日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

「やらせTM」劇場の高すぎる公演費用

2006-12-17 11:15:10 | 社会・政治
ある日、朝日朝刊第一面トップに《首相、報酬100万円返上 やらせTMで引責》の文字が躍っていた。しかし私にはこの「やらせTM」の一体どこが問題なのか、ピンと来なかった。

新明解さん(第五版)によると『やらせ』とは「テレビのドキュメンタリー番組などで、出演者と事前に示し合わせておいて慣れ合いでもっともらしく何かを行わせること」を云う。これ以外にも公聴会や株主総会、各政党の党員大会とか学術団体の総会など、要するに集会をスムーズに進行させるために、主宰者側と参加者の一部があらかじめ事前に打ち合わせてして筋書き通りに会を運ぶのはすべて『やらせ』で、これは日常茶飯事に行われていることであろうと私は思っている。一度でも会のお膳立てを経験した人は、それなりに思い当たることがある筈だ。はやい話がそのような集会で、発言者が一人もいないことには格好が付かない。そこで万が一に備えて質問者を準備しておく。このような『やらせ』はザラにあるではないか。

政府主催もしくは主導の集会が、政府の世論誘導であるのは当たり前のことで、大政翼賛会なんて言葉を知る世代の常識である。そうでないと考える方がおかしい。主権者である国民はその意思を、自らが選んだ国会議員を介して国政に反映していく。これが民主主義のルールというものである。政府主催と言うだけの得体のしれぬ集会で何か意見を述べると、それが何らかの形で法律に反映されるなんて考えるのはただのお人好しである。それでは国会議員なんて要らないではないか。

世論誘導もしくは上意下達の集まりに過ぎないタウンミーティングで出された意見を、政府側がかりにも法案提出主旨で取り上げるとしたら、これも民主主義のルール違反である。国会議員諸氏は自らの職を賭して反対しなければならない。

ことほど左様に、タウンミーティングは小泉人気を盛りたてるたんなるお祭り騒ぎ、かっての軍国少年にはシンガポール陥落を祝う提灯行列のように映ったに過ぎない。その無意味さが今回の出来事で浮き彫りにされた以上、はやばやとこのような茶番劇はお終いにすればよい。

ただ『やらせ』とか『世論誘導』には当たり前と思った私も、その開催費用の出鱈目ぶりには、やっぱりと思うものの、呆れかえった。一回の開催費用が平均2184万円というのである。

私に開催をまかせていただければ、たっぷりと手数料を頂いたとしても300万円以下で仕上げることが出来る。

手元に兵庫県芸術文化センターの施設利用料金表があるのでそれを見ると、2000席の大ホールを午前9時から午後5時まで借りても、入場料が無料の場合は平日で34万円である。これには受付とか座席案内孃の人件費が含まれているのかどうか分からないが、かりに人件費をプラスするとしても10人で10万円もみれば十分である。マイクとか看板とか諸費用をさらに上乗せするとしても会場関係で100万円もあればよい。

主宰者側の出席者が公務員であれば、公用出張になるから旅費などは計上しなくてよい。ゲストを招くにしても旅費謝礼込みで一人10万円もあればよい。五人呼んだとして50万円である。

開催の衆知は官報で十分。あとは地元のNHKからニュースを流してもらえればよい。これも『お上』のご威光をふりかざして無料で済ませる。別に広報関係に余計な費用をかけなくてよい。どうしても費用をかけたければ、参加者に一人あたり500円程度のお菓子袋を配ると口コミで広めれば、参加者がドッと集まること間違い無しである。1000人集まったとしても50万円で済む。

以上総計すれば200万円。それを私が300万円で請け負ったら100万円の儲けになる。しかし一私人の私にこれだけ儲けさせること自体が国費の無駄遣いである。タウンミーティングが公の行事である以上、私が請け負う仕事を元来は一人の公務員がそれに専念してこなすべきなのである。それなら平均出費の十分の一、200万円の出費で済む。

タウン・ミーティング運営を請け負った電通、朝日広告社の「一般常識からは理解しがたい単価の設定」が報じられているが、これは問題の焦点をわざと逸らしているとしか私には思えない。問題にすべきは、このような簡単な仕事をハイエナのような『御用商人』に『丸投げ』する官僚の体質なのである。公僕としての自覚の一欠片もみられない。

私は現役時代に国際学会も含めていくつかの学会主催の現場責任者の経験をもっている。学者の世間知らずと時には揶揄されるような身でありながらも、費用集めから会場設定まで、自分たちで力を合わせて働くことに何の違和感もなかった。現場主義のなせる業でもある。

『やらせ』に目を奪われて、官僚の『無駄遣い体質』の隠蔽を手助けしてはならない。



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