日々是好日

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『パロマ器事故』に使用者の心得をおもう

2006-07-26 18:27:55 | 社会・政治
パロマ中毒死、修理が不具合原因か (朝日新聞) - goo ニュース

問題になっているパロマ工業の半密閉式瞬間湯沸器は、燃焼用の空気を屋内から取り入れて、燃焼排ガスを排気筒で屋外へ排出する設計で、有効に換気が行われていれば問題はない。何らかの不都合により排気ファンが働かなくなると、安全装置が働いて燃焼器へのガスの供給が遮断され、炎は消えてしまうことになっている。

従って排気ファンが正常に働いていたら、安全装置の出番はない。排気ファンが止まった場合にこそ安全装置の出番がある。

この問題でマスメディアは安全装置の『不正改造』に報道の焦点を当てているが、事故の直接の引き金になりうる排気ファンが正常に働いていたのかどうか、その検証が乏しい。
上の記事によると、上嶋さんの住んでいた《アパートは68年に建てられた3階建て。事故が起きた湯沸かし器は20年前ごろに設置されたらしい。湯沸かし器はパロマの委託業者が90年に修理したとみられるが、その後に修理・改造されたかどうかについては分かっていないという》。

なんと湯沸かし器は20年前ごろに設置された年代物である。ガスを燃やすのだから結構高温に曝される部分もあるだろうし、金属部分も酸化されて、もしこれがガスの通過するパイプなどであれば器壁も薄くなるだろう。要するに器具の経年劣化は必然的に進行している。よくぞ20年間も働いてくれたものである。排気ファンも20年間の年月、よく回ってくれたものだ。私の常識では明らかに耐用年数が超えているから、もし自分で使い続けるなら、それなりの注意を十分に払うだろうと思うが、耐用年数に対する一般の認識はどのようなものなんだろう。

90年代に修理されたとあるが、もしこれがいわゆる『不正改造』で、その後なんら手が加えられていないとすると、この器具は少なくとも『不正改造』後の15年間は一応問題なく動いていたことになる。それとも、なにか異常を再々入居者が感じてはいたが特に手を打たなかったのだろうか。

さらに私が不思議に思うのは、上嶋さんの事故が起こったときの状況である。朝日は19日の記事で《上嶋さん方では、以前から湯が十分に熱くならず、上嶋さんが室内の異臭や頭痛を訴えるなどの兆候がみられたという》と報じている。それよりなにより、上嶋さんが死亡した事故で、《直前に上嶋さんの兄(25)が湯沸かし器で風呂に湯を張ろうとしたが、水のまま温まらないなど不完全燃焼の兆候があったことが分かった。》そして現に上嶋さんの兄はそのあと病院に50日間も入院していたのだという。

これだけ異常な徴候があったのにもかかわらず、上嶋さんは湯沸かし器の不調を疑わなかったのだろうか。そして7月20日付の産経によると、《排気ファンのコンセントが抜け、湯沸かし器が稼働してガスが2時間以上放出されていたことを示す屋外のガスメーターが点滅》というのである。

排気ファンのコンセントが抜け、というのは正に異常である。どうしてコンセントがぬけたのだろう。それとも誰かが抜いたのだろうか。

排気ファンも使い続けていると『がた』が来て、回っているときの音が大きくて五月蠅くなっていたのだろうか。それでコンセントを抜いたのかも知れない。もしこのコンセントが一本しかないのなら、このコンセントを抜くことで安全装置がたとえ正常でも動かなくなるのではないだろうか。

コンセントが外れていたために排気ファンも働かず、もちろん安全装置も働かなくて不完全燃焼が起こり、一酸化炭素中毒を繰り返して引き起こしていたと考えると、以前からなぜトラブルがあったのかが分かるような気がする。

いずれにせよ、20年もののガス湯沸かし器を「もったいない」と思って使うこと自体、決して悪いことではないが、年代物であることの危険性を、使用者は同時に脳裏に焼き付けておくのが肝心である。さらに、このような器具の正しい使用法を心がけるのは、近隣にも被害を拡大させないための社会人の義務であろう。そして何か異常を感じたときには直ちに最善の対策を考える。この当たり前のことを使用者が心がけていると、被害も最小限に止まったのではなかろうか。

製造メーカー、修理業者、アパートの所有者・管理人、それぞれの責任が明らかになったとしても、自分の命が失われてからでは意味がない。この際、自分のしなければならないこと、出来ることなどを改めて確認してみてはどうだろう。

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