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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「高野芽衣子」

2025-02-16 20:47:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月5日15時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 リサは傘を差しながら事務所に帰って来た。
 雨が1日中降っていて、いわゆる梅雨寒の状態。
 気温はいつもより低いはずだが、体温の高いリサにはあまり関係無かった。
 むしろ、これから梅雨が終わって、また暑い暑い夏が来る事が憂鬱だ。
 鬼形態でいると、服など邪魔で仕方なく、裸になりたい衝動に駆られる。
 さすがにそれは大好きな愛原に怒られるから堪えているが。

 リサ「ん?」

 ガレージのシャッターが開いていて、来客用の駐車場にはシルバーのミニバンが止まっていた。
 リサは直感で、それが警察関係の車だと思った。
 ナンバーこそ違うが、東京中央学園に来た刑事達も、同じ車種の車で来たからである。

 リサ「……お兄ちゃんの関係かなぁ?」

 リサの所にも、高橋脱走の話は来ていた。
 昼休みの後で、職員室に呼ばれた。
 そこでは警察が待っていて、高橋の事を聞かされ、どこか逃走先を知らないかと聞かれたものだ。
 当然リサが知る由も無く、学校側も5時間目の授業が始まっているからと、警察の食い下がりを制止した。
 最後には名刺を渡され、高橋の居場所が分かったら、ここに連絡をと言われて解放された。
 5時間目は体育だったので、リサは無理やり復活させたブルマを穿いていた。
 刑事は、『東京中央学園さんは、ブルマを復活させたの?』なんて質問をしてきた。
 学校関係者は、『あくまでも、生徒の自主性を重んじる教育方針なので』と誤魔化していた。

 リサ「ただいまァ……」

 リサはエレベーターではなく、階段を昇って事務所を覗いてみた。
 事務所の中には誰もいないようだが……。

 愛原「リサ!」

 すると、3階から愛原が下りて来た。
 下りて来たのは愛原だけではない。
 2人のスーツ姿の男達も一緒だった。
 リサはすぐに刑事だと分かった。
 東京中央学園に来た刑事とは違うが。

 リサ「先生、ただいま」
 刑事A「このコは?」
 愛原「NPO法人デイライト様よりお預かりしているコですよ」
 刑事A「このコが……」

 さすがにリサのことは、お役所関係には隠し切れないようである。
 もっとも、デイライトだって、公安調査庁の隠れ蓑の1つに過ぎないのだから、似たような仕事をしている公安警察には隠せないか。

 リサ「どうしたの?」
 愛原「高橋が脱走したという話は聞いただろう?当然、逮捕前にここで住み込みで働いていてたうちが疑われるわけだ。それで、中を見せて欲しいってさ」
 リサ「ふーん……。パールさんは?」
 愛原「出てった」
 リサ「ファ?」
 愛原「警察で追ってるって」
 刑事A「何か疚しいことがあって逃走したかもしれませんからね。しかもこの雨の中、傘も差さずに、でしょ?」
 リサ「傘を差さずに!?」
 刑事B「本当に、行先に心当たりは無いのですね?」
 愛原「先ほども言いましたように、彼女の交友関係からして、アキバのメイドカフェか、閉鎖中の埼玉の斉藤秀樹容疑者の家しか無いですね」
 刑事A「アキバの方は、彼女が現れたという連絡は無い」
 刑事B「斉藤容疑者の行き先については?」
 愛原「残念ながら、それについては公安調査庁の方から口止めをされていますので」
 刑事A「チッ……」

 公安調査庁と公安警察は、このように縄張りが重なることがあり、そこで軋轢が発生することもあるとのこと。
 その為、公安警察が公安調査庁の協力者をマスコミにリークして、公安調査庁の捜査を妨害したこともあった。
 愛原が正にその立場。
 隠れ蓑たるNPO法人を介してとはいえ、実質的に公安調査庁から委託を受けている立場なので、愛原としては警察よりもそちらが優先なのだろう。
 但し、逮捕権があるのは警察の方。
 そして、当然ながら捜査令状を持って来られたからには、たちまち優先順位は警察側に転位することとなる。

 刑事A「ありがとうございました。また何か分かりましたら、こちらに御連絡を……」
 愛原「どうもお疲れさまでした」

 愛原は刑事達と共にエレベーターに乗って1階に下り、刑事達の見送りに行った。
 そしてしばらくするとエンジン音が聞こえて来て、刑事達の乗った車は、降りしきる雨の中、事務所のガレージから出て行った。

 高野「警察はもう帰ったかしら」
 リサ「! わっ、ビックリした!」

 天井の点検口をパカッと開けて、そこから高野芽衣子が出て来た。
 さしものリサもビックリしたほどだ。
 ショックで角が生えたくらいだ。

 高野「久しぶりね、リサちゃん?」
 リサ「た、高野さん……」
 高野「愛原先生とは、進展があったのかしら?」
 リサ「お、おかげさまで……」
 高野「さすがに指名手配犯の私がここにいたら、先生に迷惑が掛かるからね。警察が帰るまで、隠れてたの」
 リサ「そ、そう……」

 そして、愛原がエレベーターで戻ってくる。

 愛原「警察は帰ったぞ。高野君はいつまでいるんだい?」
 高野「あら?私、まだ全てを話しておりませんことよ?」
 愛原「しかし、さっきから表現が曖昧じゃないか」
 高野「実は“青いアンブレラ”内でも、情報が錯綜しておりましてね、どれが真実で、どれがウソなのか、トンチを働かせている最中なんですよ」
 愛原「いいのか、それ!」
 高野「それより、もう警察は来ないでしょうし、デイライトの善場も、テラセイブのパールも今日は戻って来ないでしょうから、今日は私がここでボランティアしますよ」
 愛原「いいのかよ……」
 リサ「何か、昔に戻ったみたいだね。これでお兄ちゃんがいれば……」
 高野「マサはホント残念だったわね。正規メンバーの誘いを受けたのが、運の尽きだったってわけ」
 愛原「何であのタイミングで脱走したりしたんだ?」
 高野「恐らく、テラセイブ側の作戦失敗でしょうね」

 因みにテラセイブとは、1998年に起こったアメリカのラクーン市壊滅をきっかけに立ち上げられたNGO団体である。
 主な活動内容は、『バイオテロ・薬害事件を秘匿・隠蔽する企業や組織を糾弾・告発すること』『バイオテロ・薬害事件に遭った被害者や犠牲者を支援・救済すること』としている。
 BSAAが国連機関の1つであり、どちらかというと、バイオテロ組織の掃討や壊滅、そのメンバーの拘束を主な活動内容としているのとは違い、その後方支援活動を主にしていることが分かる。
 その為、基本的にはBSAA側であり、“青いアンブレラ”側でもあるのだが、何回か起こった不祥事により信用が低下し、今はBSAAや“青いアンブレラ”ほど目立った活動はしていないと言われている。
 ただ、霧生市のバイオハザードをきっかけに日本支部が作られたという噂はあったが、実際にそのメンバーが現れることは無かったので、ただの噂だったのだろうと思われていた。
 ところが……。

 愛原「パールって、テラセイブの人間だったんだ」
 高野「ええ。日本人名の霧崎真珠は、恐らく通名。本名は恐らく横文字です」
 愛原「でも顔は日本人だで?」
 高野「日系人もそりゃいるでしょうからね。霧生市で、私達の前に現れたジョージ伍長みたいに」
 愛原「そうか……」
 高野「と、いうわけで、今夜の夕食はパールに代わり、私が作ります。何がいいですか?」
 リサ「肉!」
 愛原「そうだな……。今日は雨のせいか、少し寒い。梅雨が明けたら、もう食べる気無くすだろうから、今のうちに鍋にでもするか」
 高野「了解しました。それじゃ早速、買い出しに行って参ります」
 愛原「ああ。それじゃ、カード渡すよ。本当にいいのかい?指名手配……」
 高野「この辺りには交番もありませんし、警察に見つかる心配はほぼゼロです。今はマサや“コネクション”のメンバーを追うのに忙しいでしょうからね。……あ、ビニール傘借ります」
 愛原「いいよ。リサも連れて行かせるか?」
 リサ「むふー!」
 高野「いいですよ。リサちゃんは、テスト勉強してて」
 リサ「テスト明日まで……」
 愛原「あー、だったら勉強しておきな」
 リサ「はーい……」

 リサは渋々、階段で自分の部屋がある4階に向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義の脱走」 2

2025-02-16 16:12:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月5日12時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 

 昼食にはパールがホットドッグを作ってくれた。
 高橋が、かつてここで作っていた物と同じ物である。
 私は事務所のテレビを点けた。
 だいたい平日のこの時間は、どこも情報番組をやっている。

〔「はい、こちら警視庁本所警察署前です。こちらで今朝9時頃、銃撃事件がありました。犯人達は未だ逃走中であり、護送車を狙った犯行との見方が強まっています。と言いますのは、こちらの警察署で再逮捕されていた高橋正義容疑者が、その銃撃犯の車で共に逃走した為であり、警察は緊急配備を敷いたものの、未だ犯行に使われた車が見つかっておりません」〕

 銃撃犯の1人は世界的なテロ組織『コネクション』のメンバーだということが分かっている。
 何故なら、その場にいた警察官が咄嗟に手持ちの拳銃を発砲し、それが銃撃犯の頭に命中。
 病院に運ばれたものの、死亡が確認されている。
 身元を証明する物は持っていなかったが、前科者のリストの中に犯人らしき者があった。
 旧アンブレラ・コーポレーション・インターナショナルの非合法軍事組織UBCSに所属していた者だという。
 アンブレラには2つの軍事組織があり、表向きの組織としては、直営警備会社のUSSと、そこでも処理しきれない事態を収拾させる為の裏の軍事組織UBCSである。
 前者は日本アンブレラでも、直営の警備会社として、アンブレラの本社や研究所の警備に当たっていた。
 ちゃんと日本の警備業法の適用を受けていたという。

〔「……ここで速報が入って来ました。逃走に使われたと思われる車が、埼玉県川口市の荒川の河川敷で見つかったとの情報が入りました。繰り返し、お伝えします。……」〕

 愛原「これで、とうとう高橋は遠くに行ってしまったか……」
 パール「あの……先生」
 愛原「何だ?」
 パール「まさかとは思いますが、以前私がマサに出す手紙をお願いしたことがありましたよね?」
 愛原「ああ。ちゃんと出したぞ。あの中に大事な事が書いてあったのか?」
 パール「……ええ、まあ」
 愛原「そうだろうと思って、速達で出しておいたよ。ああ、料金は心配ない!俺が出すから!」

 すると、パールの顔色がサッと変わったような気がした。
 そして、バッと立ち上がる。

 愛原「!?」

 私がどうしたのかと聞こうとしたら、パールが事務所から飛び出してしまった。

 愛原「お、おい!待てよ!」

 と、同時に玄関のインターホンが鳴る。
 こんな時に何だ、もう!

 愛原「はい!愛原学探偵事務所です!」
 高野芽衣子「こんにちはー!高野で……ギャッ!」
 愛原「ああっ!?」

 インターホンのカメラ越しに、パールがいきなり玄関のドアを開けたものだから、それに高野君が思いっ切りぶつかるというハプニング映像が映った。
 何やってんだ、もう!
 私も事務所を出て、1階への階段を駆け下りた。

 愛原「高野君、大丈夫か!?」
 高野「あ、愛原先生、お久しぶりですぅ……」
 愛原「一体何の用だ!?」
 高野「近くまで来たものだから、寄ってみただけですぅ」
 愛原「ウソつけぇ!」
 高野「あの女がどうして逃げたのか、教えてあげますよ。それより、ポストの中に何かありませんか?」
 愛原「ポストぉ?」

 私は郵便受けの中を開けた。
 すると、普通郵便が何通が入っている。
 その中には、高橋からの手紙が入っていた。

 愛原「高橋からの手紙だ」
 高野「ちょっと確認してみませんか?」
 愛原「お前、いいのか?お前も追われてる身だろう?」

 すると高野君は笑みを浮かべて言った。

 高野「デイライトの女は、非常事態の対応で忙しいですよ。愛原先生が通報しない限り、ここに来ることはありません」
 愛原「よく知ってるなぁ……」
 高野「何年、先生の事務員やってたと思うんですか」
 愛原「……だな」

 私は高野君を事務所に招き入れた。

 高野「昼食中だったのですよね?申し訳無いですね」
 愛原「まあな……」
 高野「お詫びにコーヒー淹れて差し上げますよ」
 愛原「それはパールの仕事……って、あいつどこに行ったんだ!?」
 高野「『組織』に戻ったんじゃないですか?」
 愛原「組織ぃ?!」
 高野「そこで、その手紙です。開けてみてください」
 愛原「んん?」

 私はホットドッグを頬張りながら、封筒を開けた。
 警察署からならガッツリ検閲されて、ヘタなことは書けないはずだが……。

 愛原「これは……?」

 その中には、こう書かれていた。
 『真珠は霧が生まれる街の生き残り』

 愛原「パールは霧生市の生き残り!?」
 高野「そう書いてありました?」
 愛原「パールもまた新潟辺りの出身じゃ?」
 高野「本当にそうですか?」
 愛原「えっ、えっとぉ……そりゃ……」

 パールを事務員として雇い入れる時に本籍地や現住所を書いてもらった。
 あの時点では住所が埼玉の斉藤家になっていたものだが、本籍地は……。

 高野「もしかしたら、出身そのものは新潟県なのかもしれませんね。ですが、マサの書いた通り、霧生市のバイオハザード事件の時は、霧生市にいたのでしょう」
 愛原「そ、そうなのか……。でも、それが何だというんだ?彼女は感染者じゃないだろう?」

 もしもTウィルスに感染していたのなら、とっくのとうにゾンビ化しているはずだ。
 霧生市のバイオハザードでは、市民の8割、9割は感染してゾンビ化したり、そんな感染者に殺されたりしたが、私達を含めて1割や2割の市民は脱出に成功している。
 表向きは、ここにいるリサも、その生き残りということになっている。

 高野「霧生市が元々は山奥の小さな村だったのに、それがどうして人口10万人くらいの町になれたのかは御存知ですよね?」
 愛原「日本アンブレラが巨大な研究所や工場などを建設したからだろう?それで企業城下町となったんだ」

 日本アンブレラの出資で建設された霧生電鉄も、アンブレラ専用電車が運転されていたくらいだ。
 表向きは職員輸送用や、物資輸送用ということだが、頑丈なコンテナに入れられつつも、実験動物やBOWも運搬されていたことが分かっている。
 特に後者は、リサの証言から。

 高野「ということは、アンブレラの関係者やその家族が多く住んでいたということですよね?」

 高野君はネスカフェバリスタでコーヒーを淹れてくれた。
 勝手知ったる自分の家みたいだ。
 パールがいなくなったのなら、代わりに高野君に戻って来てもらいたいくらいだ。

 愛原「パールがそうだというのか?」
 高野「はい。それも、UBCS側です」
 愛原「待てよ!UBCSはアメリカ本社でも、非合法私兵組織として運用されていたんだぞ?ましてや日本で存在できるわけが……」
 高野「先生はお忘れですか?霧生市郊外の山寺に、UBCSが現れたことを」

 確かに霧生市郊外の山寺、大山寺の境内の駐車場にUBCSのトラックが止まっていたのを確認している。
 そして、ジョージと名乗る軍人が私達の前に現れたのだ。
 当初は、霧生市の救助活動にやってきた在日米軍の兵士だと言っていたが、後にUBCSの兵士だと判明している。
 日系人とはいえ、アメリカ国籍の軍人だったのだから、アメリカのアンブレラから来た者だと思っていたが……。

 愛原「それは覚えている」
 高野「あれ、日本の組織ですよ。普段はUSSの隊員として活動しているだけの」
 愛原「おいおい!また俺の知らない情報が出て来たな!」
 高野「どうせデイライトは今日1日、先生のお相手はできないでしょうから、もうしばらくここでお仕事のお手伝いしながら、知っている情報をお伝えしますよ」

 私の思考回路、付いていけるだろうか?
 しかし、ここは素直に情報伝達を受けることにした。
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