報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「ガイノイド、銀行へ行く」

2016-02-25 21:22:37 | アンドロイドマスターシリーズ
 ※今更の説明ですが、ガイノイドとは女性型アンドロイドのことです。ウィキペディアにも記載されています。ですので、性別不明のPepperはアンドロイドでもガイノイドでもないですし、“アラレちゃん”はガイノイドということになります。

[2月24日09:32.天候:晴 東京都墨田区菊川・菊川一丁目バス停→都営バス業11系統車内 3号機のシンディ&妖精型ロイド、萌]

 シンディ:「全く。余計な仕事増やしてくれちゃって。後で社長にも謝っておくのよ?」
 萌:「はーい……」

 都道50号線、新大橋通り沿いにあるバス停でバスを待つ2人。
 朝ラッシュのピークは過ぎたが、それでも片側2車線の幹線道路には多くの車が行き交っている。
 そこへ1台の都営バスがやってきた。

〔「はい、錦糸町駅前行きです」〕

 バスに乗り込むシンディと萌。
 因みに萌は、シンディのサイドテールの中に隠れている。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスが走り出す。
 シンディは着席せず、折り畳み椅子の前に立った。

〔次は菊川駅前、菊川駅前。都営地下鉄新宿線、都バス、東京駅、新橋、東京スカイツリー方面は、お乗り換えです。……〕

 萌:「わざわざバスで行かないとダメなんてねぇ……」(バスの中で堂々と話せないので、通信機能で会話している)
 シンディ:「お札の交換は直接、銀行の窓口でないとダメなのよ。で、ここから1番近い敷島エージェンシーのメインバンクの支店窓口が、錦糸町駅前だし」
 萌:「ふーん……」

 東京決戦の時、シンディは敵側だった。
 バージョン・シリーズの軍団を引き連れ、ドクター・ウィリーが立て籠もるビルを取り囲ませて、敷島達の侵入を拒んだものだ。
 しかし、敷島はそんなシンディがフリーズしかかる作戦を決行した。
 乗員・乗客全員が避難して無人となった都バスを無断拝借し、その包囲網に突入していったのだ。
 シンディであれば、バス1台突っ込んで来たところで、持ち前の馬力や腕力でスクラップにしていただろう。
 何しろ、地下鉄の車両ですら体当たりして大破させたほどだ。
 だが、バージョン・シリーズはそこまでの頑丈さは無い上、敵がそんな特攻を仕掛けてくることなど全く想定していなかった為にパニックに陥り、同士打ちを起こすほどであった。
 今シンディはそのバスに揺られて、人間側の味方として動いている。
 テロリズム用途も、使う人間次第で180度変えることができるということだ。
 バージョン・シリーズは却って使い勝手が悪くなったようだが……。

[同日10:00.東京都墨田区江東橋・某都市銀行 シンディ&萌]

 バスに揺られていた時間は、だいたい10分ちょっと。
 そんなに長い距離ではない。
 だからシンディ的には歩いても良かったのだが、何故か井辺は公共交通機関を利用するように言った。
 恐らく、バッテリーの消耗を防止する為に言ったのだろうが、往復バス代と果たしてどちらが安上がりなのだろうかと計算したくなったシンディだった。
 それはさておき、駅前の銀行の中に入る。

 警備員:「いらっしゃいませ」

 入口の横に立っていた年配の警備員が挨拶してくる。

 シンディ:「こんにちは。古いお札を新しいものに交換して頂きたいんですけど、どこに行ったらよろしいですか?」
 警備員:「それなら、あちらの窓口へどうぞ」
 シンディ:「ありがとうございます」
 警備員:(どこかで見たことあるなぁ……)

 整理券を取って、自分の順番を待つシンディ。
 さすがにここでは立っていると目立つので、長椅子に腰掛けておく。
 警備員、近くの椅子に放置された週刊誌を片付けた時、シンディの正体に気づく。

 警備員:(ああ、この週刊誌に載っていた人……いや、ロボットさんか)

 シンディに近づいて、

 警備員:「お客さん、ひょっとして……この週刊誌の?大変でしょう」
 シンディ:「ああ。何だか、撮られちゃいましたね。まあ、命令ですし、かつて私の配下だった者達の尻拭いってヤツですよ」
 警備員:「本当に人間みたいだねぇ……。とてもロボットには見えないよ」
 シンディ:「それが狙いですから」

 シンディ、ウィンクをした。
 と、そこへ、

 ピンポーン♪〔お待たせ致しました。◯×番の・番号札を・お持ちのお客様、△番窓口へ・お越しください〕

 シンディ:「あ、呼ばれました」
 警備員:「あっ、こりゃ失礼。どうぞどうぞ」

 シンディが窓口に向かうまでの間、入口から入って来る者がいた。
 見た目は30代ぐらいの男性、身長は170センチくらいで中肉中背、黒い目出し帽に黒縁の眼鏡を掛け、マスクをしていた。
 手にはショルダーバッグを持っている。
 シンディ達とは別の空いている窓口に向かった。

 銀行員A:「は、これを新しいお札にですか?」
 シンディ:「そうなんです。子供がイタズラで落書きしてしまいましてね、このままだとみっともないので、交換して頂きたいんです。お手数ですけど」
 銀行員A:「いえ、とんでもないです。少々お待ちください」

 銀行員Aが窓口から離れると、萌がシンディの髪の中から顔を出した。

 萌:「窓口のお姉さん、びっくりしてたねー」
 シンディ:「そうね」
 萌:「やっぱりポクの可愛さ加減に?」
 シンディ:「1万円札100枚も子供が落書きしたことと、されたことに驚いたんだと思うよ」
 萌:「手数料掛かるのかなぁ?」
 シンディ:「あっ、そうだ。それ聞くの忘れた。てか、手数料掛かったら、やっぱりあんた、瓶の中で反省してもらうことになるかもね」
 萌:「えーっ!?」

 男性客:「・・・・・・・・・・・・・」(淡々と用件を喋る)
 銀行員B:「・・・・・・・・・・・・・・」(用件を聞くうちに段々と顔が青ざめて行く)

 銀行員A:「お待たせ致しました。それでは1万円札を100枚、全て交換させて頂きます」
 シンディ:「どうも、お手数お掛けしました。やっぱり、手数料が掛かるのでしょうか?」
 銀行員A:「いえ、特に手数料を頂いてはおりません」
 萌:「やったーっ!」

 萌、ピョコッとシンディの髪の中から現れた。

 銀行員A:「きゃっ!妖精!?」
 シンディ:「こらっ、萌!勝手に出て来ちゃダメ!!」
 萌:「瓶の中で反省の刑はこれでナシ!やったーっ!」
 シンディ:「いいから、引っ込んでなさい!」

 そこへ先ほどの警備員がやってきた。

 警備員:「どうかしましたか?さっきから騒がしいですが?」
 シンディ:「あ、いえ!何でもないです!どうも、すいません!」

 シンディが慌てて弁解している間、男性客がそんなシンディ達を横目に立ち去ろうとしていた。
 男性客の鞄は入店前より膨らんでいた。
 そしてそれを見送る銀行員Bは、何故か顔面蒼白で冷や汗を浮かべていた。
 一体何が?
 銀行員Bはその男性客を震える手で指さし、こう叫んだ。

 銀行員B:「きゃーっ!強盗よ!!」

                           続く

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