報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「地下鉄に巣くうモンスター」

2022-08-19 20:36:49 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月17日13:30.天候:晴 アルカディアシティ1番街]

 話し掛けてきたのは、先日この駅前で話し掛けて来た女戦士だった。

 

 勇太:「ただのサハギンじゃないって、どういうことですか?」
 女戦士:「ただのサハギンってのは、全体的に青い体をしてるだろ?あれでも半魚人の一種だから」
 マリア:「まあ、そうだな」

 人魚が上半身が美女であるのに対し、半魚人としてのマーマンは上半身も魚竜的な姿をしていることが多い。
 それに対してサハギンというのは、泳ぎの得意な2足歩行の怪獣みたいに思ってくれれば良い。
 大きさは大人の人間と大して変わらない。
 人形やマーマンが基本的には陸に上がれない、上がれても水辺からは遠く離れられない(足が無いから)のに対し、サハギンは足があるので陸に堂々と上がって人間を襲う。
 中には三叉股の鎗を持っている者もいる。

 女戦士:「体が黄色っぽかったから、多分あれはサハギンロードだ。普通のサハギンより一回り体が大きかったし、体力もあるし、知恵もある。大の男3人が掛かっても、あのザマだよ」
 マリア:「そういうあなたは?」
 女戦士:「アタシも他の男の戦士とパーティーを組んでみたけど、とても敵わなかったよ」
 マリア:「じゃあ、どうする?」
 女戦士:「本当はこういう時、軍隊の出番なんだろうけど……」

 民間人が駅の警備をしている憲兵隊に詰め寄っている。

 憲兵:「すいません、地下鉄は管轄外で……!」

 ミッドガード共和国との戦争で兵員が足りず、国内の治安維持要員にも事欠く有り様だ。
 ようやく停戦に漕ぎ付けたものの、兵力を回復させるのは容易なことではない。
 どうにか停戦条約は結べたとはいえ、敵国がそれを破ってまた侵攻して来ないとは限らない。
 その為、国境警備は引き続き厳重にしておく必要があるのだ。

 女戦士:「あのザマだしね」

 若い憲兵はイッチョ前にマシンガンを持ってはいるものの、恐らく銃弾は殆ど入っていないだろう。
 こういう時、普通は予備の弾薬ケースも携帯しているはずだが、それが見当たらないからである。
 腰に提げているサーベルが、実質的な武器だと思われる。

 女戦士:「でね、サハギン攻略に有力な攻撃がある。サハギンに限らず、魚系に効く攻撃魔法といえば……」
 勇太&マリア:「火か!」
 女戦士:「そう。それで確認なんだけど、あなた達、その魔法は使える?」
 勇太:「一応ね」
 マリア:「一通りは使える」
 女戦士:「OK.どうだろう?アタシ達とパーティー組まないかい?もちろん、報酬は山分けだ」
 マリア:「勇太、どうする?」
 勇太:「どうせこのままだと、6番街まで行くのが大変なんだ。僕達で倒せるのなら、そうしよう」
 女戦士:「よし。決まりだね」
 マリア:「ちょっと待った。他に仲間がいるのか?さっき、『アタシ達』と言ったな?」
 女戦士:「1人いる。同じ、女戦士だ。名前をジェシカという。ジェシーと呼んでやってくれ。因みに私はアンジェラ。アンジーでいい」
 マリア:「で、そのジェシーはどこに?」
 女戦士:「今、呼んで来る。ギルドにいるはずだから。ここで待っててくれ」

 そう言うと、女戦士のアンジーはギルドの事務所に向かって行った。

[同日14:00.天候:晴 アルカディアシティ1番街→地下鉄6号線トンネル内]

 

 ジェシー:「アンジー、このコ達かい?私達の仕事のサポートをしてくれる魔法使いってのは……」
 アンジー:「その通り。火の魔法は一通り使えるそうだ。きっと頼りになる」

 ジェシーもまたマリアや勇太より身長の高い女戦士だった。

 ジェシー:「ふーん……」

 ジェシーは勇太とマリアを交互に見た後、特に勇太を見た。

 勇太:「な、何ですか?」
 ジェシー:「アイシャをヤった傀儡師も、男の魔道士だそうだが、知り合いでは無さそうだな」
 勇太:「傀儡師?」
 マリア:「それは、どちらかというと魔術師の一部門で、魔法使いの系統とは違うな」
 アンジー:「多分、違うね。ああ、こいつがジェシー。アタシよりも育ちが悪いから、口悪いと思うけど、許してやってくれな?」
 ジェシー:「アンタに言われたくないよ。……ああ、私、ジェシー。よろしく」
 マリア:「マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット。よろしく」
 アンジー:「さすが魔法使いさんの名前は長いねぇ」
 マリア:「ああ。だから、マリアでいい」
 勇太:「僕は稲生勇太。日本人です」
 アンジー:「日本人ね。だったら、尚更あの傀儡師の知り合いではないよ」
 ジェシー:「そのようだな」
 勇太:「何かあったんですか?まさか、これから敵として立ちはだかるとか……」
 アンジー:「いや、それは無いよ」
 ジェシー:「無いね。悪いね、関係の無い話をしちゃって」
 勇太:「はあ……」
 マリア:「それで、普通に地下鉄の入口から入っていいのか?」
 ジェシー:「待ってくれ。ギルドの依頼書が無いと、そもそもホームにすら行けないと思うから」
 勇太:「入場券とか買う必要は?」
 ジェシー:「何それ?」
 マリア:「勇太、JRじゃないって」
 勇太:「あ、そうか」

 同じ魔界高速電鉄の運営とはいえ、高架鉄道と地下鉄、路面電車では運賃もキップも全く違う。
 高架鉄道には入場券はあるのかもしれないが、地下鉄には恐らく無い。
 何故なら、トークンというコインを購入して、それを自動改札機の投入口に入れ、ターン式のスロットルを回して入場するというシステムだからだ。
 昔のニューヨーク地下鉄と同じ方式である。
 1日乗車券はあるが、その場合は有人改札口を通らなくてはならない。

 ジェシー:「とにかく行こう。こっちだ」

 4人は地下鉄乗り場に行き、6号線の改札口で、ギルドの依頼書を見せた。

 駅員:「対応してくれるのは助かるけど、死なないでくださいよ?」

 高架鉄道の駅員と違い、地下鉄は魔族の職員が多い。
 恐らくはゴブリンの一種であろう駅員が、ニッと笑って入れてくれた。
 かつては魔族と人間も対立していたが、今では人魔一体の王国となっている。
 その中においても、ならず者達が人魔不問で少なからず存在しているわけである。

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