改正臓器移植法では本人の意思表示が不明な場合は家族の承諾で脳死下臓器提供が可能となり、したがって15歳未満の小児からの臓器提供が可能になった。この臓器提供に係わる意思表示等に関する事項として、『「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)一部改正新旧対照表』に次のような解説がある。下線部分が改正部分として新に加わったものである。
この改正部分の特徴(マーカー部分)は、脳死下臓器提供の意思のないことを15歳未満の小児が書類もしくはそれ以外の手段であれ表示しておれば、法に基づく脳死判定を行わないこと、と定めていることである。そのためには15歳未満の小児に脳死下臓器移植についての知識があることが前提となるが、実際のところ学校教育でそのような知識が与えられているのだろうか。
平成19年12月11日の「厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会の会議録議事情報」に、日本小児学会清野佳紀参考人の次のような発言がある。
私の考えは清水参考人の意見とほぼ同じである。とくに重要なのが我々は、脳死や臓器移植についての理解を図るため、学校内外での教育を行い、ドナーカードへの署名の前の講習や当該小児の自由意思を確認する必要があると考えます。の部分である。私は「厚生労働省における移植医療の普及啓発に向けた主な取り組み」の中に
なる項目があるのは承知しているが、それ以外にどのような教育が、それもとくに15歳未満の小児に対して、なされているのか教育現場の状況については何も知らない。私が知らないだけならそれでよいが、もし脳死や臓器移植についての理解を図るため、学校内外での教育を行い、ドナーカードへの署名の前の講習や当該小児の自由意思の確認が現状でなされていないのであれば、冒頭「ガイドライン」のマーカー部分はたんなる作文、便宜上の辻褄合わせに過ぎず、それでいて「児童の権利」に定められた権利を実質的に侵すことになる。もう一度繰り返すが、教育の現場ではどうなっているのだろう。教育現場からの声が出てこないのが不気味ですらある。
この改正部分の特徴(マーカー部分)は、脳死下臓器提供の意思のないことを15歳未満の小児が書類もしくはそれ以外の手段であれ表示しておれば、法に基づく脳死判定を行わないこと、と定めていることである。そのためには15歳未満の小児に脳死下臓器移植についての知識があることが前提となるが、実際のところ学校教育でそのような知識が与えられているのだろうか。
平成19年12月11日の「厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会の会議録議事情報」に、日本小児学会清野佳紀参考人の次のような発言がある。
三、小児の意見表明権の確保に関する基盤整備。
仮にA案の場合、子供の意見表明権は十分に確保されなければなりません。我々は、小児医療現場の経験から、十五歳未満はもとより、十二歳未満の未成年者であっても、適切な情報提供を行うことにより、みずからの状況を正確に理解し、意見を表明することが可能であると考えます。小児科学会員に対する調査でも、十五歳以上が八五%、十二歳以上十五歳未満が七〇%、十歳以上十二歳未満では四六・六%が、子供の意思表示のみ、もしくは本人の意思と親の了解があれば臓器提供はできると回答しています。
また、我が国が一九九四年に批准した子どもの権利条約第十二条に示されている意見表明権にかんがみれば、十二歳未満の未成年者についても意見を表明する権利が認められているのであって、その意見をどのように尊重するかについては、今後も検討を続けていくべきと考えます。
現行法の取り扱いが、脳死段階での臓器提供の自己決定をなし得る者を十五歳以上であると画一的に判断している点については、再検討するべきであると考えます。疾病を有したり、友人の死に接するなどして生命について考える機会を得た小児は、十五歳未満であっても死については正確な理解があり、また、臓器を他者に提供することの意義や脳死についても真摯に考えている場合が多いです。他方、十五歳以上の者であれば、未成年者であっても常に当該問題について十分自己決定をなし得るという考え方はフィクションであり、脳死、臓器移植に対する理解の程度は人によってさまざまであります。
それゆえ、我々は、脳死や臓器移植についての理解を図るため、学校内外での教育を行い、ドナーカードへの署名の前の講習や当該小児の自由意思を確認する必要があると考えます。それらが満たされるのであれば、臓器提供を決定できる年齢を十五歳以上とする必要はなく、少なくとも、中学校に入学した後の児童、十二歳以上が意見を表明した場合には、その意思を尊重しなければならないと考えます。
万が一、生前に子供が脳死移植を拒否した場合には、親が承諾したとしても、その意思を尊重しなければ明らかな子どもの権利条約違反になるでしょう。このようなことから、現時点では、日本小児科学会の見解はほぼB案に近いものと考えます。
仮にA案の場合、子供の意見表明権は十分に確保されなければなりません。我々は、小児医療現場の経験から、十五歳未満はもとより、十二歳未満の未成年者であっても、適切な情報提供を行うことにより、みずからの状況を正確に理解し、意見を表明することが可能であると考えます。小児科学会員に対する調査でも、十五歳以上が八五%、十二歳以上十五歳未満が七〇%、十歳以上十二歳未満では四六・六%が、子供の意思表示のみ、もしくは本人の意思と親の了解があれば臓器提供はできると回答しています。
また、我が国が一九九四年に批准した子どもの権利条約第十二条に示されている意見表明権にかんがみれば、十二歳未満の未成年者についても意見を表明する権利が認められているのであって、その意見をどのように尊重するかについては、今後も検討を続けていくべきと考えます。
現行法の取り扱いが、脳死段階での臓器提供の自己決定をなし得る者を十五歳以上であると画一的に判断している点については、再検討するべきであると考えます。疾病を有したり、友人の死に接するなどして生命について考える機会を得た小児は、十五歳未満であっても死については正確な理解があり、また、臓器を他者に提供することの意義や脳死についても真摯に考えている場合が多いです。他方、十五歳以上の者であれば、未成年者であっても常に当該問題について十分自己決定をなし得るという考え方はフィクションであり、脳死、臓器移植に対する理解の程度は人によってさまざまであります。
それゆえ、我々は、脳死や臓器移植についての理解を図るため、学校内外での教育を行い、ドナーカードへの署名の前の講習や当該小児の自由意思を確認する必要があると考えます。それらが満たされるのであれば、臓器提供を決定できる年齢を十五歳以上とする必要はなく、少なくとも、中学校に入学した後の児童、十二歳以上が意見を表明した場合には、その意思を尊重しなければならないと考えます。
万が一、生前に子供が脳死移植を拒否した場合には、親が承諾したとしても、その意思を尊重しなければ明らかな子どもの権利条約違反になるでしょう。このようなことから、現時点では、日本小児科学会の見解はほぼB案に近いものと考えます。
私の考えは清水参考人の意見とほぼ同じである。とくに重要なのが我々は、脳死や臓器移植についての理解を図るため、学校内外での教育を行い、ドナーカードへの署名の前の講習や当該小児の自由意思を確認する必要があると考えます。の部分である。私は「厚生労働省における移植医療の普及啓発に向けた主な取り組み」の中に
(3)教育等における普及啓発
①全国の中学3年生を対象にパンフレットを配布(平成16年度より)
②こども霞ヶ関見学デーを活用した普及啓発(平成19年度より)
①全国の中学3年生を対象にパンフレットを配布(平成16年度より)
②こども霞ヶ関見学デーを活用した普及啓発(平成19年度より)
なる項目があるのは承知しているが、それ以外にどのような教育が、それもとくに15歳未満の小児に対して、なされているのか教育現場の状況については何も知らない。私が知らないだけならそれでよいが、もし脳死や臓器移植についての理解を図るため、学校内外での教育を行い、ドナーカードへの署名の前の講習や当該小児の自由意思の確認が現状でなされていないのであれば、冒頭「ガイドライン」のマーカー部分はたんなる作文、便宜上の辻褄合わせに過ぎず、それでいて「児童の権利」に定められた権利を実質的に侵すことになる。もう一度繰り返すが、教育の現場ではどうなっているのだろう。教育現場からの声が出てこないのが不気味ですらある。