日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

半分こ

2004-10-13 13:53:54 | Weblog
最近でこそ妻と出かけることが多くなったが、以前、旅は一人でするものだった。
ヨーロッパではユーレイルパスさえあればよかった。次の日の予定ぐらいは決めて汽車に飛び乗る。着いた先では駅前あたりの案内所で宿を紹介して貰い、歩くか電車、バスを利用して宿にたどり着く。タクシーなどには縁がなかった。

食いしん坊だから食事にはこだわりがあった。ランチこそスナック・バーですませることが多かったが、夜ともなると服を着替えて出直すことが珍しくなかった。でも、店に入ると案内されるテーブルが入り口近くだったり、店内の見通しが余り良くないところであったり、心なしか余計もの扱いだった。

デカンターで供されるテーブルワイン、前菜にときには好物のスープまたはサラダ、そしてアントレを注文するのが常であった。メニューを決めるまでが苦労でありまた楽しみである。英語で記されておれば上々、ドイツ語ではまあまあ、ところがフランス語にイタリア語だと見当はつけてみるものの自信なし。そこで英語のわかるウエイターを呼び寄せて、説明を聞きながら選んだものである。

慎重に選んだつもりではあるが、口にするまでは安心できない。イメージ通りの料理であれば万々歳であるが、味に裏切られることがけっこう多い。薄味なら塩胡椒にマスタードなどで適当に好みに近づけられるが、味の濃いときが問題、とびっきり塩辛いものとか酸っぱいもの、これは諦めるしか仕方がなかった。それに劣らず気をつけないといけないのが量。総体に一皿の量が多いから、へたするとアントレをかなり諦めるという事態にもなりかねない。食糧難を痛いほど味わった私として、食べ残しは絶対にしない、との誓いを心ならずも破ることは苦痛でさえあった。

妻と出かけるようになって一番嬉しかったのは、レストランに二人連れで意気揚々と入っていけたこと。予約をするときでも胸をはって二人、と云える。(ちなみに二番目に嬉しかったことは、駅などで大きな荷物の番をさせてゆっくりとトイレを済ませることであった。)さらに前菜にせよアントレにせよ、それぞれ異なるものを注文して、二人で分けて食べると味わいが2倍になる。分けるから、とウエイターに告げると必ず余分の皿を持ってきてくれる。そして食べ残しもなくなった。私以上のグルマンのおかげである。

ベルリンで妻が怪我をした日は、夜の食事を摂りに出かける気にならず、ホテルの食堂で済ませることにした。ゆとりのある空間にあまり客は入っていなくて、プライベートなくつろぎを感じた。例によってシェアーするから、と注文をした。すると料理をちゃんと二皿にはじめから分けて持ってきてくれた。念のために確かめると、こちらであらかじめ分けました、との返事。よくみるとステーキこそ半分に切っているが、付け合わせの野菜などはそれぞれに一人前が載っかっている。料理を作る人、給仕をする人の人情に、先ず心が豊に満たされた。

同じようなことはそのあとプラハのレストランでも経験した。ちょっとした心遣いで客はとても幸せな気分になる。日本でもこのようなサービスが定着して欲しいものである。高齢者の二人ずれ、一人前で済ませられるなんて不必要な無駄が省けるではないか。

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