【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

映画 「ラフマニノフ<ある愛の調べ>」~白いライラックの伝説

2008-08-21 16:41:01 | 映画の香り

【ピアノ上の花は、「ライラック(リラ)」。ラフマニノフの大好きな花】


   明け方、思わぬ寒さに目覚めました。
  こんな感覚は、本当に久し振り。

   いつもの習慣で、思い切りカーテンを開け、
  空に目を遣ると一面の真珠色の空・・。

   朝のうちは、小雨もパラパラ。
  それでも、すぐに上がったのですが、
  今日は、あの暑さではありません。

   当然蝉も鳴かず、庭を賑わせてくれた
  小さな来客達も、今日はありません。
  こんなに爽やかな、お天気になりましたのに。

   こうなって来ますと・・。人間とは勝手なものですね。
  通り過ぎようとしている夏に、妙に懐かしさ・・郷愁さえ覚えてしまうのですから。
  例年以上に、「酷暑」 「猛暑」 「炎暑」 だった、この夏に・・。

   さて、昨日は以前、中央でやっていて、
  見逃してしまったロシア映画、
  「ラフマニノフ ある愛の調べ」 を観て来ました。

   遅れる事4ヶ月。
  どんなに、この日を待ち望んだ事でしょう。

   前回、観ようと決めていた、「レッドライン」 などは、
  散々迷った挙句、(面白くないという理由で)
   結局、観ませんでしたのに。

   ところが、こんな映画になりますと、
  さっさと観に行くのですから何をか言わんと、
  言った所でしょうね。

   映画は、当然の如く、
  ラフマニノフの生涯を描いたものです。

   ラフマニノフの名前は知っていても、
  モーツァルトやベートーベンのように、
  馴染みのある名前ではないでしょう。

   ラフマニノフと言って・・すぐ頭に思い浮かぶのは、
  「ピアノ協奏曲第2番」ではないでしょうか。

   この曲は、これまでも、映画、『逢いびき』(’45) を初めとして
  数々の映画音楽に取り入れられて来ました。

   例えば、『旅愁』(’50)。
  そして、エリザベス・テーラー主演の 『ラプソディー』(’54) や、
  ビリー・ワイルダー監督の 『七年目の浮気』(’55) 等など・・。
  枚挙にいとまがありません。

   ラフマニノフ(エフゲニー・ツィガノフ) は、ロシア革命を逃れて、アメリカに亡命。
  映画は、ロシア時代の回想を織り交ぜながら、作曲をしたいのに、
  生活のためにやむなく演奏活動を続ける・・。彼の心の葛藤を描きながら進みます。



   ところで、彼に絡む3人の女性の存在を忘れる事は出来ません。
  最初は、従妹で幼馴染のナターシャ(ヴィクトリア・トルストガノヴァ)。その後、結婚。
  ラフマニノフの複雑な心を知り尽くし、献身的なその姿には、胸を打たれます。

   次に、「交響曲第1番」 を捧げたとされる、運命の人、アンナ。
  年上のエキゾチックな美人です。(冒頭の写真の女性)
  (ラフマニノフが、最初にライラックの花束を贈ったのは、彼女です)

   3人目は、ピアノ教師を務めた女子校の生徒、マリアンナ(ミリアム・セホン)。
  革命を夢見ていた少女の魂と肉体の輝きは、彼の旋律を作り出す
  原動力となるのですが・・。無事、国外に逃亡出来たのは、彼女のお陰でした・・。

   そしてここでは、「ライラック」 が、重要な愛のモチーフとして、
  描かれています。

   夢にまで見る彼の故郷、田舎に咲くライラック。
  運命の女性に初めて捧げたのもライラックなら、いつの頃からか、
  演奏会には必ず白いライラックが、甘い香りと共に届けられ・・。

   その贈り主は、記憶の中の “あの人” か・・それとも・・一体誰なのか・・?
  最後に、その贈り主が分かると・・愛の美しい旋律が鳴り響く・・。

   それにしても、どうしても女性側から観てしまうせいか、
  切なくてたまらない映画でした。
  芸術に生きる人を愛する女性の苦悩・・。

     冒頭の写真と、すぐ上の写真。
  この2枚の写真は、見事に正反対の女性の心理を表わしているような気がします。
  全く対照的な二人の女性の姿。

   ピアノを弾いているラフマニノフに対し、
  絶対的に自分に自信のある女性と控え目で献身的な女性。
  冒頭の写真に比べ、下の写真は背中合わせにしか、心を伝えられない・・。

   写真でも分かりますように、1900年代初頭は、『アンの世界』 をも彷彿させ、
  ファッションやインテリアなど、とても興味を持って眺める事が出来ました。

   ミス・コーネリア や、リンド夫人 が、盛んにけなした、アメリカ。
  今より余程、華麗で豪華に見えます。
  それにしても、スーツ姿に、帽子の男性って、素敵です。



【全編に流れていた曲目】

※ラフマニノフ  「ピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18」 「前奏曲嬰ハ短調Op.3-2」
          「前奏曲嬰ト短調Op.32=12」 「交響曲第1番ニ短調Op.13」
          「幻想小品集Op.3-1」 「ヴォカリーズOp.34-14」
          「パガニーニの主題による狂詩曲Op.43」
※スクリャービン 「練習曲Op.8-12」
※ショパン    「練習曲Op.25-9」