日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

赤染晶子著「乙女の密告」は私には合わなかった

2010-07-26 14:45:22 | 読書

書店で中島京子著「小さなおうち」に並んでこの本があった。手に取ると持ち重りのしない感触がいい。厚さが15ミリでページを開くと上下のマージンが大きくて、行間の空いているのがいい。活字がもう少し大きかったら歌集か詩集のような感じになったことだろう。やっぱり紙の本は捨てがたい。この人、赤染衛門の血を引いているなんてことになったら面白いなと思いながら手を出した。


京都の外国語大学での教室シーンから始まる。日本人教授が講義しているはずなのに、そこへドイツ人教授が乱入してきて、勝手なことを喋り始める。私が日本人教授ならチョークを投げつけるところだと思った途端、読むべきか読まざるべきかと迷いが生じた。情況が作り物めいている。他の教授の講義を妨害するのは刑法に触れる行為であろう。こんなことが「今月はもう二回目だ」と書かれている。このような犯罪的行為が是正されることもなくまかり通っている大学なんて、と思ったらわざとらしさが感じられて素直についていけなくなった。生真面目人間(私のこと!)とは困ったものなのである。

でも1200円出して買ったことだし、と、とにかく読み進んで終わりまで来た。朝日新聞には

◆芥川賞「乙女の密告」 巧みさ評価、圧倒的支持

 芥川賞に決まった赤染さんは、アンネ・フランクが昨年生誕80年を迎えたことをきっかけに『アンネの日記』を再び手に取った。受賞作は、その『日記』の本質を、外国語大学の女学生である「乙女」が理解していく物語。「日本人の女の子たちの世界を乙女という作り物にして描くことで、アンネの日記の世界のリアリティーを強調したかった」

 自らの問題意識のもとで歴史をユーモラスに再検証する作風について選考委員の小川洋子さんは「ある区切られた空間の中にある人数の人が集まると、理不尽なことが起きる。大学の教室の中で乙女と呼ばれる生徒たちが二つの派閥に分かれて争い、密告が起こるというのは、アンネ・フランクの身に起きたことに重なる。二つの世界が結びつく巧みな小説」と評価した。
(asahi.com 2010年7月17日)

と選評が紹介されているが、私は残念ながら最初に変なことで引っかかったものだから、著者が「アンネの身に起きたこと」と「大学の教室の中で乙女と呼ばれる生徒たちの間の出来事」の辻褄合わせに一生懸命のところだけが目についた。感動することがなかったので、著者の目指すものが何か、理解出来ないままであった。この著者の作品にふたたびお目にかかることがあるだろうか。

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