報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「急展開」

2020-08-04 19:48:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日10:00.天候:曇 東京都八丈町 八丈島底土港]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 行方不明になった助手の高橋を追って、八丈島までやってきた私達。
 情報筋によると、高橋は八丈島を経由して、更に別の離島に向かったという。
 私達は先に出港した青ヶ島行きの“あおがしま丸”を見送った。
 “あおがしま丸”は先ほど私達が乗ってきた船よりは小さかったものの、数十人は乗れるくらいの大きさだった。
 それでも見ていた限り、その船に乗り込んだ乗客は数名ほどしかいなかった。
 それも、八丈島か青ヶ島のいずれかの島民らしき人達。
 私達みたいに、本土から来たと思しき乗客の姿は見られなかった。
 時刻表上は、この“あおがしま丸”が出ると、高橋が渡ったという別の離島行きの船が入港することになっている。
 ところが、その船はいつまで経っても来なかった。
 それもそのはず。

 係員:「確認しましたが、やはり今日も欠航のようです」

 チケット売り場の係員が複雑そうな顔をして私達に伝えて来た。

 愛原:「今日も?今日もってことは、昨日も欠航だったんですか?」
 係員:「そうなんです」
 愛原:「海が荒れてるせいじゃないですよね?現にこうやって私達の橘丸は接岸できたし、さっきの“あおがしま丸”も延発したとはいえ、出港できたじゃないですか」
 係員:「それが、向こうの島側と全く連絡が取れず、向こうの港がどうなっているかが分からないので出港できないんです」
 愛原:「ちょっと待ってください。こいつがここから、あの島に渡ったはずなんです。欠航だったんですか?」
 係員:「そうです」

 私は高橋の写真を係員に見せながら言った。
 係員としては、確かにこのような感じの男を見たと答えた。
 だが、欠航だと分かると、すぐどこかに行ってしまったという。

 愛原:「向こうの島と連絡が取れないというのは、どういうことなんですか?」
 係員:「いくら向こうに電話を掛けても、無線を飛ばしても応答が無いんです」
 愛原:「どういうことなんだ、それは?」
 係員:「こちらとしても全く状況が掴めないので、今、町や警察の方に対策をお願いしているところです」
 霧崎:「言いましたでしょう?向こうは危険な状態ですと」
 愛原:「霧崎さん……」

 私達は窓口から離れ、ターミナル内の椅子に移動した。

 愛原:「霧崎さんは何を知ってるんだ?高橋といい、キミといい、俺をバカにしてるのか!」
 斉藤:「パール、教えてあげて。先生に意地悪しないで」
 霧崎:「御嬢様、かしこまりました。ですが、私は特に意地悪しているつもりはありません。恐らく、私の言わんとしていることは今日中に且つ自動的に分かると思います」
 愛原:「それを今、手動で教えてくれることはできないか?」
 霧崎:「分かりました。本物のマサは、例の島には渡っていません。恐らく、罠でしょう」
 愛原:「罠!?」
 霧崎:「マサが怯えていた相手は私です。少し、脅かし過ぎましたかね。でも、マサは離島どころか、この八丈島にすら渡っていないと思います」
 愛原:「どうしてそう思うんだ?」
 霧崎:「先生こそ、マサがここまでするようなヤツに見えますか?それこそ、(暴走)族時代の友達を頼るのがセオリーでしょう。今頃、族時代の友達の家にでも匿ってもらっているんじゃないでしょうか?アイツはそういうヤツです。マサのプライベートのことにつきましては申し訳無いですが、先生より私の方が知っているつもりです。にも関わらず、いつの間にか先生を出し抜いて八丈島だの、離島だのと逃げる行動力はマサには無いと思います」
 愛原:「しかし、高橋が島に渡ったという情報をくれたのは、その仲間だぞ?木村君だ」

 すると、霧崎さんは笑い出した。
 おかしくて仕方が無いといった感じだ。

 霧崎:「先生、いい加減気づきましょうよ?あいつがマサの仲間なわけないじゃないですか」
 愛原:「ええっ!?」
 霧崎:「マサは族時代の元仲間とも、フツーに友達付き合いをしていることは御存知だと思います。私も10代の頃は、マサの仲間と敵対して戦ったものです。だから、私のことは知れ渡っています。さすがに悪名が高いので、今はこうしてメイドとして働き、マサの彼女として付き合っていると紹介してもらいました。にも関わらず、木村というヤツは私のことを知らなかったんです。もちろん、私もあいつのことは知りません。だから私は、あいつが嘘をついているとすぐに分かりました」
 愛原:「何で教えてくれなかったんだ!?」
 霧崎:「気づいていて、気づいていないフリをされていると思ったもので……。まさか、ガチだったとは……あーっははははははーっ!!」

 く、くそっ……!

 斉藤:「ちょっとパール、笑い過ぎ」
 霧崎:「も、申し訳ありません、御嬢様」
 愛原:「……その、木村というヤツは一体誰だったんだ?」
 霧崎:「先生を罠にハメようとした連中の手先でしょう。仲間なのか、あるいはただカネで雇われただけなのかは知りませんけど」

 私は改めて木村というヤツに電話してみた。
 だが、相変わらず繋がらない。
 と、そこへ電話が掛かってきた。
 相手は高野君だ。

 愛原:「も、もしもし?!」
 高野:「あ、先生。ご旅行中のところ、申し訳ありません」
 愛原:「高野君こそ、休みだろう?どうしたんだ?」
 高野:「テレビを観ていたら、木村ってヤツが逮捕されたっていうニュースが流れてたもので。もしかして、先生に情報を流したあの木村じゃないかと思いまして……」
 愛原:「何をやったんだ?」
 高野:「暴行、恐喝ですね。どうやら半グレメンバーのようです。それも、マサとは敵対していたグループですよ。それがマサの友達で情報提供なんておかしいと思いまして……」

 私は頭を抱えた。
 私の探偵としての腕の無さには自分でも参るくらいだ。

 愛原:「じゃあ、コンビニの前で連れ去られた高橋ってのは誰なんだ?」
 高野:「それはマサ本人なんじゃないですか?木村ってヤツがその時のメンバーを装ってただけで」

 ハイエースから降りて高橋を連れ去ったのは2人。
 しかし、ハイエースには他にも何人か乗っていたようだった。

 愛原:「俺、帰った方がいいか?」
 高野:「その方がいいかもしれませんね。もしかしたら、先生を離島に誘き寄せて何かしようとしている奴らがいて、そいつらの罠かもしれません」
 愛原:「で、高橋はどこにいる?」
 高野:「それは分かりませんけど……」

 と、そこへまた別の着信が入った。

 愛原:「悪い。また着信があった。一旦切るわ」

 私が電話を切ると、相手は善場主任だった。

 善場:「もしもし、愛原所長ですか?」
 愛原:「あ、はい。そうですけど……」
 善場:「事務所でお会いしたかったのですが、今日は休みでしたね。高野所員に聞いたら、八丈島に旅行に行かれたということで∴…」
 愛原:「……お土産は何がいいですか?」
 善場:「いえ、そういうことではありません。所長も情報を得たのですか?その八丈島からアクセスできる島……青ヶ島とは別の島に、旧・日本アンブレラが秘密研究所を建てていたという情報です」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「もしかして、そこへ調査へ行かれる最中ですか?」
 愛原:「え、えっと……」
 善場:「だとしたら、直ちに中止してください。あそこは今、バイオハザードが発生して大変なことが起きてるんです。今、BSAAが対応に向かっている最中ですから!」

 と、そこへ上空からヘリコプターの音が何機も聞こえて来た。

 リサ:「見てサイトー、ヘリコプターが一杯」
 斉藤:「本当ね」
 霧崎:「あれはBSAAのヘリですよ」

 愛原:「う、うん。幸い今、八丈島で足止め食らってる。船が欠航で良かったよ」

 欠航の原因、それか!

 善場:「八丈島ですか。……なるほど。私もこれから八丈島に向かいます。よろしければ、ちょっとお話よろしいでしょうか?」
 愛原:「ええ、ええ。私の失敗談、笑い話ならいくらでもお話し致しますよ!ええ!」
 善場:「はあ?」

 私が電話で話している最中、霧崎さんはニヤけた顔をしていた。
 予想通りの展開になって、喜んでいるかのようだった。

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