この時間帯は違うらしい。
発車標を見ると、それぞれダイヤが違っていた。
愛原公一「どうだったかね?ワシが提供した黒毛和牛は美味かったかね?」
愛原学「ん?……えっ!?」
何と、ホームのベンチに公一伯父さんが座っていた。
学「伯父さん!?どうしてここに!?」
公一「旅に出る途中じゃが、それがどうした?」
学「それがどうしたって、今、千葉県にいるはずじゃ……?」
公一「んん?そんなこと、手紙に書いたかの?」
学「い、いや、でも、ゆうパックの差出人が……」
公一「ああ。あれは、知り合いの酪農家に頼んで、ワシ名義で書いてもらったものじゃ。筆跡が違ったじゃろ?」
学「そ、そうかな?」
伯父さんの字、なかなか達筆なので、同じ達筆な人の筆跡と見分けが付かないことがある。
学「これから旅に出るって、夜行バスにでも乗るの?」
まさか私達と同じ新幹線じゃあるまいな?
公一「はっはっは!ワシもそこの兄ちゃん達くらいの歳なら、そうするところじゃがな。しかし、残念。“ぶっとびカード”を使わせてもらうよ」
学「“ぶっとびカード”!?」
高橋「桃鉄で、ヘリに乗って、ランダムにどこかの駅に飛ぶカードです」
公一「その通りじゃ。さすがは兄ちゃんじゃの」
〔2番線に、八木山動物公園行き電車が、到着します〕
トンネルの向こうから強い風が吹いてきて、轟音が聞こえて来る。
学「ヘリコプターに乗るの!?」
公一「その通りじゃ」
そして、4両編成の電車がやってくる。
日曜日夜の市街地へ行く電車は空いていた。
ホームドアと、電車のドアが開く。
車両は小型のもので、都営地下鉄大江戸線や大阪メトロ長堀鶴見緑地線と同じサイズだろう。
但し、大阪は両数も仙台と同じだが、東京は倍の8両編成だ。
電車に乗り込み、空いている青色の座席に腰かける。
伯父さんは連結器横の優先席に座った。
伯父さん以外は、誰も座っていない。
公一「学もこっちに座れ。どうせ、仙台駅まで席を譲るほど混まんよ」
学「はあ……」
私は公一伯父さんの横に座った。
〔1番線から、八木山動物公園行き電車が、発車します〕
電車は短い発車サイン音の後、ホームドアと車両のドアを閉めて発車した。
〔次は連坊、連坊。仙台一高前です〕
リサは遠慮してか、私の隣に座らない。
高橋達と同じく、青色の一般席に座った。
公一「お前に2つ言いたいことがある。本当はもっとあるのだが、それまでにこの電車が仙台駅に着いてしまう」
学「伯父さんは仙台駅で降りないの?」
公一「仙台駅近辺にヘリポートがあるのかね?まあ、東北大学病院にはドクターヘリ用のヘリポートはあるだろうがな」
どうやら違うようだ。
他に思いつくのは、青葉山辺りにあったような気がするくらいだ。
恐らく、そこなのだろう。
この地下鉄東西線は、青葉山に向かう路線であるからだ。
学「そうなんだ」
公一「まず1つ……。あのな、リサを人間に戻すことは、現状不可能じゃ」
学「うっ……」
公一「あくまでも、現状はだ。恐らく今の科学力を駆使しても、アメリカのシェリー・バーキンや日本の善場優菜のように、一応形式上は人間に戻れるというのがせいぜいだろう。見た目に化け物と化すことはないが、しかし身体能力だけは化け物のままだ。そして現状、リサの場合はそれすら難しい」
学「そうか……」
公一「だが、ガッカリすることはない。少なくとも、子を産むことはできるじゃろうて。但し、ウィンターズ夫妻のように監視付きにはなるじゃろうがな」
学「俺は……イーサン・ウィンターズ氏にはなれそうにない……」
公一「どうかな?お前はなれそうな気がするがな。まあ、良い。それともう1つ……栗原蓮華は、逆に人間に戻せるよ」
学「えっ!?」
公一「日野博士とやらがどんなヤツかは知らんがな、所詮アンブレラでは下っ端の研究員だったわけだ。そんなヤツにできることが、ワシにできないはずがない」
学「リサは……無理なのか」
公一「あれは歩くGウィルスだ。それが更に特異菌を取り込んで、人間としての部分が殆ど無いと思われる。それでも残った人間の部分だけを何とかして、化け物にならん程度に治すことはできる。じゃが、それでも鬼の姿になったりはするじゃろうな。それでは、人間に戻ったとは言えんじゃろう」
学「うう……」
公一「気を落とすな。あくまでも、現状の話じゃから」
ジャンル違いとはいえ、元科学者の伯父さんに言われると、妙に説得力を感じてしまう。
私がというよりは、リサが哀れで仕方が無かった。
リサ「おおー!血の滴るレアステーキ!」
夕食は公一伯父さんが送って寄こしたステーキ肉と、母親が生協で買ってきた牛タン焼きをおかずにした。
もちろんそれ以外にも、漬物やサラダの野菜の他、厚揚げなどのお惣菜も出て来た。
デザートは、生協で買ってきたというリンゴやミカンなどの果物。
愛原母「それにしても、公一伯父さんには困ったものねぇ……」
愛原父「いくら知り合いから融通されたものだとはいえ、ブランド牛の厚いステーキをいきなり送って寄こすんだもんな」
愛原学「まあ、甥っ子の俺の為だってさ。あとは、『若者達に精力を付けてやるのも、年寄の役目』とかって手紙に書いてた」
母「あなた、昼間そんなこと言ってたわよね?」
父「たはは……。兄貴も同じことを考えていたとは……」
学「血の争えない兄弟だ」
パール「兄弟か……いいな……」
リサ「兄弟か……いいな……」
学「パールは分からんが、リサには『1番』とか上野利恵という血の繋がった親族がいたじゃないか」
リサ「ヤッダ!」
リサは嫌悪感を露わにして言った。
どちらも私を奪おうとした女達だからだろう。
夕食が終わった後は、帰京の準備。
母「あなた達、最後までゆっくりしていいのよ?」
高橋「いいえ。お世話になりましたんで、片付けだけでもさせてください」
パール「同じく!」
高橋とパールは、キッチンに立って、母親の代わりに洗い物をしていた。
あいにくとまだ、実家には食洗機は導入されていない。
普段は夫婦2人だけの家だし、そんなに洗い物も出ないから、必要性が薄いのかもしれない。
リサは洗面所に行って歯を磨いた後は、学校の制服に着替えた。
学「あれ?どうして着替えるんだ?」
リサ「元々この恰好でこの家に来たし、それに、ステーキの肉の匂いが服に染み付いたから」
学「気になるのか?」
焼肉した時ほどそんなに匂いが付いた感じはしないが、鬼は嗅覚も優れているので、リサにとっては気になるのだろう。
母「あらあら、制服姿かわいいじゃない?」
リサ「ありがとうございます!」
学「ここに来る時も見せたと思うけど?」
母「写真撮っていいかしら?」
リサ「どうぞどうぞ!」
学「SNSにアップしないでくれよ?」
母「分かってるって」
両親はリサの写真を撮りながら……。
母「女の子はいいわねぇ、張り合いがあって」
父「うちも女の子が欲しかったなぁ……」
学「何を今さら。従姉で我慢しなよ」
母「姉さんとこは女の子が生まれて羨ましかったわぁ……」
リサ「利恵んとこは、『女の子しか生まれなくてつまんない』とか言ってたよね?」
学「俺を襲った時の話だろう?」
父「おいおい、襲われたってどういうことだよ?」
学「栃木の山奥にも鬼が棲んでるんだよ」
リサ「そうそう」
父「お前の仕事、探偵だったよな?探偵は鬼退治もするんかい?」
学「何か、成り行きで」
いつの頃から鬼退治をするようになったのか……。
やはり、上野利恵と会ってからか?
忘れたな……。
[同日19時30分~37分 天候:晴 同区白萩町 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線180電車最後尾車内]
私達は両親に別れを告げ、夜道を地下鉄の駅に向かって歩いた。
夜道と言っても住宅街の中で、街灯はそこそこあるし、人通りも車通りもまだそこそこある時間帯だから、そんなにうら寂しいわけでもない。
新しい地下鉄なので、地上から地下階まで乗り継ぎにながらも、エスカレーターで行くことができる。
エレベーターに乗れたら、それで改札階まで直行できるほど。
リサ「あっ、セブンティーンアイスがある」
愛原学「聖和学園前だからな。そこの高校生向けに設置しているんだろう」
実際、セブンティーンアイスのネーミングも、『17種類のアイス』の他、『17歳の女子高生向け』という意味らしい。
正に今のリサの歳だ。
リサ「菊川駅にも欲しいなぁ……」
愛原「菊川駅には、近くに高校が無いからな」
そこで私はふと思い出す。
愛原「てか、東京中央学園にあるじゃないか!」
リサ「ま、まあ、学校は学校。あとは家の近くにもあるといいなぁって……」
そして、リサは咳払いをした。
リサ「逆に駅の中にあるってことは、学校の中には無いってことだね。聖和学園の人達」
愛原「まあ、そういうことだろうな」
尚、東京中央学園の他にも、学内にセブンティーンアイスを設置している高校もあるという。
愛原「市街地だと地下鉄の駅と、ゲーセンの中とかにあるみたいだな」
リサ「だろうねぇ……」
リサが17歳のうちに、買って食べている所を見てみたいものだ。
愛原「まあ、都内かどこか、リサが17歳のうちに買って食べているところを見てみたいところだな」
リサ「PTA会長として、学校に来てみたら?わたし、学食で食べてあげるよ」
愛原「ハハハ……。まあ、機会があればな」
改札口を通過して、ホームに向かう。
私達は最後尾の車両が来る辺りで、電車を待った。
仙台駅東西線のホームはJR仙台駅の西側にあり、本当にJR仙台駅に行きたいのなら、後ろの車両に乗った方が良い。
普段なら1番線、2番線同時到着からの同時発車というダイヤだが、この時間帯は違うらしい。
発車標を見ると、それぞれダイヤが違っていた。
愛原公一「どうだったかね?ワシが提供した黒毛和牛は美味かったかね?」
愛原学「ん?……えっ!?」
何と、ホームのベンチに公一伯父さんが座っていた。
学「伯父さん!?どうしてここに!?」
公一「旅に出る途中じゃが、それがどうした?」
学「それがどうしたって、今、千葉県にいるはずじゃ……?」
公一「んん?そんなこと、手紙に書いたかの?」
学「い、いや、でも、ゆうパックの差出人が……」
公一「ああ。あれは、知り合いの酪農家に頼んで、ワシ名義で書いてもらったものじゃ。筆跡が違ったじゃろ?」
学「そ、そうかな?」
伯父さんの字、なかなか達筆なので、同じ達筆な人の筆跡と見分けが付かないことがある。
学「これから旅に出るって、夜行バスにでも乗るの?」
まさか私達と同じ新幹線じゃあるまいな?
公一「はっはっは!ワシもそこの兄ちゃん達くらいの歳なら、そうするところじゃがな。しかし、残念。“ぶっとびカード”を使わせてもらうよ」
学「“ぶっとびカード”!?」
高橋「桃鉄で、ヘリに乗って、ランダムにどこかの駅に飛ぶカードです」
公一「その通りじゃ。さすがは兄ちゃんじゃの」
〔2番線に、八木山動物公園行き電車が、到着します〕
トンネルの向こうから強い風が吹いてきて、轟音が聞こえて来る。
学「ヘリコプターに乗るの!?」
公一「その通りじゃ」
そして、4両編成の電車がやってくる。
日曜日夜の市街地へ行く電車は空いていた。
ホームドアと、電車のドアが開く。
車両は小型のもので、都営地下鉄大江戸線や大阪メトロ長堀鶴見緑地線と同じサイズだろう。
但し、大阪は両数も仙台と同じだが、東京は倍の8両編成だ。
電車に乗り込み、空いている青色の座席に腰かける。
伯父さんは連結器横の優先席に座った。
伯父さん以外は、誰も座っていない。
公一「学もこっちに座れ。どうせ、仙台駅まで席を譲るほど混まんよ」
学「はあ……」
私は公一伯父さんの横に座った。
〔1番線から、八木山動物公園行き電車が、発車します〕
電車は短い発車サイン音の後、ホームドアと車両のドアを閉めて発車した。
〔次は連坊、連坊。仙台一高前です〕
リサは遠慮してか、私の隣に座らない。
高橋達と同じく、青色の一般席に座った。
公一「お前に2つ言いたいことがある。本当はもっとあるのだが、それまでにこの電車が仙台駅に着いてしまう」
学「伯父さんは仙台駅で降りないの?」
公一「仙台駅近辺にヘリポートがあるのかね?まあ、東北大学病院にはドクターヘリ用のヘリポートはあるだろうがな」
どうやら違うようだ。
他に思いつくのは、青葉山辺りにあったような気がするくらいだ。
恐らく、そこなのだろう。
この地下鉄東西線は、青葉山に向かう路線であるからだ。
学「そうなんだ」
公一「まず1つ……。あのな、リサを人間に戻すことは、現状不可能じゃ」
学「うっ……」
公一「あくまでも、現状はだ。恐らく今の科学力を駆使しても、アメリカのシェリー・バーキンや日本の善場優菜のように、一応形式上は人間に戻れるというのがせいぜいだろう。見た目に化け物と化すことはないが、しかし身体能力だけは化け物のままだ。そして現状、リサの場合はそれすら難しい」
学「そうか……」
公一「だが、ガッカリすることはない。少なくとも、子を産むことはできるじゃろうて。但し、ウィンターズ夫妻のように監視付きにはなるじゃろうがな」
学「俺は……イーサン・ウィンターズ氏にはなれそうにない……」
公一「どうかな?お前はなれそうな気がするがな。まあ、良い。それともう1つ……栗原蓮華は、逆に人間に戻せるよ」
学「えっ!?」
公一「日野博士とやらがどんなヤツかは知らんがな、所詮アンブレラでは下っ端の研究員だったわけだ。そんなヤツにできることが、ワシにできないはずがない」
学「リサは……無理なのか」
公一「あれは歩くGウィルスだ。それが更に特異菌を取り込んで、人間としての部分が殆ど無いと思われる。それでも残った人間の部分だけを何とかして、化け物にならん程度に治すことはできる。じゃが、それでも鬼の姿になったりはするじゃろうな。それでは、人間に戻ったとは言えんじゃろう」
学「うう……」
公一「気を落とすな。あくまでも、現状の話じゃから」
ジャンル違いとはいえ、元科学者の伯父さんに言われると、妙に説得力を感じてしまう。
私がというよりは、リサが哀れで仕方が無かった。
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