[7月28日19:30.天候:晴 東京都八王子市某所 八王子中央ホテル]
愛原:「それじゃ、荷物置いたらまた出て来いよ」
リサ:「分かった」
角部屋に愛原と高橋が入り、リサと斉藤絵恋は隣の部屋に入った。
鍵を開けて中に入ると……。
リサ:「これは……!」
ツインのベッドが置かれている部屋かと思ったら違った。
そこは和室8畳間であった。
既に布団が2組敷いてある。
リサ:「和室だ」
絵恋:「何だか合宿みたいねぇ……」
絵恋は荷物を入口横のクロゼット前に置くと、布団を移動し始めた。
リサ:「何してるの?」
絵恋:「もっとくっつきましょうよ」
リサ:「人食いBOWに自ら近づくサイトーは、本当にもう……」
絵恋:「萌えへへへ……。ま、まあね」
リサ:「褒めてない褒めてない。長生きできなくても知らないよ?」
絵恋:「リサさんに殺されるなら本望ですぅ」
リサ:「あー、ハイハイ。オリジナルのリサ・トレヴァー先輩も、サイトーからは逃げる他無いだろう」
絵恋:「あの階段の踊り場にあった絵のこと?」
リサ:「あれはアンブレラに捕まって実験される前の、本当の人間の姿だ」
絵恋:「今のリサさんのその姿も、アンブレラに捕まる前の姿なんでしょ?」
リサ:「……どうかな」
絵恋:「えっ?」
何しろ人間だった頃の記憶は殆ど無く、本当に今の第0形態の姿の自分が、イコール人間だった頃の姿そのままなのか自分でも分からないのだ。
人間だった頃の名前、『上野暢子』を名乗らず、便宜上の名前である『愛原リサ』を名乗り続けているのもそこに理由がある。
恐らく人間に戻っても、今の名前を使い続けることになるだろう。
リサ:「それより早く行こう。先生達が待ってる」
絵恋:「え、ええ」
いくらヒートアイランド現象からは逃れられている東京都の郊外、八王子市でも熱帯夜は熱帯夜だ。
冷房は点けたままにしておいた。
こういう古い建物だと、冷暖房は集中式で、風の強さくらいしか調節できないというイメージだが、このホテルの部屋は家庭用ルームエアコンが設置されていた。
愛原:「準備はいいか?」
リサ:「うん」
愛原:「おっと。ちゃんと鍵は掛けておけよ?オートロックじゃないから」
リサ:「分かった」
リサは鍵を掛けた。
愛原:「リサの部屋の中には、どんな絵が飾ってあった?」
リサ:「……島の絵?『ザイン島』とかって書いてあった」
愛原:「『ザイン島』か。恐らく、2011年にロシア領の離島であったバイオハザード事件の舞台になった島だな」
高橋:「あんまり聞いたこと無いっスね」
愛原:「日本じゃ、東日本大震災で、てんやわんやだったからな。殆ど報道されなかったさ。日本人が犠牲になったというのなら話は別だろうが、犠牲になったのは島の住民とかだけだし」
高橋:「なるほど」
愛原:「よし、行ってみよう」
リサは愛原達に付いて、ホテル内の廊下や階段、共用トイレ内に飾られた絵を見て回った。
本当に風景画から静物画から人物画から、サイズもまちまちで飾られている。
ただ、これらの絵画を調達した前のオーナーというのは、ちゃんとこだわっていたらしい。
絵の下には、美術館や画廊でそうしているように、全てタイトルと制作年が書かれた札も掲示しているからだ。
さすがに客室の中に飾ってある絵までは見られないが、少なくとも分かったことはあった。
まず、飾られている絵全てがバイオハザードに関連したものではないということ。
そして、最新の絵は2013年までだということ。
恐らく、前のオーナーと今のオーナーが交替した時期なのではないだろうか。
今のオーナーは絵画に興味が無いと言っていたので、新たに調達するとは思えない。
2013年と言えば、アメリカのトールオークス市や東欧某国、そして香港でバイオハザードが起きた年だ。
高橋:「先生、あれアネゴに似てません?」
高橋が指さした所には、高野芽衣子と似ている人物が描かれた絵があった。
上半身の横向きでしか描かれていないが、裸である。
タイトルを見ると、『カーラ・ラダメス、エイダ・ウォンへ』と書かれていた。
カーラ・ラダメスとは、2013年に起きたバイオハザード事件の首謀者の1人である。
ネオ・アンブレラと名乗るテロ組織の女性科学者であったが、中国・香港で死亡したとされている。
何でも、組織の黒幕に良いように使われていたとか……。
愛原:「似ているな。そもそもが、高野君がエイダ・ウォンに似ていると思う」
高橋:「それも、そうっスね」
因みに制作年毎に展示されているかと言えば、そうでもない。
前のオーナーとしては何かの法則性を持たせたのかもしれないが、少なくとも私達から見ては、それが何なのか分からないほど無節操な順番で展示されていた。
しばらくすると、また人物画。
愛原:「タイトル、『little Miss』か……。『小さいお嬢さん』という意味かな?」
リサ:「リサ・トレヴァー大先輩のと比べると、もっと幼いね」
愛原:「12歳……にもなってないか」
高橋:「あれもバイオハザード絡みっスかね?」
愛原:「2011年制作とある。あの『ザイン島』と同じだ。もしかしたら、ザイン島の関係者なのかもな」
リサ:「私も知らないコ」
そんな感じで愛原達は階段を下りながら、絵を見ていった。
そして再び1階ロビーまで降りる。
オーナー:「いかがでしたか?」
フロントにいるオーナーが話し掛けて来た。
もちろん、今のオーナーだ。
愛原:「ああ。前のオーナーさんのこだわりが分かるような気がしますよ。そして、私達にこのホテルを紹介した人の意図もね」
ただの偶然とは思えない。
善場は愛原に何かを発見してもらいたくて、このホテルを紹介したのだろう。
ただ、今のリサにはそれが何なのかは分からなかった。
少なくとも年季の入った古いホテルで、たまたま前のオーナーが絵画好き、そしてたまたま集めた絵の中にバイオハザード関連の物が多数含まれているだけに過ぎない。
オーナー:「そうですか。興味を持って頂けましたか。前のオーナーも、きっと喜びますよ」
愛原:「前のオーナーさんはお元気ですか?」
オーナー:「いえ、今はもう故人です。それで私がこのホテルを引き継ぐことになったわけですよ」
愛原:「それは2013年頃の話ですか?」
オーナー:「2014年ですね。2013年頃から体調を悪くしまして、およそ一年間の闘病生活の後に……といったところです。よく、お分かりですね?」
愛原:「いえ、見せて頂いた絵の中で、最新の物が2013年になっていましたので。で、今のオーナーであるあなたは絵に興味は無いと仰る。興味の無いオーナーが引き続き絵画を集めるなんてなさらないと思いますので、前のオーナーが現役であった頃は2013年くらいまでかなと思いました」
オーナー:「凄いですね!まるで刑事さんみたいです」
高橋:「先生は名探偵だぜ?」
オーナー:「探偵さんでしたか。お見逸れしました」
愛原:「とはいうものの、まだ全部の絵は観ていない。本当に最新のものは2013年までなんですか?」
オーナー:「……と、思いますが。何故ですか?」
愛原:「いや、画商のことだから、興味の無いオーナーにも絵を売り付けようとしていたんじゃないかと思いましてね」
オーナー:「さすがは探偵さんです。実はそうなんですよ。2、3回来たんですが、お断りしましたよ。そしたら、さすがにもう来なくなりましたね」
愛原:「画商が来たのは、前のオーナーが亡くなった直後ですか?」
オーナー:「そうです。……いや、待てよ。数年前にまた1度、ひょっこり来ましたね。……あー、来た来た!あんまりうるさいものだから、1枚だけ買っておきましたよ。もちろん、だいぶ値切らせてもらいましたがね」
愛原:「その画商の名前は?」
オーナー:「『白井画廊』と言いました」
愛原:「白井だって!?」
愛原:「それじゃ、荷物置いたらまた出て来いよ」
リサ:「分かった」
角部屋に愛原と高橋が入り、リサと斉藤絵恋は隣の部屋に入った。
鍵を開けて中に入ると……。
リサ:「これは……!」
ツインのベッドが置かれている部屋かと思ったら違った。
そこは和室8畳間であった。
既に布団が2組敷いてある。
リサ:「和室だ」
絵恋:「何だか合宿みたいねぇ……」
絵恋は荷物を入口横のクロゼット前に置くと、布団を移動し始めた。
リサ:「何してるの?」
絵恋:「もっとくっつきましょうよ」
リサ:「人食いBOWに自ら近づくサイトーは、本当にもう……」
絵恋:「萌えへへへ……。ま、まあね」
リサ:「褒めてない褒めてない。長生きできなくても知らないよ?」
絵恋:「リサさんに殺されるなら本望ですぅ」
リサ:「あー、ハイハイ。オリジナルのリサ・トレヴァー先輩も、サイトーからは逃げる他無いだろう」
絵恋:「あの階段の踊り場にあった絵のこと?」
リサ:「あれはアンブレラに捕まって実験される前の、本当の人間の姿だ」
絵恋:「今のリサさんのその姿も、アンブレラに捕まる前の姿なんでしょ?」
リサ:「……どうかな」
絵恋:「えっ?」
何しろ人間だった頃の記憶は殆ど無く、本当に今の第0形態の姿の自分が、イコール人間だった頃の姿そのままなのか自分でも分からないのだ。
人間だった頃の名前、『上野暢子』を名乗らず、便宜上の名前である『愛原リサ』を名乗り続けているのもそこに理由がある。
恐らく人間に戻っても、今の名前を使い続けることになるだろう。
リサ:「それより早く行こう。先生達が待ってる」
絵恋:「え、ええ」
いくらヒートアイランド現象からは逃れられている東京都の郊外、八王子市でも熱帯夜は熱帯夜だ。
冷房は点けたままにしておいた。
こういう古い建物だと、冷暖房は集中式で、風の強さくらいしか調節できないというイメージだが、このホテルの部屋は家庭用ルームエアコンが設置されていた。
愛原:「準備はいいか?」
リサ:「うん」
愛原:「おっと。ちゃんと鍵は掛けておけよ?オートロックじゃないから」
リサ:「分かった」
リサは鍵を掛けた。
愛原:「リサの部屋の中には、どんな絵が飾ってあった?」
リサ:「……島の絵?『ザイン島』とかって書いてあった」
愛原:「『ザイン島』か。恐らく、2011年にロシア領の離島であったバイオハザード事件の舞台になった島だな」
高橋:「あんまり聞いたこと無いっスね」
愛原:「日本じゃ、東日本大震災で、てんやわんやだったからな。殆ど報道されなかったさ。日本人が犠牲になったというのなら話は別だろうが、犠牲になったのは島の住民とかだけだし」
高橋:「なるほど」
愛原:「よし、行ってみよう」
リサは愛原達に付いて、ホテル内の廊下や階段、共用トイレ内に飾られた絵を見て回った。
本当に風景画から静物画から人物画から、サイズもまちまちで飾られている。
ただ、これらの絵画を調達した前のオーナーというのは、ちゃんとこだわっていたらしい。
絵の下には、美術館や画廊でそうしているように、全てタイトルと制作年が書かれた札も掲示しているからだ。
さすがに客室の中に飾ってある絵までは見られないが、少なくとも分かったことはあった。
まず、飾られている絵全てがバイオハザードに関連したものではないということ。
そして、最新の絵は2013年までだということ。
恐らく、前のオーナーと今のオーナーが交替した時期なのではないだろうか。
今のオーナーは絵画に興味が無いと言っていたので、新たに調達するとは思えない。
2013年と言えば、アメリカのトールオークス市や東欧某国、そして香港でバイオハザードが起きた年だ。
高橋:「先生、あれアネゴに似てません?」
高橋が指さした所には、高野芽衣子と似ている人物が描かれた絵があった。
上半身の横向きでしか描かれていないが、裸である。
タイトルを見ると、『カーラ・ラダメス、エイダ・ウォンへ』と書かれていた。
カーラ・ラダメスとは、2013年に起きたバイオハザード事件の首謀者の1人である。
ネオ・アンブレラと名乗るテロ組織の女性科学者であったが、中国・香港で死亡したとされている。
何でも、組織の黒幕に良いように使われていたとか……。
愛原:「似ているな。そもそもが、高野君がエイダ・ウォンに似ていると思う」
高橋:「それも、そうっスね」
因みに制作年毎に展示されているかと言えば、そうでもない。
前のオーナーとしては何かの法則性を持たせたのかもしれないが、少なくとも私達から見ては、それが何なのか分からないほど無節操な順番で展示されていた。
しばらくすると、また人物画。
愛原:「タイトル、『little Miss』か……。『小さいお嬢さん』という意味かな?」
リサ:「リサ・トレヴァー大先輩のと比べると、もっと幼いね」
愛原:「12歳……にもなってないか」
高橋:「あれもバイオハザード絡みっスかね?」
愛原:「2011年制作とある。あの『ザイン島』と同じだ。もしかしたら、ザイン島の関係者なのかもな」
リサ:「私も知らないコ」
そんな感じで愛原達は階段を下りながら、絵を見ていった。
そして再び1階ロビーまで降りる。
オーナー:「いかがでしたか?」
フロントにいるオーナーが話し掛けて来た。
もちろん、今のオーナーだ。
愛原:「ああ。前のオーナーさんのこだわりが分かるような気がしますよ。そして、私達にこのホテルを紹介した人の意図もね」
ただの偶然とは思えない。
善場は愛原に何かを発見してもらいたくて、このホテルを紹介したのだろう。
ただ、今のリサにはそれが何なのかは分からなかった。
少なくとも年季の入った古いホテルで、たまたま前のオーナーが絵画好き、そしてたまたま集めた絵の中にバイオハザード関連の物が多数含まれているだけに過ぎない。
オーナー:「そうですか。興味を持って頂けましたか。前のオーナーも、きっと喜びますよ」
愛原:「前のオーナーさんはお元気ですか?」
オーナー:「いえ、今はもう故人です。それで私がこのホテルを引き継ぐことになったわけですよ」
愛原:「それは2013年頃の話ですか?」
オーナー:「2014年ですね。2013年頃から体調を悪くしまして、およそ一年間の闘病生活の後に……といったところです。よく、お分かりですね?」
愛原:「いえ、見せて頂いた絵の中で、最新の物が2013年になっていましたので。で、今のオーナーであるあなたは絵に興味は無いと仰る。興味の無いオーナーが引き続き絵画を集めるなんてなさらないと思いますので、前のオーナーが現役であった頃は2013年くらいまでかなと思いました」
オーナー:「凄いですね!まるで刑事さんみたいです」
高橋:「先生は名探偵だぜ?」
オーナー:「探偵さんでしたか。お見逸れしました」
愛原:「とはいうものの、まだ全部の絵は観ていない。本当に最新のものは2013年までなんですか?」
オーナー:「……と、思いますが。何故ですか?」
愛原:「いや、画商のことだから、興味の無いオーナーにも絵を売り付けようとしていたんじゃないかと思いましてね」
オーナー:「さすがは探偵さんです。実はそうなんですよ。2、3回来たんですが、お断りしましたよ。そしたら、さすがにもう来なくなりましたね」
愛原:「画商が来たのは、前のオーナーが亡くなった直後ですか?」
オーナー:「そうです。……いや、待てよ。数年前にまた1度、ひょっこり来ましたね。……あー、来た来た!あんまりうるさいものだから、1枚だけ買っておきましたよ。もちろん、だいぶ値切らせてもらいましたがね」
愛原:「その画商の名前は?」
オーナー:「『白井画廊』と言いました」
愛原:「白井だって!?」
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