報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「多宝富士大日蓮華山」 1

2022-08-30 15:45:50 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月19日10:45.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺・登山事務所]

 勇太達を乗せた車は、国道139号線から西富士道路を経由して大石寺へと向かった。
 ルート的には、先日の勇太とマリアを乗せた下山バスの逆である。

 
(御登山する度、いつも雨か曇に見舞われ、富士山など殆ど拝めない作者が奇跡的に撮れた1枚。何年か前に撮影したもの。つまり、それ以降、現在に至るまで、晴天の御登山はできていないということである。前回は台風直撃だったし!)

 藤谷:「よーし、着いたぞ」

 車は登山事務所の南側にある駐車場に止まった。
 登山道(参道)を北上し、総門東交差点を左折した所にある。

 勇太:「ありがとうございます」
 藤谷:「それじゃ、早速行こう。マリアさんはどうする?」
 マリア:「私はここで待ってます。……あ、いや、トイレはありますか?」
 藤谷:「あるよ。途中まで、一緒に行こう」

 3人は車から降りた。
 登山事務所の建物に向かう。
 事務所の建物に、外トイレが付いている(ホームセンターのトイレ同様、建物の中からではなく、外から出入りするタイプ)。

 マリア:「ああ、ありがとう」
 藤谷:「じゃあ、俺達は事務所に行くか」
 勇太:「はい」

 2人の信徒は登山事務所の中へ。

 藤谷:「マリアさん、本当に日本語上手くなったよな?」
 勇太:「そうですね。今ではもう、あまり自動通訳魔法具を使わなくても良くなりました」
 藤谷:「それは素晴らしい」

 窓口に行って、藤谷は添書を差し出した。

 藤谷:「東京の正証寺です。2人分、お願いします」
 所化僧:「それではお2人合わせて、4000円の御開扉御供養をお願い致します」
 藤谷:「はい」

 藤谷はもはや沖縄県限定の通貨と化している2000円札を2枚差し出した。
 しかも、全くシワの無いピン札である。
 一瞬、所化僧も目を丸くしたが、すぐに2000円札だと気付いた。

 所化僧:「4000円ちょうど、お預かりします」
 勇太:「あんなもの、わざわざ用意して……」
 藤谷:「びっくりしたね。今や、東京の銀行でも取り扱ってる所、少ないんだね。5軒は回ったよ」
 勇太:「ご、ごけん……も」
 藤谷:「『銀行に訪問折伏に行って来る』という名目で、会社を抜け出すのが大変だった」
 勇太:「当たり前じゃないですか!」

 父親の藤谷秋彦から、『そんなことしてるヒマがあったら、唱題でもしろ!』と、怒られた藤谷春人の姿を勇太は想像した。
 所化僧は内拝券にナンバリングをし、2枚綴りの状態でそれを藤谷に渡した。

 所化僧:「それでは、お気をつけて」
 藤谷:「ありがとうございます」

 2枚綴りの内拝券は1枚に切って、勇太はその1枚を受け取った。
 半券の部分に教区番号と寺院番号、寺院名を記載する欄がある。
 そこは信徒が自分で記入する。
 教区番号と寺院番号については、記帳台にファイルが置いてあり、その中に一覧表があるので、それで確認する。

 藤谷:「東京第3布教区だけ正証寺1つしか無いから、凄く分かりやすいな」
 勇太:「いつになったら、第1布教区に戻れるんですかね?」
 藤谷:「マリアさんを御受戒できたらじゃないか?」

 そんなことを話しながら、事務所の外に出ると……。

 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ……!」
 藤谷:「わーっ!冗談です!御受戒は計画的に!」
 勇太:「そりゃ一緒に信仰できたら嬉しいけど!」
 マリア:「火系魔法、爆撃魔法、雷撃魔法、どれがいい?」
 勇太:「ごめん、ウソです!」

 この後、車に戻り、駐車場を移動した。
 尚、登山事務所の窓口業務は主に所化僧が行っていることが多いが、行事の時などは例外もある。
 因みに夏期講習会の折、登山した作者達がそこへ行ってみると、所属の報恩坊の御住職が係を務めておられたという例外もあった。

[同日11:00.天候:晴 大石寺新町駐車場→“なかみせ”]

 登山事務所の駐車場から、少し移動する。
 大石寺裏門のすぐ近くにある新町駐車場という所である。
 同じ大石寺の信徒用駐車場であるのだが、何しろ日蓮正宗総本山たる大石寺の境内は広い。
 車で登山した信徒の場合、境内の移動に車を使うこともザラである。

 勇太:「昔は布教講演の会場が、どこの坊なのか探すのに苦労したりもしましたが、今は配信形式なんですね」
 藤谷:「まあ、楽にはなったよな。こうして、車の中で聴けるんだから」
 マリア:(師匠の話より、よく分からん……)

 車の中でオンライン法話を聴いた後は……。

 藤谷:「少し早いが、昼食にしよう。少し早い方が空いていていい」
 勇太:「まあ、そうですね。マリアもいい?」
 マリア:「私は、ついて来てるだけだから」

 そう言って、マリアも車から降りた。

 勇太:「それにしても、暑いですね」
 藤谷:「これでも山の上だから、市街地の地表よりは涼しいはずなんだがな」

 そういう藤谷が、1番暑そうな服装をしている。
 ワイシャツは開襟状態であるものの、黒いジャケットを羽織っているからだ。
 御丁寧にも金色のバッジを着け、金色のネックレスを着けている所はどう見てもヤの付く自由業の人である。
 さすがにサングラスは外しているが。
 強面であるが、あくまでも本業は土建業である。

 藤谷:「こちゃーす!」
 女将:「はい、いらっしゃいませ」
 藤谷:「おっ、確かに空いている。向こうのテーブル席にするか」
 勇太:「はい」
 藤谷:「遠慮しないで、好きなモン頼んでくれ」
 勇太:「それじゃ僕は、チャーシュー麺で」
 藤谷:「向こうの御屋敷では食えないヤツか?」
 勇太:「そうですね」
 藤谷:「俺もチャーシュー麺にするか。マリアさんは?」
 マリア:「私はカレーライスで」

 同調圧力に屈しないイギリス人。

 勇太:「今日は、中等部講習会の後のせいか、随分と静かですね」
 藤谷:「ああ。平日は基本、空いているものなんだが、コロナ前はここぞとばかりに、外国人信徒が多く詰めかけてたな。まるで、日本じゃなかったみたいだよ」

 事実である。
 今では信じられないのだが、特に平日は、日本人信徒よりも外国人信徒の方が多かったという事が多々あったのだ。
 正直、異常だったと思う。
 世界広布としての観点から見れば、その成果であると言えるのだが、その後のコロナ禍の結果を見れば、あれは本当に大聖人様が望まれた光景だったのだろうかと作者は個人的に思う。
 そして、現在の状態が望ましいとも思うのである。

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1 コメント

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あとがき (雲羽百三)
2022-08-30 16:48:23
 因みに、「東京第三布教区」「正証寺」は実在しません。
 作中における、架空の教区と末寺です。
 正証寺のモデルは、基本的には存在しません。
 作者が今まで参詣させて頂いた寺院の数々を素に、「所属信徒数、数百人程度の中小規模法華講支部」をイメージしたものです。
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