[6月17日15:30.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]
予定通り、放課後、リサは新聞部の部室に向かった。
栗原:「リサ」
リサ:「あっ、鬼斬り先輩」
栗原:「その呼び方はやめなって何度も言ってるだろ。本当に斬るよ?」
リサ:「ゴメンなさーい」
さすがに今のリサは、学校の夏制服をちゃんと着ている。
栗原は片足が義足の為、歩く度にカチャカチャと金属音が鳴っている。
霧生市出身で、霧生市のバイオハザード事件に巻き込まれた際、リサと同種の『日本版リサ・トレヴァー』に片足を食い千切られた過去を持つ。
尚、『2番』たる愛原リサは、栗原の片足を食い千切った『1番』の存在は当然知っていて、あの日、真っ先に研究所を脱走したのも知ってはいたが、栗原にそんなことをしていたのは知らなかった。
『2番』のリサが研究所から脱走しなかったのは、逃げても意味が無いことを知っていたからだと本人は言う。
だが、おかげでこうして生き延びていられいるのだから、良い判断だっただろう。
尚、ここでは栗原が3年生、リサが2年生なので、先輩後輩の関係である。
リサ:「先輩は何を話すの?」
栗原:「色々と考えてる。昨年あった話とかね」
リサ:「あれは、わたしも考えてのに……」
栗原:「まあ、私はさっさと神田さんに負けちゃって気絶していたから、あなたが話すのが1番かもね」
リサ:「うん、かもね」
栗原:「そういうリサは?」
リサ:「んーとね、わたしは“花子さん”かな」
栗原:「教育資料館の?リサならでの話かもね」
リサ:「そうだよね」
新聞部の部室に入ると、既に他の語り部が何人か来ていた。
あいにくと、やはり見たことの無い顔ぶればかりだ。
今年からは座る席が決まっており、長机には所属と名前が書かれた札が置かれている。
栗原:「私はここね」
『3年3組 栗原蓮華』という名札が置かれた席に座る栗原。
リサには、もちろん『2年5組 愛原リサ』という札が置かれていた。
他に見ると、3年生や2年生はもちろん、1年生もいるのが分かった。
2年生男子:「失礼しまーす」
3年生男子:「ちゃス」
リサ:「やっぱり聞き手の新聞部員は、1年生っぽいですね」
栗原:「何でも、昔からこの担当は1年生が行うという伝統ができたみたいだよ。伝説の1995年と2008年の回の時なんか特にね」
2年生男子:「あ、それ、知ってます!実は自分、それを話そうと思うんで、よろしくオナシャス!」
リサ:「昨年の回も、なかなか伝説じゃなかった?」
栗原:「かもね」
しばらくして、最後に新聞部員が入って来た。
今年の担当は1年生男子のようだ。
坂上修二:「皆さん、本日はお忙しい中、お集まり頂いて、ありがとうございます。僕は新聞部の坂上修二と申します。まだ、1年生です。よろしくお願いします」
リサ:「坂上……?坂上先生の関係?」
坂上:「あ、坂上先生は僕の叔父さんです」
リサ:「親戚!?……坂上先生は、あなたがこの回に出ること、了承したの?」
坂上:「実は話していません」
リサ:「やっぱり……」
栗原:「やっぱりね……」
坂上:「何か知ってるんですか?」
リサ:「伝説の1995年の回、その時の新聞部の担当って、坂上先生だったんだよ」
その時、リサの担任の坂上の修一の年齢からすると、現在の年齢がバレてしまう。
2年生男子:「はい!この事は自分が詳しいんで、自分がトップバッターで話させて頂きたいんですけど、いいですか!?」
坂上修二:「はい、それではよろしくお願いします。話の前に、自己紹介からお願いします」
2年生男子:「はい!自分、2年1組の新堂徹って言います!さっきチラッて言ってた1995年の回なんですけど、実はその時の語り部の1人が自分の叔父さんで、その叔父さんから聞いた話なんですけど……」
こうして、『学校の七不思議特集2022』もまた滞りなく開始された。
滞りなく開始されたのは、伝説の回の1つとなってしまった2021年も同じである。
だから、まだ油断はできない。
[同日16:30.天候:曇 新聞部部室]
栗原:「……というお話でした」
栗原は第4話目を担当した。
因みに席は決まるようになったが、誰が何話目を話すのかは決められていない。
担当の新聞部員がランダムに語り部を指名していく、という伝統に基づくものである。
坂上:「ありがとうございました。昨年、この新聞部で、そんな恐ろしいことがあったんですね」
栗原は予告通り、2021年の回が伝説回にノミネートされた所以を話した。
神田拓郎という、かつてこの学校の3年生だった男子が、恋敵に自殺に見せかけて殺されたこと。
死に至った際に頭が潰れたせいで、首無し死体の幽霊としてこの部室にやってきたこと。
そして、恋敵の首と胴体を捩じり切ったものの、また、幽霊と化した恋敵に復讐される形で2人とも消えていったことを話した。
栗原:「一応、私の宗派で塔婆供養はしましたので、もう幽霊として現れることはないと思いますけど」
坂上:「ありがとうございました。それでは、次の5話目は愛原リサさんにお願いします」
リサ:「わ、分かりました」
部室内には、ただならぬ空気が漂っている。
七不思議の集まりで、1人1話話す形式であるのだから、語り部は7人いないとおかしい。
だが、何かの手違いなのか、今は6人しかいなかった。
これは、伝説の回となるジンクスであることを意味している。
1995年の回も2008年の回も、そして昨年である2021年の回も、6人しか集まらなかったのだ!
そして、今年!
まさか、2年連続で伝説の回となるのだろうか。
リサ:「わたしは2年5組の愛原リサと言います。私がこれからお話しするのは、代替修学旅行であった話です」
栗原:「へえ?教育資料館の話をするんじゃないんだ?」
リサ:「もしわたしが6話目を話すことになるんでしたら、そうしてました。ただ、それには教育資料館に移ってもらう必要があるので、今回はやめておきます」
リサは代替修学旅行であった話を話した。
コロナ禍で、リサの世代は中等部時代の修学旅行ができなかった。
そこで今から数ヶ月前、スキー合宿も兼ねた中等部代替修学旅行が行われた。
リサ:「わたし達が乗った電車には、もう1つ、別の学校が乗っていました。六本木にある聖クラリス女学院です」
3年生男子:「おおっ!あの美少女揃いの女子校!」
リサは聖クラリス女学院の梅田美樹の話をした。
リサ:「……ヤツは人喰いをする為に、同級生達を寒空の中、まっぱにして、それから……」
話しているうちに、リサも、
リサ:(わたしも食べたい!血肉が欲しい!)
と、思うようになった。
悪い意味での食性も、元に戻ったということである。
リサの活躍を正直に語ると、リサ自身の正体もバレてしまうので、そこは脚色した。
リサ自身も梅田美樹の凶行を目撃してしまったことで、自分も食い殺されそうになったが、寸での所でBSAAが駆け付けてきたことで命拾いしたということにしておいた。
リサ:「……こんな感じです」
坂上:「あの代替修学旅行で、そんなことがあったんですね。分かりました。ありがとうございます。それでは、次の6話目は……」
まだ7人目は部室に来ていない。
これからも来ないようなら、実質的に次の語り部がトリとなる。
全員が、トリとなるかもしれない語り部に目をやった。
予定通り、放課後、リサは新聞部の部室に向かった。
栗原:「リサ」
リサ:「あっ、鬼斬り先輩」
栗原:「その呼び方はやめなって何度も言ってるだろ。本当に斬るよ?」
リサ:「ゴメンなさーい」
さすがに今のリサは、学校の夏制服をちゃんと着ている。
栗原は片足が義足の為、歩く度にカチャカチャと金属音が鳴っている。
霧生市出身で、霧生市のバイオハザード事件に巻き込まれた際、リサと同種の『日本版リサ・トレヴァー』に片足を食い千切られた過去を持つ。
尚、『2番』たる愛原リサは、栗原の片足を食い千切った『1番』の存在は当然知っていて、あの日、真っ先に研究所を脱走したのも知ってはいたが、栗原にそんなことをしていたのは知らなかった。
『2番』のリサが研究所から脱走しなかったのは、逃げても意味が無いことを知っていたからだと本人は言う。
だが、おかげでこうして生き延びていられいるのだから、良い判断だっただろう。
尚、ここでは栗原が3年生、リサが2年生なので、先輩後輩の関係である。
リサ:「先輩は何を話すの?」
栗原:「色々と考えてる。昨年あった話とかね」
リサ:「あれは、わたしも考えてのに……」
栗原:「まあ、私はさっさと神田さんに負けちゃって気絶していたから、あなたが話すのが1番かもね」
リサ:「うん、かもね」
栗原:「そういうリサは?」
リサ:「んーとね、わたしは“花子さん”かな」
栗原:「教育資料館の?リサならでの話かもね」
リサ:「そうだよね」
新聞部の部室に入ると、既に他の語り部が何人か来ていた。
あいにくと、やはり見たことの無い顔ぶればかりだ。
今年からは座る席が決まっており、長机には所属と名前が書かれた札が置かれている。
栗原:「私はここね」
『3年3組 栗原蓮華』という名札が置かれた席に座る栗原。
リサには、もちろん『2年5組 愛原リサ』という札が置かれていた。
他に見ると、3年生や2年生はもちろん、1年生もいるのが分かった。
2年生男子:「失礼しまーす」
3年生男子:「ちゃス」
リサ:「やっぱり聞き手の新聞部員は、1年生っぽいですね」
栗原:「何でも、昔からこの担当は1年生が行うという伝統ができたみたいだよ。伝説の1995年と2008年の回の時なんか特にね」
2年生男子:「あ、それ、知ってます!実は自分、それを話そうと思うんで、よろしくオナシャス!」
リサ:「昨年の回も、なかなか伝説じゃなかった?」
栗原:「かもね」
しばらくして、最後に新聞部員が入って来た。
今年の担当は1年生男子のようだ。
坂上修二:「皆さん、本日はお忙しい中、お集まり頂いて、ありがとうございます。僕は新聞部の坂上修二と申します。まだ、1年生です。よろしくお願いします」
リサ:「坂上……?坂上先生の関係?」
坂上:「あ、坂上先生は僕の叔父さんです」
リサ:「親戚!?……坂上先生は、あなたがこの回に出ること、了承したの?」
坂上:「実は話していません」
リサ:「やっぱり……」
栗原:「やっぱりね……」
坂上:「何か知ってるんですか?」
リサ:「伝説の1995年の回、その時の新聞部の担当って、坂上先生だったんだよ」
その時、リサの担任の坂上の修一の年齢からすると、現在の年齢がバレてしまう。
2年生男子:「はい!この事は自分が詳しいんで、自分がトップバッターで話させて頂きたいんですけど、いいですか!?」
坂上修二:「はい、それではよろしくお願いします。話の前に、自己紹介からお願いします」
2年生男子:「はい!自分、2年1組の新堂徹って言います!さっきチラッて言ってた1995年の回なんですけど、実はその時の語り部の1人が自分の叔父さんで、その叔父さんから聞いた話なんですけど……」
こうして、『学校の七不思議特集2022』もまた滞りなく開始された。
滞りなく開始されたのは、伝説の回の1つとなってしまった2021年も同じである。
だから、まだ油断はできない。
[同日16:30.天候:曇 新聞部部室]
栗原:「……というお話でした」
栗原は第4話目を担当した。
因みに席は決まるようになったが、誰が何話目を話すのかは決められていない。
担当の新聞部員がランダムに語り部を指名していく、という伝統に基づくものである。
坂上:「ありがとうございました。昨年、この新聞部で、そんな恐ろしいことがあったんですね」
栗原は予告通り、2021年の回が伝説回にノミネートされた所以を話した。
神田拓郎という、かつてこの学校の3年生だった男子が、恋敵に自殺に見せかけて殺されたこと。
死に至った際に頭が潰れたせいで、首無し死体の幽霊としてこの部室にやってきたこと。
そして、恋敵の首と胴体を捩じり切ったものの、また、幽霊と化した恋敵に復讐される形で2人とも消えていったことを話した。
栗原:「一応、私の宗派で塔婆供養はしましたので、もう幽霊として現れることはないと思いますけど」
坂上:「ありがとうございました。それでは、次の5話目は愛原リサさんにお願いします」
リサ:「わ、分かりました」
部室内には、ただならぬ空気が漂っている。
七不思議の集まりで、1人1話話す形式であるのだから、語り部は7人いないとおかしい。
だが、何かの手違いなのか、今は6人しかいなかった。
これは、伝説の回となるジンクスであることを意味している。
1995年の回も2008年の回も、そして昨年である2021年の回も、6人しか集まらなかったのだ!
そして、今年!
まさか、2年連続で伝説の回となるのだろうか。
リサ:「わたしは2年5組の愛原リサと言います。私がこれからお話しするのは、代替修学旅行であった話です」
栗原:「へえ?教育資料館の話をするんじゃないんだ?」
リサ:「もしわたしが6話目を話すことになるんでしたら、そうしてました。ただ、それには教育資料館に移ってもらう必要があるので、今回はやめておきます」
リサは代替修学旅行であった話を話した。
コロナ禍で、リサの世代は中等部時代の修学旅行ができなかった。
そこで今から数ヶ月前、スキー合宿も兼ねた中等部代替修学旅行が行われた。
リサ:「わたし達が乗った電車には、もう1つ、別の学校が乗っていました。六本木にある聖クラリス女学院です」
3年生男子:「おおっ!あの美少女揃いの女子校!」
リサは聖クラリス女学院の梅田美樹の話をした。
リサ:「……ヤツは人喰いをする為に、同級生達を寒空の中、まっぱにして、それから……」
話しているうちに、リサも、
リサ:(わたしも食べたい!血肉が欲しい!)
と、思うようになった。
悪い意味での食性も、元に戻ったということである。
リサの活躍を正直に語ると、リサ自身の正体もバレてしまうので、そこは脚色した。
リサ自身も梅田美樹の凶行を目撃してしまったことで、自分も食い殺されそうになったが、寸での所でBSAAが駆け付けてきたことで命拾いしたということにしておいた。
リサ:「……こんな感じです」
坂上:「あの代替修学旅行で、そんなことがあったんですね。分かりました。ありがとうございます。それでは、次の6話目は……」
まだ7人目は部室に来ていない。
これからも来ないようなら、実質的に次の語り部がトリとなる。
全員が、トリとなるかもしれない語り部に目をやった。
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