報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「深夜の到着」

2021-11-20 20:06:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月1日23:46.天候:曇 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 列車が仙台市に近づく度に速度を落として行く。
 そして、ついに市内近郊に入ると、大宮以南のと大して変わらぬ速度で走行する。
 東北一の大都会である為、眠らない地区も存在するにはするが、やはり深夜帯ということもあってか、沿線の雰囲気はどことなく寝静まっている感じがした。

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、仙台、仙台です。12番線到着、お出口は同じく左側です。仙台からのお乗り換えをご案内致します。……」〕

 この時間ともなると、とっくに終電の終わっている路線も存在する。
 因みにだ。
 この新幹線と接続する終電の時間は、全て0時2分である。
 0時2分に全ての最終電車が出発する。
 尚、仙台市地下鉄はこの限りではない。
 かつては地下鉄もこの新幹線に接続する終電は無かったが、今は接続するようになっている。

 愛原:「……どれ、そろそろ降りる準備をするか」
 高橋:「うっス」

 通路側に座っている高橋が立ち上がると、荷棚に乗せた荷物を下ろした。

 高橋:「ほらよ」
 リサ:「ありがとう」

 高橋はリサにリュックを渡した。

 愛原:「東北だから、夜は涼しいかもしれないな?」
 高橋:「一応、パーカー持って来ました」
 リサ:「私も」
 愛原:「何で2人とも、お揃いのフード付きパーかーなの?仲の良い兄妹だねぇ……」
 高橋:「ぐ、偶然っスよ!」
 リサ:「うーん……確かに、お兄ちゃんのファッション真似た部分はある」

 リサは腕組みをして、首を傾げるような仕草をした。
 列車は素直に下り本線ホームに入線した。
 恐らく、このまま利府の車両基地まで引き上げるのだろう。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、仙台、仙台です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。12番線に到着の列車は、回送となります。ご乗車になれませんので、ご注意ください」〕

 ドアが開いて、リサ達はホームに降り立った。
 確かに東京と比べて、心なしか涼しい気がする。
 リサ達は階段を下りて、改札口に向かった。

 絵恋:「私達も行きますわよ?」
 パール:「はい」

 絵恋達はエスカレーターでコンコースに下りる。

 絵恋:「ねえ、パール。リサさん達が泊まるホテル、目星とか付いているの?」
 パール:「あいにくですが、それはマサも教えてくれません」
 絵恋:「リサさんもよ。何か、『愛原先生の命令で、教えることはできない』なんて……」
 パール:「愛原先生は探偵のお仕事で仙台に向かわれたのです。恐らく、この町に着いた時から仕事が始まるのでしょう」
 絵恋:「それにしたってねぇ……」
 パール:「ホテルの場所まではピンポイントでは分かりませんが、少なくとも、この仙台駅周辺であることは予測できます」
 絵恋:「そうなの?」
 パール:「はい。もう深夜帯で終電の時間ですし、その終電に乗って移動するということは考えられません。恐らくは、仙台駅周辺に、まずは一泊するものと思われます」
 絵恋:「さすがパールね」
 パール:「恐れ入ります。(まあ、ここまではマサに聞いたんだけど……)」
 絵恋:「それで、私達はどこに泊まるの?」
 パール:「仙台駅周辺が見渡せる場所が良いでしょう。そこを予約してございます」

 パールはホテルメトロポリタンを指さした。

 絵恋:「さすがはパールね」

 確かに仙台市内では高層ホテルの1つであり、駅前周辺の眺望には優れている。

 パール:「もう夜も遅いです。早くチェックインして、お休みください」
 絵恋:「分かったわ」

[10月1日23:59.同地区内 ホテルグリーンウエル]

 仙台駅西口を出て数分ほど歩き、地下鉄乗り場にも程近い所に、リサ達の今夜の宿はあった。
 規模的には、こぢんまりとしたビジネスホテルである。

 スタッフ:「それでは愛原様、本日より1泊のご利用ですね」
 愛原:「はい」

 愛原は鍵を2つ受け取った。

 愛原:「はい、リサはシングルな」
 リサ:「えー、また1人?」
 愛原:「そう言うなよ。東京中央学園じゃ、寮は2人部屋だって言うじゃないか」
 リサ:「まあ、そうだけど……」

 私立だからか、東京中央学園には寮がある。
 スポーツ特待生とか、留学生とか、はたまた家庭の事情とかで入寮することがある。
 しかし、日本アンブレラはリサ・トレヴァー達を1人ずつ隔離して、集団生活させることはなかった。
 これは1人1人の個性が強い為に、互いに反発しやすい反面、団結してしまったら会社に造反することを恐れてのことだという。
 ハンターみたいに頭が悪く、ただ与えられた簡単な命令をこなすだけの下級BOWなら集団行動させても良いが、人間並みの知性を持つリサ・トレヴァー達は警戒された。
 もっとも、実際はここにいる『2番』のリサのように、隔離しても危険な個体はいたのだが。

 愛原:「中には個室を希望するコもいるらしいが、規則でダメらしいな」
 リサ:「なーんかね。そうらしいね」

 リサ達はエレベーターで、指定された客室フロアへ上がった。

 リサ:「イジメとかもあるみたいだし」
 愛原:「マジか……。オマエ、寮長になって取り締まったらどうだ?」
 リサ:「え?バイオハザード起こしていいって?w」
 愛原:「誰もそんなこと言っとらん」

 確かにリサのウィルスや寄生虫に感染させれば、イジメは無くなるだろう。
 但し、リサの機嫌を損ねた者は例外として。
 そして、エレベーターを降りる。

 高橋:「先生、明日は何時に起きます?」
 愛原:「そうだな……。下の朝食会場のオープンは、7時からだそうだ。それに合わせて起きよう」
 高橋:「そういうわけだ。分かったな?」
 リサ:「うん、分かった。要は、朝7時に下のレストランに行けばいいんだね?」
 愛原:「そうだ」
 リサ:「食べ放題!?」
 高橋:「今、コロナだから、バイキングとかは取りやめなんじゃねーか?作者贔屓の東横インも、一部の店はまだ弁当形式らしいぜ?」
 リサ:「そうなの……」

 リサは口を尖らせて、ガクッとなった。

 愛原:「いや、そんな話、フロントでしてなかったぞ?」
 高橋:「えっ?そうなんスか!?」
 愛原:「ああ。だから、バイキング形式だと思うぞ」
 リサ:「食べ放題……!」
 愛原:「そういうわけだから、夜更かししないで、さっさと寝ろよ」
 高橋:「分かった。おやすみなさい」

 リサはシングルルームの鍵を受け取ると、それでその部屋に入った。
 部屋の構造は、“ベタなビジネスホテルの法則”通り。
 リサは荷物を適当に床に置くと、ベッドにダイブした。

 リサ:「これがやりたかった~」

 そして、仰向けになってスマホを取り出す。
 絵恋からLINEが来ていた。
 『もう仙台に着いたの?』とか、『私は常にリサさんのことを見ているからね』とか書かれている。

 リサ:(キモい……)

 一瞬、LINEをブロックしてやろうかと思ったリサだった。

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