報恩坊の怪しい偽作家!

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“戦う社長の物語” 「劇団ロイド再開」

2017-10-25 10:42:55 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月18日10:55.天候:晴 東京都豊島区某所 敷島エンター劇場]

 公演:劇団アンドロイド(仮称)

 演目:初音ミクのシンデレラ・改

 配役:シンデレラ…初音ミク 王子様…KAITO 継母…エミリー 義姉…MEIKO 魔法使い…巡音ルカ 国王…ロイ 警備兵…鏡音レン メイド…鏡音リン スナイパー…シンディ ナレーター:アルエット
(※太字は従来との変更点)

 1ベルが鳴り響く劇場内。
 1ベルとは開演5分前に鳴らすベル、またはブザーのことを言う。
 最近ではベルやブザーではなく、BGMや音声で行うことも多い(映画館など)。
 敷島エンター劇場では1ベルとしてその演目のメインテーマのインストゥルメンタルを流し、2ベルをブザーとしている。

〔「御来場の皆様に、お知らせ致します。開演5分前となりました。ロビーなどでお待ちのお客様は、お席にお戻りください。開演に先立ちまして、お客様方にお願いを申し上げます。……」〕

 観客A:「脚本と配役が微妙に変わってるけど、一体何がどうなったのかねぇ?」
 観客B:「初音ミクの階段落ちと柱倒しの対策じゃね?」
 観客C:「逆にあれ、結構面白かったのにw」
 観客D:「つか、このシンディ嬢のスナイパーって何だよ?シンデレラにそんなもんいたっけ?」

 そしてVIPルームでは……。

 敷島俊介:「今度は大丈夫なんだろうね?」
 敷島孝夫:「大丈夫だと思います。昨日の通し稽古は、かなり上手く行きました。(敷島峰雄)会長が心配して来て下さいましたが、大絶賛でしたよ」
 敷島俊介:「それならいいが……。ちっ、私も出張さえ無ければ通し稽古を見れたのに……」

 こうして、劇団アンドロイドの再演が始まった。
 変更点の無い所に関しては省略する。
 1番最初、シンデレラが継母と義姉に暴言を受けるシーンについては殆ど変わらない。
 シンディがエミリーに変わっただけだ。
 元が同型の姉妹機、エミリーも遺憾なく継母の意地悪ぶりを発揮した。
 底意地の悪い義姉役のMEIKOも変わっていない。
 要するに、継母の配役が変わっただけで、序盤のストーリー展開は変わらないということだ。
 実は脚本だけだと、継母役すら変更は無かった。
 後半のストーリー大幅改変に伴い、騎士団長の役が無くなったエミリーがスナイパー役だったのである。
 しかし、スナイパーと言えば遠距離からのライフル射撃を得意とする。
 如何に同型の姉妹機と言えど、射撃の性能は大きく異なる。
 エミリーはハンドガンやショットガンなどの近接攻撃を得意とし、遠距離からの狙撃を得意としていたのはシンディであった為(前期型では暗殺もよくやっていたからだろう)、敷島が変更させた。
 変更させても設定を変えるだけですぐ対応可能のロイドは、そこが長所だった。

 警備兵:「はい、並んで並んで!ここから先は王宮です!招待状を確認します!招待状が無い方は入れませんよ!」

 召使から警備兵役となったレン。
 よく中世ヨーロッパの兵士の鎧などを用意できたものだと思うが、そこは映画制作なども行っている四季グループ。
 そこから衣装を借りて来れたわけだ。

 義姉:「お母様、渋滞してるわ。こんなことなら、もっと早く出てくれば良かった」
 継母:「慌てちゃいけないよ。まだ舞踏会には時間がある。もっとも、あの灰かぶりが、もっとテキパキとあなたのドレスの着付けができたら、早く出て来れたのにねぇ……」

 ナレーター:「兵士達による招待状の確認や、手荷物検査が終了した継母達は、ようやく王宮の中へと馬車を進めることができました」

 警備兵:「ふぇ〜っ、これで全部入ったかなぁ?……あー、疲れた。おーい!そろそろ城門を閉めてくれ!」
 シンデレラ:「ま、待ってください!」
 警備兵:「ん?あれ?まだいたのか?……おい、門を開けろ!」
 シンデレラ:「遅れてすみません!」
 警備兵:「舞踏会参加者の方ですか?」
 シンデレラ:「はい!」
 警備兵:「招待状の確認をします。招待状は?」
 シンデレラ:「こ、これです!」

 ナレーター:「招待状はカボチャの馬車の中に入っていました。それを確認した兵士ですが、偽物と気づくはずがありません」

 警備兵:「なるほど。確かに国王陛下のサインもある。……何か聞いた話より、参加者の数が多いような……?」
 シンデレラ:「ギクッ!」
 警備兵:「まあ、ボクの勘違いかな。招待状は本物だし。まあいいや。じゃあ、どうぞ中へ」
 シンデレラ:「あ、ありがとうございます!」

 ナレーター:「こうして、シンデレラもまた舞踏会へと足を運ぶことができたのです。……しかし、当の王子様は乗り気ではありませんでした」

 王子:「父上!何故このような下らないことを!?結婚相手くらい、後で探します!」
 国王:「まあ、そう言うな。これはお前の誕生日パーティーなんだぞ?そのついでに、『志あらん者は、我が息子の恋心を射止めよ』と触書に添えてみたまでだ」
 王子:「それが余計だと申しているのです!私にはあなたの第一王子として、国政の課題を解決しなければならない責務があります!誕生日を祝って下さるそのお気持ちはありがたく頂戴致しますが、婚活などという滑稽な余興は必要ありません!」
 国王:「まあ、いいからいいから。いいですかー?見てごらんなさい。どうでしょう?……触書を見た『志あらん者』達が、続々と集結している。お前も今宵は好みの女性と踊って来い」
 王子:「何を仰いますか、父上!好みの女性など、あの中には……」

 ナレーター:「するとどうでしょう?王子様の目がギラリと光り、1人の女性をロックオンしたではないですか」

 俊介:「どうしてもアンドロイドとして、ロックオンするあれだけはやりたかったのだね?」
 孝夫:「え、ええ……まあ……はい」

 王子:「いたっ!」
 国王:「なにっ!?」
 警備兵:「ぬねの!」
 国王:「うわっ!?な、何かね、キミ!?」
 警備兵:「失礼しました。殿下、至急お耳に入れたいことが……」
 国王:「後にしたまえ。今、殿下は好みの女性の所へ高速移動中だ」
 警備兵:「ええっ!?」
 王子:「失礼。そこの貴女、私と踊って頂けませんか?」
 シンデレラ:「わ、わた、わた、私とですか!?ね、ね、願っても無い光栄ですっ!」

 プシューッ!(ミクの両耳から煙が出る)

 村上:「平賀君、またヒートアップしてるぞ!」
 平賀:「そろそろミクのボディも交換の時期なのかなぁ……」

 ナレーター:「あの王子様が会場の片隅にいたシンデレラを直接指名したことで、会場はどよめきました。そして、それは継母と義姉も見ていたのです」

 継母:「あ、あれはシンデレラ!?な、何故!?」
 義姉:「くぅーっ……!!」

 ナレーター:「驚愕と嫉妬を隠し切れない2人をよそに、王子様とシンデレラは時を経つのも忘れて、楽しく踊りました。しかし、時間は止まってくれません。ついに、まもなく12時を知らせる鐘が城中に鳴り響きました」

 シンデレラ:「はっ、いけない!もう時間だわ!」
 王子:「心配要らないよ。舞踏会は、まだまだ続くさ」
 シンデレラ:「そうじゃないんです!私、早く帰らなくちゃ!王子様、ごめんなさい!」
 王子:「ま、待ってくれ、シンデレラ!」
 シンデレラ:「王子様、さようなら!」
 王子:「待ってくれ!MX深夜アニメ観たかったら、うちで観てけば!?」

 村上:「何ゆえ、Tokyo MXの深夜アニメ???」
 平賀:「KAITOの方を先に修理しないとダメだ、これ!」

 そして、ついにあの因縁のシーンの前触れに差し掛かる。

 シンデレラ:「きゃーっ!」

 何とミク、前の通りに階段落ちをやらかす。

 俊介:「お、おい!あれもNGではないのかね?」
 孝夫:「いえ、大丈夫です。演出家さん達もなかなか強かなもので、あえて安全を確保した上で、わざと階段落ちをやらせるということになりました。その証拠に、前回と違って、ミクが頭から落ちてはいません」
 俊介:「な、なるほど……!」

 そうしているうちに王子様役のKAITO、階段の下に残された片方のガラスの靴を寂しそうに拾い上げる。

 王子:「おお、シンデレラ……。私の恋心を初めて掴んでくれた人……。何故、私から逃げるようにして去ったのか……。必ず……必ずや私は貴女を捜し出し、結婚を申し込もう!」

 俊介:「う、うむ。さすがに、今回は終電とか深夜急行バスとかは言わなかったな」
 孝夫:「と、当然ですよ。うちのボーカロイド達は皆優秀ですから……ハハハハハハ……」

 と言いつつ、何故か冷や汗びっしょりの敷島孝夫だった。

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