日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

ぐるっぽユーモア風オペラ「魔笛」

2006-11-19 16:11:11 | 音楽・美術

一昨日(11月17日)、「ぐるっぽユーモア」第11回定期公演の「魔笛」を、西宮芸文センター中ホールで観劇した。友人が出演することもあって、この年一回の公演を楽しみにしている。

「ぐるっぽユーモア」は素人集団とのことである。オペラを演じるようなグループでありながら、脚本演出の岡崎よしこさん、そしてオーケストラ代わりのピアノ伴奏の加藤英雄さんを除いては、音楽を本職としていない方々の集まりと解していいのだろう。

音楽を本職としている歌手なら、芸文センター中ホールのような舞台に立つことを励みとする人も多かろう。それを素人がやってのけるのだから、それだけでも快挙である。

ぐるっぽユーモア風オペラには不思議な魅力がある。それがどこにあるのか、簡単には表現できない。でも歌い手に話を限ると、もし一人でもプロ顔負けの歌い手がおれば、アマチュアのアマチュアたるところだけを対比的に浮き上がらせるから、全体の調和が崩れてしまう。ところがこのグループでは歌い手それぞれが、ほどほどに上手いのでバランスが取れて、全体でなかなかよいハーモニーを作り出しているのである。

とはいいながら、一応人前で演じるわけだから、それなりのものはある。アマチュアの演じる夜の女王が、第二幕のアリアであのハイF(3点F)を出し切るのには恐れ入って もうそれだけでもOKとか、一方、ザラストロが最低音を出すと、やったね、と一人で頷いたり、自分も参加しているような気分になる。それがまたいい。パミーナは役柄にふさわしい気品のある歌い方に安心感があって、この人と二重唱ができたらな、と思ったりする。タミーノは元来は「テノーレ・リリコ」が演じるが、それににふさわしく、力むことなく軽く明るい声をしていいし、歌も芝居も達者で舞台慣れを感じさせるパパゲーノは、享楽派の存在感を誇示していて、つい同感してしまう。要するに、少々の歌好きなら、同じ目線で舞台を眺めることのできる、それが大きな魅力なのである。

いつも感心させられるのはピアノ伴奏の加藤英雄さんである。始めから終わりまで、ピアノを弾き詰めで、ほとんど休む暇がない。よくぞ指の痙攣も起こさないものだと、ただただ感心する。タミーノが魔笛を吹くとちゃんと笛が鳴る。あれれ、と思ってよく見ると、加藤さんがピアノと直角に右側に置いたエレクトローンだろうか、鍵盤を弾いて笛の音を出しているのである。

モノスタトスはザラストロの奴隷頭でかなりのワルであるはずだが、マザコンのいかれポンチでパミーナに横恋慕する軽薄な男になってしまっていた。岡崎よしこさんが魔法で変身させてしまったのである。役を演じる歌い手に合わせて役柄、状況設定をかなり大胆に変えられているように思う。アマチュアを指導、統率してとにかく舞台を作り上げてしまう情熱のパワーに感心してしまう。

オペラと言えば舞台芸術の中でも一番の金喰いと云われるほどの贅沢なお遊びである。ぐるっぽユーモアの台所事情は知るよしもないが、昨年までは誰でも無料で観劇を楽しめた。素人が自分たちでも楽しみまた大勢の観客を楽しませる、いわば究極の旦那藝で、演じる方にも観る方にもとにかく贅沢なお遊びである。

ぐるっぽユーモアがお遊びから道を踏み外すことなく、何時までもその極致を目指すと同時に、われわれを大いに楽しませていただきたいものである。


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