日々是好日

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トヨタ車の急加速は電子制御システムの欠陥にあらず―称賛すべき米国政府の姿勢

2011-02-09 15:44:43 | Weblog
すでに日本のメディアでも報道されているが、米運輸省がトヨタ車が急加速して制御不能になり事故を起こした問題で、電子制御系に欠陥がなかったことを最終報告書で公表した。The New York Timesは次のように伝える。

Electronic Flaws Did Not Cause Toyota Problems, U.S. Says

After dissecting Toyota’s engine control software and bathing its microchips in every type of radiation engineers could think of, federal investigators found no evidence that the company’s cars are susceptible to sudden acceleration from electronic failures, the government said Tuesday. (中略)

 “The jury is back,” said Ray LaHood, the transportation secretary. “The verdict is in. There is no electronic-based cause for unintended high-speed acceleration in Toyotas. Period.”


ではなぜ「意図しない急加速」が生じたかというと、すでにトヨタ車「意図していない急加速」問題の顛末は? WSJの記事とNYTの社説で紹介したように、ブレーキを踏んだつもりが実はアクセルを誤って踏んだ運転ミスであったのである。

この報告を8日に発表したラフード米運輸長官は、この急加速問題が生じたときには、その後撤回したものの、「リコール対象のトヨタ車の持ち主は、もし何か問題があれば直ちに運転することを止めて車をディーラーに持ち込むべし」と議会証言した人物である。その同じ人が今回はテレビで、娘に車を買うことを相談されたのでトヨタ車は安全だからそれを買うように勧めた、というまでに態度が変わったのである。そのように言えた裏にはとにかく徹底的な調査があったからで、いろいろと圧力があったのではと想像するが、公正さを貫いた調査機関がまず素晴らしい。

In a statement, the highway agency said that NASA engineers had evaluated the electronic circuitry in Toyota vehicles and analyzed more than 280,000 lines of software code for any potential flaws that could initiate unintended acceleration.


さらに最初から可能性が指摘されていたが、フロアマットが(移動して?)アクセルを押さえつけた事例は一件しか見つかっておらず、また踏み込んだアクセルが元に戻らなくなったとか、戻り方が遅くなったという事例が一件もなかったというのである。急加速のすべての原因は「運転ミス」とするきわめて明快な結論であった。それにもまして、ラフード長官が述べていることであるが、この問題が最初に議会で取り上げられたときに一人たりとも「運転ミス」を口にする人がいなかった状況から出発して、「運転ミス」を全面的に認めるに至った問題処理の経緯に、日本より遙かに成熟した米国社会の底力を感じた。

トヨタは少なくとも米国では今年末までに「ブレーキ・オーバーライド・システム」を全車種の標準装備とするようであるが、トヨタの業績回復に結びつくことになるのであろうか。


過去ログ
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