[3月15日07:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]
枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。
愛原:「う……ん……」
私は手を伸ばしてアラームを止めた。
高橋:「先生、おはようございます……」
愛原:「おう、おはよう。よく眠れたか?」
高橋:「いや……あんま眠れなかったです……」
愛原:「そうか」
これが自分の家ならもう少し寝てるところだが、ここは斉藤社長の家。
あまりグースカ寝てはいられない。
愛原:「取りあえず起きたら、布団くらい畳んでおこう」
高橋:「はい」
私達は布団を畳むと、洗面道具を持って洗面所に向かった。
高橋:「先生、悪い夢でも見たんですか?ちょいうなされてましたよ?」
愛原:「マジか。いや、実はオマエが『切り裂きパール』にメッタ刺しにされる夢を見てさぁ……。縁起悪い夢で申し訳ないな」
高橋:「マジっスか。いや、あいつなら有り得る話です」
ほお?
珍しく高橋が否定しない。
いつもだったら、『何言ってんスか、先生!あんなクソ女のナイフ、軽く交わしてボコして見せますよ!』とでも言うだろうに。
愛原:「他のメイドさんは、どうして警察の御厄介になったんだろう?」
高橋:「ツインテールの方は多分ヤクですね。三つ編みの方は暴行とか傷害でしょう。セミロングはマ○コガバガバっぽいんで、ヤリマン罪じゃないスかね」
愛原:「よく分かるな?てか何だよ、ヤリマン罪って……」
まあ、売春とかそういう事を言いたいのだろう。
高橋:「俺の『鼻』が正しかったらの話です」
新庄運転手が言っていたが、ここのメイドさん達は刑事犯の前科があるらしい。
で、高橋の『鼻』が正しいと仮定するならば、やはり霧崎さんは……。
愛原:「すると霧崎さんは……」
高橋:「殺人っスよ。それも1人じゃないです。未成年だったから死刑が免れただけで、今だったら間違いなく死刑になりますよ」
愛原:「ユルユルの少年法万歳、だな」
高橋:「全くです」
その高橋も少年法に守られたクチだ。
高橋:「だから他のメイドからもハブられてるじゃないですか。殺人が一番重い罪ですからね」
愛原:「なるほどな」
しかし、成人なら死刑判決が出されてもおかしくなかった霧崎さんを、どうして斉藤社長は拾ったのだろう?
新庄運転手のような交通事犯なら、まだ期せずして加害者になってしまったという情状もあるが、刑事犯の、それも一番罪の重い霧崎さんを選んだ理由とは……?
顔を洗って再び客間に戻り、そこで服に着替える。
高橋:「それにしても先生、昨日の社長の話、本当ですかね?」
愛原:「昨日のいつのどの話だ?」
高橋:「風呂上がりに、社長の晩酌に付き合ったじゃないですか。その時、社長が『現在流行している新型コロナウィルスは、間違いなく日本中に蔓延する。政府も非常事態宣言を出すことだろう。その時、リサから抽出したウィルスでワクチンが開発できればいいのだが』って話です」
愛原:「リサの場合、生物兵器だからな。敵をTウィルスに感染させるものを体内に持っている。そしてそのウィルスは、他の病原体としてのウィルス全てを駆逐する……らしいけど、そもそもがなぁ……」
新型コロナウィルスそのものが、『武漢ウィルス』の異名を持つ、中国で極秘開発されたウィルス兵器が正体だという噂もある。
もしそれが本当なのだとしたら、アメリカで開発されたTウィルスやGウィルスで本当に対抗できるのかという不安はある。
もし仮にできたとしても、それを一般人に応用できるのかどうかだ。
高橋:「非常事態宣言が出されたら、堂々とマグナムぶっ放せますかね?」
愛原:「新型コロナウィルスがゾンビウィルスに変異したらな。だけど今はまだ、ただの肺炎ウィルスだ。余計な銃火器の使用は禁止だぞ?」
高橋:「それは残念です」
着替えてから食堂に行こうとすると、階段の上から霧崎さん、絵恋さん、リサが降りて来た。
霧崎:「愛原様、おはようございます」
愛原:「ああ、おはよう」
高橋:「よ、よう」
しかし、霧崎さんは高橋のリアクションをガンスルーする。
絵恋:「おはようございます」
愛原:「おはようございます。昨夜はリサと一緒に寝た?」
絵恋:「ダブルベッドのおかげで余裕です」
リサ:「サイトー、意外と寝相悪い」
絵恋:「悪かったわね」
霧崎:「リサ様のおかげで、ベッドからは落ちずに済みましたね」
リサ:「危うく私が落ちるところだった」
絵恋:「ごめんなさい!」
2人は制服ではなく、私服を着ている。
Tシャツに短パンというラフな服装だ。
あれで寝たわけではないはずだが……。
愛原:「あれ?この2人の制服、洗ってくれるんですよね?」
霧崎:「はい。あとはアイロン掛けをするだけですので、もう少々お待ちください。お帰りになる頃には仕上がります」
愛原:「あ、そう」
ダイニングに行くと、まだ斉藤社長はいなかった。
尚、斉藤社長の奥さんは母親、つまり絵恋さんから見れば母方の祖母に当たるが、それの介護の為に帰省しているという。
本当は斉藤社長もお見舞いに行きたいらしいのだが、新型コロナウィルスの感染を警戒して行けないとのことだ。
これも昨夜話してくれた。
台所ではメイドさん達が食事の支度をしている。
着ているメイド服は霧崎さんも含め、全員同じデザインの物を着ている。
秋葉原に行けば見られそうなデザインだ。
斉藤秀樹:「おー、皆さんお揃いですな」
愛原:「社長、おはようございます」
秀樹:「おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
愛原:「ええ、おかげさまで」
私は一応、社交辞令的に返しておいた。
まあ実際、高橋よりは眠れた方だろう、きっと。
秀樹:「またうちの新庄に送らせますので、それまでどうぞゆっくりして行ってください」
愛原:「はい。ありがとうございます」
恐らくリサ達の制服のクリーニングが終わった時点で帰ることになるだろう。
私は朝食のトーストにかぶり付いた。
厚切りトーストの上、マヨネーズが四角く乗っていて、その中に目玉焼きが入っている。
愛原:「これは美味い。家でも食べてみたいな」
高橋:「明日、俺が作りますよ」
そんなことを話していると……。
新庄:「あの、旦那様……」
新庄運転手が遠慮がちに入って来た。
新庄:「お食事中、申し訳ございません」
秀樹:「一体どうしたのかね?」
新庄:「実は……」
新庄運転手が社長に耳打ちする。
秀樹:「何だって!?それは本当か!?」
新庄:「はい。先ほど確認して参りました」
一体、何があったのだろうか?
枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。
愛原:「う……ん……」
私は手を伸ばしてアラームを止めた。
高橋:「先生、おはようございます……」
愛原:「おう、おはよう。よく眠れたか?」
高橋:「いや……あんま眠れなかったです……」
愛原:「そうか」
これが自分の家ならもう少し寝てるところだが、ここは斉藤社長の家。
あまりグースカ寝てはいられない。
愛原:「取りあえず起きたら、布団くらい畳んでおこう」
高橋:「はい」
私達は布団を畳むと、洗面道具を持って洗面所に向かった。
高橋:「先生、悪い夢でも見たんですか?ちょいうなされてましたよ?」
愛原:「マジか。いや、実はオマエが『切り裂きパール』にメッタ刺しにされる夢を見てさぁ……。縁起悪い夢で申し訳ないな」
高橋:「マジっスか。いや、あいつなら有り得る話です」
ほお?
珍しく高橋が否定しない。
いつもだったら、『何言ってんスか、先生!あんなクソ女のナイフ、軽く交わしてボコして見せますよ!』とでも言うだろうに。
愛原:「他のメイドさんは、どうして警察の御厄介になったんだろう?」
高橋:「ツインテールの方は多分ヤクですね。三つ編みの方は暴行とか傷害でしょう。セミロングはマ○コガバガバっぽいんで、ヤリマン罪じゃないスかね」
愛原:「よく分かるな?てか何だよ、ヤリマン罪って……」
まあ、売春とかそういう事を言いたいのだろう。
高橋:「俺の『鼻』が正しかったらの話です」
新庄運転手が言っていたが、ここのメイドさん達は刑事犯の前科があるらしい。
で、高橋の『鼻』が正しいと仮定するならば、やはり霧崎さんは……。
愛原:「すると霧崎さんは……」
高橋:「殺人っスよ。それも1人じゃないです。未成年だったから死刑が免れただけで、今だったら間違いなく死刑になりますよ」
愛原:「ユルユルの少年法万歳、だな」
高橋:「全くです」
その高橋も少年法に守られたクチだ。
高橋:「だから他のメイドからもハブられてるじゃないですか。殺人が一番重い罪ですからね」
愛原:「なるほどな」
しかし、成人なら死刑判決が出されてもおかしくなかった霧崎さんを、どうして斉藤社長は拾ったのだろう?
新庄運転手のような交通事犯なら、まだ期せずして加害者になってしまったという情状もあるが、刑事犯の、それも一番罪の重い霧崎さんを選んだ理由とは……?
顔を洗って再び客間に戻り、そこで服に着替える。
高橋:「それにしても先生、昨日の社長の話、本当ですかね?」
愛原:「昨日のいつのどの話だ?」
高橋:「風呂上がりに、社長の晩酌に付き合ったじゃないですか。その時、社長が『現在流行している新型コロナウィルスは、間違いなく日本中に蔓延する。政府も非常事態宣言を出すことだろう。その時、リサから抽出したウィルスでワクチンが開発できればいいのだが』って話です」
愛原:「リサの場合、生物兵器だからな。敵をTウィルスに感染させるものを体内に持っている。そしてそのウィルスは、他の病原体としてのウィルス全てを駆逐する……らしいけど、そもそもがなぁ……」
新型コロナウィルスそのものが、『武漢ウィルス』の異名を持つ、中国で極秘開発されたウィルス兵器が正体だという噂もある。
もしそれが本当なのだとしたら、アメリカで開発されたTウィルスやGウィルスで本当に対抗できるのかという不安はある。
もし仮にできたとしても、それを一般人に応用できるのかどうかだ。
高橋:「非常事態宣言が出されたら、堂々とマグナムぶっ放せますかね?」
愛原:「新型コロナウィルスがゾンビウィルスに変異したらな。だけど今はまだ、ただの肺炎ウィルスだ。余計な銃火器の使用は禁止だぞ?」
高橋:「それは残念です」
着替えてから食堂に行こうとすると、階段の上から霧崎さん、絵恋さん、リサが降りて来た。
霧崎:「愛原様、おはようございます」
愛原:「ああ、おはよう」
高橋:「よ、よう」
しかし、霧崎さんは高橋のリアクションをガンスルーする。
絵恋:「おはようございます」
愛原:「おはようございます。昨夜はリサと一緒に寝た?」
絵恋:「ダブルベッドのおかげで余裕です」
リサ:「サイトー、意外と寝相悪い」
絵恋:「悪かったわね」
霧崎:「リサ様のおかげで、ベッドからは落ちずに済みましたね」
リサ:「危うく私が落ちるところだった」
絵恋:「ごめんなさい!」
2人は制服ではなく、私服を着ている。
Tシャツに短パンというラフな服装だ。
あれで寝たわけではないはずだが……。
愛原:「あれ?この2人の制服、洗ってくれるんですよね?」
霧崎:「はい。あとはアイロン掛けをするだけですので、もう少々お待ちください。お帰りになる頃には仕上がります」
愛原:「あ、そう」
ダイニングに行くと、まだ斉藤社長はいなかった。
尚、斉藤社長の奥さんは母親、つまり絵恋さんから見れば母方の祖母に当たるが、それの介護の為に帰省しているという。
本当は斉藤社長もお見舞いに行きたいらしいのだが、新型コロナウィルスの感染を警戒して行けないとのことだ。
これも昨夜話してくれた。
台所ではメイドさん達が食事の支度をしている。
着ているメイド服は霧崎さんも含め、全員同じデザインの物を着ている。
秋葉原に行けば見られそうなデザインだ。
斉藤秀樹:「おー、皆さんお揃いですな」
愛原:「社長、おはようございます」
秀樹:「おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
愛原:「ええ、おかげさまで」
私は一応、社交辞令的に返しておいた。
まあ実際、高橋よりは眠れた方だろう、きっと。
秀樹:「またうちの新庄に送らせますので、それまでどうぞゆっくりして行ってください」
愛原:「はい。ありがとうございます」
恐らくリサ達の制服のクリーニングが終わった時点で帰ることになるだろう。
私は朝食のトーストにかぶり付いた。
厚切りトーストの上、マヨネーズが四角く乗っていて、その中に目玉焼きが入っている。
愛原:「これは美味い。家でも食べてみたいな」
高橋:「明日、俺が作りますよ」
そんなことを話していると……。
新庄:「あの、旦那様……」
新庄運転手が遠慮がちに入って来た。
新庄:「お食事中、申し訳ございません」
秀樹:「一体どうしたのかね?」
新庄:「実は……」
新庄運転手が社長に耳打ちする。
秀樹:「何だって!?それは本当か!?」
新庄:「はい。先ほど確認して参りました」
一体、何があったのだろうか?
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