goo blog サービス終了のお知らせ 

報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夢を巡る」 2

2024-10-14 21:16:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明(夜) 天候:不明 ファンタジー世界スットン王国バッコン市郊外ダンジョン『蜘蛛の巣城』]

 愛原「ペッペッ!蜘蛛の巣だらけじゃねーかよ!どこに『蜘蛛の女王』がいるんだよ!?」

 すると、蜘蛛の巣だらけの洞窟の奥がボウッと光る。
 蜘蛛の糸で織られたレースのカーテンの向こうには、戒律の厳しいイスラム圏の民族衣装を着た女性の姿が映った。

 蜘蛛の女王「勇者マナブよ。後ろに気をつけなさい。私の『子供』が遊び相手を欲しています」
 愛原「はぁ?」

 私が後ろを振り向くと、タランチュラの化け物がこっちに向かって来ていた。
 その大きさは、大型のダンプカーくらい。

 愛原「おい、冗談じゃねーぞ!どういうことだ、これは!?」
 蜘蛛の女王「時間をあげましょう。この間だけ……」

 蜘蛛の女王は、テーブルの上に置いてある砂時計をひっくり返した。
 砂時計が下に落ちている間、タランチュラの化け物は動きを止める。
 但し、口はモゴモゴと動かしていたが。

 愛原「マジかよ!」

 銃があれば、撃ち殺してやることなど、造作も無いことだが。
 綱渡りの如く、女王のいる空間へと足を進める。
 ロープの下は奈落の底になっていて、ここからでも見えるほどの太い蜘蛛の糸が巨大な網をいくつも張られている。
 そして、ここからでも見えるほどの大きさのジョロウグモだかコガネグモだかが、こちらに向かって前足を上げている。
 こんな所から落ちたら、メスグモ達のエサになるのか……。
 どうしてメスだと分かるかって?
 ジョロウグモもコガネグモも、オスは黒一色の地味な色合いで、しかもメスより小さいのだ。
 しかし、下にいる連中は全て警戒色の派手な色合いで、しかもデカい。
 メスに決まっている。

 クモ娘A「アタシお腹空いてるのォー!早くにこっちに来てー!」
 クモ娘B「私の物よ!私だって何日も食べてないんだから!!」
 愛原「え?」

 下から人間の若い娘の声がした。
 もう1度下を見ると、さっきのクモの化け物達が、何故か人間の姿をしていた。
 但し、服装は警戒色の物を着ていて、牙は剥き出し、口から糸を吐いている。

 愛原「萌え系になっとるーっ?!」
 リサ「ダメ!先生はわたしが食べるんだから!!」
 愛原「今、リサの声がしたぞ!?」

 私が困惑していると、蜘蛛の女王が言って来た。

 蜘蛛の女王「勇者よ。急がないと、タイムリミットですよ?」

 いつの間にか、砂時計の砂がまもなく全て落ちる所だった。

 愛原「でーっ!急がないと!」

 私は上のロープと下のロープをつたって、女王のいる場所へ急いだ。
 そうしているうちに、砂時計が切れ、タランチュラの化け物が追い掛けて来た。

 愛原「つ、着いたーっ!」

 私は蜘蛛の糸でできたカーテンを破った。
 直後、タランチュラの化け物が追い付くが、カーテンより先には来られないらしい。

 蜘蛛の女王「立ち去りなさい!」

 女王に言われ、タランチュラの化け物はウジウジしながらも、元来た道を引き返して行った。

 愛原「えーと……蜘蛛の女王ですね?……台本では、何て書いてあったっけ?」

 蜘蛛の女王はブルカを脱いだ。
 その下にあったのは……。

 リサ「わたしとの結婚式だよ、先生?
 愛原「り、リサぁ!?」

[期日不明 時刻不明 天候:不明 豪華客船“夢幻”号・医務室→カジノ]

 愛原「……という夢を見たんです」
 船医「それは大変でしたねぇ……」

 気が付くと、私は病院の診察室のような所にいた。
 私は患者用の丸椅子に座り、白衣を着た老齢の医師は診察机の前に座っている。

 船医「お疲れのようですので、そちらの処置室のベッドでお休みになって大丈夫ですよ」
 愛原「い、いや、ここも夢の中でしょう?ここはどこですか?」
 船医「夢幻号の医務室ですよ」
 愛原「夢幻号?また戻ってきちゃったのか……」

 よく見ると、医師の顔は青白く、青い火の玉がいくつか飛んでいる。

 愛原「ここに、私のようにまだ生きている人間は来ませんでしたか?80代くらいの男性で、眼鏡を掛けていますが……」
 船医「来ましたよ。腰が痛いので、湿布を求めて来ましたが……」
 愛原「湿布程度で済むとは、元気な爺さんだ」
 船医「全く。羨ましい限りです。そこのカジノで遊ぶ余裕があったようですから」
 愛原「カジノ!?カジノなんてあるんですか!?」
 船医「ええ」
 愛原「あー、まあ、豪華客船なんだからカジノくらいあるか。ありがとうございます。失礼します」
 船医「あっ、ちょっと待って」
 愛原「えっ?」
 船医「外には恐ろしいモノがいます。私は奥の処置室にいますので、それからにしてください」
 愛原「お、恐ろしいモノ?」

 船医は椅子から立ち上がると、診察室隣の処置室へと移動した。
 い、一体、何がいるというのだろう?
 こんな時、銃が無いと不安だな。
 いや、まあ、幽霊相手に銃は効かないか……。
 私は恐る恐る医務室のドアを開けてみた。
 その先の廊下は暗かった。
 なるほど、これは幽霊がいてもおかしくない。
 しかし、幽霊が幽霊を怖がるとは……。

 悪霊「うふふふふ……あはははは……」

 来たな!
 廊下の向こうには、イブニングドレスを着た女性の悪霊がいた。
 悪霊だと分かったのは、船長や船医の幽霊と違い、火の玉が赤かったからだ。
 船橋エリアに現れたのは少女の悪霊だったが、こっちは成人女性の悪霊だ。
 急いでスイッチを探さなければ!

 愛原「あった!」

 私はスイッチを入れた。
 パッと廊下の照明が点く。
 悪霊は憎々しそうな顔をしながら消えていった。

 愛原「よしよし。本当に明かりに弱いんだな」

 この廊下沿いに、カジノの入口があった。
 ドアの所には、『OPEN』と書かれている。
 私はカジノに入ろうとした。

 愛原「ん?」

 その時、パチッパチッ!と、何かが弾ける音がした。
 その方向に目をやると、先ほどの照明スイッチから火花が出ていた。
 ま、まさか、ショートしたのか!?
 そのまさかのようで、ボンッという爆発音がしたかと思うと、再び廊下が停電した。
 と、いうことは……。

 悪霊「うふふふふふ……あははははは!!」

 再び悪霊が現れた。
 今度は私のすぐ背後に!
 冷たい手が私の首に触れたと同時に、私はカジノ入口のドアを開け、そこに飛び込んだ!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「夢を巡る」

2024-10-14 11:52:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明(夕方?) 天候:曇 某県霧生市西部郊外 新日蓮宗大本山大山寺]

 ん……?
 ここはどこだ?
 確か……夢幻号なる豪華客船にいたはずなのだが……。
 そこで船長を名乗る男と話していて、話の流れで船長室を含む船橋エリアを探索することになったはずだ。
 まずは操舵室を案内しようとしてもらおうと、そこへ向かうドアを入った時、目の前が真っ暗になった。
 そしたら……また、意識が無くなって……?
 一体、どうなってるんだ?
 そして、ここは一体……?

 愛原「いでっ!?」

 私はまたベッドの上に寝かされていた。
 起き上がろうと上体を起こしたら、天井に頭をぶつけてしまった。
 な、何だ!?
 やっと暗闇に目が慣れて来た時、私が寝ているベッドは2段ベッドの下段だということが分かった。
 私が頭をぶつけたのは、上段の底だったわけだ。
 何でこんな所に?
 今度は船員居住区にでも押し込まれたのだろうか?
 私はベッドから出て、明かりの漏れているドアの所に向かった。
 不思議と、今度は揺れを感じない。
 船はどこかに停泊しているのか?
 いや、停泊していても揺れはあるはずだ。
 ここは一体……?
 それに、何だか見覚えがあるような……?

 愛原「あっ!?」

 ドアを開けると、そこは監視カメラのモニターがズラッと並び、他にも色々な操作盤や防災盤の並んだ部屋になっていた。
 かつて、私はこういう部屋で仕事をしていたことがある。
 ここは防災センターだ!
 しかもこの防災センター、見覚えがある。
 まだ稼働しているモニタを見ると、寺の境内らしき光景が映し出されている。
 ここは霧生市の大山寺ではないか!
 どうして、こんな所に!?
 ……待てよ。
 確か、夢幻号にいた時、突然現れた公一伯父さんが言っていた。
 ここは夢の中だと。
 すると、ここもまだ夢の中なのだろう。
 ドアを開けてマップ移動すると、次の夢に移れる仕組みになっているのか?
 しかし、ドアを開けても、地上への階段があるだけで、そこから目が覚めるということはなかった。
 防災センターの中には誰もいないようなので、階段を昇って地上に出てみることにした。
 確か、防災センターは地下1階にあるはずだ。
 そこから階段を昇ると……。

 愛原「荒廃している……」

 エントランスホールがある。
 入口には、和室の大広間に入る為に靴を脱いで預けるシューズボックスがあるのだが、その殆どが倒れていた。

 ???「うぅ……」
 愛原「!?」

 その時、エントランスの外から誰かの呻き声が聞こえた。
 そういえば大山寺は、バイオハザード時、ゾンビやハンターの徘徊する化け物寺と化していたのだった。
 残念ながら夢の世界ということもあり、手元には銃は無い。
 私は物音を立てぬよう、そっと様子を見に外に出ることにした。

 ???「うぅ……ううう……」

 エントランスのドアの陰に身を寄せ、様子を見る。
 どうやら呻き声を発しているのは、男のようだった。
 そして、見渡す限り、その男の周囲には誰もいなさそうだ。
 よく見るとその男、ボロボロになっているとはいえ、警備服と帽子を被っていた。
 もしかして、ここの衛士なのだろうか?

 愛原「大丈夫か、あんた?」

 私は男の前に回り込み、声を掛けた。

 ???「お前は……人間か?」

 男は顔を上げた。
 その顔は人間だった面影はあるものの、何となくライカンに似ていた。
 ライカンとは人狼のことで、ルーマニアの山村で起きたバイオハザードにより、そうなった村人達のことである。
 立ち位置的には、ゾンビに近い。

 愛原「そういうあなたは、人間じゃないのか?」
 ???「どうも、そうらしい……。うう……ああああっ!!」

 男は苦しそうだった。
 そして、大きく呻いた時に帽子が落ちた。
 その下にあったのは、1本の角だった。
 リサの物よりも立派な角。
 ライカンじゃないのか!?

 愛原「あなたは鬼か!?」
 男「そうかもしれねぇ……。だが、俺も昔は人間だった。この町に蔓延した病原菌が、俺達をこんな姿にした……」
 愛原「それは何という病気だ?」
 男「さあな……。もう何年も前の話だ……」
 愛原「何年も!?食べ物とかは……?」
 男「食べ物!?そんなモン無ェよ!俺達は共食いをして生きてるんだ!……良かったな、アンタ。俺はさっき仲間を食い殺して腹一杯なんだ。でなけりゃ、アンタが俺の飯になるところだったよ」
 愛原「……これからどこへ行くんだ?」
 男「あぁ?水のある所だよ。幸い、水はあるからな。……アンタがどこから来たのか分かんねぇが、興味あるなら俺についてこい。面白いモン見せてやるよ」
 愛原「面白いもの?」

 私も行く当てが無いので、男について行くことにした。
 途中、庭園みたいな所を通った時、驚くべき物を見つけた。

 愛原「こ、これは!?」

 それは巨大なタンポポだった。
 ビルの高さにして、5階分はあるだろうか。
 大きいのは高さだけではない。
 それに比例して茎は木のように太く、黄色い花もそれに比例した大さで咲いていた。
 地面から生えるギザキザの葉っぱもデカい。

 愛原「な、何だこれ!?タンポポ!?」
 男「そうだよ。タンポポのお化けだ。あれも俺達を鬼だか狼男だかにした病原菌のせいなんだとよ。まあ、このタンポポに限っては、デカいだけで、それ以外は何がどうというわけじゃねぇが……。でもよ、1年中咲いてるんだぜ」
 愛原「1年中!?」
 男「ああ。この辺りは冬はドカ雪が降るんだが、その雪を被っても尚、ずっと咲き続けている。正に、化け物だよ」
 愛原「…………」
 男「それだけじゃねーぜ?あの池には毛が生えて、今じゃ毛むくじゃらの鯉が泳いでいるし、もっと山の奥に行けば、3つ首の犬とかもいる」
 愛原「3つ首の犬……ケルベロスとか、ティンダロスとか……」

 この世界のアンブレラ、何をバラ撒きやがった!?
 そして、私達はとある川の近くまで来た。
 確か、大山寺の東側には霧生川という川の上流があるんだった。
 マップで確認しただけで、実際は行くことは無かったが……。
 私達が辿り着いたのは、数段高い位置にある崖の上だった。

 男「ここから川の様子を見てみな」
 愛原「えっ?」

 河原には大勢の男女がいた。
 しかし皆、異様な姿をしていた。
 パッと見は人間の姿をしているのだが、ここにいる男のように、多くが角を生やしている。
 男のように1本角もいれば、リサのように2本角もいる。
 多くが角が痛むのか、そこを押さえて呻いている。

 愛原「角が痛むのか?」
 男「そうなんだ。まるで、癌細胞のようにな……。う……ああああ……!」
 愛原「だ、大丈夫か!?
 男「……俺達が水場に行くのはな、何も喉が渇くからだけじゃねぇ……!ああやって、水で冷やすと、少しは痛みが治まるからなのよ……!」
 愛原「ま、マジか……」
 男「分かったら、お前はここから去れ……。あいつに見つかったら、食い殺されるぞ……!俺は、アンタとは会わなかったことにしてやる……」

 そう言って、男は崖を滑り下りて行った。
 と、ここでまた目の前が暗くなっていく……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする