報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「札幌到着」

2017-06-03 19:09:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月2日14:41.天候:晴 特急“スーパー北斗”9号→JR札幌駅]

 列車はディーゼルエンジンを唸らせてひた走る。
 苫小牧駅から千歳線に入ると、そこは電化区間である。
 途中すれ違ったり、追い抜く普通列車がディーゼルカーから電車に変わると、札幌都市圏に入ったことを知らせてくれる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終着、札幌です。函館線、学園都市線、地下鉄南北線、東豊線をご利用のお客様はお乗り換えです。どちら様も忘れ物の無いよう、お支度ください〕

 敷島:「うー、やっと着いた……」
 井辺:「本当に1日掛かりでしたねぇ……」
 敷島:「いや、全く。平賀先生、起きてください」
 平賀:「んあっ?……着きました?」
 敷島:「もうすぐです」
 井辺:「飛行機なら2時間くらいなんですけどね」
 敷島:「ロイド達が一緒じゃ、飛行機乗れないからな。しょうがない」

 敷島達は降りる準備を始めた。

 MEIKO:「ルカ、私の充電コード抜いて」
 ルカ:「自分で抜きなさいよ。ほら」
 MEIKO:「サンクス」
 井辺:「社長、私はMEGAbyteと一緒に降ります」
 敷島:「あー、そうだな。その方がいいだろう」

 井辺は自分の荷物を持って、隣の2号車に向かった。
 列車は既に周辺にビルが立ち並ぶ高架線の上を低速で進んでいた。

〔この先、揺れることがありますので、お気を付けください。終着、札幌に到着致します。お降りの際は、足元にお気をください。特に、お子様連れのお客様は手を放さずにお降りください。今日もJR北海道をご利用くださいまして、ありがとうございました。またのご乗車をお待ちしております〕

 ※ウィキペディアによると、この自動放送の担当声優が終着放送の後に自己紹介をすることがあるらしい。が、雲羽は聞いたことが無い。

 列車はホームに入線した。

〔「ご乗車ありがとうございました。終着、札幌、札幌です。お忘れ物の無いよう、お気をください。到着の列車は折り返し、回送となります。ご乗車にはなれませんので、お気をつけください」〕

 ドアが開くと一斉に乗客が降り出す。

 シンディ:「社長、奥様から頂戴した荷物はどうする?」
 敷島:「途中で捨てるわけにはいかないからな。そのまま持っとけ」
 平賀:「何です?」
 敷島:「Rデコイですよ。このイベントの後で、私の行動次第では必要になるかもとアリスが持たせたらしいんですよ」
 平賀:「ああ、なるほど」

 平賀は大きく頷いた。
 そしてホームに降りて、平賀は自分の荷物を少し開けた。

 平賀:「癪に障るけども、考えることは同じのようですね」
 敷島:「は?」
 平賀:「自分のはRデコイ改良型のリモコン式です」
 敷島:「はぁーっ!?」

 アリスの開発したRデコイは時限式だが、平賀はそれを改良したリモコン式にした。
 そうすることで、好きなタイミングで爆発させることができる。
 時限式だと1度スイッチを入れてしまうと、もうキャンセルすることはできないが、こちらのリモコン式は爆弾側の起爆スイッチを入れただけでは、その後でキャンセルすることもできる(爆弾本体のスイッチを入れた後でリモコンのスイッチを入れないと爆発しないようになっている)。

 敷島:「先生、そりゃ……!」
 平賀:「これはエミリーに持たせておきましょう。エミリー、いいな?」
 エミリー:「はい」
 敷島:「ここから先、エミリーは平賀先生の護衛を頼む。平賀先生はエミリーのオーナーなんだからな」
 エミリー:「かしこまりました」
 シンディ:「ま、姉さんとしては社長のお世話をしたいだろうけど、私じゃ平賀博士が嫌がるからね」
 平賀:「悪いな。今のシンディが悪いわけじゃないということは、頭では分かっているんだが……」

 どうしても敵対していた頃のシンディのイメージが払拭できないでいた。
 もちろんロボット研究者として、現行機のシンディに危険性が無いということは知っている。
 知っているのだが、科学者としての頭の上を行く、人間としての感情がどうしても受け付けないのである。

 平賀:「お前達に分かるか?俺の気持ち、人間の感情が」
 初音ミク:「難しいですね」
 鏡音リン:「リンには分かんないYo」
 鏡音レン:「リンに分からないなら、僕にも分かりません」
 MEIKO:「そういうの、『ワガママ』って言うんじゃない?」
 KAITO:「正直、理解できないですよ。博士は今のシンディに危険は無いと十分に認識しておられながら、使えないと仰る。僕には理解できません」
 平賀:「うん、そうだよな。いや、お前達の答えの方が正直だと思うよ。時折、理屈に合わないことを言ったり、行ったりする。それが人間というものだ。覚えておくといい」
 巡音ルカ:「とにかく、平賀博士としてはシンディを使いたくない。エミリーを使いたいから、社長にはシンディを使ってほしいということなのですね」
 平賀:「そういうことだ」
 ルカ:「それならロイドとしては、それに従うしか無いですね。人間の感情は理解できませんが、御命令とあらば従うのが私達の使命です」
 MEIKO:「ま、結論としてはそういうことになるんだけどね。それにしても、平賀博士もたまにぶっちゃけるよね」
 平賀:「そうか?まあ、そう思われてもしょうがないか」

 そこへ2号車から、やっと井辺達が降りて来た。

 井辺:「すいません、お待たせしました」
 Lily:「未夢がデッキで足を滑らせたんですよ」
 敷島:「大丈夫か?」
 未夢:「大丈夫です。元はマルチタイプとして造られた体ですから」
 平賀:「ま、一応後で足を診てやるよ。その為に自分が付いて来たんだからな」
 未夢:「お手数お掛けしてすみません」
 敷島:「じゃ、そろそろ行きましょうか」

 敷島エージェンシー一行は、改札口に向かった。

[同日15:00.天候:晴 北海道札幌市中央区 京王プラザホテル札幌]

 敷島:「着いた着いた。四季グループのタレント達が札幌ドームとかでイベントをやる時、ここに泊まるんだってさ」
 リン:「高級ホテルじゃん!」
 井辺:「法人会員とかになってるんでしたっけ。それでだいぶ、割引させて頂けるということですね」
 敷島:「まあ、もっと身も蓋も無い理由があるんだけど、それは【お察しください】」
 Lily:「私達もここに泊まっていいんですか?」
 敷島:「もちろんだ。列車では差別されたが、ここでは一緒だよ」
 ミク:「良かったね。後で一緒にお話ししましょうね」
 結月ゆかり:「は、はい!よろしくお願いします!初音先輩!」
 ミク:「ミクでいいよ」
 敷島:(ま、実際の理由は多人数の方がそれだけ団体割引されやすいというのと、ホテルが別れちゃうと管理が大変というのもあるんだけどな)

 それに実は今、ロイドを狙った『誘拐』事件というのが発生している。
 車以上に高値で販売されているロイド達は、往々にして貴重品として窃盗されるという。
 実際、リンが『誘拐』されたこともあった(リンの場合は無理やり連れ去られたことから、『誘拐』というより『拉致』と言った方が良いだろう。マルチタイプは武力を持っているから拉致自体不可能だし、メイドロイドは意外と自重がある為に難しい。武力を持たず、また軽量化もされているボーカロイドが対象にされやすい)。
 マルチタイプが護衛したり、専属マネージャーが一緒に付くようになったのはそういう理由もある。

 敷島:「ま、とにかくチェック・インしてこよう。ロビーで待っててくれ」
 井辺:「社長、私が行ってきますよ」
 敷島:「いや、いいんだ。ボーカロイドの総合プロデューサーとしてはキミだけども、このツアーとしては俺が代表者だから」

 敷島はそう言ってフロントに向かった。

 リン:「きれいなホテルだね〜」
 レン:「こういう高いホテルだと、部屋も防音がしっかりしてるよね?歌、歌えるかな?」
 ルカ:「プロデューサー、チェック・インをしたら会場の下見ですか?」
 井辺:「はい。私達はスタッフとの打ち合わせもありますが、皆さんは会場を見ておいてください」
 ルカ:「分かりました」

 旅行気分の年少組と、仕事する気満々の年長組とで気持ちがバラバラなのはしょうがないことなのか。

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