[2月某日09:00.天候:晴 長野県白馬村郊外・マリアの屋敷 稲生勇太&マリアンナ・ベルフェ・スカーレット]
玄関からエントランスホールに入って、左に曲がると観音開きのドアがある。
そこを開けると大食堂に出るわけだが、そのテーブルの前に座って談笑するのはマリアと同期の魔道師達。
いたのはエレーナとクリスティーナ、そしてもう1人は稲生も名前は分からない。
ただ、右目が金色の髪で隠れていた。
稲生が入って来ると、途端にピタッと話し声が止む。
「! あ、あの……ちょっと、出掛けてきますので……」
魔女達に冷たい目で見られる稲生。
別に稲生が何かしたわけではなく、クリスティーナともう1人の魔女は明らかに人間時代、性暴力の被害者だったからだろう。
「ああ。気をつけて」
マリアは普通に答えた。
「どこまで行くの?」
別に男嫌いではないエレーナは(人間時代、特に性被害者ではなかったからか)、マリアより笑みを浮かべた。
「大町市までちょっと買い物に……」
「私のホウキ、使う?」
「い、いえ!僕は空飛ぶ魔法は使えないので、普通にバスと電車で行きます」
「迎えが欲しかったら連絡して」
と、マリア。
「はい。一応、最終バスに間に合うようにはするつもりです。それじゃ」
早く行けという顔をクリスティーナと目隠れ魔女にされていたので、稲生は逃げるように大食堂を出た。
「せっかく、初乗り5000円っていう交渉をしようと思ったのに」
エレーナは苦笑を浮かべて、クリスティーナ達に言った。
「日本のタクシーと同じ、2キロくらいか?」
マリアも口元を歪めるように笑う。
「どうやって、メーター取り付けるんだよ……」
クリスティーナも、エレーナの商売根性に呆れた。
「マリアンナも、どうしてあの男と?ただの弟弟子でいいじゃん」
クリスティーナは眉を潜めた。
「ユウタは弟子入りする前から、私と会ってたからね。確かに、感覚は違う」
「イリーナ先生、絶対、マリアンナとユウタがくっつくことを狙ったと思うよ?」
と、エレーナ。
「……呪いなら、いつでも相談して……」
右目を前髪に隠した魔女は、黒い水晶球を出した。
エレーナはその前髪をかき上げた。
「あうっ!や、やめてください!!」
右目は大きな切り傷の跡があり、完全に潰れていた。
「アリスも大変な目に遭ったのは分かるけど、その黒い水晶球は無闇に出すものじゃないと思うよ」
「ごめんなさい……。それじゃ……。スプラッタショーの……始まり?」
今度はドクロの付いた魔法の杖を出す。
それがチェンーソーに変化した。
「最近、性的虐待のクソ親の“粛清”ができなくて、溜まり気味らしいよ」
と、クリスティーナ。
彼女もまた“魔女”の目つきになった。
「怖い怖い。何か情報あったら教えてあげるよ」
エレーナは肩を竦めた。
「ふー、怖かったー……」
稲生は人形達が除雪した私道を歩いて、バス停まで向かった。
(怖い魔女さん達だぁ……)
そう思いながら、片側1車線の山道沿いにポツンとあるバス停でバスを待つ。
時刻表には午前中に1本、昼間に1本、午後に1本あるだけの寂しい路線であることが分かる。
やってきたバスに乗り込むと、車内はガラガラだった。
これでも白馬村の中心部に行くに従って、まあまあ乗客は増えて行くのだが。
(それにしても……)
稲生は先ほどの屋敷内でのことを思い出した。
クリスティーナ達は恐らく、マウンティングを掛けてきたのだろう。
エレーナは既に稲生をよく知っているからいいのだが、クリスティーナとアリスと呼ばれた少女は稲生のことをよく知らない。
稲生に対して警戒心を露わにすることで、稲生がどんな男かを見極めようとしたのだと思われる。
既に人を殺したことのあるような目つきだが、特に右目の隠れていた魔女はまだ幼さが残る感じであったのだが、一体何があったのだろうか。
[同日16:40.天候:晴 長野県白馬村郊外の山道 稲生勇太]
街での用向きを終え、予定通りに最終バスに乗ることができた。
電車の本数は少なく、バスの本数も雀の涙ほどしか無いが、多くの魔道師が交通不便な場所に住んでいることが多いので、マリアの屋敷の場合はまだマシな方である。
さすがに仙人ではないので、車や徒歩でもアクセス不可な場所に住んでいる者はそうそういない。
一応は、鉄道やバスが通っている所に住んでいるのが通常である。
(おっ、帰ったんだ)
稲生は1番後ろの席に座っていた。
もうまもなく下車バス停に着こうという時、上空を2つのホウキが飛んでいたのが見えた。
1つはエレーナだが、もう1つはクリスティーナか?
(もう少し待てば夕食の時間……あ、ダメか)
エレーナはともかく、クリスティーナとアリスが男嫌いなのであれば、稲生がいる時点でアウトか。
例え同じ一門の者であったとしても、一緒に食事ができるほどまだ打ち解けていないということだ。
エレーナが帰ったのは、クリスティーナ達が帰るから自分もというノリだろうか。
それとも他に用事が……。
〔「峠道〜」〕
プシュー、ガタッという音がして前扉の折り戸が開く音がする。
アルピコ交通もワンステップバス、ノンステップバスが導入され、稲生が乗っているワンステップバスは前扉は基本的に折り戸である。
稲生が降りてしまうと、もう他に乗客はいなかった。
乗客のいなくなったバスは稲生を降ろし、バスは山の方へと走り去っていった。
こんな路線でも運行が続けられているのは、このバスの終点である山の向こうに集落があるからだろう。
稲生はバスを降りると、除雪されたバス通りから、一見して除雪されていない林道のような場所に入った。
RV車でチェーンを巻いていても、スタットしそうなほど雪深い道である。
まるで廃道のようだ。
しかし稲生は構わずザクザクと進む。
新雪が降り積もって、何だか足を取られそうな勢いであるが、何故かズボッと沈みこまない。
この雪自体が魔法による幻であることは、秘密である。
稲生が屋敷に向かうまでに薄暗くなっているのだが、途中に街灯が点いている。
稲生が近づくと点灯し、通過すると消える。
途中で道が分岐しているが、稲生にだけ正解を教えるというわけだ。
「ただいま帰りましたー」
正面玄関の観音扉を開けて、稲生は帰宅した。
「お、帰って来たか」
マリアが吹き抜け階段の上から降りて、稲生を出迎えた。
「さっきはクリスティーナ達が無礼なことをして申し訳無い」
「いえ、大丈夫です。事情は知ってますから。もう帰ったんですね」
「ああ。理由は……そこまで知っているんなら、言うまでもないな」
「エレーナさんが帰ったのは?」
「大きな荷物運搬の仕事が入ったから帰る、そうだ」
「まだ『魔女の宅急便』やってたんですか、あの人は」
「忙しいヤツだよ」
「てか、あまり大きいとホウキで運べないのでは?」
「あ、いや、大きいというのは荷物が大きいとかじゃなく、稼ぎが大きいという意味ね」
「ああ、なるほど。何か、怪しいなぁ……」
「怪しいものを運ぶのが、本来の『魔女の宅急便』だから。宮崎アニメをイメージしてはダメ」
「はあ、なるほど……。ああ、そうそう。マリアにさんにお土産が」
「?」
「新しいカチューシャです」
稲生は緑色のカチューシャを取り出した。
「前回は赤いのでしたけど、今度は緑にしてみました。ほら、マリアさん、よく緑色のブレザー着るでしょう?それと合うかなーって」
前回赤いのにしたのは、逆に緑のブレザーとのコントラストを考えてみた結果であったが、今度はあえて合わせるというものらしい。
「あ、ありがとう……。後で着けてみる」
マリアは照れているのか、顔を赤くして受け取った。
「せっかくだから、ちゃんと髪を洗ってからにしたい。さっき、クリスティーナ達と走り回って、少し汗をかいたから」
「走り回った?」
「魔道師は体力が無いのがベタな法則だから、少し運動して体力を付けようってことになって……」
「そうでしたか。まあ、気が向いた時にでも着けてくださいよ。カチューシャ、いっぱい持ってるみたいですね」
「まあね。ありがとう」
稲生はマリアと良い関係を築いているようだ。
まだエレーナを除く他の魔女達からは警戒されているようだが、いつかは打ち解けられる日が来るのだろうか。
玄関からエントランスホールに入って、左に曲がると観音開きのドアがある。
そこを開けると大食堂に出るわけだが、そのテーブルの前に座って談笑するのはマリアと同期の魔道師達。
いたのはエレーナとクリスティーナ、そしてもう1人は稲生も名前は分からない。
ただ、右目が金色の髪で隠れていた。
稲生が入って来ると、途端にピタッと話し声が止む。
「! あ、あの……ちょっと、出掛けてきますので……」
魔女達に冷たい目で見られる稲生。
別に稲生が何かしたわけではなく、クリスティーナともう1人の魔女は明らかに人間時代、性暴力の被害者だったからだろう。
「ああ。気をつけて」
マリアは普通に答えた。
「どこまで行くの?」
別に男嫌いではないエレーナは(人間時代、特に性被害者ではなかったからか)、マリアより笑みを浮かべた。
「大町市までちょっと買い物に……」
「私のホウキ、使う?」
「い、いえ!僕は空飛ぶ魔法は使えないので、普通にバスと電車で行きます」
「迎えが欲しかったら連絡して」
と、マリア。
「はい。一応、最終バスに間に合うようにはするつもりです。それじゃ」
早く行けという顔をクリスティーナと目隠れ魔女にされていたので、稲生は逃げるように大食堂を出た。
「せっかく、初乗り5000円っていう交渉をしようと思ったのに」
エレーナは苦笑を浮かべて、クリスティーナ達に言った。
「日本のタクシーと同じ、2キロくらいか?」
マリアも口元を歪めるように笑う。
「どうやって、メーター取り付けるんだよ……」
クリスティーナも、エレーナの商売根性に呆れた。
「マリアンナも、どうしてあの男と?ただの弟弟子でいいじゃん」
クリスティーナは眉を潜めた。
「ユウタは弟子入りする前から、私と会ってたからね。確かに、感覚は違う」
「イリーナ先生、絶対、マリアンナとユウタがくっつくことを狙ったと思うよ?」
と、エレーナ。
「……呪いなら、いつでも相談して……」
右目を前髪に隠した魔女は、黒い水晶球を出した。
エレーナはその前髪をかき上げた。
「あうっ!や、やめてください!!」
右目は大きな切り傷の跡があり、完全に潰れていた。
「アリスも大変な目に遭ったのは分かるけど、その黒い水晶球は無闇に出すものじゃないと思うよ」
「ごめんなさい……。それじゃ……。スプラッタショーの……始まり?」
今度はドクロの付いた魔法の杖を出す。
それがチェンーソーに変化した。
「最近、性的虐待のクソ親の“粛清”ができなくて、溜まり気味らしいよ」
と、クリスティーナ。
彼女もまた“魔女”の目つきになった。
「怖い怖い。何か情報あったら教えてあげるよ」
エレーナは肩を竦めた。
「ふー、怖かったー……」
稲生は人形達が除雪した私道を歩いて、バス停まで向かった。
(怖い魔女さん達だぁ……)
そう思いながら、片側1車線の山道沿いにポツンとあるバス停でバスを待つ。
時刻表には午前中に1本、昼間に1本、午後に1本あるだけの寂しい路線であることが分かる。
やってきたバスに乗り込むと、車内はガラガラだった。
これでも白馬村の中心部に行くに従って、まあまあ乗客は増えて行くのだが。
(それにしても……)
稲生は先ほどの屋敷内でのことを思い出した。
クリスティーナ達は恐らく、マウンティングを掛けてきたのだろう。
エレーナは既に稲生をよく知っているからいいのだが、クリスティーナとアリスと呼ばれた少女は稲生のことをよく知らない。
稲生に対して警戒心を露わにすることで、稲生がどんな男かを見極めようとしたのだと思われる。
既に人を殺したことのあるような目つきだが、特に右目の隠れていた魔女はまだ幼さが残る感じであったのだが、一体何があったのだろうか。
[同日16:40.天候:晴 長野県白馬村郊外の山道 稲生勇太]
街での用向きを終え、予定通りに最終バスに乗ることができた。
電車の本数は少なく、バスの本数も雀の涙ほどしか無いが、多くの魔道師が交通不便な場所に住んでいることが多いので、マリアの屋敷の場合はまだマシな方である。
さすがに仙人ではないので、車や徒歩でもアクセス不可な場所に住んでいる者はそうそういない。
一応は、鉄道やバスが通っている所に住んでいるのが通常である。
(おっ、帰ったんだ)
稲生は1番後ろの席に座っていた。
もうまもなく下車バス停に着こうという時、上空を2つのホウキが飛んでいたのが見えた。
1つはエレーナだが、もう1つはクリスティーナか?
(もう少し待てば夕食の時間……あ、ダメか)
エレーナはともかく、クリスティーナとアリスが男嫌いなのであれば、稲生がいる時点でアウトか。
例え同じ一門の者であったとしても、一緒に食事ができるほどまだ打ち解けていないということだ。
エレーナが帰ったのは、クリスティーナ達が帰るから自分もというノリだろうか。
それとも他に用事が……。
〔「峠道〜」〕
プシュー、ガタッという音がして前扉の折り戸が開く音がする。
アルピコ交通もワンステップバス、ノンステップバスが導入され、稲生が乗っているワンステップバスは前扉は基本的に折り戸である。
稲生が降りてしまうと、もう他に乗客はいなかった。
乗客のいなくなったバスは稲生を降ろし、バスは山の方へと走り去っていった。
こんな路線でも運行が続けられているのは、このバスの終点である山の向こうに集落があるからだろう。
稲生はバスを降りると、除雪されたバス通りから、一見して除雪されていない林道のような場所に入った。
RV車でチェーンを巻いていても、スタットしそうなほど雪深い道である。
まるで廃道のようだ。
しかし稲生は構わずザクザクと進む。
新雪が降り積もって、何だか足を取られそうな勢いであるが、何故かズボッと沈みこまない。
この雪自体が魔法による幻であることは、秘密である。
稲生が屋敷に向かうまでに薄暗くなっているのだが、途中に街灯が点いている。
稲生が近づくと点灯し、通過すると消える。
途中で道が分岐しているが、稲生にだけ正解を教えるというわけだ。
「ただいま帰りましたー」
正面玄関の観音扉を開けて、稲生は帰宅した。
「お、帰って来たか」
マリアが吹き抜け階段の上から降りて、稲生を出迎えた。
「さっきはクリスティーナ達が無礼なことをして申し訳無い」
「いえ、大丈夫です。事情は知ってますから。もう帰ったんですね」
「ああ。理由は……そこまで知っているんなら、言うまでもないな」
「エレーナさんが帰ったのは?」
「大きな荷物運搬の仕事が入ったから帰る、そうだ」
「まだ『魔女の宅急便』やってたんですか、あの人は」
「忙しいヤツだよ」
「てか、あまり大きいとホウキで運べないのでは?」
「あ、いや、大きいというのは荷物が大きいとかじゃなく、稼ぎが大きいという意味ね」
「ああ、なるほど。何か、怪しいなぁ……」
「怪しいものを運ぶのが、本来の『魔女の宅急便』だから。宮崎アニメをイメージしてはダメ」
「はあ、なるほど……。ああ、そうそう。マリアにさんにお土産が」
「?」
「新しいカチューシャです」
稲生は緑色のカチューシャを取り出した。
「前回は赤いのでしたけど、今度は緑にしてみました。ほら、マリアさん、よく緑色のブレザー着るでしょう?それと合うかなーって」
前回赤いのにしたのは、逆に緑のブレザーとのコントラストを考えてみた結果であったが、今度はあえて合わせるというものらしい。
「あ、ありがとう……。後で着けてみる」
マリアは照れているのか、顔を赤くして受け取った。
「せっかくだから、ちゃんと髪を洗ってからにしたい。さっき、クリスティーナ達と走り回って、少し汗をかいたから」
「走り回った?」
「魔道師は体力が無いのがベタな法則だから、少し運動して体力を付けようってことになって……」
「そうでしたか。まあ、気が向いた時にでも着けてくださいよ。カチューシャ、いっぱい持ってるみたいですね」
「まあね。ありがとう」
稲生はマリアと良い関係を築いているようだ。
まだエレーナを除く他の魔女達からは警戒されているようだが、いつかは打ち解けられる日が来るのだろうか。
また在日半島人ヤクザか。
いい加減、日本のガンだから半島に帰ってくれ。
てか、朝鮮人のくせに日本人名使うのやめなさい!
茜さん、聞いてます?
ダーリンさんにも伝えておいてくださいよ。
JR東北新幹線・仙台→大宮までのキップ(乗車券、指定席特急券などが1枚になったもの)、皮膚科に通院して処方された水虫の薬、歯科に通院した際に頂いた歯磨き粉の試供品。
収穫できなかったもの。
PHP研究所より出版されている某ボカロ漫画。
アニメイト、メロンブックスなどの専門店だけでなく、その他大型書店にも置いていないとはどういう御仏智じゃい!
皮膚科通院中、手持ちのスマホでアマゾンにて注文す。