日々是好日

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薬害肝炎訴訟の原告・弁護団が和解協議 原告も「政治的決断」を

2007-12-22 14:44:42 | Weblog
薬害肝炎訴訟を審理している大阪高裁の和解勧告を受けて、政府が出した和解案に関するニュースが沢山流れているが、原告の主張に同情的な報道が圧倒的に多くて、政府の対応は冷ややかな視線にさらされているようだ。一昨日(20日)夜9時のNHKニュースだったか、野党がすべて政府の対応を非難していた。いや、公明党までも意見ありのようで、政府はまさに四面楚歌である。

私は日頃このニュースを丹念に追っているわけではないので、表面的なことしか分からないが、治療目的で投与された血液製剤によりC型肝炎ウイルス感染を受けた被害者が、国と製薬三社に損害賠償を求めて起こした訴訟であると理解している。

訴訟における和解とは原告・被告が判決ではなくて、話し合いで問題の解決をはかることなのであろう。原告が裁判に訴えたのにもかかわらず、裁判所が話し合いによる解決を勧めるのは、それなりの理由があってのことなので、裁判の長期化により被害者の救済が手遅れになることを裁判所も案じてのことではないか、と私なりに想像している。

原告と被告の間で何が争点になっているのか、裁判記録を目にしたわけではなく、また簡単に目にするわけにもいかないので、どうしてもマスメディアが伝えることに依存せざるを得なくなる。ことの経緯は読売新聞によると次のようなことである。

《国側の修正案は「(大阪高裁の、引用者注)和解骨子案と矛盾しない内容が前提」として、国側の基本的な考え方には変わりがないことを説明した。

 高裁の骨子案は、3月の東京地裁判決の責任認定期間内に血液製剤を投与された患者について、未提訴者も含め、症状に応じて1200万~4000万円(弁護士費用は除く)の「解決責任に基づく和解金」を支払うが、期間外の原告には「訴訟活動・支援に基づく和解金」8億円を、原告・弁護団が設立する財団に一括して払い、配分は原告側にまかせるとしている。

 この日示された国の修正案は、この8億円に22億円を積み増し、30億円に増額するという内容。原告側が、現在の原告約200人のほか、新たな提訴者が最大約800人と推定していることを考慮して積算した。東京地裁の責任認定期間内と期間外の被害者の比率は7対3と見込まれており、最大で合計1000人の3割にあたる300人に30億円を分配すると、1人当たりの平均は少なくとも1000万円となる計算だ。

 厚労相は「輸血などによる別の原因の感染者を除いて薬害被害者を救済する必要があると考え、検討したが、骨子案に矛盾する内容での和解はできない。その上で、最大限皆さまを救済する案を考えた」と述べた。》(2007年12月20日 読売新聞)

この政府案では、救済対象者を「3月の東京地裁判決の責任認定期間内に血液製剤を投与された患者」のみに限るのではなくて、「東京地裁の責任認定期間」外の感染者に対しても実質的に救済の枠を広げたものと思われる。対象者総数は1000人ほどと見積もられていて、原告の概算と大きくは異ならない。したがって厚労相が「骨子案に矛盾する内容での和解はできない。その上で、最大限皆さまを救済する案を考えた」と言うのも、それなりに一理があるものと私は思う。

原告側はかねてから「投与時期や血液製剤の種類、提訴の有無により責任を認める対象を区切ったり、補償内容に差を付けたりしないこと」を求めていたとのことである。その立場からすると、政府側が「東京地裁の責任認定期間」内なのか外なのかで患者を分けることは「線引きのない全員一律救済」の主張とは相容れないことになる。

今回の訴訟で目立ったのは「政治決断」と言う言葉である。大阪高裁が司法判断として「東京地裁の責任認定期間」内外で被害者の線引きをし、政府がそれと矛盾しないやり方で、実質的に全員救済につながる「政治決断」を下したものと思われる。一方、原告は司法判断を「政治決断」で覆し、被害者を線引きをしないとに踏ん切れ、と政府に迫っていることになる。

司法が下した判断に異議があれば、あくまでも裁判の場で争っていくのが筋というもので、大阪高裁の和解勧告を受け入れずに裁判の続行に踏ん切るのも一つの選択肢ではあろう。しかし政府が「線引き」を前提としながらも、原告の要求に応える内容と規模の現実的な解決案をそれなりの政治判断で出してきたからには、原告側も「線引きのない全員一律救済」というスローガンに拘ることなく、さらに協議を進めるという政治的決断があってもいいのではなかろうか。そもそも和解の前提にあるのは「譲り合い」である筈だ。「線引きのない全員一律救済」が理念的であるだけに中身をいじくるわけにもいかず、認めるか認めないか「all or nothinng」の選択しか結論がなく、譲り合いをむつかしくすることを恐れる。

また政府に責任を認めさせると言っても、福田首相に「謝れと言うのなら謝りますよ。謝ればいいんでしょう。ごめなちゃい」なんて言われても、嬉しくも何でもないだろう。行政の最高責任者として謝る立場にいる人に向かっての要求には自ずと限界があるように思う。言葉ではなくて実際の行動にもとづく状況判断こそ重要であろう。

今朝の朝日新聞によると大阪高裁は、原告側から再修正案の提出を受けたうえで、第二次和解骨子案を出す方針を固め、一方、和解協議打ち切りを表明していた原告も、再修正案を25日にも提出することにしたそうである。「大阪高裁の和解骨子を尊重しつつ(枕詞)、血液製剤の投与されたことが立証されたC型肝炎感染者はみな等しく一定の補償を受けられることとする」というようなことで、原告・被告がさらに歩み寄れないものだろうか。

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