報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「招かざる客」

2015-07-10 19:18:51 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月22日12:30.天候:晴 十条達夫宅 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ、アルエット、十条達夫]

「フム。もうデイライト社が嗅ぎ付けたか」
「アルエットの修理の場所、その他材料を提供した見返りに、ライセンス契約の話に際してよろしくと」
「年金も少ないしな。多少は協力せんとダメじゃろうな」
「ありがとうございます。年金が少なくても、博士のように手に職のある人なら大丈夫なんじゃないですか?デイライト・コーポレーションとなら、もう老後も安泰ですよ」
「まあ、どうだかな……」
 と、その時、ドアがノックされた。
「はい?」
 ドアを開けて来たのは、アルエット。
「おお、アルエット。どうした?」
「すき焼き、もうできたのかい?」
「いえ、それが……」

 敷島がキッチンに行くと、アリスが困った顔をしていた。
「どうした、アリス?」
「舞茸はあるんだけど、白菜が無いのよ」
「マジか!……鍋と言ったら白菜だろ?」
「キャベツならあるんだけど、これ代わりに入れる?」
 と、アリスはキャベツ一玉を右手でヒョイと上げた。
「いや、ダメだな。すき焼きの具材として、白菜は欠かせない」
 敷島が腕組みをして難しい顔をした。
「ちょっとアンタ!白菜が無いなんて、どういう了見だい!?」
 シンディが執事代行のバージョン4.0Cを怒鳴りつけた。
「イ、イヤ、シカシ……。白菜ガ無クテモ、スキ焼キハデキマスノデ……」
「ああッ!?そんなこと言ってんじゃねーよ!」
「ウルトラ・ワガママ女!」(←逆ギレの4.0C)
「ンだと、てめコラ!ガスボンベ引っこ抜いて、コンロの燃料にしてやろうか?ああッ!?」
 バージョン・シリーズの燃料は天然ガス。
 背中にガスボンベを背負っている。
 ダメージを受けると爆発するのはこの為。
「お、おい、お前ら。ケンカは……」
「仕方が無い。ワシがちょっくら買ってこよう」
「達夫博士!?」
「アリス君やシンディは料理中じゃし、敷島君やアルエットはこの辺の地理に詳しくない。Cは動きが鈍いしの」
「……モ、申シ訳アリマセン」
「後でアタシがもう少し素早く動けるよう、カスタムしてあげるわよ」
 と、アリス。
「ドクターのオ手ヲ煩ワセテシマッタ……」
 orzになる4.0Cだった。
「けっ、ざまぁみろ」
 悪態をつくシンディだった。
「どうする、タカオ?この分だと、白菜が来る前にできちゃうけど?」
「肉はだいぶあるんだ。先に食ってていいんじゃないか?」
「そうね!」

[同日12:45.同場所・ダイニング 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ、アルエット]

「このお肉、柔らかーい!」
「うん。さすが米沢牛だな。身内に送って来る分というのは、あいにく出荷できなかったものを横流ししているんだろうが、それでも高級和牛の名に恥じない味だ」
 敷島が大仰に感想を言う。
「シンディ、ご飯よそってくれ」
「はーい」
「日本人はライスが好きねー」
「すき焼きとて、こっちの感覚じゃ、おかずだからな」
 シンディが敷島に茶碗を渡した時だった。
「! 接近反応!」
 シンディの両目がギラッと光り、家の外に向けられる。
「何だ、敵か?」
「バージョン4.0の反応がするわね。ちょっと片付けてきます」
「おう、よろしくー」
「ヨロシクオ願イシマス」
「オマエも来るんだよ!このスカポンタン!……あ、アルエットは中にいていいからね」
 アルエットに対しては、優しい声で言う。

 シンディが家の外に出ると、バージョン4.0の集団が10機はいた。
 こんなのが公道を堂々と歩いて、普通は通報されるものだが、恐らくケータイの電波などがかく乱されているのだろう。
「何か用?」
 シンディは集団を睨みつけた。
 無論、用件があるに決まっている。
 おおかたの予想はついているが、シンディは一応聞いてみた。
 時間稼ぎの為でもある。
 ズイッとこの集団の隊長と思しき個体が、1歩前に出て来た。
「用件ハ3ツデアル!1ツ!新型マルチタイプ、8号機のアルエットを直チニ引キ渡セ!2ツ!ソコニイル裏切リ者ノ引キ渡シヲ要求スル!3ツ!……十条達夫博士ニ直接用件ガアル!十条達夫博士ヲ出シテモラオウ!」
「うーん……。2つ目の裏切り者の引き渡しなら応じるけどね」
「エエッ!?ソンナ御無体ナ!」
「白菜も用意できない役立たずなんか要らないわよ!」
「ソコヲ何トカ……」
「ダーメ!お前達!こいつだけ引き渡すから、今日のところは帰ってちょうだい!これなら子供のお使いじゃなくて済むでしょ?」
 さめざめと泣く4.0C。
 で、兵団の方はどうしたものか思案しているのだろう。
 特に4.0隊長からはキュルキュルキュルと、電子頭脳からそんな音が聞こえた。
「……ダメダ。全テノ要求ニ応ジテモラオウ!サモナクバ、ソノチンケナ家ゴト吹キ飛バス!」
 隊長の言葉に呼応するかのように、4.0兵団も右手を銃に変形させた。
「分からず屋どもがっ!だいたい、3つ目のドクター達夫に用件って何なの!?あいにくとドクター達夫は留守なんだけどね!」
「何ッ!?」
「アタシで良かったら、代わりに用件を聞いといてやるわよ」

 キュルキュルキュルキュルキュル……(シンディの言葉に思案する隊長)

「デハ、伝エテモラオウ!十条達夫博士ノ宝物ヲ、十条伝助博士ニ引キ渡スヨウニト!」
「宝物?それは何?」
「十条達夫博士ニ言エバ分カル!」
「分かったわ。間違い無く伝えておくから、今日の所は帰って」
「ダメダ!裏切リ者とアルエットを引キ渡シテモラウ!」
「嫌だ。……と、言ったら?」

 次の瞬間、兵団が銃火器を一斉に発砲してきた。

「オマエ、責任取りな!」
「ウワアアアアッ!」
 シンディは4.0Cを惜しげも無く囮にする。
 兵団の一部がそれに反応している中、シンディはブースターを使って真正面にいる隊長に体当たり。
「ウオオオオオッ!?」
 ついでに周囲にいた兵達も巻き添えを食らい、燃料のガスタンクに引火して爆発した。
「アタシを誰だと思ってるんだい!?偉大なるマルチタイプ、3号機のシンディ様だよ!」
 しかし、兵達はシンディに発砲を続ける。
「くそっ!こいつら、ちょこまかと……!」
 その時、シンディに近づいた1機が、別方向からの攻撃に頭部を破壊された。
「!?」
 それはレーザービーム。
 光線銃を搭載しているのは……。
「アルエット!?」
 家の中から窓越しに、右手の人差し指を突き出し、そこからレーザービームを放ったのだった。
「お姉ちゃんを攻撃しないで!」
「ターゲットを発見!直チニ捕エロ!」
 残りの4.0数機がアルエットの所へ向かう。
「くっ!」
 アルエットはビームを放ったが、戦い慣れしていないせいか、なかなか当たらない。
「アルエット!ライフル・モードからショットガン・モードに切り替えて!」
 シンディが妹機に指示を出した。だが、
「……分かんないよ!どうしたらいいか!」
 まだ自分に搭載された機能を把握しきれていなかった。
 初音ミクですら、製造当初は自分の歌唱機能を知らなかったくらいだ。
 家の中に突っ込む4.0達。
 窓ガラスや壁が壊されるが、そんなことはお構いなしだ。
 だが、それが何故か外に出て来た。
 正確には、何かを追って出て来たと言うべきか。
「あれは、ロボット・デコイ!?」
 ピコーンピコーンと特殊な信号音と光を発することで、人工知能の劣るテロロボットを引き寄せ、そして爆殺する時限爆弾式手榴弾を改造したものだ。
 アリスの発明品である。
 人工知能の劣るのは、概ねバージョン4.0以前のシリーズ。
 マルチタイプやボーカロイドなどの高性能の人工知能を搭載している者には効かない。
 残った4.0達は一発のロボット・デコイに引き寄せられ、家の外に出たところで爆発、全滅した。
「お見事です!ドクター・アリス!」
「ま、こんなこともあろうかと、何発か持って来ておいて良かったわー」
 アリスはドヤ顔で言った。
「シンディ。おかわり」
 アリスは御飯の入った茶碗をシンディに差し出した。
「は、はい!ただいま!」
 シンディが茶碗を受け取り、炊飯器の所に行くと、
「ただいまぁ。ん?何の騒ぎじゃ?」
 達夫が帰って来た。
「達夫博士、白菜は?」
「おーっ、ちゃんと買ってきたわい。それより、何の騒ぎじゃ?」
「バージョン4.0の集団が襲って来たんです。御覧のように返り討ちにはしましたが……」
 と、報告する敷島。
 因みにご存知のように、敷島は何にもしていない。
「こりゃ派手にやったのぅ……」
「ごめんなさい。アタシが油断したから……」
 シンディはしゅんとなって達夫に頭を下げた。
「いやいや。最初に襲ってきた、こやつらが悪い。わしの分も出してもらおうか」
「は、はい!」
「すいません、先に頂いてました」
「良い良い。こんなもてなししかできんが、まあ、賑やかにやってくれ。あー、悪いがシンディ。できることなら、外にいる残骸の処理と家の修理を頼めんかの?」
「あー……ドクター・アリス?」
「ドクター達夫の要望通りしてあげて。まあ、家の修理は応急処置しかできないと思うけど」
「かしこまりました。そういうことでしたら」
 シンディは早速、作業に取り掛かった。
 尚、命令はされていなくても、アルエットも健気にシンディの手伝いを始めた。
「レイチェルは来なかったのか?」
「あれ?そういえば……」
「うん。来なかったわね」
「む?では、あれは先遣隊か?」
「えーっ?また来るのー?」
 敷島はあからさまに嫌そうな顔をした。
「ヒマなロボット軍団だぜ」
「まあ、命令している人間がヒマな老人じゃからの」
 達夫はまるで自分を皮肉るかのように言って、クックッと喉の奥で笑ったのだった。

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4 コメント

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Unknown (ANP)
2015-07-10 23:32:19
あなたの愛してる作品がパチスロに!その時あなたの気持ちは?
1 やったー!
2 4号機でやりたかった…
3 舐めとんのか!

私は2ですね。
返信する
ANPさんへ (作者)
2015-07-11 06:16:42
作品にもよりますが、基本的には1です。

それより、山門入り口さんの所はマズいんじゃないでしょうか?
何とかした方がいいですよ。
返信する
Unknown (ANP)
2015-07-12 23:03:12
在日連絡云々ですがパチンコ屋経営してる人が日本名しか名乗ってない場合は連絡しても意味はないんですよね?

5万円ゲットしてハナビに掛けようと思ったのに!
返信する
ANPさんへ (作者)
2015-07-13 02:21:32
 そんなことより、慈悲深い山門入り口さんから御赦免を受けたのですから、今後はもう少し自重された方がよろしいかと思いますよ。
返信する

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