報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「シンディの腕交換」

2016-12-05 10:14:23 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月26日12:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 アリス:「シンディの腕の交換が終わったわ。後は、動作テストを行うだけ。それで何も異常が無ければ終了だけど……」
 敷島:「見た目は変わらないな。アルエットの腕がモデルだって聞いたのに」
 アリス:「そりゃ、アルエットの腕のサイズそのまま付けるわけにはいかないでしょう?」
 敷島:「それもそうだな」
 九海(このみ):「いらっしゃいませー。メニューをどうぞ」
 敷島:「お?メニューがタブレットになったな。俺はビーフカレーでいいや。アリスは?」
 アリス:「ハンバーグセット」
 敷島:「よし」

 敷島はメイドロイド九海が手にしているタブレットの画面をタップした。

 九海:「ご注文ありがとうございます。今ならオイル交換無料です」
 敷島:「飲まねーよw」

 現在、シンディは研究室の中に横たわっている。

 アリス:「前の腕はどうする?」
 敷島:「国家公安委員会が処分しろだってさ」
 アリス:「分かったわ」
 敷島:「うちの最高顧問の爺さんのヤツも、新しい腕の方で造るわけだな?」
 アリス:「そういうことになるね。ただ、アタシはタッチしないよ」
 敷島:「えっ、どうして?」
 アリス:「アタシは研究・開発部門だから。製造部門はまた別になるからね。今回のシンディのヤツは別に製造するわけじゃないし、どちらかというと実験に近いものがあるから、アタシの出番ってわけ。ま、もっとも、シンディそのもののオーナーがアタシだからってのもあるんだけど」
 敷島:「そういうものなのかぁ……」
 アリス:「設計データがちゃんとあって、その通りに造れば何の問題も無いのであれば、あとは製造部門に委ねられるってわけね」
 敷島:「メイドロイドがそうだもんな」

 海シリーズ(名前に海と付く個体)は試作機または量産先行機であり、こちらは直接平賀が手掛けたものだが、そうではないものは工場生産の量産機であり、生産ラインの視察はしたものの、今は直接平賀がタッチしているわけではない。
 それと同じことだ。

 アリス:「午後からは直接実験を行うから、タカオはトニーを見てて」
 敷島:「分かった分かった」

[同日現地時間同時刻 天候:晴 フィリピン共和国ケソン市 ロボット大サーカス会場跡地]

 団長:「みんな!急いで撤収作業しろよ!?昨日は大雨でロクに作業できなかったんだから!」
 団員A:「それにしても、1ヶ月も興行した町を離れるのは寂しいものですね、団長?」
 団長:「まあ、そういうな。今度の興行先は日本だ。やっとロボット達も、涼しい環境で芸ができるってもんだ。……おい、そこ!気をつけろ!前もXのヤツが倒してブッ壊したんだから!」
 団員B:「はい!」
 団員C:「あの、団長!ちょっといいですか!?」
 団長:「あ、何だ?」
 団員D:「故障したロボットは修理に出しましたが、うちにあんなロボットいましたっけ?」
 団長:「なに?どんなヤツだ?1ヶ月も興行させてもらえるってんで、かなりロボットの数を増やしたからなぁ……」
 団員D:「少年のようなロボットなんですが……」
 団長:「少年?アンソニーは修理中だろ?修理が終わり次第、次の興行先の日本に送ってもらう予定のはずだ」
 団員D:「アンソニーには全然似ていません。白人の少年みたいな感じです。アンソニーは中東系ですから」
 団長:「こりゃ……!」

 撤去作業が進むサーカス会場の片隅に、半壊した少年のロボットが倒れていた。
 電源は完全に落ちている。

 団員E:「団長は御存知ですか?」
 団長:「アレックスに似てなくもないな……」
 団員E:「えっ?でも、アレックスは去年壊れて処分したはずじゃ……」
 団長:「ふーむ……Dが見つけたのか?」
 団員D:「はい。たまたまCと一緒にトラックを取りに行こうとしたら、あそこに倒れてたんです」
 団長:「ふーん……」
 団員E:「どうします、団長?一応、警察に届けましょうか?」
 団長:「……いや。よく見たらこいつは、アレックスの代わりができるかもしれねぇ。修理したらまた動けるようになるだろ。こいつも連れて行くぜ」
 団員D:「いいんですか?もし他に所有者がいたとしたら……」
 団長:「うるせぇっ!つべこべ言わねぇで、こいつを早いとこ見つからねぇうちに修理トラックに乗せるんだ!早くしろ!」

 団員達は急いでその少年ロボットを運んだ。
 ロボットというより、完全に人間の姿をしたロイドである。
 その損傷した腕は擦りむいている為に、判読不明になっていたが、名前がペイントされていた。
 『ルディ』と。

[同日15:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 ロボット未来科学館]

 アルエット:「私と同じだね!嬉しいな!」
 シンディ:「腕は軽くなって動きやすくなったけど、何か変な感じ」

 シンディは右手の人差し指からレーザーを照射し、的を焼き切った。
 普段の革手袋はしておき、レーザーを使用する際は手袋を外す。
 面倒ではあるが、こうすることで普段使いではないということを外部にアピールする狙いがある。

 敷島:「これなら国家公安委員会も文句は無いだろう」

 敷島は腕組みをしてうんうん頷いた。

 シンディ:「もう少しデータを蓄積しないと、上手く的に当てられません。あと、照射レベルの調整法も『学習』したいので、少し練習させてもらっていいですか?」
 アリス:「ええ。さすがにこれは非公開だから、地下の倉庫でやってね」
 敷島:「あと、シンディで何か変更点はあるか?」
 アリス:「いくらレザーブラストに交換したからって、このままではシンディの攻撃力は落ちたままになるからね。エミリーのデータを流用させてもらったわ」
 敷島:「具体的には?」
 アリス:「エミリーは近接戦が強いように設定されてるでしょう?」
 敷島:「エミリーに組み付かれたら2度と生還できないと思え、というのは俺が体を張って証明した」

 まだ南里研究所があった頃、エミリーが落雷の直撃を受け、そのショックで制御不能になり、暴走して敷島を追い回したことがあった。
 そんなエミリーの組み付きから生還した唯一の人間が敷島だ。
 エミリーが敷島を恐れて、ユーザー登録から外れたにも関わらず、今でも忠実に命令を聞く最大の理由である。

 アリス:「いや、アンタじゃ逆に説得力無いから。つまり、シンディも近接戦が得意なように設定したってこと」
 敷島:「なるほど。リアル・ストリートファイターってわけでもあるってことだな。それの実験はしないのか?」
 アリス:「後でダミー人形用意してやってみるよ」
 敷島:「せっかくだから、本当に格ゲーの女キャラの必殺技でも仕込んでみるか?」
 アリス:「やめときなって。作者が後で訴えられる恐れがあるから」
 敷島:「そっちかよ!」

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