報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「東京での一夜」 2

2022-01-28 15:01:36 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月7日19:30.天候:晴 東京都渋谷区代々木 ホテルサンルートプラザ新宿1Fレストラン]

 サンルートホテルチェーンの中では、高級の部類に属するホテル。
 しかし、世界の富豪から報酬を得ているイリーナにとっては、そこでの料金もはした金なのだろう。
 ホテルのレストランで夕食を取った時、コース料理を注文した。

 イリーナ:「こういうのを食べてると、そろそろ屋敷に帰るんだって思うよね」
 勇太:「そうですね。明日の朝です」
 マリア:「朝早いから朝食は無しか」
 勇太:「うん。朝食が7時からで、乗る電車が8時じゃね……。日本人だけなら早食いして、何とかなるところだけど……」
 マリア:「時間的余裕は無さそうだ。私にはこの他に、師匠を起こすという任務もある」
 イリーナ:「うんうん、頑張ってね」
 マリア:「師匠が自主的に起きて下されば、私のこのミッションはキャンセルされます」
 イリーナ:「5分の延長くらい、いいじゃない」
 マリア:「それを1時間以上も繰り返すから、タチが悪いと言っているのです」
 イリーナ:「気をつけまーす……」
 勇太:「まあまあ、マリア。先生は、これからエステを受けに行かれるから……」
 マリア:「そうだったな」

 最後にデザートや食後のコーヒーを飲んで、それからレストランを出た。

 イリーナ:「一旦、部屋に戻りましょうか。入浴してから行きたいわ」
 勇太:「そうしましょう」

[同日20:30.天候:晴 同ホテル客室(イリーナとマリアの部屋)]

 ソファ付きのツインに入っているマリアとイリーナ。
 イリーナはバスルームに入り、マリアはソファに寝転がってテレビを観ていた。
 衛星放送でアメリカの番組を観ている。
 そこで、面白いものを見つけたからだ。

 イリーナ:「ふぅ~、サッパリしたぁ~。あとはマリア、自由に使っていいわよ」
 マリア:「…………」
 イリーナ:「なぁに?それとも、勇太君の部屋のバスルームでも使う?w」
 マリア:「…………」
 イリーナ:「どうしたの?何かリアクションしてよ」
 マリア:「これ……」
 イリーナ:「ん?」

 マリアがテレビ画面を指さすと、それはアメリカの公開生放送のスタジオだった。
 スーツ姿の司会者がいて、ゲストは……魔道士のローブを着ていた。
 見た目はイリーナと同じ年恰好の女性。
 マリアやエレーナよりも白に近い金髪をしていた。

 マリア:「どうやら超能力を披露するようです」
 イリーナ:「超能力……」

〔「それでは、初めて頂きましょう!まずは、あの壁に掛けられている絵画をこのテーブルの上まで飛ばして頂きます!それでは、どうぞ!」〕

 司会者の言葉は英語です。
 読者の皆様の為、自動的に翻訳しております。
 けして、作者の英語力がゼロだからではありません。

 イリーナ:「多分、上手く行く」
 マリア:「そうですか」

 スタジオの魔道士……というかエスパーと思わしき女性は、右手を差し出すと、絵画に向かって指さした。
 因みに絵画はごく普通の静物画で、花瓶に生けられた赤い薔薇が描かれているだけである。
 大きさはA1ほど。
 すると、絵画が壁から外れてスーッと浮かび、そして女性がクイクイと呼び寄せるような仕草をすると、絵画はそれに従うようにして飛んできた。
 そして、テーブルの上を指さすと、絵画はテーブルの上に降り立った。

〔「Amazing!今の御覧頂けたでしょうか!?もちろん、このようにタネも仕掛けもございません!今度は、ここにございますマネキン人形を歩かせて頂きましょう!この通り、タネも仕掛けも無いですよ!」〕

 イリーナ:「……あー、思い出した。エバート組のクリスだわ。クリスティーナ・エバート」
 マリア:「同門の人でしたか!」
 イリーナ:「アタシと同じ、クロックワーカー(時を紡ぐ者)だわ。……うん、確かアメリカで仕事してるって言ってたわ。前に会ったのは……第2次世界大戦後……だったかな?いや、冷戦終結前に会ってたかも……」
 マリア:「『戦争の 火種で稼ぐ ダンテ流 ロシアと中国 利権が沢山』って、前に勇太がそんな『魔道士短歌』を詠んでましたが……」
 イリーナ:「おー!勇太君も段々うちの法門が分かって来たみたいね!もっとも、そこまで知っちゃったら、もう辞めれないわよ」
 マリア:「確かに……。それにしても、あんなに目立つことしちゃっていいんですか?」
 イリーナ:「魔法をどのように売るかは、魔道士それぞれだからね。アタシは占いで稼いでいるし、クリスみたいに、ああやってエンターテイメントで稼ぐ人もいるってことよ」
 マリア:「でも何だか、演出が嘘くさいですねぇ?」
 イリーナ:「エンターテイメントなんだから、それでいいのよ。もし何かあっても、『実は演出でちたw てへてへw』で逃げれるし」
 マリア:「何だか、魔法を安っぽく売られてるみたいで……」
 イリーナ:「だから、ボッタクリ商売するか、薄利多売するかは、人それぞれだから」

 イリーナは絶対前者であろう。

 イリーナ:「ああ見えても、階級はアタシと同じ、グランドマスター(大魔道師)だからね」
 マリア:「でしょうね!今何か、『これから時間移動します』なんて言ってますけど、本当にそれができるの、クロックワーカーで尚且つグランドマスターだけですからね!」
 イリーナ:「……おっと!こんなことしてる場合じゃないわ。そろそろ予約の時間。アタシはエステに行ってくるからね。まあ、22時過ぎまでは掛かるでしょうね」
 マリア:「はい、行ってらっしゃい」

 マリアは着替えが終わったイリーナを見送った。
 そして、水晶玉を使って、イリーナの後ろを追う。
 イリーナがエレベーターに乗ったのを確認してから、水晶玉の映像を切った。
 今度は、室内の電話機に手を伸ばす。
 それで、勇太の部屋に内線を掛けた。

 マリア:「……あ、もしもし?勇太?師匠、エステに行ったよ。……うん。戻るの、22時過ぎだって。だからさ……うん。勇太の部屋、行ってもいい?……うん。今から行くね」

 電話を切ると、マリアはいそいそと勇太の部屋に行く準備を開始した。
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “大魔道師の弟子” 「東京で... | トップ | “大魔道師の弟子” 「帰りの... »

コメントを投稿

ユタと愉快な仲間たちシリーズ」カテゴリの最新記事