[12月18日02:30.天候:不明 東京都江東区森下 ワンスターホテルB1F・エレーナの居室]
エレーナ:「う……ん……。トイレ……」
エレーナは2段ベッドの上段に寝ている。
下段は後輩のリリアンヌが寝ていた。
リリアンヌは魔界の学校に通っており、基本的には向こうの寮に入っているのだが、たまにこうして戻って来ることがある。
入門する前、ロクな教育を受けていなかった者は、入門後学校に通うことになる。
人間界の学校に通える者はそうするのだが、実のところとしてそれは皆無に等しい。
人間界では死亡扱いになっていて、戸籍の無い者が殆どだからだ(パスポートなどの身分証はどのようにしているかは不明)。
元はウクライナでストリートチルドレンだったエレーナもまた、そんな魔界で教育を受けた者の1人であった。
『新卒採用』の稲生は論外、マリアはギリギリでイギリスのハイスクールを卒業(正式にはしていないが、カリキュラム的には卒業扱い)しているので対象外である。
イリーナが元々の性格も去ることながら、入門前の一般教養の教育をせずに済むことから、ユルい指導をしているのかもしれない。
エレーナ:(起きる時にさぁ……血がドバッて出るのは勘弁だ……。こういう時、先生達が羨ましい)
生理中の時は使い魔の黒猫と一緒に寝るのも億劫になるので、黒猫はリリアンヌと一緒に寝ていた。
魔女が使い魔を必要とする所以は、悪魔から付与される魔力の中継器の役割ではないかとされる。
中継器が必要なのは、契約悪魔が近くにいない場合、送られてくる魔力が弱くなる為、それを増幅させる為なのではないかと。
トイレに行って用を足す。
ついでにナプキンも交換したりしていると、何か違和感を覚えた。
エレーナ:(トイレの外……)
トイレは部屋備え付け(後付け)である。
トイレから外に出ると、室内には特に異常は無い。
違和感は部屋の外からである。
エレーナ:「……!」
クロ:「……ニャア」
黒猫のクロも気づいたのか、リリアンヌのベッドの中から出て来た。
因みにリリアンヌはまだ寝ている。
エレーナ:「クロも気づいた?」
クロ:「一応。何か邪悪なモノがこの部屋に向かって来てるニャ」
エレーナ:「こんな夜中に……」
元々はボイラー技士室だった部屋を勝手に改造大幅に改築した部屋である。
今はボイラーも自動式になって常駐のボイラー技士を必要としなくなり、長らくの間空室となっていた。
そこをエレーナが住み込みで働く為に改築したのである。
その名残か、部屋のドアは殺風景な鉄扉になっていて、ガラス製の小窓がある。
そこから外を覗くと、何やら非常階段からそれはやって来るようだった。
非常階段側からこの地下室への扉は、地下室側から施錠されていて、階段側からは開けられないようになっているはずだ。
酔っ払った宿泊客が間違ってここまで下りて来てしまうことはたまにある。
それでもドアが施錠されている為、ここまで来ることは無いのだ。
ところが、だ。
エレーナ:「!?」
ドアの方からガチャガチャやる音が聞こえた。
それもドアノブを回しているのではなく、鍵を何かやっている。
エレーナ:「おい、これは……?」
クロ:「ピッキングしてるニャ」
エレーナ:「ガチの侵入者か……」
エレーナは魔法の杖を持って来ると、部屋を出る準備をした。
エレーナ:「こんなことするのって……」
エレーナの頭の中に鈴木の顔が浮かんだ。
エレーナ:「うっぷ……」
元々生理中で体の具合が悪いのに、今は会いたくない男の顔を浮かべてエレーナは吐き気を覚えた。
クロ:「エレーナ?」
エレーナ:「うううっ!」
エレーナは再びトイレに駆け込むと、戻してしまった。
リリアンヌ:「エレーナ先輩……?」
このせいでリリアンヌが起きてしまう。
エレーナはTシャツにショートパンツ姿だったが、リリアンヌはパジャマである。
エレーナ:「リリィは寝てて」
リリアンヌ:「で、でも先輩……。顔色が……」
エレーナ:「大丈夫……。ここに侵入者が来る……。リリィは隠れてて……」
リリアンヌ:「フヒッ!?侵入者!?」
エレーナ:「うっ……!」
エレーナ、今度は貧血に見舞われた。
エレーナ:「くそっ……!」
リリアンヌ:「あ、あの……あ、あのあの……わ、わ、私が見て来ます」
エレーナ:「やめろ……危険……」
エレーナは床に倒れた。
リリアンヌは自分の杖を持つ。
エレーナのようなマスターが持つのは本格的な長い杖だが、リリアンヌのような見習が持つのは魔女っ娘が持つような短いものである。
それに装飾を施すのだが、調子に乗って本当に魔女っ娘のようにしてしまうと、後で怒られる。
稲生のような男の魔道師見習が持つ物に至っては、まるで警備員の警戒棒(警察官の警棒)のような伸縮式である。
リリアンヌ:(たまには私が活躍して……)
リリアンヌが部屋の外に出るのと、非常階段のドアが開けられるのは同時だった。
不審者:「!!!」
リリアンヌ:「!!!」
階段室から出て来たのは鈴木ではなかった。
もっと別の男……。
見た目はガチムチである。
リリアンヌ:「キャアアアア!!」
不審者:「ハァ……ハァ……!」
リリアンヌが逃げるより先に、男の下半身の衝動の方が早かった。
リリアンヌを押し倒して、パジャマの上を剥ぎ取った。
リリアンヌ:「……!!……!」
恐怖のあまり声にならない叫び声を上げるリリアンヌ。
クロ:「ニャア!」
クロが男に飛び掛かるが、すぐに弾き飛ばされてしまう。
鈴木:「だーっ!!」
そこへ鈴木、手にしていた消火器を男に投げつける。
だが、運動神経に関しては稲生とどっこいどっこいの鈴木、殆ど男に当たることはなかった。
オーナー:「何をしてるんだ!警察を呼んだぞ!離れろ!!」
鈴木:「オーナー、こいつです!非常階段下りて行ったの!」
リリアンヌはパジャマの下まで脱がされていたが、それ以上犯されることはなかった。
幸いこのホテルのすぐ近くには交番がある為、駆け付けた警察官達によりガチムチの男は連行されて行ったのである。
鈴木:「エレーナに手を出そうとして、リリィちゃんに手を出したんですよ、きっと!とんでもないヤツだ!」
と、鈴木は警察官の事情聴取に答えていたが……。
ガチムチ:「お、俺好みのロリータ!お、俺のこ、子種注ぐ!!」
パトカーに乗せられる直前、そんなことを叫んでいた。
鈴木:「え、なに?最初からリリィが目的……?幼女先輩は大事にしないとダメだろ!!」
エレーナ:「勝手にうちのリリィを幼女扱いするなよ……!こいつ、もう15歳だぞ。確かに小さい体だけど……」
鈴木:「欧米人は体がデカいというイメージなのにねぇ……」
エレーナ:「違うから迫害されるんだよ……。まあいいや。助けて来てくれてありがとう」
鈴木:「いやいや。これも大聖人様の御仏智。(エレーナの所に夜這いに行こうとしたら、先を越されてたなんて言えねーぜ……)」
鈴木のズボンのポケットには、キーピックが入っていたという。
エレーナ:「う……ん……。トイレ……」
エレーナは2段ベッドの上段に寝ている。
下段は後輩のリリアンヌが寝ていた。
リリアンヌは魔界の学校に通っており、基本的には向こうの寮に入っているのだが、たまにこうして戻って来ることがある。
入門する前、ロクな教育を受けていなかった者は、入門後学校に通うことになる。
人間界の学校に通える者はそうするのだが、実のところとしてそれは皆無に等しい。
人間界では死亡扱いになっていて、戸籍の無い者が殆どだからだ(パスポートなどの身分証はどのようにしているかは不明)。
元はウクライナでストリートチルドレンだったエレーナもまた、そんな魔界で教育を受けた者の1人であった。
『新卒採用』の稲生は論外、マリアはギリギリでイギリスのハイスクールを卒業(正式にはしていないが、カリキュラム的には卒業扱い)しているので対象外である。
イリーナが元々の性格も去ることながら、入門前の一般教養の教育をせずに済むことから、ユルい指導をしているのかもしれない。
エレーナ:(起きる時にさぁ……血がドバッて出るのは勘弁だ……。こういう時、先生達が羨ましい)
生理中の時は使い魔の黒猫と一緒に寝るのも億劫になるので、黒猫はリリアンヌと一緒に寝ていた。
魔女が使い魔を必要とする所以は、悪魔から付与される魔力の中継器の役割ではないかとされる。
中継器が必要なのは、契約悪魔が近くにいない場合、送られてくる魔力が弱くなる為、それを増幅させる為なのではないかと。
トイレに行って用を足す。
ついでにナプキンも交換したりしていると、何か違和感を覚えた。
エレーナ:(トイレの外……)
トイレは部屋備え付け(後付け)である。
トイレから外に出ると、室内には特に異常は無い。
違和感は部屋の外からである。
エレーナ:「……!」
クロ:「……ニャア」
黒猫のクロも気づいたのか、リリアンヌのベッドの中から出て来た。
因みにリリアンヌはまだ寝ている。
エレーナ:「クロも気づいた?」
クロ:「一応。何か邪悪なモノがこの部屋に向かって来てるニャ」
エレーナ:「こんな夜中に……」
元々はボイラー技士室だった部屋を
今はボイラーも自動式になって常駐のボイラー技士を必要としなくなり、長らくの間空室となっていた。
そこをエレーナが住み込みで働く為に改築したのである。
その名残か、部屋のドアは殺風景な鉄扉になっていて、ガラス製の小窓がある。
そこから外を覗くと、何やら非常階段からそれはやって来るようだった。
非常階段側からこの地下室への扉は、地下室側から施錠されていて、階段側からは開けられないようになっているはずだ。
酔っ払った宿泊客が間違ってここまで下りて来てしまうことはたまにある。
それでもドアが施錠されている為、ここまで来ることは無いのだ。
ところが、だ。
エレーナ:「!?」
ドアの方からガチャガチャやる音が聞こえた。
それもドアノブを回しているのではなく、鍵を何かやっている。
エレーナ:「おい、これは……?」
クロ:「ピッキングしてるニャ」
エレーナ:「ガチの侵入者か……」
エレーナは魔法の杖を持って来ると、部屋を出る準備をした。
エレーナ:「こんなことするのって……」
エレーナの頭の中に鈴木の顔が浮かんだ。
エレーナ:「うっぷ……」
元々生理中で体の具合が悪いのに、今は会いたくない男の顔を浮かべてエレーナは吐き気を覚えた。
クロ:「エレーナ?」
エレーナ:「うううっ!」
エレーナは再びトイレに駆け込むと、戻してしまった。
リリアンヌ:「エレーナ先輩……?」
このせいでリリアンヌが起きてしまう。
エレーナはTシャツにショートパンツ姿だったが、リリアンヌはパジャマである。
エレーナ:「リリィは寝てて」
リリアンヌ:「で、でも先輩……。顔色が……」
エレーナ:「大丈夫……。ここに侵入者が来る……。リリィは隠れてて……」
リリアンヌ:「フヒッ!?侵入者!?」
エレーナ:「うっ……!」
エレーナ、今度は貧血に見舞われた。
エレーナ:「くそっ……!」
リリアンヌ:「あ、あの……あ、あのあの……わ、わ、私が見て来ます」
エレーナ:「やめろ……危険……」
エレーナは床に倒れた。
リリアンヌは自分の杖を持つ。
エレーナのようなマスターが持つのは本格的な長い杖だが、リリアンヌのような見習が持つのは魔女っ娘が持つような短いものである。
それに装飾を施すのだが、調子に乗って本当に魔女っ娘のようにしてしまうと、後で怒られる。
稲生のような男の魔道師見習が持つ物に至っては、まるで警備員の警戒棒(警察官の警棒)のような伸縮式である。
リリアンヌ:(たまには私が活躍して……)
リリアンヌが部屋の外に出るのと、非常階段のドアが開けられるのは同時だった。
不審者:「!!!」
リリアンヌ:「!!!」
階段室から出て来たのは鈴木ではなかった。
もっと別の男……。
見た目はガチムチである。
リリアンヌ:「キャアアアア!!」
不審者:「ハァ……ハァ……!」
リリアンヌが逃げるより先に、男の下半身の衝動の方が早かった。
リリアンヌを押し倒して、パジャマの上を剥ぎ取った。
リリアンヌ:「……!!……!」
恐怖のあまり声にならない叫び声を上げるリリアンヌ。
クロ:「ニャア!」
クロが男に飛び掛かるが、すぐに弾き飛ばされてしまう。
鈴木:「だーっ!!」
そこへ鈴木、手にしていた消火器を男に投げつける。
だが、運動神経に関しては稲生とどっこいどっこいの鈴木、殆ど男に当たることはなかった。
オーナー:「何をしてるんだ!警察を呼んだぞ!離れろ!!」
鈴木:「オーナー、こいつです!非常階段下りて行ったの!」
リリアンヌはパジャマの下まで脱がされていたが、それ以上犯されることはなかった。
幸いこのホテルのすぐ近くには交番がある為、駆け付けた警察官達によりガチムチの男は連行されて行ったのである。
鈴木:「エレーナに手を出そうとして、リリィちゃんに手を出したんですよ、きっと!とんでもないヤツだ!」
と、鈴木は警察官の事情聴取に答えていたが……。
ガチムチ:「お、俺好みのロリータ!お、俺のこ、子種注ぐ!!」
パトカーに乗せられる直前、そんなことを叫んでいた。
鈴木:「え、なに?最初からリリィが目的……?幼女先輩は大事にしないとダメだろ!!」
エレーナ:「勝手にうちのリリィを幼女扱いするなよ……!こいつ、もう15歳だぞ。確かに小さい体だけど……」
鈴木:「欧米人は体がデカいというイメージなのにねぇ……」
エレーナ:「違うから迫害されるんだよ……。まあいいや。助けて来てくれてありがとう」
鈴木:「いやいや。これも大聖人様の御仏智。(エレーナの所に夜這いに行こうとしたら、先を越されてたなんて言えねーぜ……)」
鈴木のズボンのポケットには、キーピックが入っていたという。
今週はあまり平日に勤務シフトを入れなかったのだが、正解だったようだ。
こういう所にも御加護というのは存在する。
しかし、ケト線を厄週にしたものってのは一体何だったのだろうね?
取りあえず埼京線に乗って、一杯やってから帰るか。