報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「敷島エージェンシー営業中」

2015-05-27 02:26:07 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月27日10:00.天候:曇 敷島エージェンシー 井辺翔太]

「……はい、もしもし。……どうも、いつもお世話になっております。……はい。それでしたら、既に準備の方は整っております。……はい」
 取引先からの電話に出ている井辺。
 視線の先には、スケジュール修正を受けている鏡音リンの姿があった。
 手元の端末で自動修正しているのである。
「……では、よろしくお願い致します」
 電話を切る井辺。
「鏡音リンさん。修正の通り、急遽午後イチで○○イベントの依頼がありましたので、お願いします」
「はーい!了解だYo~!……んじゃ、今のうちに充電の方を……」
 コソコソと事務所の外に出て行こうとするリン。
「さっき、バッテリー交換したばかりでしょ!」
「ぅあぁあぁあ!」
 待ち構えていたシンディに掴まれ、ズルズルと事務所の奥の部屋に連れて行かれた。
「相変わらずですね」
 その様子を微笑ましく見ているのは一海。
「そうですね」
 相変わらず無表情で頷く井辺だった。
「やり手の優秀なプロデューサーさんだって、みんな褒めてますよー」
「ありがとうございます。……が、自分はまだまだです」
「そんなことないって」
 リンを奥の部屋に連れて行った後、戻って来たシンディが言った。
「少なくとも社長が駆け出しだった頃より、本当に優秀かもよ?」
「社長が、ですか?」
「そう。何かね、エミリーからぼんやり聞いた話なんだけどー、ダブルブッキングやらかしたり、取引先との連絡バックレたりしてたらしいよ」
「……社長、元サラリーマンですよね?」
「面白い人だったんですね、その頃から」
 一海がクスッと笑った。
「スケジュール管理を手動でやってたからだよ」
「えっ!?あの複雑なスケジュールをですか!?」
「昔は確かに今よりも仕事が少なかったからね。手動管理で良かったと言えるかもしれなかったけど、それで失敗してたもんね」
「よくご存知で」
「エミリーから、色々と聞いてるのよ」
「当時の事務所警備は、エミリーさんがされてたんでしたっけ」
「そういうこと。ミクですら仕事が無くて、ソファで寝てたからね」
「えっ?あのトップアイドルがですか?」
 井辺は驚いた。
 思わずミクのスケジュール表を見たが、ぎっしり詰まっている。
 敷島が1番最初にプロデュースしたボーカロイドということもあり、その思い入れが強いせいか、よく仕事先に一緒に行くことが多い。
「そういう下積み時代もあったのよ」
 するとそれに一海が乗っかってきた。
「あー、それなら聞いてます。『今月もお仕事が無いと、来月の電気代がピンチですぅ!』って涙ながらに訴えていたらしいですね。七海から聞きました」
 当時の事務所で事務作業ロボットをしていたのは、メイドロボットの七海。
 平賀が実験の一環として、当時の事務所に出向させていた。
 その時の成果が、後継機の一海に継承されている。
「あのトップアイドルにも、そういう時代があったんですね」
 井辺は話の内容に、耳を傾けていた。
「そういうわけですから皆さん、決して心配なさらず、それぞれできる事を行ってください」
 井辺は隣の部屋から通じるドアの前で話を立ち聞きしていた、新人ボーカロイド達に向かって言った。
「は、はい!」
「頑張ります!」
「…………」
「あ、あんた達、いつの間に?」
 シンディが目を丸くした。
「え、エヘヘヘヘ……」
 ゆかりはばつの悪そうに笑って誤魔化した。
(……っていうか、よくプロデューサー、気づいたわね???)
 シンディは井辺の勘付きの早さに驚いた。
「午後から、大物アイドルのPV撮影のお手伝いに行きます。皆さんは、バッテリー交換を行っていませんので、それまでの間に済ませておいてください」
「はい!」
「分かりました!」
 ゆかりと未夢は大きく頷いたが、Lilyは小さく頷いただけだった。
 そして、
「プロデューサー、私達自身のPV撮影は無いの?」
「と、言いますと?」
「私達、いつCD出せるの?」
「……企画検討中です」

[同日11:00.埼玉県さいたま市内・某テレビ番組ロケ現場 敷島孝夫、初音ミク、MEIKO]

「……一旦休憩、テープチェック入ります!休憩は10分です!」
 ADの大声が現場に響く。
 とあるバラエティ番組にゲスト出演しているミクとMEIKO。
 メインMCを務めるお笑い芸人コンビが、ディレクターから何かダメ出しを受けている。
「ご苦労さん、2人とも」
 敷島が2人に水の入ったペットボトルを渡した。
「ありがとう」
「ありがとうございます、たかおさ……社長!」
 ミクはまだ敷島がプロデューサーだった頃の名残か、『さん付け』の癖が修正されないようだ。
「それより何かあったの?さっき、随分長い事電話してたみたいだけど?」
 と、MEIKOが聞いてきた。
「あ、いや、アリスからの私用電話だよ、全く」
「アリス博士から?」
「いや、今日はミク達のロケ立会いでずっと埼玉にいるってバレたせいか、『帰りに卵買ってきて』って、ばかやろ!俺は単身赴任中だっての!」
 するとボカロ達はクスクスと笑った。
「いいじゃないの。今日は『直帰』したら?どうせ明日はシンディの整備で、あの研究所に行くんでしょ?」
 MEIKOがそう言った。
「私達、ちゃんと帰れますから」
 ミクも同調する。
「うーん……。いや、だったら井辺君に迎えに来させるか……。シンディを無事、埼玉まで連れて行かないといけないし……」
「シンディも1人で行動できると思うけどね」
 変に心配性になる敷島の顔を見て、MEIKOは首を傾げた。
「シンディのヤツ、大掛かりな研究所になかなか行きたがらないんだよ。何かトラウマでもあるのかね?」
「さぁ……。強いて言うなら、『病院嫌いのお年寄り』的な感覚じゃない?」
 MEIKOがニヤッと笑った。
 すると通信機の向こうから、
{「誰がお年寄りだ、コラァーッ!!」}
 シンディの怒声が聞こえてきたのだった。
「それだけ元気なら、検査の方も大丈夫だろう。明日、ちゃんと来るんだぞ?」
 敷島はここぞとばかりに、シンディに念押ししたのだった。

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6 コメント

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つぶやき (作者)
2015-05-27 10:13:54
爆サイで日蓮会(死のう団)がちょこっと出てきたが、私には“愛の戦士レインボーマン”に出てくる死ね死ね団のイメージしか無い。
ってか、ウィキによると、本当に死ね死ね団は日蓮会がモデルらしい。
40年以上も前のアニメなだけに、戦前の狂信集団をモデルにできたのだろう。
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Unknown (ポテンヒット)
2015-05-27 12:03:36
レインボーマンはアニメじゃなく実写だぞw

いや、たぶんおまいの誤字だと思うが、リアルタイムで見てた俺の世代にとってはレインボーマンってのは後世に伝えたい「イッてる」名作なんでな。そこんとこ正確にヨロシク頼むぜw

とりあえず、ヒマだったらTSUTAYAで借りて見てみろ。洗脳ってものの恐ろしさが分かるからw
返信する
作者さんへ (ゴンベ)
2015-05-27 12:10:39
今回はなかなか隙のない文章で、ツッコミどころもありません。さすがです、しかしその分、おも・・ゴホゴホ・・ね。

>40年以上も前のアニメなだけに、戦前の狂信集団をモデルにできたのだろう。

え~、レインボーマンとか死ね死ね団(死なう団)を結ぶ線は川内康範さんですね。
日蓮宗の寺生まれで、戦前には何らかの形で日蓮主義運動に参加してた模様。
戦後は月光仮面などの子供目線、森進一等の歌謡曲の作詞、文筆、愛国運動。
1958年の月光仮面(57年前)の「憎むな、殺すな、赦(ゆる)しましょう」は、先般G虎で物議を醸した、あのお祖師さんの思想とちょっと・・・ゴホゴホ・・ですね。
(注:飛び火しないように敢えて咳き込みました)
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Unknown (ANP)
2015-05-27 12:14:18
http://dic.pixiv.net/a/サイクロップス先輩

戊辰戦争の時代は興奮しますね!
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こんにちは! (ムーディ☆アポ山)
2015-05-27 12:44:27
ムーディ☆アポ山です!

え?

レインボーマンて、実写?

子供の頃、マクロスと一緒にやってたアニメじゃないの?

インドの山奥で、って替え歌を歌いながら、小学校から帰ってた覚えがあるが…
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Unknown (ANP)
2015-05-28 21:03:54
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org338987.jpg

こちら、指定席になっております
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