日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

35年ものの靴下

2006-11-26 18:08:48 | Weblog

戦後強くなったものの双璧は女と靴下であると云われるが、この靴下とは正確にはナイロン製のストッキングであるらしい。天然素材であった絹に合成繊維が取って代わり、物理的な強度が高まったからであろう。強くなったのは女物のストッキングだけではない。男物の靴下もそうで、素材が丈夫になったのであれば当然のことであろう。

私が今朝はいた靴下は35年ものである。その昔、Sears & Roebuckの店で買った。私が始めて渡米したのは1966年のことで、日本ではようやく名神高速道路が全線開通して間もない頃である。もちろんショッピングセンターなんてハイカラなものはなく、高速道路にせよショッピングセンターにせよ、アメリカで始めて経験させて貰った。郊外のショッピングセンターでSears & Roebuckの大きな店舗に足を踏み入れた時は、だだっ広い店内に商品が溢れかえっているのには圧倒されてしまった覚えがある。

半ダースかひとくくりになった靴下が目に入った。地も厚手で頼りになりそうだし、それに暖かそうである。茶色と黒をそれぞれ買って帰った。アメリカに2年滞在している間、ずーっとこの靴下で過ごした。100%ナイロンだったのか、この靴下は実に丈夫だった。いつまでたってもすり減らない。ガーターもしっかりとしている。日本に帰ってきてからも愛用した。1971年に再渡米した時に、同じタイプの靴下をSears & Roebuckで探し出して何足か持ち帰った。今はいているのはその時の靴下で、足底をすかしてみても、布地が薄くなっているようにはみえない。今でも秋から夏の始まるまで、家ではほとんどこの靴下で過ごしている。もちろん数足を代わる代わるはいているのであるが、それにしてもすでに35年間、へたることなく現役を続けている。

ものを大切に扱うことを子供の頃から叩き込まれた世代の人間として、この靴下は申し分のない出来である。でも私なりにある疑問が生じた。私が5足ほどを順繰りにはいている分には、この靴下はまだ10年そこそこは保ちそうである。でも売る方は大変、ある店員が一度この靴下を私に売ったら、次に買ってもらえるのは約半世紀後、もう定年退職後であろう。これでは商売にならないではないか。

私のような経済音痴でも考えられるようなことに、Sears & Roebuckの担当者も思い当たったのだろうか。1975年にもう一度この靴下を買いに立ち寄ったら、もはや同じタイプの商品は置いていなかった。それでも数足買って帰ったが、混紡になったり編み方が変わったのか、弱くなっていて、適当にへたってくれた。

外出用に靴下を時々買う。足底は簡単に薄くなってくれるし、ガーターのへたばりも早い。消費拡大が日本経済の活性化に欠かせないようなので、ほどほどに協力はしているものの、かくも頑丈な靴下を製造したアメリカ人の愚直さに、私は心からの共感を抱くのである。

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