報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「執念の男、鈴木」

2018-03-17 20:22:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月16日15:56.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]

 エレーナ:(何だか面倒なことになったなぁ……)

 エレーナはビルの1階にある入口から階段を下り、地下鉄乗り場に向かっていた。
 面倒だと思ったのは、別に岩本町駅のホームが地下深くにあるからというわけではない。
 後ろから鈴木という名の日本人青年が付いて来ているからだ。
 鈴木は所謂アキバ系オタクで、秋葉原の町の路地裏でヤンキー達によるオタク狩りに遭っていた。
 そして有り金全部強奪されたところを、使い魔の黒猫との協力によって取り戻してやったのだが、逆ギレしてきたヤンキー達を攻撃魔法でもって全員病院送りにしておいた。
 表向きにはガス爆発ということになっていて、そこにたまたま屯していたヤンキー達が巻き込まれたということにしておいた。
 ローマスター(Low Master 一人前に成り立ての若葉マーク)とはいえ、そこはマスター認定者。
 それくらいは魔法で何とかできる。
 ましてや、エレーナは門内でも策士とされるほどだ。
 ヤンキー達のリンチでケガしていた鈴木を回復魔法で治してやり、あとはそれなりの報酬を請求するだけだった。
 鈴木はそれに応じた。
 だが、それにはエレーナの正体を明かすことを条件とした。
 エレーナとしては攻撃魔法でヤンキー共を駆逐し、更に回復魔法まで使ったわけだから、それで十分正体を明かしたものと思っていた。

 エレーナ:(マリアンナと違って、私は商売の為なら少しくらい魔道師であることを明かしてもいいと思っていたけど……。やっぱ、マリアンナの方が正しかったか?)

 エレーナは改札口のフロアまで下りるエスカレーターに乗ると、後ろを振り向いた。

 エレーナ:「あの、本当に私の家まで付いて来る気?」
 鈴木:「魔法使いは他にもいたんだ。俺の目に狂いは無かった。もっとキミが魔法使いであるという証拠を見せてほしい」
 エレーナ:「いや、だからあの不良どもを魔法で倒した上、あなたの傷を回復させたでしょ?あれ、全部魔法だよ?」
 鈴木:「そんなことは信じられないね。たまたま近くのプロパンガスが爆発しただけかもしれない。それと、回復魔法だったら、学会員の沖修羅河童でも使える。つまり、どちらも魔法ではないということだ」
 エレーナ:「いや、だから魔法なんて、そうちょいちょい見せるもんじゃないから、ガス爆発に見せかけただけで……」
 鈴木:「とにかく、もう1度魔法を見せて欲しいんだ。金なら払う」
 クロ:「そういう問題じゃないニャ……」
 エレーナ:「まあ、とにかく来な。私、森下のホテルで住み込みで働いてるの。で、そこのレストランは魔法薬を薬膳とした創作料理を出してる。それでも食べて納得してよ」
 クロ:(結局、商売ニャ)
 鈴木:「ホテルだって?」
 エレーナ:「そう」
 鈴木:「よし。だったら一泊しよう」
 エレーナ:「ええっ!?」
 鈴木:「部屋、空いてるよね?」
 エレーナ:「さ、さあ……。私、今日は休みだから……。今日は金曜日だし、多分もう満室だと思うな。こう見えて、結構外国人旅行客とかには人気のホテルなんだよ」

 バックパッカーが泊まれるほどの廉価な料金で、尚且つエレーナというマルチリンガルがいるからだろう。
 尚、エレーナにあっては、殆ど自動通訳魔法具を使用していない。
 今こうして鈴木と日本語で話しているが、これはちゃんとエレーナが日本語で話しているのだ。

 鈴木:「ちょっと掛けてみよう」

 改札口からコンコースに入り、また長いエスカレーターを下りて、やっとホームに辿り着く。

〔♪♪♪♪。まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが長い10両編成で到着します。黄色いブロックの内側まで、お下がりください。急行電車の通過待ちは、ありません〕

 エレーナ:「あっ、もう電車来るよ。日本じゃ電車の中でのケータイは禁止でしょ?残念だったね。アタシはこの電車で帰るから、それじゃあね」
 鈴木:「いや、待て。だったら、降りてから電話……」

 ゴォォォォ!と電車がトンネルの向こうから轟音と強風を連れて入線してきた。
 ブワッとエレーナの黒いスカートが捲れる。

 エレーナ:「……見た?」
 鈴木:「お察しください(´∀`*)」
 エレーナ:「今ここで私と別れれば、無かったことにしてやる。まだついて来るようなら……」
 鈴木:「ゴクッ……!」
 エレーナ:「料金水増しだよ」
 鈴木:「払います!(白パンツ……)」
 クロ:「結局、金かよ!」

〔4番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。岩本町、岩本町〕

 エレーナと鈴木は電車に乗り込んだ。

 エレーナ:「本当にいいんだな?」
 鈴木:「俺は他に魔法使いの魔法を見たんだ。是非あれが気のせいじゃないことを確信する為にも!」
 エレーナ:「他にも……?」

〔4番線、ドアが閉まります〕

 JRの通勤電車と同じ、2打点チャイムを3回鳴らしてドアが閉まる。
 往路に乗った都営大江戸線と違い、こちらは車掌が乗務しているので、発車合図のブザーが聞こえてきた。
 その後で電車が走り出す。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
〔The next station is Bakuro-yokoyama.Please change here for the Toei-Asakusa line and the JR Sobu line.〕

 都営新宿線は馬喰横山、JR総武快速線は馬喰町、都営浅草線は東日本橋と、てんで駅名がバラバラだが、地下道で繋がっている為、乗り換え駅として案内している。
 いずれも日本橋地区にあるということだ(日本橋馬喰町、日本橋横山町。都営浅草線の駅は日本橋の東側にあるから)

 エレーナ:「あんた、他にも魔法使いを知ってるの?」
 鈴木:「ああ。本人とその周りは否定したけどね、あれは間違いないよ。あんたも、ああいうのできるんだろ?」
 エレーナ:「ああいうのって、どういうの?」
 鈴木:「描いた魔法陣の中に入って、瞬間移動できるヤツ」
 エレーナ:(ルゥ・ラかよ!誰だ、そんなもの堂々と見せたバカは!?)
 鈴木:「もしかして、あんたの仲間かい?名前がマリアンナ……下の名字とかは忘れた。魔法使いらしく、長い名前だね」
 エレーナ:(マリアンナかよ!あのクソバカ!何やってんだ!)
 鈴木:「その顔、やっぱり仲間だったんだね?是非とも俺に見せてくれよ?」
 エレーナ:「あー、コホン。あいにくとだけど、私はその魔法は使えないんだ(それの応用なら使えるけど)。どうしてもって言うのなら、それ以外のヤツを見せてやるよ」
 鈴木:「本当か!?」
 エレーナ:「ホウキに跨って空飛んでやる。それより、料金アップの約束……忘れるなよ?」
 鈴木:「分かってるよ。……はい、これは手付金」

 鈴木は財布の中から3万円ほど出し、それを小さく畳んでエレーナの右手に握らせた。

 エレーナ:「どうやら本気みたいだな。分かったよ」

 電車は真っ暗なトンネルの中を突き進む。

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1 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2018-03-18 20:10:50
 完全に山門入り口さんのブログが停止したようだ。

 昨年、御本人が多忙説を掲げていたのだが、私は重病説を小耳に挟んだ。
 もっとも、私だって明日は我が身。
 歳は取りたくないものだ。

 今の若い者はブログをやらないようで、日蓮正宗と関わったことのある人間でのブロガーは、私が最年少だと言われたこともある。
 30代で最年少とは……。

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