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中世からルネッサンス、バロック時代の音楽LPを蒐集し始めて間もない頃、Julian Breamに出会った。1933年、ロンドン生まれのギター、リュート奏者である。12歳ですでにギター演奏のステージに立ち、セゴヴィアのお眼鏡にもかなったらしい。その後、リュートを独学で学び演奏活動に精を出すようになった。
リュートがアラブ世界からヨーロッパにもたらされたのは1500年頃でその後広がりをみせ、先日紹介したDowlandが活躍したのは1600年前後、日本では関ヶ原合戦の時代である。上の写真のLPはJulian Breamがエリザベス王朝時代のリュート音楽を演奏したものである。なかなか豪華なジャケットで、しっかりとしたボール紙で作られており、LPとスキラ社が製作したリュートなどの複製絵画入りの立派な解説冊子が収められている。
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Julian Breamは英国はもちろんヨーロッパ大陸、アメリカと世界各地でリュート演奏を行い、当代随一のリュート奏者として名声を得た。どのような演奏だったのか、ある評論家の批評が解説に紹介されている。
「Bream氏はリュート演奏であらゆる時代を再現してしまう稀な音楽家である。しかし彼は古楽とかなにか特別な形の音楽として演奏するのではない。DowlandとかMorley・・・などの音楽を、あたかも今日のニュースのように今の話題にしてしまうのである。美の真髄を伝える彼の演奏は、あたかも最新流行の服飾のように今風なのである」
Greensleevesをこのように演奏している。
500年以上もの歴史のあるリュートを演奏することは、日本で云えば琴とか琵琶、三味線に笛、さらに私の嗜んでいる一弦琴を演奏するようなものであろう。だからリュート音楽は日本流に云えば伝統音楽なのである。ところがリュート音楽は伝統音楽だからこういう決まりがあって、というような文章に私は未だお目にかかったことがない。
「彼は古楽とかなにか特別な形の音楽として演奏するのではない」とか「彼の演奏は、あたかも最新流行の服飾のように今風なのである」という評言は、Julian Breamのリュート音楽を現代に通用する音楽そのものと評価しているのである。Julian Breamが身につけたエリザベス王朝時代のコスチュームも素敵で、その当時の雰囲気をリアルに醸し出していた、とか、Dowlandの時代から細々連綿と伝えられた秘伝の奏法を駆使した正に伝統に則った演奏だった、と云うような懐古趣味とは全く無縁の批評なのである。
たとえエリザベス王朝時代の音楽であろうと、演奏される音楽が今の世に生きていることが聴く側にとっても大切なのであって、ある種の雰囲気作りのように音楽の本質にかかわりのない付随的なものには、一切、不要である、とするのなら、たとえば私の嗜む一弦琴の演奏などはどのようにすればいいのだろう。