報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「地方巡業」

2015-05-16 15:36:14 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月16日07:30.都営地下鉄新宿線・菊川駅 敷島孝夫、井辺翔太、結月ゆかり、Lily、未夢、シンディ]

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが8両編成で到着します。白線より下がって、お待ちください。……〕

「申し訳ありません、社長。自分達だけ新幹線で先行させて頂いて……」
 井辺が敷島に言った。
「いや、いいんだよ。キミ達は営業で行くんだから。対して俺とシンディは、営業とは直接関係無いことで行くんだからね」
「ですが……」

 パァァァァン!(都営10-300形の警笛)

「1つ心配なのは、俺はシンディが護衛に付いているからいいが、井辺君達には護衛がいないことだ」

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。菊川、菊川〕

 電車に乗り込む面々。
「未夢さんがある程度の“力”をお持ちだと伺いましたが……」
「まあ……そうなんだけどな」
 敷島は空いている席に座った。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 電車が走り出す。

〔次は森下、森下。お出口は、右側です。都営大江戸線は、お乗り換えです。ホーム後方の連絡階段をご利用ください〕

 体のサイズが1番大きいシンディは、新人ボーカロイド達を見下ろす形となる。
 今ここにいるボーカロイドで、身長170センチ台は未夢だけだ。
 その未夢とは、似た目線で話ができるが……。
「未夢。ボーッと立っていると、『生きている人間』に見えないから、少しは動きな」
 シンディが指摘した。
「あっ……ごめんなさい」
「立っている時は基本、『スリープモード』は無しね」
「そうだぞ。まだミクが売れる前、それで電車が急停車した時に派手にスッ転んだんだから」
 敷島は新聞を広げながら言った。
「新幹線の中ならいいよ。“はやぶさ”なら電源コンセントもあるしな」
「はい」

[同日07:35.都営新宿線・馬喰横山(ばくろよこやま)駅、上記メンバー]

〔「まもなく馬喰横山、馬喰横山。お出口は、左側に変わります。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。この電車は、各駅停車の笹塚行きです。次の岩本町駅で、後から参ります急行電車の通過待ちを致します。神保町、市ヶ谷、新宿から先の京王線へお急ぎのお客様は、当駅で急行、高尾山口行きにお乗り換えください。38分の発車です」〕

「社長、私達ここで」
「お、そうだな」
 井辺と彼に引率される新人ボーカロイド達は、ここでJRに乗り換える。
 それで東京駅に行き、新幹線に乗り換えるというルートだ。
「じゃあ、頑張って」
「はい!行ってきます!」

 ドアが開くと、井辺達は電車を降りて乗換口に向かって行った。
 他路線への乗り換え駅で、尚且つ急行停車駅とあれば、下車客も多い。
 敷島は空いたドア脇の席に移動し、シンディはその横に立った。
「『じゃあ、頑張って』って、どうせ社長も現場に行くんでしょう?」
「何も無かったら途中からな」

 急行乗り換え客をホームに降ろして、次の駅まで先行する各駅停車が先に発車した。

〔この電車は、各駅停車、笹塚行きです。次は岩本町、岩本町。お出口は、左側です〕

 敷島は電車が走り出すと、カバンの中から1枚のパンフレットを出した。
 そこには、今日から新人達が参加するイベントの内容が書いてあった。
『東北ロボットフェスタ』と。
「シンディが行ったら、即行でみんな平伏すだろうな」
「私は何もしないよ?」
「いやいや。もう雰囲気でさ」
「神降臨ってヤツ?」
「いや。どちらかというと、魔王来襲かもしれん」
「あー……まあ、反論はできないか」
 シンディは肩を竦めた。

 電車が岩本町駅に到着すると、シンディが電車が通過する方を警戒する。
 何でも昔、別の兄弟が外国の地下鉄を銃撃するテロを引き起こした際、通過する急行電車から各駅停車に向かって銃を乱射するというものだったかららしい。
 シンディ自身はやっていないが、そこは兄弟のデータを共有しているからだろう。
 日本の地下鉄は平和なもので、京王電鉄の車両を使用した急行は時速70キロで何事も無く通過していった。

[同日07:54.都営新宿線(京王新線)新宿駅 敷島&シンディ]

〔「まもなく新宿、新宿です。お出口は、右側です。この電車は京王新線直通、各駅停車の笹塚行きです。初台、幡ヶ谷、終点笹塚の順に止まります。本日も都営新宿線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

「乗り換えは少なくて楽なんだがな……。あとは、ここから先のルートだな」
「任せて」
 シンディは片目を瞑った。
「さすがは『歩くナビタイム』。ミクのフィードテストをやっていた頃が懐かしい」
 新宿駅に電車が到着すると、早速電車を降りて、シンディがナビの通りに進んだ。
 新宿における目的地は、JRバス乗り場である。
 手持ちの乗車券には、こう記されている。『JR新宿駅新南口(代々木)』と。
「ミクのフィールドテスト?……ああ。何か、姉さんから聞いたなぁ……。ボーカロイドにもナビ検索とか付いてるんだ?」
「まあな。どうしても俺や井辺君が付いてやれない場合、現場には1人で向かうこともあるから、搭載されていて良かったよ」
「そうだね」

[同日08:10.JR新宿駅新南口(代々木)バス乗り場 敷島&シンディ]

 都営地下鉄から件のバス乗り場へアクセスする際、サザンテラスを通ってJR新宿駅の東側に抜け、そこから南下すると良い。
 時折、JR新宿駅の西側にある都営地下鉄から東側に抜けるルートが見つからず、豪快に挫折する旅行者が多数……なのかは不明だ。
 因みに、甲州街道の陸橋はミスリードである。
 作者が確認した時点で、そこから新南口へのルートが(駅のコンコースを除いて)用意されていない。

 仮設のJRバス乗り場は、とてもバスターミナルと呼べる大きさではなかった。
 アメリカ人なら、『バス・ディポ』と呼ぶのではないだろうか。
 待合室も狭い。
 トイレはそこそこ綺麗でウォシュレットだが、それでも小さい。
 敷島がそこに行っている間、シンディはトイレに向かう通路の角に立っている。
 新人ボーカロイド達をGPSで追うと、メンバーは東京駅にいる模様だ。
 運行情報的に、今のところ遅延や運転見合わせは発生していない。

〔「只今よりご案内致します便は、8時30分発、JRバス東北“仙台・新宿号”仙台駅東口行き、0番乗り場から。同じく8時30分発の……」〕

 規模は東京駅八重洲南口より小さいが、それでも係員がマイクで案内している所は同じだ。
 東京駅では発車5分前、新宿駅ではだいたい10分前くらいに入線することが多い。
「0番かい」
 増えた便数に対応する為、臨時に増設された乗り場らしい。
 鉄道駅でもホームが増設されると、たまに0番線が発生することがある。
 既存の1番線よりも、更に駅の正面側にホームが作られた際に発生しやすい。
 このバス乗り場においては、既存の1番乗り場よりも更に新宿駅寄りにできたからだろう。
 乗り場の係員がバスの荷物室の扉を開け、大きな荷物を持った乗客から預かって荷物を乗せている。
 運転手は乗客名簿と座席表を持って、バスから降りてきた。
 JR東日本100パーセント出資の子会社なだけに、運転手の制服も鉄道のそれによく似ている。
「はい。えー、敷島様、7番A席ですね。どうぞ」
「よろしく」
 JRバス関東では乗車券は降りるまで乗客に持たせるが、JRバス東北では乗る時点で回収してしまう。
 同じJR東日本系列のバス会社だが、ソフト面での違いが見られる。
 たまに3列シート車で運転することもある路線だが、敷島達が乗る便は4列シート。
 但し、通常の4列シートと違って、横幅とシートピッチが拡大されたタイプである(JRバス関東で言う“楽座シート”)。
「おっ、充電コンセントがあるぞ?充電するか?」
 敷島が窓の下に電源コンセントを見つけると、隣に座るシンディに振った。
「私が充電したら、バスのバッテリー上がりそうだから遠慮しとくわ」
「はははは(大笑)!それは困る」
 敷島は一しきり笑うと、シートベルトを締めた。
「それに、まだ私のバッテリーは95パーセントあるし」
「さすが高性能バッテリーだな。24時間は充電しなくても大丈夫というコンセプトなだけある」
「ええ」

 週末ということもあってか、乗り込む際にチラッと敷島は座席表を見たのだが、満席のようだった。
 満席であっても、これの2号車的な続行便は出さないようである。
 次々と乗り込んでくる乗客達。
 果たして、仙台で彼らを待ち受けるものは何か。

 発車まで、あと5分。

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