報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「角無し娘の休養」

2024-02-21 15:53:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月28日15時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・リサの部屋]

 リサ「うーん……」

 午後になってからリサの『体調』は悪化し、自室で寝ていた。
 それは女性特有の生理によるものだということで、リサは部屋に籠った次第。
 いつもはここまで重くないのだが、今日は久しぶりに重い日であった。

 リサ「むー……」

 部屋の外からは無粋な男達の声が聞こえて来る。
 やれ、『水道の配管が……』とか、『スペースの関係が……』とか聞こえて来る。
 今日は午後から、内装工事会社が見積もりを取る為に現地調査に来るのだった。
 その為、愛原の声も聞こえて来る。
 いつもなら興味を持ってホイホイ向かうリサだが、今回はそういう気は起こらなかった。
 生理中ならではの精神不安定が、男達の声で更に増幅させられる。
 リサは頭から布団を被った。
 もちろん、彼らがリサの部屋に入って来ることはない。
 それでも、だ。

 リサ「BSAAが工事してくれるかもって話、どうなるんだろう……?」

 取りあえず耳栓でもしておこうと思い、ベッドから出た。
 角が無いこと以外は、鬼形態になっている。
 角があった部分を触ってみたが、今のところまた生えて来ている感は無かった。
 人間に戻るという目的の観点で言えばこれで良いのだが、無いと無いで、少し寂しい気もする。
 若い頃は毛がフサフサあったのに、歳を取ってから禿げてきて、寂しいという気持ちと似たようなものがある。
 耳栓をすると、再びベッドに潜り込んだ。

[同日18時00分 天候:曇 愛原家4階リサの部屋→3階ダイニング]

 リサ「……はっ!」

 室内にある内線電話が着信音を鳴らす。
 元々取り付けられていたものである。
 呼び出したい場所のボタンを押すと、押している間だけ向こう側のブザーが鳴るという仕組みだ。
 因みに今、一定のリズムでブザーが鳴っている。
 記号で表すと、『ー・・ー』といった感じ。
 これは愛原が鳴らしているのだとリサは知った。
 確か、『-・・-』は鉄道の車内合図で、『車内電話を取れ』もしくは『車内電話で打ち合わせをしたい』という合図なのだと。

 リサ「はい」
 愛原「リサ、体の具合はどうだ?」
 リサ「んー……まあまあかな」
 愛原「夕飯できたから、降りてこいよ」
 リサ「分かった」

 リサは電話を切った。
 さすがに、腹は減った。

 リサ「行くか……」

 その前にトイレに寄った。
 さすがに今日は見積もりを取りに来ただけのようで、シャワールーム増設予定地には何も無かった。

 

 リサ「あー、お腹空いた」
 愛原「よー。大丈夫か?お前にしては、あまり昼食わなかったよな?」
 リサ「そうだねぇ……。角が無いと、調子が悪いのかもねぇ……」
 愛原「おいおい。人間に戻るんなら、むしろ角は無い方がいいんだぞ?」
 リサ「分かってるよ。今まで軽いのは、BOWだったからで、人間に近づいたから重くなったのかもね」
 愛原「……なるほどな。だったらむしろいいことなのか」
 リサ「まあ、重ければ重いで困るけど」
 パール「それは確かに」

 今日の夕食は豚肉の生姜焼きだった。
 愛原の希望でバラ肉ではなく、ロース肉が使用されている。
 他にも、カキフライがあった。
 どちらも付け合わせの野菜も山盛りである。

 愛原「じゃあ、頂くとするか」
 リサ「いただきます」

 リサはパクパクと御飯を口に運んだし、豚肉に齧り付いた。

 リサ「うん。美味しい」

 食欲は戻ったようである。

 愛原「明日は学校行けそうか?」
 リサ「うん。多分、大丈夫」
 愛原「そうか。それは良かった。角が無かったら、いちいち人間形態とか鬼形態とか気にしなくて良くなりそうだしな」
 リサ「でも、耳は尖ったままだよ?」
 愛原「多少のことなら、『生まれつき』ということで誤魔化せるさ。
 リサ「そうかなぁ……」

[同日21時00分 天候:曇 愛原家3階リビング]

 体操服にブルマという姿のまま、リサはソファに寝っ転がって携帯ゲームに勤しむ。

 愛原「鬼が鬼退治するとは……」
 リサ「獲物の取り合いだよ」
 愛原「そうなのか……」

〔「男には脳が5つ、心臓が7つあった」〕

 愛原「多いな!どこのBOWだ!?」
 リサ「そんなに要る?わたしみたいに、体内に複数宿る特異菌の寄生体を抱える方が楽だよ?」
 愛原「さらっと化け物みたいなこと言うな」

 リサの体内、見た目は普通の人間と変わらない。
 どこかの鬼の総大将と違って、脳が5つ、心臓が7つなんてことはない。
 『見た目には』脳は1つだし、心臓も1つである。
 しかし、Gウィルスを基とする特異菌が脳や心臓などの急所が破壊されても、すぐにスペアを再生させる力を持っているのだ。
 しかも、それまでの記憶も完全にコピーする。
 だから、リサの頭を撃ち抜いて、例えその脳は死んだとしても、また新たな脳が造られ、しかも前の脳の記憶も完全にコピーして何事も無かったかのような状態に戻る。
 リサを完全に殺すには、Gウィルスや特異菌を死滅させなければならない。
 Gウィルスに直接繋がっていると思われる、肩甲骨付近の痣が現時点での弱点である。
 ここを銃で集中攻撃すれば、Gウィルスが直接傷つけられ、しかも回復力が遅い為に、そこを死滅させらることができる。
 残った特異菌達は親玉を失ったことで暴走し、リサは更なる化け物へと変化することになるだろう。
 しかし、もう不死身ではなくなる為、それこそロケットランチャーでも撃ち込んで倒せば良い。

 リサ「多分、また角生えて来ると思うよ」
 愛原「そうなのか?」
 リサ「何となくそんな気がする。朝起きたら、生えてるかもね」
 愛原「戻るにしても、前回と同じぐらいで、しかも自由に引っ込めたりするといいな」
 リサ「ねー。……じゃあわたし、お風呂入って来る」
 愛原「ああ」
 リサ「角が無い方が、頭は洗いやすくていいんだけどね」
 愛原「そりゃそうだろ」
 リサ「……蓮華のヤツ、角生えてた?」
 愛原「あー……どうだったかな?」
 リサ「鬼の男も、わたしじゃなくて、蓮華と付き合えば良かったんだよ」
 愛原「その頃の蓮華は、まだ人間だったからな」

 まだ頭に若干の違和感があったリサだが、取りあえず元には戻れそうだった。

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