[5月4日21:00.仙台市内のある複合娯楽施設 ユタ&マリア]
スーパー銭湯にも入り、夕食も取った後はそれぞれの時を過ごす面々。
特に夕食会の時に分かったのは、ある程度想定していたのだが、まずイリーナが酒豪であったこと。
それでも酔い潰れたというわけでもないのだが、スーパー銭湯の休憩所で休む姿が確認された。
カンジはユタに気を使ってか、師匠たる威吹を連れ出し、二次会と称して別の店に入って行った。
だから今はユタとマリア、2人きりである。
「マリアさんも、結構飲むんですね?」
「そうか?まあ、確かにユウタ君よりグラス1杯、2杯多くは飲んだが……。妖狐達よりかは全然少なかっただろう?」
「まあ、あいつらは特殊ですから」
因みにカンジは飲酒可かどうかで迷った。
人間の歳では19歳。しかも、実年齢である。
妖狐の世界では15歳元服である。しかし、人間界にも戸籍を持つカンジは、やはり現在の日本の法律である20歳以上を順守した方が良いのではということになった。
蛇足だが、ユタは20歳。
「せっかくですから、楽しみましょう」
「ええ」
2人はゲームコーナーに足を運んだ。
[同日22:00.同場所 ユタ&マリア]
「今更、酔い回って来た」
「大丈夫ですか?外に出て、夜風に当たってましょうか」
「そうだね」
ユタと少し酔いが回って顔を赤らめているマリアは、建物の外に出た。
そろそろ深夜帯になろうかという時間帯。
それでも、大型の駐車場には多くの車が引っ切り無しに出入りしていた。
バスで乗り付けた時はまだ家族連れも見かけたのだが、今ではユタ達と大して歳の変わらぬ若者達で賑わっている。
すれ違う度にマリアに目線をやる若い男性客が多いことから、マリアの容姿はいいのだろう。
ユタが同行していなかったら、相手によってはナンパとかされていたかもしれない。
ただ、今更気づくのはモデルのような師匠イリーナの陰にいたせいだ。
「少し冷えるな……」
「そうですねぇ……。明日なんか、少し肌寒いらしいですよ」
「本当か」
「ええ」
するとマリアは、バッグの中から魔道師のローブを取り出して羽織った。
「温かいですか、それ?」
「ああ」
「逆に夏は暑そうですね」
「ただのローブじゃないんだから……。夏は夏で日焼けはしないし、結構涼しいぞ」
「それも、魔力によるものなんですか?」
「まあ、そんなところだね。師匠くらいになれば、もっと他に使い道が……」
と、その時だった。
「おう!どこ見て歩いてんだ、コラ!」
「!!!」
どこかのチンピラだかの啖呵の声が聞こえた。
いつの間にか、人けの少ない立体駐車場の裏まで来てしまっていたようだ。
「そっちからぶつかってきたんじゃん!」
「ンだと、この女!」
明らかにヤンキーにしか見えない3人の男連れ。
彼らが取り囲むは、1人の中高生くらいの少女……。
「って、あれ、栗原さんじゃない!?」
「ユウタ君の知り合いか?」
「同じお寺のコだよ!鬼族の“獲物”になってる……」
「ああ、あのコが噂の……」
「キノは何をやって……って、地獄界にいるのか!」
そうしている間にも、
「ちょっとこっち来いっ、この!」
「放せよ!」
「ショウちゃんや、車回してくっからこの女連れてどっかマワそうぜ!」
「いいねー!」
などという方向になっている。
「威吹かカンジ君に連絡して……!」
ユタは震える手で、ケータイを取り出した。
しかし、
「それには及ばない」
マリアはバッグに着けていたミク人形とフランス人形のストラップを外し、地面に置いた。
すると、見る見るうちにそれは屋敷などで見かけた元の人形の姿に変わっていった。
手には小さい体に不釣り合いの大きなスピアやサーベルを持っている。
「行って!ミカエラ!クラリス!」
2体の人形は主人たるマリアの命令に従い、ヤンキー達に向かって行った。
「あ?何だ、ありゃ?」
ドンッ!!
「うお!?」
フランス人形のスピアが、ヤンキーの改造車に突き刺さる。
「何だ、この人形は!?」
浮足立つヤンキー達。
最初、ユタは人形達はヤンキー達に警告し、江蓮を救出するのが目的だと思っていた。
ケンカ慣れしているヤンキー達のことだから、そう簡単に引き下がるとも思えなかった。
だから最悪、多少なりとも怪我を負わせてしまうこともやむ無しかとは思った。
だが、
「た……たす……け……!」
「ミカエラ!とどめ刺せ!」
「ちょ、ちょっと、マリアさん!」
ユタはマリアを制止した。
だが、マリアはそんなユタを振り払った。
「殺せ!」
「マリア……さん?」
ユタが見たマリアの顔。特に、目。
一言で言うなら、それはまるで快楽殺人者のよう。
昨日今日で、できるような表情ではなかった。
「マリアさん、ダメだって!!」
ユタが耳元で叫ぶと、
「!」
ふと我に返ったのか、慌てて右手で自分の顔を隠した。
直後に、左手でローブのフードを被る。
ユタが少し離れた現場の方に目をやると、当然大騒ぎになっていた。
生きてるのか死んでるのか分からないヤンキー達が倒れ込んで、周辺が血だらけになっているのも遠くから分かった。
「マリアさん、取りあえずここから離れましょう!」
ユタは茫然となっているマリアの手を引いて、立体駐車場を回り込み、タクシー乗り場に止まっていたタクシーに飛び乗った。
「長町の○○ホテルまでお願いします!」
「はい」
ユタが宿泊先のホテルの場所を伝えると、タクシーは音も無く走り出した。
……まあ、最近流行りのハイブリットカーだからというのもあるが。
タクシー乗り場から公道に出るルート上、どうしてもあの現場の横を通らなくてはならない。
「何があったんだ……?」
運転手に呟きにユタは、
「何か、ケンカがあったみたいですよ」
と、だけ答えた。
ケンカ自体はよくあることなのだろうか、運転手は納得したかのように、
「ああ、そうですか」
と、頷いた。
そして、そもそもの被害者である江蓮。
彼女は目の前で起きた大惨事を目の当たりにし、ショックで座り込んでいたが、一瞬タクシーで通り過ぎる際に目が合った。
(後で、ちゃんと説明した方がいいな……)
最悪、ヤンキー達に乱暴される事態は防げたが、何とも後味が悪い。
敷地内から公道に出る際に長い信号待ちがあったが、その間……いや、公道に出る時も、何台ものパトカーや救急車など、けたたましいサイレンを鳴らした緊急車両とすれ違った。
「……あ、もしもし。カンジ君?……うん、僕だけど」
ユタは思い出したかのように、カンジのケータイに連絡を入れた。
まだ、手の震えが若干残っている。
今さらながら、臆病な性格がもどかしかった。
「……そういうわけで、先にホテルに戻るから。……うん。威吹やイリーナさんにも、伝えておいて。……それじゃ」
ユタは電話を切った。
「……マリアさん、大丈夫ですか?」
「…………」
ユタはマリアに話し掛けたが、返事は無かった。
魔道師のローブに付いているフードを深く被り、ずっと俯いている。
タクシーを降りるまで、マリアはずっとこの調子であった。
スーパー銭湯にも入り、夕食も取った後はそれぞれの時を過ごす面々。
特に夕食会の時に分かったのは、ある程度想定していたのだが、まずイリーナが酒豪であったこと。
それでも酔い潰れたというわけでもないのだが、スーパー銭湯の休憩所で休む姿が確認された。
カンジはユタに気を使ってか、師匠たる威吹を連れ出し、二次会と称して別の店に入って行った。
だから今はユタとマリア、2人きりである。
「マリアさんも、結構飲むんですね?」
「そうか?まあ、確かにユウタ君よりグラス1杯、2杯多くは飲んだが……。妖狐達よりかは全然少なかっただろう?」
「まあ、あいつらは特殊ですから」
因みにカンジは飲酒可かどうかで迷った。
人間の歳では19歳。しかも、実年齢である。
妖狐の世界では15歳元服である。しかし、人間界にも戸籍を持つカンジは、やはり現在の日本の法律である20歳以上を順守した方が良いのではということになった。
蛇足だが、ユタは20歳。
「せっかくですから、楽しみましょう」
「ええ」
2人はゲームコーナーに足を運んだ。
[同日22:00.同場所 ユタ&マリア]
「今更、酔い回って来た」
「大丈夫ですか?外に出て、夜風に当たってましょうか」
「そうだね」
ユタと少し酔いが回って顔を赤らめているマリアは、建物の外に出た。
そろそろ深夜帯になろうかという時間帯。
それでも、大型の駐車場には多くの車が引っ切り無しに出入りしていた。
バスで乗り付けた時はまだ家族連れも見かけたのだが、今ではユタ達と大して歳の変わらぬ若者達で賑わっている。
すれ違う度にマリアに目線をやる若い男性客が多いことから、マリアの容姿はいいのだろう。
ユタが同行していなかったら、相手によってはナンパとかされていたかもしれない。
ただ、今更気づくのはモデルのような師匠イリーナの陰にいたせいだ。
「少し冷えるな……」
「そうですねぇ……。明日なんか、少し肌寒いらしいですよ」
「本当か」
「ええ」
するとマリアは、バッグの中から魔道師のローブを取り出して羽織った。
「温かいですか、それ?」
「ああ」
「逆に夏は暑そうですね」
「ただのローブじゃないんだから……。夏は夏で日焼けはしないし、結構涼しいぞ」
「それも、魔力によるものなんですか?」
「まあ、そんなところだね。師匠くらいになれば、もっと他に使い道が……」
と、その時だった。
「おう!どこ見て歩いてんだ、コラ!」
「!!!」
どこかのチンピラだかの啖呵の声が聞こえた。
いつの間にか、人けの少ない立体駐車場の裏まで来てしまっていたようだ。
「そっちからぶつかってきたんじゃん!」
「ンだと、この女!」
明らかにヤンキーにしか見えない3人の男連れ。
彼らが取り囲むは、1人の中高生くらいの少女……。
「って、あれ、栗原さんじゃない!?」
「ユウタ君の知り合いか?」
「同じお寺のコだよ!鬼族の“獲物”になってる……」
「ああ、あのコが噂の……」
「キノは何をやって……って、地獄界にいるのか!」
そうしている間にも、
「ちょっとこっち来いっ、この!」
「放せよ!」
「ショウちゃんや、車回してくっからこの女連れてどっかマワそうぜ!」
「いいねー!」
などという方向になっている。
「威吹かカンジ君に連絡して……!」
ユタは震える手で、ケータイを取り出した。
しかし、
「それには及ばない」
マリアはバッグに着けていたミク人形とフランス人形のストラップを外し、地面に置いた。
すると、見る見るうちにそれは屋敷などで見かけた元の人形の姿に変わっていった。
手には小さい体に不釣り合いの大きなスピアやサーベルを持っている。
「行って!ミカエラ!クラリス!」
2体の人形は主人たるマリアの命令に従い、ヤンキー達に向かって行った。
「あ?何だ、ありゃ?」
ドンッ!!
「うお!?」
フランス人形のスピアが、ヤンキーの改造車に突き刺さる。
「何だ、この人形は!?」
浮足立つヤンキー達。
最初、ユタは人形達はヤンキー達に警告し、江蓮を救出するのが目的だと思っていた。
ケンカ慣れしているヤンキー達のことだから、そう簡単に引き下がるとも思えなかった。
だから最悪、多少なりとも怪我を負わせてしまうこともやむ無しかとは思った。
だが、
「た……たす……け……!」
「ミカエラ!とどめ刺せ!」
「ちょ、ちょっと、マリアさん!」
ユタはマリアを制止した。
だが、マリアはそんなユタを振り払った。
「殺せ!」
「マリア……さん?」
ユタが見たマリアの顔。特に、目。
一言で言うなら、それはまるで快楽殺人者のよう。
昨日今日で、できるような表情ではなかった。
「マリアさん、ダメだって!!」
ユタが耳元で叫ぶと、
「!」
ふと我に返ったのか、慌てて右手で自分の顔を隠した。
直後に、左手でローブのフードを被る。
ユタが少し離れた現場の方に目をやると、当然大騒ぎになっていた。
生きてるのか死んでるのか分からないヤンキー達が倒れ込んで、周辺が血だらけになっているのも遠くから分かった。
「マリアさん、取りあえずここから離れましょう!」
ユタは茫然となっているマリアの手を引いて、立体駐車場を回り込み、タクシー乗り場に止まっていたタクシーに飛び乗った。
「長町の○○ホテルまでお願いします!」
「はい」
ユタが宿泊先のホテルの場所を伝えると、タクシーは音も無く走り出した。
……まあ、最近流行りのハイブリットカーだからというのもあるが。
タクシー乗り場から公道に出るルート上、どうしてもあの現場の横を通らなくてはならない。
「何があったんだ……?」
運転手に呟きにユタは、
「何か、ケンカがあったみたいですよ」
と、だけ答えた。
ケンカ自体はよくあることなのだろうか、運転手は納得したかのように、
「ああ、そうですか」
と、頷いた。
そして、そもそもの被害者である江蓮。
彼女は目の前で起きた大惨事を目の当たりにし、ショックで座り込んでいたが、一瞬タクシーで通り過ぎる際に目が合った。
(後で、ちゃんと説明した方がいいな……)
最悪、ヤンキー達に乱暴される事態は防げたが、何とも後味が悪い。
敷地内から公道に出る際に長い信号待ちがあったが、その間……いや、公道に出る時も、何台ものパトカーや救急車など、けたたましいサイレンを鳴らした緊急車両とすれ違った。
「……あ、もしもし。カンジ君?……うん、僕だけど」
ユタは思い出したかのように、カンジのケータイに連絡を入れた。
まだ、手の震えが若干残っている。
今さらながら、臆病な性格がもどかしかった。
「……そういうわけで、先にホテルに戻るから。……うん。威吹やイリーナさんにも、伝えておいて。……それじゃ」
ユタは電話を切った。
「……マリアさん、大丈夫ですか?」
「…………」
ユタはマリアに話し掛けたが、返事は無かった。
魔道師のローブに付いているフードを深く被り、ずっと俯いている。
タクシーを降りるまで、マリアはずっとこの調子であった。
今日は日曜日だから、ケンショーブロガーも法華講ブロガーも自分の信心活動で忙しく、更新しないだろうと思いきや、セロリさんはしている。
おみそれしました。
名前を出さない、場所が曖昧な所は何かあるということ。
ヤンキーがケンカ沙汰起こしてパトカーが駆けつけた所も、私が見ていたのでネタにさせてもらいました。
ネタ提供、どうもありがとう!