日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

海部俊樹著「政治とカネ」を読んで

2010-11-23 23:24:42 | 読書
暴露本というのかゴシップ本というのか、元々このような話が好きなので今日買ってさっそく読み終えた。海部さんには申し訳ないが、海部さんについては誰が言ったのか「Kaifu? Who?」という語呂合わせの言葉を思い出すのが精一杯で、この回顧録を読んで、海部さんが自民党で三木武夫氏の流れを汲む河本派に属しながら、竹下派の支持を支えに内閣総理大臣まで登り詰めた方であったのを再認識した次第である。

まずは政治とお金のゴシップ話である。

 あの頃の自民党総裁選は、大枚が飛び交っていた。その総裁選に二度出馬した河本氏も例外ではなく、誠に恥ずかしい話だが、河本派代貸しの私も各派にカネを運んだのだ。嫌な仕事だったが、「政策を通すための潤滑油、必要悪」と割り切るしかなかった。
 政界では、「立たぬ札束」は端金と言われる。金は、三百万円積んではじめて「立つ」。三光汽船のオーナーだった河本氏は、「立つ金」を議員たちに気前よく配った。が、開票してみれば、あっちも裏切りこっちも裏切り。

1972年、三木氏が三度目の総裁選に挑んで敗れたとき、

クリーンと謳われた三木さんだって、実際には各派に金を配った。使い走りをしたひとりがこの私で、何人もの議員が、私から金を受け取った。受領した人々が約束を守っていれば、三木氏の票はもっと伸びたはずだ。

 一方、野党も野党でひどかった。
 政界には「寝起こし賃」という隠語がある。「寝る」とは、審議を拒否すること。「寝ている」野党を「起こす」ためには、「寝起こし賃」が必要で、私が「賃渡し」を命じられたこともある。相手のメンツもあるから、忘れたふりをして置いてくるなど、賃渡しにはそれなりの芸が必要で、とにかく嫌な仕事だった。

主題の「政治とカネ」のうちの「カネ」にまつわる話はまだまだ出てくるが、ウンザリするのでこの程度に留めておく。「政治」の話もウンザリで今となってはどうでもいいようなことなので、関心のある方はご自分で本を手に取られるとよい。

ところで上に「立つ金」の話が出たついでに、海部さんのこの本をクリントン米国大統領、サッチャー英国首相の回想録と並べて立ててみた。わざわざ「海部俊樹回想録」と銘打っているこの新書本は、取り繕いようのないほど見劣りがする。裾を広げて支えないことには独り立ちが出来ない。戦後でも「佐藤栄作日記」などは全六巻にもまとめられているのに、海部さんのこの本は近頃の日本国総理大臣の軽さを象徴しているようである。ただこの写真で矮小さだけを強調するようになっては申し訳ないので、海部さんを少しフォローしておく。海部さんがサッチャー首相に初めて会ったのは1989年9月に東京で行われた日英首脳会談の時であるが、その時のことがこのサッチャー英国首相の回想録に出ており、それを海部さんは次ぎのように述べている。



 後で、彼女の回想録を読んだら、「(海部首相は)正直な人間であり、私が会ったいく人かの日本の政治家のように口数少なく、内向的な型ではまったくなかった」と書かれていて嬉しかった。

確かにそう書かれている。それに止まらずサッチャーさんはさらに好意的なことを書いているのでそれを引用しておく。

He was strongly pro-western, a man of integrity, and not at all in the somewhat reticent, introverted mould of some Japanese politicians that I met. (中略) I was told that his favourite sayings were: 'politics begins with sincerity' and 'perseverance leads to success.' It seemed an uncontroversial philosophy.

 Mr Kaifu had twice been Education minister and we had something special in common. He spoke eloquently about social issues, in particular the decline of the family and the need to come to terms with the demographic factor of a rapidly ageing population.

いや、こういう話をしていたとは海部さんを少し見直した。



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