日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

大満足の第54回NHKニューイヤー・オペラコンサート

2011-01-04 16:39:21 | 音楽・美術
昨年の第53回NHKニューイヤー・オペラコンサートは私にいわせると散々な出来であったものだから、面白くなかった第53回NHKニューイヤー・オペラコンサートでは恥ずかしげもなく悪態をついたうえで次ぎのように締めくくった。

こんな下手な筋書きはまったく不要である。なにが「スペクタクルで官能的」だ。なにが「贅沢なステージを繰り広げます」だ。夾雑物を大げさに持ち込んだだけなのに、独りよがりにもほどがある。歌手の顔見せこそすべてなのである。来年こそNHKニューイヤー・オペラコンサートの原点に立ち返り「乾杯の歌」をぜひ復活して欲しいものである。

この思いが神に通じたか、今年の第54回NHKニューイヤー・オペラコンサートはその原点に立ち戻って歌手と歌がまさに主役となり、無駄のない引き締まった舞台背景がそれをしっかりと支えていた。さらに端正な司会の壷を抑えた案内と進行がこのフェスティバルを大いに盛り上げていた。昨年とは打って変わったこの変貌に私は心惜しみなく拍手を送り、ブログ・タイトルを「大満足」で飾ることにしたのである。

私は予備知識を一切仕入れずに番組を楽しむことにしている。だから「アイーダ」の耳慣れた合唱で歌手が次々と登場する場面に「今年はまともだな」と直感した。そして期待は裏切られなかった。なんせ「ドン・ジョヴァンニ」、「トスカ」、「ボエーム」、「こうもり」に「椿姫」が選ばれているのだから、アリアや重唱の歌われる場面が自然と思い浮かんでくるというものだ。家だから誰に遠慮することもない。ブラボー、ブラボーと叫んでははしゃいでいた。ニューイヤー・オペラコンサートはこう来なくちゃいけない。そう言えば観客からの声援もなかなか熱がこもっていたようだ。

オペラとしてまとまって鑑賞する機会はほとんどなくても、歌を聴けばどのオペラとすぐに分かる曲目も多く選ばれていた。というより私がたとえ部分的でも口ずさめなかったのは「ウェルテル」から「春風よ、なぜわたしを目覚ますのか」、「タンクレーディ」からの「恭しくあがめ奉る公正なる神よ」、「マクベス」からの「裏切り者め!」、「哀れみも、誉れも、愛も」ぐらいだったので、選曲に言うことなしである。たとえ耳慣れていなくても、「ウェルテル」を歌った望月哲也、「タンクレーディ」の高橋薫子に「マクベス」の堀内康雄による熱唱には素直に身を浸らせていた。ベテランに新進と歌手の層の厚いのは嬉しい限りであるが、歌手にとって年間を通じてベスト・コンディションを維持するための体調管理は大変なものだろう、佐野成宏の歌唱にそれを感じた。回復を祈りたい。

一つだけとくに取り上げるとすれば、「ボエーム」第三幕のミミとロドルフォによる二重唱と、それにムゼッタとマルチェッロの口げんかの二重唱がかぶさって、四重唱になっていくところがよかった。アンサンブルの美しさはもちろんであるが、酒場であろうか、メルヘンチックな小屋に背景が四重唱に詩情を添えていたからである。

お洒落だったのは第二部のアリス・紗良・オットによるリスト作曲「リゴレット・パラフレーズ」のピアノ演奏。お口直しかどうかはさておき、シャーベットの頭につんと来るような刺戟がちょっとした緊張を呼び起こしてくれた。

最後が「椿姫」第一幕のハイライトで締めくくりが「こうもり」の大団円でも歌われる「ブドウの炎の流れの中に」、すなわち「乾杯の歌」の大盤振る舞いである。もう何も言うことない。今年は大満足であった。願わくば来年もかくあらんことを!



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