報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「腕交換終了」

2016-12-05 13:37:20 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月26日17:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 敷島:「おー、平賀先生の所も終了しましたか。なるほどなるほど……」

 閉館の音楽が館内に鳴り響く中、敷島は自分のスマホで平賀と連絡していた。
 エミリーの方も腕の交換が終わったらしい。

 平賀:「こちらは動作テストも順調でしたが、そちらはどうですか?」
 敷島:「あー、それなんですけどねぇ……」

 廊下の向こうが騒がしい。

 シンディ:「マスター!レーザーが止まりません!どうしたらいいですか!?」
 アリス:「こっちに向けないで!」
 西山館長:「か、回路を切れーっ!」
 敷島:「……しばらくの間、動作テストは続きそうです」
 平賀:「うちはまだ合法的な火炎放射器は残したままでしたから、その分、エラーも出にくかったんですが、シンディの場合は全部取り外しだから、エラーが出たままでしたかねぇ……」
 敷島:「こっちも火炎放射器を搭載した方がよろしいでしょうか?」
 平賀:「エミリーの専売特許ですからダメですよ」
 敷島:「ありゃりゃ……」

 敷島は肩を竦めた。

 敷島:「帰りは遅くなるのか……」
 平賀:「頑張ってください。それより、敷島さん、マルチタイプ新造計画の方はどうなりました?」
 敷島:「あー、もう決定ですよ。アルエットみたいな小型のヤツだったら個人所有でもいいでしょうが、エミリーやシンディタイプを個人所有は絶対危険だと何度も言ったんですが……」
 平賀:「アルエットも、あまり個人所有はお勧めできませんけどね。敷島さんの御親族なら、全員強そうだから大丈夫なんじゃないですか?」
 敷島:「いや、そんなことないですって」

 敷島は否定した。
 そして、電話を切った。
 するとまた掛かってくる。

 敷島:「今度は何だ?」

 画面を見ると、鷲田警視からになっていた。

 敷島:「もしもし?シンディの腕なら、合法(笑)ものに交換しましたよ?」
 鷲田:「何だ、その(笑)って?本当に合法的なものに交換したんだろうなぁ?」
 敷島:「心配無いですって。今度こそ公安委員会の目を誤魔化し……もとい、納得できるものになってますよ」
 鷲田:「何だか怪しいが、その件については保留にしておこう。それより、2つ情報が入ったんだ。いいニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?」
 敷島:「じゃあ、悪いニュースからお願います」
 鷲田:「フィリピンの警察本部が、大規模な麻薬組織の摘発を行ったんだが、その本部アジトにロボットの残骸が転がっていたそうだ」
 敷島:「ああ!この前、ニュースでやってましたよ」
 鷲田:「発展途上国で人間そっくりのロボットなんて、そうそういないからな。一応、警視庁からフィリピン警察に頼んで、そのロボットの残骸を送ってもらったんだ」
 敷島:「正体は何でした!?」
 鷲田:「ジャニスとかいう、クソ女の方の残骸だった。どうも麻薬組織の幹部の話によると、護衛として雇ったんだが、どうも態度が悪くて破壊したらしいな」
 敷島:「相変わらず、人間の言う事聞かないままだったんですねぇ……」
 鷲田:「もう2度と復元なんかさせんぞ」
 敷島:「その方がいいと思います。ではもうジャニスが暴れることはないということですね」

 アメリカの研究所における戦いで、敷島の『走る司令室』ごと特攻してくるという確率は計算できなかったようで、実際それをやられたジャニスは避けることもできずにその攻撃をまともに受けた。
 敷島を含む人間達への遺恨を漏らしながら壊れた。

 敷島:「……それがいいニュース?」
 鷲田:「そうだ。人類の敵となるロボットが1つ壊れた。いいニュースだろ?」
 敷島:「じゃあ、悪いニュースって?」
 鷲田:「ジャニスの片割れ、ルディが相変わらず行方不明だ。現地警察が捜索しているが、欠片1つ見つからん」
 敷島:「それじゃ、まだフィリピンのどこかに潜伏してるってことですね」
 鷲田:「うむ。できればそいつも、日本で爆破解体してやりたいところだがな」
 敷島:「うーむ……」
 鷲田:「とにかく、情報提供だ。あんたも一応、正義の為にロボットを使うという心意気は分かったからな。私なりに応えてみた」
 敷島:「ようやく御理解頂けて、ありがたい限りです。万が一、ルディが日本国内に潜入してきた際は、うちのシンディを使ってでも捕まえてみせますよ」
 鷲田:「何なら、またバス特攻しても構わんぞ」
 敷島:「また都営バス使ったら、今度こそ東京都交通局から永久乗車禁止を通達されそうだ」
 鷲田:「誰が都バス使えといった。廃車寸前のバスをタダ同然で購入するとか、色々調達法はあるだろう」
 敷島:「あ、そうか」

[同日21:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島:「おーい、着いたぞー」

 敷島はマンションの地下駐車場に車を止めた。

 シンディ:「マスター」
 アリス:「あー、疲れた……」
 敷島:「泊まり込みにならなくて良かったなァ!」
 シンディ:「ご迷惑をお掛けしました」
 敷島:「いや、シンディのせいじゃない。気にするな」

 敷島達は車を降りて、エレベーターに向かう。

 敷島:「それより、レザーブラストの扱い方は大丈夫か?」
 シンディ:「ええ、何とか……」

 シンディの場合は右手の人差し指と左手の人差し指からレーザーを出せるように改造された。
 左手の有線ロケットパンチは引き続き使用できるが、出力の関係上、ロケットパンチを使いながら左側のレーザーは使えない。
 エミリーは左手は引き続き有線ロケットパンチ専用、右手の中央3本の指からのレーザー照射に留まった。
 よって、両手を使えるシンディの方が照射半径は広いということになる。
 目からビームという案もあったが、カメラを搭載している関係上、また片目はライトの役目も果たしている以上、どれかを潰す必要があるので、それは見送られた。

 敷島:「ただいまァ」
 二海:「お帰りなさいませ。お夕食の準備が整ってございます」
 敷島:「ありがとう。アリス、とにかく着替えてこいよ。早いとこ食べよう」
 アリス:「うん……」

 シンディは右手の手袋を外して、時々人差し指の第一関節部分を引っ込ませる。
 引っ込ませることで、そこからレーザーを発射することができるのだ。

 敷島:「おい、今レーザー出すなよ」
 シンディ:「もちろんです」
 敷島:「それにしても、ルディのヤツはどこに行ったんだ?」

 敷島はダイニングテーブルの自分の椅子に座りながらテレビのスイッチを入れた。

〔「……フィリピンでの長期興行を終えたロボット大サーカスですが、12月公演は日本に決まり、船便にてフィリピンを出航しました」〕

 敷島:「ロボット大サーカスか。俺はボーカロイドにアイドル活動させてるが、似たようなこと考えてる人間が他にいるんだな」
 シンディ:「世界で活躍してるだけに、敷島エージェンシーより先を行ってるって感じですね」
 敷島:「悪かったな。うちだって、ルカやMEIKOが海外レコーディングに行ったりしてるぞ」
 シンディ:「まあね」
 敷島:「そうだ。後学の為に、俺も1度ロボットサーカスを見に行ってみるか。今後のネタにできるかもしれない」
 シンディ:「萌に火の輪潜りさせる?」
 敷島:「それじゃ、まんまサーカスのネタを丸パクリだろ。それじゃダメだ」

 敷島は肩を竦めながら、二海の持ってきたスープに口をつけた。

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